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第13話 勝者が決まりました

 溶かされた氷の刃を直し隊長が構えるとスナップはどう攻撃してもやられるイメージしか浮かばなかったので攻められずに話かける。


「……メイド相手にそこまでしなくても良いと思いますわ」


「メイドさんがそこまで戦えるとは思いませんけどね」


「ちなみに後学の為に聞きたいんですけど……今の様に攻められない時はどうしたらいいんですの?」


「そうですね~時と場合によりますね。攻めるならさっきのバルケみたいに地の利を使うとか。守るなら援軍がくるまでこの状態をキープですね」


「ありがとうございますですわ」と頭をさげて隊長に向かって舞台を殴り、瓦礫や砂埃を飛ばして視界を塞ぐ。


 そして接近すると見せかけて胸の辺りに力を溜めて解き放つ。


「エデンブラスター!」


 瓦礫や塵を消滅させながら隊長に高威力の青白い光が迫る。


「ん?魔法とは何か違いますね~これは面白い……避けてもいいですが。こう純粋に力と力のぶつかり合いと言うのもなかなか悪くないですね」


 そう言っていつもヘラヘラとしている顔をやめて、バルケと同じ様に上段に構え、今のスナップには認識出来ない速度で振り下ろす。


 するとスナップが放った高威力のエネルギーは綺麗に真っ二つに切り裂きさかれた。


 そしてエデンブラスターを引き裂いた斬撃がスナップに届くところで身をひねって何とか躱すが、躱す事を読まれていたのか躱した先で服に刃先を引っかけられ舞台に叩きつけられる。


 だが隊長も手加減した様で叩きつけられたスナップにダメージはなく即座に近接戦に持ち込んだので逆に隊長が驚いた。


「はー。最近のメイドさんは頑丈なんですね」

 

「気合いと根性ですわ!」


 気合いと根性で私の攻撃に耐えられたら楽で良いですねと隊長は笑いながら器用にスナップの攻撃を捌いて自分の得意な距離にスナップを離してまた構える。


 その光景を見た観客席から歓声があがりルディール達もその光景にとても驚いていた。


「強いとは思っておったが……まさかここまでとはのう。アバランチの隊長は伊達ではないのー」


「俺も強くなったつもりだったがあいつも強くなってんな……」


「……がっ学校でノーティアさんから話しを聞くと、よく雪合戦してるか雪だるま作ってるとか言ってたのに……」


「わらわもスノーベインに行く度に見るが、だいたい雪だるま作ったり雪合戦しておるぞ……前は氷を削って氷像作っておったしな」


 その話を聞いた周りの友人達はそれでどうしてあんなに強いんだ? となったがそれは誰にも分からなかった……。


 ルディール達がそんな事を話している間に舞台の上での戦いはさらに激しさを増していた。


 隊長が自身のもっとも得意とする位置で戦い、スナップが詰めてくると突いて距離を離し、逆に離れると引っかけて引き寄せた。


 だが隊長の方が有利だったのは変わらないが一方的な戦いにはならず、突拍子もない攻撃で時折だがスナップの攻撃が決まり隊長を喜ばせた。


「いや~流石はルディールさんのメイドさん。なかなかお強い」


「加減されているのが分かっていますからなかなか素直に喜べませんわ……」


「それは気のせいですよ。私も戦い方を勉強しながら戦っていますからね~。ですがそろそろ決めさせてもらいますよ」


「ええ、受けて立ちますわ」


 そう言って隊長がいつものにやけ面を止めてハルバードを下段に構える。スナップもいつでも反撃出来る体勢を取り待ち構える。


 そして隊長の「いきますよ」と言う声が届いた瞬間にはスナップの体は宙を舞った。


 その隊長の見えない攻撃を捕らえていたルディールが素早く動きスナップが観客席に激突する前に優しくキャッチする。


 見えなかった観客達は呆気に取られたが、吹き飛ばされたスナップが場外にいるので隊長の勝利は決まったので盛大な拍手を送った。


「なっなにがどうなったんですの!?」


 慌てるスナップを友人達の近くに降ろしてからルディールが見えた事を伝える。


「簡単に言えばというかそれ以外に言いようがないんじゃが……滅茶苦茶速い突きじゃな。刃先を丸くしてくれておったからそのまま胸の辺りを突かれて吹っ飛ばされたんじゃ」


 ルディールがそう言ったのでスナップが舞台から降りる隊長を見るといつの間にか刃先に拳ぐらいの氷の球がついていた。


 そしてルディール達の視線に気がつくと笑いながら手を振ってノーティアの所に戻っていった。


「接近戦で魔神化無しならミューラッカより隊長の方が強いような気がするんじゃが……」


「久々にあの技を見たけど……見えなかったわ。という訳で雷光はかなり頑張れよ」


「私の新技より速い……結構キツいですね」


「魔神化したお主ならミューラッカ並じゃしチャンスはそこじゃな。まぁ、お主はタイムリミットはあるから守られたら難しいかも知れんのう」


 そして皆で隊長対策を考えたが特に良い案は浮かばずにいると、アナウンスが流れ決勝戦が始まりソアレと隊長が舞台に上がって行く。


 ◆


 本来は村長が優勝者に賞金を渡す予定だったが、まだ目覚めないので代わりにルディールが賞金を勝者に手渡す事になり舞台の上にいる勝者に近づき話しかける。


「おめでとうございますじゃな。まさか……あそこまで強いとは思わなかったのう……隊長殿は楽しめたか?」


「ええ、とても。この賞金で部下でも連れて飲みに行きますよ」と笑いながら優勝の賞金を受け取り観客達の前でガッツポーズをする。


 観客席からは盛大な拍手と歓声が送られた。


 決勝戦のソアレと隊長の試合はそれまでの試合に比べると少し呆気なかった。と言うのも試合開始直後にソアレが魔神化しようとしたが、その瞬間を狙われ隊長の見えない突きがソアレのみぞおちに決まり一瞬で意識を刈り取られ決着したからだった。


 そして特別席から嫌々拍手を贈っていたミューラッカが何を思ったのか立ち上がり舞台にゆっくりと降り立ち、二位になったソアレを呼び寄せる。


 リージュには最近は遠慮しないソアレだったが流石に王族のミューラッカに呼ばれて少し緊張しながらゆっくりと舞台へと上がる。


「流石にあれだけの戦いを見せてもらって何もないと言うには少し面白くないな……ソアレ・フォーラスよ。お前達は火食い鳥という冒険者パーティーだったな?」


「はい。そうですが……」


「何、そんなに緊張する事は無い。朗報だ。今から一年、お前達火食い鳥がスノーベインに訪れる時に払う通行料を無料にしてやろう。後はそうだな……飛空艇の料金も私が持とう」


 と、ミューラッカがいったのでソアレ、スティレ、カーディフの三人はとても驚く。


「ですが流石にそれは……」


「かまわん。お前達の様な者ならスノーベインにも利益があるからな。それにそこまでの金額ではないさ」


 それ以上はソアレも何も言わずに頭を下げ礼を言うと、また観客席から拍手が鳴り響いた。


 そして次はアトラカナンタが笑いながらゆっくりと舞台に降りてきてバルケとスナップを観客席から呼び寄せた。


「じゃあ、私の方からはこれを上げよう」と言って自身の小さなアイテムバッグの中を漁り小さな魔石を取り出した」


「魔界でも珍しい魔石だから人間界ではなかなか手に入らないかな? 売ってもいいし自分達で使用しても良いし後はお任せだね。楽しませてくれたお礼だよ」


 魔王からの贈り物に少し戸惑った二人だったが王としての雰囲気で二人に接していたので、スナップもバルケも丁寧に頭を下げてその魔石を受け取った。


 そして舞台から友人達が降りて行くのを見守り、ルディールも一つ一つの試合を思い出しながら舞台から降りようとする。


 だがそこでとてつもない冷気を纏ったミューラッカことミューミューにルディールは呼び止められる。


「なぁ……ルディール。あれだけ喧嘩を売っておいてこのまま帰る気ではないよな?」


「これから露店を巡って色々買って食べようとは思っておるが……お主も一緒に行くか?」


「行くと思っているのか?」と明らかに切れており額には氷の角が現れ始め背中にも翼が生え始めていた。


「のう……隊長殿よ。ミューラッカが怒っておるんじゃが……どうしたらいいんじゃ?」


「そうですね~ミューラッカ様は歌が好きなのでルディール様が歌えば案外収まるかも知れませんよ?」と言いながら笑う。


「よし!歌じゃな!」


 流石にミューラッカが魔神化したら面倒くさいことこの上無いのでルディールは少し前に思いついたネタを混ぜながら歌う。


「YOYO!そこ行くミューちゃん!ラッカちゃん!」


「マジ切れ?ブチ切れ?細切れ?EYAーー!」


 いつの間にかマイクを持って何故かラップ口調のルディールにバルケと隊長とアトラカナンタは爆笑し、命の危機を感じたソアレ達は観客席に避難する。


 そして額の血管が浮きでてヒクヒクさせながら、最後の理性でミューラッカがルディールに優しく話しかける。


「ルディール。後学の為に教えて欲しいが……それはなんだ?」


「EYAー!ミューラップじゃ……」言い終える前にミューラッカが言葉を被せる。


「そうか……黙って死ね」


 ミューラッカの殺気を纏った冷気が一気に爆発し、額には白い角が生え、背中にも氷の羽と尻尾が生えた。その尻尾の先には小さな竜の顔がついておりルディールを敵と判断し威嚇して唸り声をあげる。


 その凄まじい魔力と冷気を危険と判断したハンティアルケーツがルディールに忠告する。


「ちょっと!ルー子!私の結界じゃそのおばさんの冷気は防げないからあまり煽るんじゃないわよ!」


 そう言われたのでルディールが結界を確認すると冷気が漏れているような事も無く、観客達は新手のパフォーマンスぐらいに見ていた。


「大丈夫そうなんじゃが?」


「……あれ?……私、もしかして強くなってる?……いや、それはないでしょ。食っちゃ寝しかしてないし……吹雪の女王もあまり大した事なかったってこと?」


 氷漬けにされたバルケと隊長を連れていつの間にか避難していたアトラカナンタが後から教えてあげるよと言ってハンティアルケーツの近くに座った。


 そして散々煽られたミューラッカが絶対零度の笑顔をルディールに向けて襲いかかる。


「お前達、魔神は皆殺しだ!」


「お主も魔神じゃろ!そういうのは同族嫌悪というんじゃぞ!」


「ルーちゃん!もう煽っちゃ駄目だから!」ミーナの声を最後に観客席からの声が全く届かない程の凄まじい戦いが始まった……


 そこからは結界内に塵や蒸気が蔓延し観客席からはあまり見えなかったが、時折翼の生えたルディールが見えたりミューラッカが見えたりしていた。


「何でその尻尾の先のトカゲも魔法攻撃してくるんじゃ!」


「はっ!お前を殺す為に決まっている!」


「お主!キメラの類いか!」


「誰がキメラだ!」


 日が暮れるまでの光が闇が炎が氷が舞台の上を飛び交いどうやったかは分からないが、決着がつき目を回したミューラッカが舞台に倒れとても疲れた顔のルディールが立っていた。


 そしてそれを見たアコットが舞台に上がり、ルディールの手を取って上にあげルディールの勝ちを宣言した。


「ルーちゃんの勝ち!」


「うっうむ……ありがとう」


 そしてノーティア達が苦笑しながらミューラッカを舞台の上からおろしてから宿へと運び始める。


「ノーティアよ。迷惑をかけるすまぬ」


「いえいえ、ミューラッカお母様も嬉しそうだったので問題ありませんよ」


 ルディールはミューラッカを運ぶノーティアに絶対にミューラッカの様になっては駄目じゃと注意してから友人達の元へと向かう。


 それからは大した問題も無かったのでルディールは友人達とリベット村の祭りを楽しみ夜遅くまで騒ぎゆっくりとその日は過ぎていった。


 これは与太話になるが……ミューラッカに勝ったルディールは村人や多くの冒険者に目撃されたが、冒険者側は来ていたギルマスが緘口令を強いたので特に目立って冒険者達に話される事もなかった。


 村人達もルディールの普段の行動(牛を呼びに行ったり、空から農薬を散布したり、子供に魔法を教えたり、猫と日向ぼっこしたり)からそこまで強いとは思われていないので、そういうパフォーマンスなんだろうとあの戦いを見ていた。


 だからと言う訳でもないがミューラッカが噂で伝わってる様な厳しい人では無く、ルディールの冗談が言い合える友人としてリベット村の人達に周知されはじめた。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


このお話でこの章は終わりなので投稿しました~。次回から新章に入って砂漠に行きますが次の投稿は来週のなかばぐらいになると思いますので楽しみにお待ちくださいませ。


ちなみに「気が付いたら借金を押し付けられた錬金術師でした」が続いていた場合はこの祭りの優勝者はテテノになっていたりします。まぁ隊長さんとかソアレが出てる時点で主人公補正が無いと無理です(笑)

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