表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/306

第12話 ご近所一武道会その4

「何と言うか……どう戦えば良いかが、わかりませんけど頑張ってまいりますわ!」


「うむ。様子見をする時間はないとは思うから頑張ってのう」と言ってルディール達はスナップを応援し送り出す。


 そしてスナップも雪山もお互いに礼儀正しくお辞儀をして戦いが始まった。


 スナップはノーティアと戦った時と同じ様に開始直後に髪の色を真っ赤に染め上げ、雪山も開始と同時にノーティアが出したものよりは小さいが雪と氷で出来た狼を十体近く召喚する。


「楽には勝たせてもらえない感じですわ」


「それはこちらの台詞ですね。ノーティア様との戦闘を見た時にも思いましたが凄まじい高温ですね」


 そう言ってから二人で笑いスナップが雪山を守るように立ちはだかる狼に一気に襲いかかる。


 ノーティアが作った狼よりは遙かに強くそして硬かったので一発では仕留め切れなった。


 四、五発の攻撃を入れてようやく狼を倒したかと思うと凄まじい量の雪や氷が圧縮されていたようでスナップの体は押し流され雪山との距離が開く。


「ルディール様も先生と言うだけあってほんとにお凄い方ですわ」と言いながら体について溶けた水滴を払いながら立ち上がる。


 今のスナップにはかなり荷が重い相手だったが雪山の魔法が雪や氷といったものだったので、高温になる体を冷却させる事も出来たので相性はとても良かった。


 ふぅっと一息ついてから自身の体が融解する一歩手前まで体の温度を上げて先ほどと同じ様に雪山に攻撃を仕掛ける。


 だが先ほどとは違うのはスナップ自身の熱量で一撃で狼を仕留め、その時にでた大量の雪で体を冷やして雪山に接近する。


 後、数歩という距離までスナップが雪山に接近すると、雪山が自身とスナップの間に一瞬で山を思わせるような強大な氷壁を出現させる。


 このまま距離を取られてはどうにもならないと判断したスナップは勢いそのままにその氷壁に向かって本気で溶岩のように赤い拳を叩き込む。


 凄まじい蒸気がその場に吹き出した瞬間に……雪山の腰辺りから人間が発してはいけない音が鳴り響いた。


 なにかうめき声の様な物が口からあふれスナップの目の前にあった氷壁や周りにいた狼達も消え失せた。


 普段からルディールと一緒に湿布を作っていたスナップは慌てて戦闘態勢を解除し駆け寄る。


「雪山様!大丈夫ですの!」と言った後に雪山が絞り出すように無理ですと言って意識を失ったので呆気なくスナップの勝利が決まった。


 そしてルディールも心配してすぐに駆け寄って、すぐに村長達が寝ている部屋に運び込み回復魔法を唱え処置をする。


「これで大丈夫じゃが……雪山先生の魔法は腰痛持ちにはしんどいのう」


「わたくしの本気モードを冷やせる程の冷気ですからある程度は自身に影響はあるんでしょうね」


「それでスナップは大丈夫か?あそこまで真っ赤っかになると自身に影響もあるじゃろうし……お腹の子も心配じゃしのう」


「ルディール様………………そうやって心配しながらカマをかけるのは止めてくださいですわ……正直に言うとキスすらまだですわ」


「そこで否定され無かったらどうしようかとは思ったが……何というか前にスノーベインに行った時にミーナとセニアをからかっていた事が懐かしいのう」とルディールが少し意地悪そうに笑いからかうとスナップは顔を赤くしてあの頃を自分を殴りたいですわと顔を覆った。


 雪山に問題が無くなり次の試合が気になるルディールとスナップは武道会へと戻ったがアバランチの隊長とSランク冒険者のタレスは決着がついており急いで客席に戻り友人達に尋ねる。


「おう。おかえり。雪山さん大丈夫だったか?」


「もう大丈夫じゃが……隊長とタレスの試合はどうじゃったんじゃ?」


「タレスもSランクだからあいつも少しは苦労したみたいで本気のハルバードで戦ったらすぐにケリがついたな。武器を弾き飛ばされてタレスの負けだ」


「次の相手はわたくしですから見たかったですわ……」


 次の対戦相手の戦い方が分からなかったスナップが肩を落としていると妹のスイベルが映してあるのですぐにデータを送りますと言ってスナップにデータを送信し始めた。


「転送が終わるまで数分はかかるので少し待ってください」


 次の試合が始まる前に先ほどと同じ様に休憩時間があったのでその時間を使いスイベルが見たデータをエアエデンを経由してスナップへと転送される。


 そして全ての転送が終わったタイミングで次の試合の出場者が呼ばれる。


「よっしゃ!行って来るわ!」


「言わんでも分かるが……相手はソアレじゃから相当しんどいぞ」


「おう。ルー坊と出会った頃の雷光で俺が両手だったら勝ってるけどな」と言って肩を回しながら先にバルケが舞台に上がって行く。


「だっそうじゃぞ。ソアレよ。お主も相当しんどいじゃろうが……この試合楽しみじゃな」


「スティレには悪いですが……バルケさんの方が強いのでここからは真面目に行かないと詰みますね。と言う訳でいってきます」


 バルケの後を追う様にソアレも舞台の上に上がりお互いが構え対峙し戦闘開始の鐘がなる。


「スナップさんがバルケさんを応援してるので負けてあげたい所ですが……優勝するとルディールさんが結婚してくれると言うのでガチ目に行きます」


「おう……応援してやりたい所だがこっちも応援してくれる奴がいるからな。悪いが勝たせてもらうわ」


 バルケが間合いを計り距離を詰めようとする瞬間にソアレがそれを察知し魔法を唱える


「ライトニングワンダラー!」


 バルケをとり取り囲むように何十個の雷球が現れ、人が歩くぐらいの速度でゆっくりとバルケに向かっていく。


「お前な、これルー坊の魔法だろ……人間相手にやり過ぎだろ……」


 バルケが呆れた顔でソアレに抗議するが当の本人は全然と言って首を左右に振る。


 バルケが大きく上段に大剣を構え一切の無駄の無い動きで振り落とすと迫る雷球を真っ二つに切り裂き消滅させる。


 その事に驚いたルディールは大きな声を上げる。


「魔法を切ったじゃと!?……ほんとにあやつは凄まじい剣士じゃな……ソアレよ。気合い入れねば負けるぞ」


(ゲーム中でもソードマスターとかの上位職とかなら魔法を切るスキルを持っておったが……あの辺と比べても遜色ないんじゃろうな)


 観客席も凄い熱気に包まれ、バルケは雷球を切りながらソアレに接近しようとする。


 だがソアレも簡単に接近を許す訳がないのでスティレと戦った時と同じ様に舞台の上に雷を張り巡らせバルケの接近を阻害する。


 舞台に流れる雷を剣で切り払い、時に避けながらバルケが接近しようとするが、先程の戦闘と少し違い、張られた雷の上にソアレが乗るとバルケの接近する速度に引けを取らない速さで舞台の上を浮遊し移動する。


「ほー便利そうな魔法だな」


「はい。この張られた雷の上なら何処でも素早く移動できるので便利ですよ。まぁ張れる場所を増やすと消費魔力がやたらと増えるので長距離は無理ですが」


「なるほどな~。俺もそうだが強くなればなるほど背中は遠くなるな」


「ですね」


 そう言って二人は観客席で目をキラキラさせながら観戦しているルディールを見て少し笑ってからもう一度仕切り直す。


 次はバルケから先制で舞台に自慢の大剣を突き刺し、そのままなぎ払うとソアレに向かって砕けた舞台の欠片が大量に襲いかかる。


 その全てが魔法障壁により直撃することは無かったが、あまりの多さに一瞬だけソアレはバルケを見失った。


 次にバルケを発見した時にはソアレの真横までバルケが接近し、もう上段から大剣を振り下ろそうとしている瞬間だった。


 ソアレは特に驚かずスティレを倒した魔法を無詠唱で唱えバルケが振り下ろすよりも速く雷の刃を生やした杖を横に薙ぐ。


 だが、その刃は届く事は無くバルケの声が先に届いた。


「速いだけだったら対策なんていくらでもとれるからな。ちといてーから歯食いしばれよ雷光」


 その言葉にソアレは驚愕すると刃が届く前にその手を握られ止められていた。すぐに振り払おうと雷をバルケに流したが気合いと根性で耐えられてソアレの力では振り払う事が出来なかった。


 そしてバルケが思いっきりソアレを引き寄せみぞおちに膝蹴りを蹴り込んだ所で吹き飛ばされようやく離れた。


 その威力は凄まじく障壁が間に合ったにもかかわらずソアレの意識は飛びそうになったが、何とか意識をたぐり寄せふらふらと立ち上がる。


 ソアレが立ち上がった瞬間に何かを悟ったバルケは雷を流された事で焼けてただれた手で気にもせず大剣を掴み、即座にソアレに追い打ちをかける。


 少しふらつきながらも魔法を唱え距離を取ろうとしたが、何故か上手く魔力が練れず魔法が発動しなかった。


 そして一人を除いてバルケの勝ちを確信した瞬間にソアレの魔力が一気に膨れ上がり、竜が空へ上るようにソアレから雷が空へ向かって駆け上がり眩しく発光した。


 発光が収まるとバルケは一旦ソアレから距離を取って離れており、ソアレ自身は頭に雷で出来た角が生え背中もいびつな翼の様な物が生え全身は凄まじ電気が帯電しバチバチと音を立てて発光していた。


 その姿を見たバルケは戦意が喪失するどころか逆に嬉しそうに笑いながら突っ込んでいった。


 それから先はバルケが魔法を切り裂いたりし数分はもったがソアレの攻撃の凄まじさに剣を持つのも不可能となったのでバルケが焼けただれた両手を挙げて降参と言ってソアレの勝ちが決まった。


 今までで一番の拍手が二人を包み二人が友人達の所に戻って行く。


「いや~勝てると思ったが油断したわ。魔神化だったか?あれ、まじですげーわ」


 嬉しそうに笑うバルケにルディールもスナップも呆れたが、言い返すより先に火傷が酷かったので先にルディールがバルケに回復魔法をかけてすぐにその傷を癒やす。


「これで大丈夫じゃな。ソアレの方はもう治っておるんじゃよな?」


「ありがとうございます。大丈夫です魔神化した時に治りました」と言って勝つには勝ったがその表情はあまり嬉しそうでは無かったので、その事をルディールが尋ねると膝蹴りを食らった時に手加減されたのでモヤモヤするとの事だった。


「いや、殺し合いではないんじゃし仕方ないじゃろ」


「あそこは雷光が凄かったんだぞ。あれで確実に落ちると思って蹴ったからな」


「ですが……魔法使い相手なら肺を潰した方がいいのでは?」


「いや、無詠唱が使える奴だと肺を潰した所であんまり意味がないんだよな。だから奥の手を使ったが耐えきった雷光の勝ちだぞ」


「そうそれですよ。あの膝蹴りを食らったあとしばらく魔力を練れなかったんですが……どういう技ですか?……奥の手と言っていたので聞いて良いか分かりませんが……」


「魔法ってのはみぞおちの辺りで魔力を練るからそこを潰してしばらく魔法を使えなくする技だな。ローレットには無かったからスノーベインに伝わってる技だな」


 バルケが言い隊長の方を向いて付け足す様にあいつに昔教えてもらった技だと言った。隊長もこちらの視線に気がついたよ様でノーティアと話しながら手を振っていた。


「と言う訳でスナップの次の相手は相当しんどいから頑張れよ」


「がっ頑張りますけど……頑張りますわ」


 そのタイミングでスナップと隊長がアナウンスで呼ばれる。


 データで隊長の戦い方を見たりバルケの話を聞いて自分が勝てるのか? とは思ったがバルケやルディールや友人達に応援され気合いを入れ直して舞台へとあがった。


「さて、どっちが勝つじゃろうな?」


「スナップには悪いが、あいつは滅茶苦茶つえーから負けるだろうな」


「三バルケぐらいの差って言っておったから、お主の三倍の強さじゃろ?人間辞めておるな……」


「ですね……私も普通の状態なら一バルケぐらいですしスナップさんも同じぐらいかと」


「ソアレとスナップが一バルケなら私は0.9バルケぐらいね」


「だったら私は0.7バルケぐらいか?」


「お前等な!人の名前を新しい単位にしてんじゃねーよ!!」


 そんな感じでルディール達が観客席で盛り上がっていると舞台の上に上がったスナップと隊長の耳にも入った様で隊長は笑いスナップは少し呆れていた。


「はっはっは!やはりルディールさんは面白い。あの気難しいミューラッカ様とご友人なのも納得ですね」


 そう言って軽く振り回した氷の刃がついたハルバードは空気を切った様な美しい音をたてた。


「あの……あまり言いたくはありませんがミューラッカ様のご機嫌がさらに麗しくないですわ……わたくしの主が煽るのも原因もありますけど……」


 スナップもそういいながら先ほどよりは少し熱量を落とし髪を真っ赤に染め上げる。


「大丈夫ですよ。ミューラッカ様がご機嫌な時の方が少ないですし、ルディールさんから聞いた話によればツンデレと言うらしいので」


 他国のトップを捕まえて自身の主は何を言っているんだろうと少し悩み、それ以前にミューラッカ様がデレるのか?と少し考えた時には一切目を離さなかったはずなのに目の前の戦士のハルバードが自身の服に引っかけられ一瞬で引き寄せられる。


「えっ!?どうやってですの!?」


「私は説明がイマイチ上手くないのでご想像にお任せしますよ」


 このままでは勝負が決まると気がついたスナップは自身の熱量を一瞬だけ最大まであげ、何とか引っかけられた部分を溶かして脱出した。


 その事で隊長は感心した後にニコニコと笑いスナップを褒め仕切り直しとなった。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


次回でこの章は終わり予定です。十話で終わる予定だったのに長引いた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ