第8話 春の祭り
ルディールが目覚め窓から外を見ると外は気持ちよく晴れ渡っており、祭りにはもってこいという様な天気だった。
背伸びをしてからパジャマからいつもの服に着替えて顔を洗い一階に降りるとスイベルがアトラカナンタと世間話をしながら朝食の準備をしていた。
ルディールは二人に挨拶をしてから椅子に座り朝食を食べ始める。
「何か目の前に魔王がおる朝食も変な感じに慣れたのう……」
「あはっ。私からすればその魔王に勝てる魔神が暢気に田舎で朝食を食べてる光景にはなかなか慣れないね」
「あれは運良く勝てただけじゃと思うがのう。ナイン・アンヘルが無かったら詰んでおったし、力はわらわの方が強いかもしれんがお主の方が遙かに頭良いしのう」
「とは言うけど、君の場合は脳が筋肉でできてる訳でも無いし、最後の最後は純粋な力だとおもうけどね」
その光景が何か面白かったのか普段あまり笑わないスイベルが笑い平和が一番ですねと言っていた。
ルディールもアトラカナンタも確かにと言って頷き、静かな朝食を楽しんで居るとミーナや火食い鳥が二階から降りてきて一瞬でその時間は崩れる。
祭りの開催まではまだ早い時間だったのでルディールはアトラカナンタとルディオントからもらったボードゲームで遊んでいるとミーナがアトラカナンタに疑問があったので質問する。
「そう言えばカナタンって聖女様の力は奪ったのに私やソアレさんには取り付いただけで何もしなかったの?」
「うん?何もしてない事はないよ?私は寄生虫の魔神だから君達の体内に卵を産んであるよ」
その話を聞いてミーナとスティレとカーディフの三人はとても顔色を悪くする。
「嘘じゃぞ。終わった後にわらわのアイテムでちゃんと調べたし王女様も回復術師を派遣したし、それこそエアエデンまで行ってお主等隅々まで調べられたじゃろ。あそこまでやって何もないならないわい」
「あはっ。そう思うのは君達だけでいつかは腹を食い破って……はい。私の勝ち」
「なんじゃと!お主!わらわが目を離した隙に駒を動かしおったな!」
「ルーちゃん……目を離さずに見てたからね。と言うかカナタンがそういう事言うと嘘に聞こえないからほんとにやめて!」
「ちょっとルディ……今からでもこいつ倒して欲しいんだけど」
「私も自分の体の事なので魔眼で見つつ調べましたけど本当に何も無かったですよ」
嘘が見破られたので仕方が無いから答えてあげようと言って腕を組みルディール達と戦った時の事を思い出し答えた。
ソアレに関しては前魔王を弱らせて食べた後にルディールから逃亡する為と答え、ミーナに関しては人質として使用したが能力を奪う前に引きずり出されたと言った。
「ルーちゃんと戦う事になるのは確実だったからいくら強い体を持ってても慣れてないと戦えないからね~魔法に関してもそうだし。聖女の力はどうしても欲しかったから食べたけどね」
「聖女様も生きてて良かったけど魔法使えなくなったから学校辞めたんだよ」
「命あるだけ儲けだね。私自身この体を気に行ってるからよほどの事が無い限りは替えたくないからね~」
そういうアトラカナンタにルディールと火食い鳥は結構雑に捨ててあったと言うとその時がよほどの時だったいい皆を呆れさせた。
そして話が途切れたタイミングで村に花火があがり祭りが始まった事を伝えた。
祭が始まったのでソアレがリノセス公爵家の皆さんを連れてきますねと言って転移したのでしばらく待っていると、転移門が現れ中からソアレが先に現れ、アコットが飛び出しセニア、メイド長、リノセス夫人、リノセス公爵が続きリージュも一緒に現れた。
その場にいた全員がリノセス公爵に挨拶をすると、公爵の視線がいてはいけない人物の前で止まり、そしてルディールに質問する。
「おい。ルディール」
「はい、何ですか公爵」
「な・ん・で!魔王様がいるんだよ!俺は聞いて無いぞ!」
そういえば言って無かったとルディールは思ったが今更言った所でなので、ごまかす為にそっくりさんだと言ったが伊達に公爵をやってる訳ではないのでだまされてはくれなかった。
「あはっ……リノセス公爵だったね。数回あっただけだけどね。悪さをしに来たわけじゃないからあまり気にしなくていいよ」
「そうは申されましても……」
セニアがアトラカナンタは武道会に出ないのかとルディールに尋ねたが出ないとわかると少しほっとしていた。
それからリノセス公爵とアトラカナンタで二人で話をしようやくまとまった様で話が落ちついたのでルディールの家を出る。
ルディール達が家から出たタイミングを狙ったかの様に家の前に雪が降り始め、その雪が積もり扉の形なった。
扉がゆっくりと開かれると中からアバランチの隊長と雪山と続き、ノーティアとミューラッカと続いた。
ノーティアが目の前にいたルディール達に挨拶をしルディール達も丁寧に挨拶を返すとノーティアは年頃の女の子ようにクラスメイトのミーナとセニアに近づく。
その光景を微笑ましく見ているルディールにリノセス公爵が優しく話しかける。
「おい。ルディール」
「はい。何ですか公爵」
「まさかミューラッカ様のそっくりさんとは言わんよな?」
顔は笑っていたが全く声が笑っていないリノセス公爵を見ると、天啓が降りた様にリベット村の村長の言葉を思い出しその言葉をリノセス公爵に伝える。
「いえ、村長が責任は取ると言っていたので私は詳しい事は知りません!盛り上げようとはしましたが」
その話聞いたリノセス公爵は大きなため息をついた後に何か閃いたようでボソッと俺もそうしよう呟き、何かが解決したようだった。
特にこれ以上は問題ないだろうなと考えているとルディール達の真横で魔力が渦巻きミューラッカとアトラカナンタがにらみ合っていた。
正確にはミューラッカが殺気を放ちアトラカナンタはニコニコしているだけだったが……
「寄生虫風情がどうしてこんな所にいるんだ?」
「やだ~そんな事もわからないの?あはっ☆」
「ふっふふふ……そこの角の付いた奴も大概だがお前も人を怒らす才能だけはあるようだな」
「あはっ☆そんな浅い事でしか人を見れない様じゃダメダメ~。お顔のシワは深いようだけど」
周りの温度が急激に下がり始めたのでルディール達はアトラカナンタとミューラッカを無理矢理引き離した。
「ミューラッカ様にまたお友達ができたようで私としてはとても嬉しく思いますよ」
「台詞だけみれば良さそうな事を言っておるが……笑いを我慢してるようにしか見えんのう」
ルディールと隊長がそんな話をしているとリノセス夫妻がミューラッカとアトラカナンタを村長の家に連れていく事になったので、ルディールはアコットを肩車しながら商人達が出した露店などをまわった。
村人が出した屋台などの物を買ったりしているとルディール達がいた辺りに影がかかり見上げると王都から飛空艇が到着する。
その中にバルケやテテノ達が乗っているはずだったので皆で迎えにいく。
飛空艇の発着場につくと思った以上の冒険者達が乗っておりその中にバルケとタレスを見つけ話しかける。
「バルケとタレスも長旅お疲れなんじゃが……冒険者が多くないか?」
ルディールは言ったようにもう一度辺りを見渡すと様々な装備に身を包んだ冒険者が沢山おりその中には魔界の鉱山で一緒に仕事をしたAランクの冒険者も含まれていた。
「おう。長旅って程でも無いけどな。簡単に言えば王都のギルマスと中央都市のギルマスが勉強になるから見てこいって言ってたからかな。あと、ルー坊が関わってるのも知ってるから遊びに来た奴もいるな」
「そういう事だ。悪いが俺の方でも知り合いに声をかけたが高ランクは出るなとギルマスに注意されたから知り合いは連れてこなかったぞ」
「なるほどの~。そう言えば、友人がおらんでも問題ないからのう……タレスは強く生きるんじゃぞ」
そう言ってルディールがタレスの肩を叩くと、違う! と言って手を払い除けたが黒点パーティーメンバー達には聞こえていたようで何人かがおもいっきり笑っていた。
そしてその場で知り合いに挨拶や話をしているとルディールがキョロキョロと誰かを探し始めたのでソアレが声をかける。
「ルディールさん。誰かお探しですか?」
「テテノンが参加するはずじゃったが、見ないと思ってのう」
テテノを知っているカーディフやスティレも一緒に探したが、見当たらなかったのでスナップと楽しげに話しているバルケにテテノの特徴を伝え尋ねたが見てないと言った。
もうすぐ武道会が始まりそうだったので冒険者や参加者には舞台に向かってもらいルディールと火食い鳥は発着場のロビーを探した。
「何処に行ったんじゃろな?」
「ですね?寝過ごして飛空艇に乗れなかったとかですかね?」
王都からリベット村までは飛空艇でも数日はかかるので乗り遅れる等と言う事は考えにくいなどと話していると、ルディールの通信用魔道具が鳴り出て見ると相手はテテノの祖母のテラボアだった。
「もしもし。ルディールかい?まだ始まって無いと思うけど大丈夫かい?」
「うむ。大丈夫なんじゃがテテノンがおらんが出場するんじゃよな?」
「あーそれなんだけど。私が中央都市に行ってる間にテテノが錬金してて飛空艇に乗れなかったみたいだね……私もさっき帰ってきた所で驚いたよ……それで悪いけど迎えに来てもらえるかい?」
火食い鳥に事情を説明をして先に舞台に向かってもらってから、ルディールは転移魔法で王都の錬金工房へと飛ぶ。
するとそこにはテラボアにしがみ付いたテテノがいた。
「お婆ちゃん……どうしても出たくない!」
「諦めな。もうルディールも来たからさっさといくよ!」
そう言ってテラボアは転移してきたルディールを指さすとテテノは先に謝ってから出場したくないと訴えた。
「という訳でルディールさん私は出なくていいですか?」
「うむ。出なくて良いとは思うが優勝賞金は結構あるから出ても良いとは思うがのう」
賞金の額が気になったテテノはいくらですか? と聞き返すと自分が思っていたより多かった様で悩み始めた。
「……トーナメント方式だから強い人達がやり合えば、もしかしたらワンチャンあるかも?」
「そういう奴に限って一戦目で優勝候補にあたるんじゃよな……冒険者も多いし、出場はせぬが吹雪の女王も魔王もおるから顔を覚えられれば仕事につながるやも知れぬぞ」
そう言うとテテノは笑いながら村の祭にそんな有名な人は来ませんよと言って笑い、自分の為に冗談まで言ってくれたルディールに感謝して出場する事を伝えた。
「まぁ何でも良いか。というかテラボア殿はよくわらわが転移魔法使えるのをしっておったのう」
「その指輪を持ってるあんたが使えない方がおかしいだろ」
テテノが準備をしている間にテアボアが工房の扉に本日休業の看板をつるし玄関の鍵をかけた所で準備を終えたテテノが戻ってきたので三人でルディールの家に転移する。
ルディールのツリーハウスを見てテラボアが吹き出すハプニングもあったが見なかった事にすると言ってくれたので村の中央に向かった。
すると急ピッチで何かを作っているようで冒険者の土魔法を使える人達が舞台がよく見える場所に小屋やテーブルや椅子などを作っていた。
ルディールが頭に?マークを浮かべているとミーナがこっちこっちと手招きをしたのでその場に向かった。
「ミーナよ。あれは何を作っておるんじゃ?小屋と言うのはわかるが……」
「フェリテス先生こんにちは。えっとね。カナタンとミューラッカ様がいるから村長さんが普通の席じゃまずいから特等席を作ってるんだって」
「なるほどのう。というか近づける方がまずいじゃろ……」
「私もそう思うけど……」
ミューラッカとアトラカナンタを半径二メートル以内に設置するという暴挙に村長がでそうだったので止めに行こうとしたところでテテノに声をかけられる。
「その……カナタンって人はしりませんけど、ミューラッカ様がいるんですか!?」
「さっき言ったじゃろうに」
「普通は嘘か冗談かと思いますよ!」
「わらわは嘘はつかんわい!」
「いや、ルーちゃんその時点で嘘を言ってるからね……」
そしてルディールが戻った事で火食い鳥やバルケ達もその場に集まってきたので話をしながら特等席の完成を見守った。
十分も立たない内に特等席は完成しスピーカーの様な音を大きくする魔道具からアナウンスが流れる。
「まもなく武道大会が始まります。参加する皆様は中央の舞台にお集まりください」
そして出場者がぞろぞろと舞台に登り全員が集まった所で木の箱を持った村長が現れて説明を始める。
「この中に数字が書いた紙があり、それが皆さんの番号になります」と言って舞台の横を指指すとトーナメント表が大きく作られており、近くのテーブルには出場者の名前が書かれた札が置いてあった。
そして出場が木箱から紙を取っていき対戦相手が決まった。
1 リージュ
2 スティレ
3 ソアレ
4 シドゥル (Bランク冒険者)
5 ミーナ
6 バルケ
7 カーディフ
8 セニア
9 スナップ
10 ノーティア
11 バスナ (Bランク冒険者)
12 雪山先生
13 テテノ
14 隊長
15 リンテスタ (Bランク冒険者)
16 タレス
「面白い感じになったのう……スナップがキツい感じじゃな~」
名前がそろったトーナメントをテラボアが見ながら孫の対戦相手の事をルディールに尋ねる。
「ウチの孫の対戦相手は隊長って書いてあるけど誰なんだい?」
「うむ。スノーベインの親衛隊アバランチの隊長さんじゃな……」
「応援に来たけど一回戦で敗退かね~」
舞台の上にいたテテノ本人も対戦相手の隊長という人物が分からなかったので隣にいたスティレにどういう人物かを尋ねた。
「神は死んだ!」と大きな声で叫び、ミーナ、セニア、リージュと四人で慰めあった。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。助かっております。
十一話から新章に入ろうと計画していたけど無理っぽい!ので、しばらくご近所一武道会をお楽しみください。新章は砂漠予定。




