表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/306

第189話 後始末

 アトラカナンタは今回の襲撃の主謀者であったが魔王でもある為に捕らえる事は出来ず客品という扱いで別の部屋で監視を付け待ってもらい、その間に魔王ルディオントと国王と宰相達が話を始めたので、ルディールは通話しながら城内を歩いていた。


「別の世界のわらわは男前じゃな。わらわもあれだけかっこよく任せておけと言えるようになるんじゃろうか?」と通話先のスナップに冗談を言っていた。


「ルディール様もその話し方をやめてしゃきっとすれば同じぐらいになりますわ」


「この話し方は絶対に止めんわい。中央都市の方も大きな問題はないんじゃな?」


「はい。わたくしは気を失っていたのでスイベルに聞いた話ですが」


 そう言って一呼吸置いてスナップは妹に聞いた事をルディールに伝えた。


 確かに建物への被害は多かったが王都と同じで魔神に襲撃されたにしては被害が抑えられ、Airの力で傷ついた建物も目には見えないほどの小さな機械がゆっくりと修復しており、怪我人の傷もすぐに塞がっていると話した。


「ナノマシンとかそう言うのかのう?」


「そうですわ。妹にAir様から渡されたデータにその事が書かれていましたから……よほどむごい死に方をしていない限りは復活し治るそうですよ。バルケ様も腕をなくされましたが生えてきましたし」


 バルケが腕を失う程の激戦だった事にルディールが驚き凹んだがリノセス家のメイド達もスナップ達も無事だったと分かりほっとしているとスイベルも話に加わりAirの事を伝えた。


「ルディール様。ご無事で……」


「スイベルも無事で良かったわい」


「ありがとうございます。Air様ですがルディール様によろしく言っておいてくださいといい元の世界に帰られました」


 その事でルディールはもう帰ったのかと驚いたが、スイベルは一瞬だけ見えたAirの世界の事と、もう一度会うと元の世界に戻れなくなると伝えた。


 二人の間に沈黙が流れたがルディールが自分達が元気にしていればまた会えるじゃろうとお互いに励まし合い、これからの事を相談して王都が少し落ち着いたら迎えに行くと伝えて通話を切った。


 そして帰る訳にも行かないので、城の廊下を歩いていると窓から外を眺める王女がいたのでルディールは近づき話しかけた。


「王女様も無事そうじゃな。怪我などはないか?」


 少し疲れた様な顔をしていたがルディールが話しかけると嬉しそうに近寄ってきた。


「ルディールさんもご無事で何よりです。先ほどからルディールさんの親族と名乗る方を見かけるのですが……本人にしか見えませんが?また何か隠し事ですか!?」


「わらわが王女様に隠し事とか……したことしかないのう」


「でしょう!しかも先ほどの自称ルディールお母様っぽい美人になんて言われたか知っていますか!?赤点か、とか言われたんですよ!」


 面倒くさい方向に赤点王女の話が逸れそうだったので無理矢理誤魔化しなんとか舵を切った。


「それで王女様も先ほどまでは話を聞いておったんじゃろ?どんな感じになりそうなんじゃ?」


「そうですね……ルミディナさんでしたっけ?城壁なども直してくれたので多数の魔神に襲撃されたにしてはまったくと言っていいほど被害が無いですね。陛下の命令で騎士達や魔道士に街の被害状況の確認をすぐにしますが……」


 そう言って王女が窓から指を差すと騎士達が城門から外に向かい魔道士が空を飛んでいた。


「後は……ルディールさんお母様(仮)が言った程の資源がある魔界の鉱山をもらえるなら、これ以上はこちらからは何も言えませんね」


「そこまでのものじゃったのか?」


 ルディールがそう尋ねると王女様は少し当たりをキョロキョロしてからルディールに近づき念を押してから話し始めた。


「王族がこんな事いったと言えばシャレにならないので絶対に言わないでくださいね……仮に中央都市が無くなっていてもお釣りが来るほどの資源量ですね。スノーベインが通信用魔道具の開発に成功しましたからそれを作る材料もその鉱山には眠っています」


「なるほどのう……襲われて良かったとか言う奴もおった訳か」


「そういう事です。後はルディールさんお母様(仮)の願いという名の脅しですが、今回の事は魔王アトラカナンタが仕掛けたのでは無く、一部の魔族が襲ってきたと言う事を国民達には伝えるようになると思います」


「あやつは何をやっておるんじゃ……」


「私は正直怖くて何も言えませんでしたが、陛下はなれているのか何というかあの圧力を気にもせず議論をしてましたね……」


 国王のおかげか魔王ルディオントの読み通りなのかは不明だったが、その条件を飲むのなら人が魔界に行ける為の魔法を教えるがどうすると言ったらしくそこで一旦話が中断され今に至ると話した。


「なるほどのう……それで王女様はちょっとチビって着替えて来た所じゃな」


「はい。そうですね。少し違う所は今から着替えに行く所で呼び止められた感じです」


「お主な……正直な所、アトラカナンタに止めを刺せなかったから何かモヤモヤするのう……ミーナは助けたし友人知人は皆無事なんじゃが……もっと他にやりようがあったんではないかとのう」


 ルディールが腕を組みながら難しい顔で悩んでいると、その仕草がおかしかったのか王女はしばらく笑ってから言った。


「ルディールさんは自分の事が分かっていませんね。その性格だと仮に止めを刺していたとしてもモヤモヤしていますよ。仮にですがアトラカナンタに止めを刺してミーナさんが死んでいたら?と考えたらゾッとしますしね。この結果が一番良かったと思いましょう」


「それもそうじゃな……もっと大変な世界もあるんじゃしな」


 ナイン・アンヘルで呼び寄せた別の世界の事を考えると少し気が滅入ったが、考えても仕方ないので頭を左右に振ってからその事を考えるのを止めて王女と話していると、この場に似合わない冷気が流れてきた。


 何事かと思いルディールが王女を守る様に前に立つと逃げる様に、細雪のルディールが走ってきた。


「お?いましたいました。そこまで思い詰めてる顔をしていないので上手くいったようですね。ミーナさんでしたっけ?先ほど見かけましたがご無事な様で何よりです」


「うむ。ありがとうじゃな。お主達のおかげで助かったわい」


「私は初めて呼ばれましたが、良い経験になりましたし日頃の恨みも返せましたから、こちらこそお礼を言いたいぐらいです」


 その言葉にルディールは嫌な予感を覚えたがこれまでの事を話し、今は魔王ルディオントと陛下達がこれからの事について話し合っていると伝え、ソールやルミディナ、ルゼアはしばらく残ると話した。


 すると細雪は考える素振りも見せずに自分のやる事は終わったのですぐに帰ると話した。


「ゆっくりして行けば良かろうに……」


「私の世界とこの世界はそんなに変わりませんからね。それに先ほども言いましたが、初めて呼ばれたので元の世界が少し心配なので早く帰りたいと言うのが本音ですね」


 そう言われたのでルディールはそれ以上は引き止めようとはせずに細雪に握手をしてからもう一度だけお礼の言葉を言った。


「本当にありがとう。元の世界でも気を付けてな。一つ聞いてよいか?」


「自分の事ですから分かりますから答えますよ。私は元の世界に帰る選択肢を選びませんでしたが……幸せですよ。家族も出来ましたからね」


 その笑顔が本当に幸せそうだったのでそれ以上は蒸し返す事を止めた。


「もはや何も言うまい……では達者でな」


「ええ、また何処かで」


 そう言って細雪が笑顔で手を振ると真なる王の指輪が静かに光り雪が解ける様に別の世界のルディールは元の世界に戻っていった。


 話が終わったので待たせていた王女の方を向くと耳を塞ぎ全く別の方向を見ていた。


 ルディールがどうしたのかと肩を叩いてから尋ねると途中までは聞いていたとの事だが、話を聞いているとおかしくなりそうだから途中で聞くのを止めたと話した。


「さすがに私の理解力を超えていますからね」


「答えられる事なら答えるが、わらわもイマイチ分かって無い事ばかりじゃからな……あまり聞かないでくれるとありがたいのう」


 王女は今の事以外にも聞きたい事は山ほどありますけどね等と話していると細雪が来た方向からとてつもない殺気を纏った冷気が流れて来たのでルディールはもう一度王女を守る様に立ちその方向を見つめた。


 すると鬼気迫るミューラッカとその後ろから慌てて追いかけるノーティアがやって来た。


 何をそんなに殺気だっているのかとルディールと王女が確認するとミューラッカの顔には立派な眉毛と髭が描かれていた。


 ミューラッカの整った顔にその眉毛と髭が妙にマッチしており王女は吹き出しそうになったが、立場上そんな事も出来ないので気合いで耐えたがルディールは耐えることが出来なかった。


 そんなルディールを見てさらにミューラッカが切れ、その笑いを止めないとスノーベインはローレットを敵と見なすぞと脅したのでルディールは笑う事を頑張って止めた。


「……ルディール。お前に似た雪の魔法使いを知らないか?」


「羨ましい事をしておるのう……あやつなら家族が待っておるからと自分の国に帰ったぞ」


「……呼べ。もしくは私を連れて行け」


「ぶふっ……すまん。それは無理じゃから諦めるんじゃな。ミューラッカよ……よく似合っておるぞ」


「ああ、ありがとう。……お前と話していると自分の我慢できる限界を知れて嬉しいよ」


 ルディールが次に何か言うと確実にミューラッカが爆発しそうだったので、王女が話をそらす為にローレットの為に戦ってくれた事を丁寧に礼をいい頭をさげた。


 ノーティアもスノーベインの女王として対応し話し終えるとルディールがノーティアに話しかけた。


「何にせよ。ノーティアもミューラッカも無事で良かったわい」ルディールがそういうとノーティアの白い肌が赤くなり何とも不思議な表情で返事をした。


「いっいえ……細雪さんから色々と話を聞きましたが……なにかこう不思議なものですね。ルディール様、私とお母様を助けて頂いてありがとうございました」


「……話を聞いたんじゃな。向こうとこっちは違うからあまり気にせんようにな」


「はい。あちらに負けない様に私も頑張ろうと思います。ミューラッカお母様行きますよ。まずは顔を洗わないと」


 そう言って今回の件でローレットの宰相の方々に呼ばれていると話し、前にあった時より少し堂々としながらノーティアとミューラッカは去って行った。


 その姿を二人が眺めていると王女がぼそっと呟いた。


「ルディールさんって……ほんと女たらしですよね」


「何処にたらした場面があったか!」


「恋する少女は強くなるんですよ?今の目はまさに恋!」


「お主、そういう事ばかり考えておるから頭の中がピンクでテストは赤くなるんじゃぞ?」


「違います!あれは暗い事件が多かったので私が犠牲になる事で周りを楽しませようと思ってのことです!」


「はいはい」


「信じていませんね!まぁ良いですが……ノーティア様とミューラッカ様が来たのでそろそろ話し合いがまた始まると思うので戻りますね」


「うむ。頑張ってな」


 ルディールがそう言って手を振ると王女は先ほどは二度も守ってくれてありがとうございますと礼をいい、かっこよかったですよとウィンクをして去って行った。


 その事に呆れて小さくため息を吐いて次はルディールが窓から外を眺めていると、金属と金属が当たる様な音が聞こえてきたのでその方向に目をやった。


 すると次は騎士の姿のルディールが現れ話しかけてきた。


「戦いは終わったようだな」


「うむ。お主にも世話になったのう……ありがとう」


「別の世界とはいえ自分自身だそんなに畏まらなくてもいいさ。こちらも良い経験になった」


 そして細雪と同じ様に少し世間話をすると騎士もそろそろ自分の世界に帰るから声をかけに来たと話した。


「シュラブネル夫人はこちらの世界ではまだ未知の病気にかかっていたからな、喉と一緒に治しておいたぞ。それとシュラブネル公爵は人は良いかもしれんが本当に面倒くさいからあまり嫌われる事はするなよ」


「うっうむ……夫人が話せる様になっただけで面倒な事になりそうな気はするが気のせいか?」


「恨まれ無ければそれでいい……さてと私からはもう言う事はな……そうだ、ナイン・アンヘルの事だけはソールがいる間に詳しく聞いておく方がいい。二度と会えないかも知れないが便利な魔法ではないからな、そうそう使うなよ」


「じゃよな。ルディオントとソールが喧嘩したとか言っておったからのう……やばい魔法というのは分かったわい」


「そういう事だ。リージュを泣かせる様な事はするなよ……元気でな」


 そう言うと鎧が光り始め騎士のルディールは光に包まれあっさりと自分の世界へと帰っていった。


「元はわらわの筈なんじゃが……世界が変わると性格も変わるものなんじゃな」


 しばらくその場所を眺めていると外から聞き慣れた声が聞こえて来たので窓から外を見るとそこにはミーナ、セニア、リージュや火食い鳥、リノセス公爵家の人達がいてお互いに再会を喜んでいた。


 その光景を微笑ましく眺めていると何人かがルディールの視線に気がついた様で手を振ってからルディールにこちらに来るように声をかけた。


 特に城内でする事もなく皆と話がしたかったのですぐに向かうと返事をしてから、ルディールは少し足早に皆がいる場所に向かった。

次回の更新は……休み中にスチームのサマーセールでゲーム買いたいので月曜日で良いですか?いいですね。いいのが無かったら明日のお昼かも?

いつも誤字脱字の報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ