第188話 終結
ルディールがアトラカナンタを魔法で縛り上げついでに顔に落書きしてからミーナと共に王都に戻ると、美しい街が見る影もなく廃墟の都市と化していた。
その光景に二人は言葉を無くしたがミーナがなんとか言葉をひねり出し尋ねた。
「ルーちゃん……ここどこ?お城はあるから王都だとは思うんだけど……何年か後とか?」
「いや、お主がカナタンに乗っ取られてからそんなに立ってないが……魔神の仕業じゃな!間違いない!やはりここでこやつを殺しておかねば!」
「その言い方!絶対にルーちゃん何か隠してカナタンさんのせいにしてるよね!?」
などと騒いでいると廃墟になった街の一部分が光り建物が生える様に街が少しずつ再生していった。
その光景に思う所があったのでミーナの手を握りその方向に飛んでいくと、ルディールの思い描く人物がゆっくりと街を直していた。
「おーい、ルミディナよ。無事か?」
そう聞くと今にも倒れそうなルミディナがうんざりするような顔で答えた。
「元気いっぱいいっぱいですね……私も強い方だとは思っていましたが……考え方も実力も一般人です。……ミーナさんお久しぶりです。怪我はありませんか?」
ルミディナに話を振られてミーナは記憶にあるルミディナと少し異なっていたので戸惑いながら答える。
「ルーちゃんに助けてもらったから大丈夫なんだけど……ルミディナちゃん少し前に見た時より大人になってない?」
「成長期と思ってもらえれば……ルディールさん。次はその辺りを巻き戻しますので少し離れていてもらえますか」
「ルミディナよ……ありがとうじゃな。それで他の連中は知らぬか?」
「いえいえ。ルディールさんにもらった恩からすればこれぐらいは楽勝ですよ。他の方々ならその建物の中にいますので」
その建物を指さすとルディールがその場所を見るとルゼアが元気よく手を振っていたのでルディールは礼をいってからその場所に向かった。
「ミーナよ。驚くと思うがあまり気にせぬようにな」
「え?どういう事?」とミーナは頭に?マークを浮かべていたが、ルディールは念を押してからその建物に向かった。
「ルディールさん、お帰りなさいです」とルゼアが出迎えてくれるとミーナの頭の上に出ている?マークがさらに増えた。
「ええと?セニアにも似てるけど……ルーちゃんにも似てる……」
「はい。世の中には三人は自分に似ている人がいると言いますのでその内の一人が私でしょう。お会いできて光栄です。ミーナ・ルトゥムさん。私はルゼアと言います」
「あ……これはご丁寧にどうも」
二人は頭を下げているとその光景が面白かったのか少しルディールが笑ってからルゼアに話しかけた。
「ルゼアはそうやって話しているとちゃんと令嬢って感じじゃな。先ほどは流れ弾から助けてくれてありがとうじゃな」
「いえいえ、どういたしまして。一応貴族ですし、自分が凄いなと思う人にはちゃんと対応しますよ!今は戦闘も終わりましたからね。おか……ルディールさん、皆さんはこちらです」
「ルミディナちゃんもルゼアさんもたまにルーちゃんの事をおかって言うけどどうしてなの?」
「ん?娘じゃからな。お母様かお母さんって言うつもりだったんじゃろ」
「またそうやって私をからかう!前にルーちゃんにもっと人を疑えと言われたから簡単には信じないよ!」
そうやってじゃれて進んでいくと一カ所に魔神が集まり膝をつき頭をたれ怯えながら魔王ルディオントの話を聞いていた。
ミーナが驚きルディールがどうしようかと悩んでいるとこっちこっちと呼ぶ声が聞こえたのでその方向を向くとカーディフが手招きをしていた。
その場にいくとスティレ、カーディフ、ソアレの三人がいたのでルディールは三人が無事な事を喜び声をかけた。
「はぁぁ……よかった。お主達も無事じゃったんじゃな」
「はい、なんとか無事ですがルディールさんもミーナさんもよくご無事で」
「ルディール殿も無事でなにより。ソール殿のおかげで無事なんだがなんと言っていいんだろうな」
ソアレとスティレがそう言うとカーディフが何ともいえない顔をしながら付け加えた。
「いや……魔神に負けてソールに助けられたらしいんだけど……気がついたら命の危機に晒されててそこのルゼアに助けてもらった感じね」
皆がルゼアの方向を向くと当の本人は敬礼の様なポーズをしながらルミディナさんとお助けしましたと機嫌よさそうだった。
「それで?魔神達はなぜあそこで膝をついておるんじゃ?」
「私達の方があんたに聞きたい事が山のようにあるんだけど……とりあえず置いておいて簡単に答えると……ルミディナが倒した魔神を復活させてあそこの別の世界のあんたが脅して魔界に帰らすだって」
ミーナは頭に?マークを大量に浮かべ、ルディールもイマイチよく分からなかったがカーディフ達に聞こうとしてもイマイチ解ってなかったのでルゼアに尋ねた。
「すまぬがルゼアよわかりやすく説明してくれるか?」
「分かりました!簡単に言えば今後の事も考えてルミディナが復活させて魔界に帰します。言いたい事はあると思いますが魔王さんは魔神の味方なので仕方ないかと」
「帰るんならそれでいいが……お主達も魔神もそれで良いのか?」
「いいも何も文句があるならかかってこいとか魔王さんに言われましたからこの世界に勝てる人はいないかと?ソールさんなら勝てる可能性もありますが、私の体内液状化パンチ食らって魔王さんにグルグル巻きにされてそこにいますから」
ルゼアが指さした方向をみるとソールがおり元気そうに、んーんーと騒いでいた。
ルディールは聞きたい事が山ほどありすぎてどうしようかと悩んでいると三十体近い魔神がルディールの近くにやってきて、一人一人丁寧に頭を下げてから魔王が出した転移門に入り魔界へと帰っていった。
最後の一人が帰って行くと魔王が近づいてきてミーナを眺めていた。
「若いな……細雪や騎士の反応が面白いほどよくわかる」
「えっえ?ルーちゃんのお母さんじゃないよね?この感じだとルーちゃん?」
そう言って驚くミーナの頭を魔王は優しく撫でてからルディールに近づき簡単に説明した。
「ミーナよ。未来のルディールと思っておけば良い。私も小さい時はこうだったからなこのルディールも大きくなると私のようになるぞ」
「はい?未来のルーちゃん!?……嘘だよね?」
「まぁ信じるか信じないかはお主次第じゃが、そういう魔法もあると言うことじゃな」
ミーナがひとしきり混乱し少し落ち着いてからルディールは魔神達の事を尋ねた。
「なんで魔神達を復活させて帰したんじゃ?何かしら理由はあるんじゃろ?」
「魔神達も数が少ないしな……不用意に殺さなくていいと思ってな。私の世界では対立したが、お互いに手を取り合う世界が一つくらいはあってもいいだろう」
「無理じゃろ……と言うか甘すぎぬか?」
「アトラカナンタを殺さなかった奴が言う台詞ではないな。それにルミディナに言って人間達も生き返らしているからな。そこまで禍根は残らないさ」
そうだと良いがのうと言ってルディールが悩んでいるといつの間にかソールが拘束を解き会話に混ざってきた。
「魔族は根絶やしにしましょう。私とルディールさんが先頭に立てば余裕ですよ余裕」
「ソアレさんも二人いる……さすがにそれは可哀想だと思いますよ」
「おっ?水姫の魔女……貴方は世界が変わっても甘ちゃんですね……まぁ、ルディールさんはそういう所に惹かれたんでしょうけども」
その言葉を聞いてミーナは何を勘違いしたのか、驚き声をあげた。
「ルーちゃん!私から距離を取ろうとしてたの!?何か悪い事した!?と言うか魔女ってなんですか!?」
その場にいたほぼ全員が緊張感ないな……と考えているとルミディナが街の修復を終え帰ってきた。
「戻りました。一応はある程度は元に戻して置きましたけど全部が全部は巻き戻してないですけどいいんですか?」
ルミディナがそういうと魔王が少しは魔神に襲われたという傷跡がある方が人間も団結すると笑いながらいい、ルディールはこれからの事について少し相談した。
「戦いは終わったんじゃがお主達はどうするつもりなんじゃ?というかナイン・アンヘルの効果がイマイチ分からんのじゃがどうなるんじゃ?」
「元の時間に帰るだけだしな……もう少しは付き合ってやろう。私の世界では王都は無いからな、観光でもするさ」
「……私は少し火食い鳥やルディールさんに話があるのでもう少し残ろうと思います。ルディールさんもナイン・アンヘルについて聞きたいと思いますし」
魔王とソールがそう言うとルミディナとルゼアもまた喧嘩したら止められる人がいないので残りますと言ってくれた。
「うむ。了解した。後はとりあえず王城に行って王女か陛下に戦いは終わったと言ってアトラカナンタを突き出せばよいか?」
「いえ、そいつはここで殺しましょう。その顔だけは何度殺しても許せそうにないので」
「おい、ルディール。天雷がいると話が進まない。邪魔だから元の世界に帰していいぞ」
「はぁ?貴方より私の方がナイン・アンヘルには遙かに詳しいですよ。それに帰るなら貴方でしょう」
また二人の周りの魔力がバチバチと音を立てて一触即発の雰囲気になったのでルゼアと火食い鳥が間に入りソールを担ぎ上げて建物の外へと出て行った。
そして魔王は大きくため息を吐いてから続きを話し始めた。
「一つ聞くがお前は魔王になるつもりはないんだな?」
「ようやくこの世界になれて来た所なのに王様とか無理じゃろ……そもそも柄ではないわい。お主が魔王やっておるのが不思議でしかたないんじゃが……」
「強ければなれるからそこまで難しいものではないさ。魔王にならないのならこのままアトラカナンタを魔王にしておけ。襲って来た魔神達は人とは敵対派の連中だ。トップが変わればまた襲撃されるかもしれないからな」
「それはカナタンでも同じなのでは無いか?こやつも人間嫌いじゃろ?」
「いや、私は昔話を聞いたからな……そこまで人間が嫌いではないな。それにお前はアトラカナンタと戦っただろ?どうだった?ミューラッカより強かっただろう?」
ルディールはアトラカナンタと戦った時の事を思い出し、ミューラッカの方が劣るとは思わなかったが、間違えば確かにその攻撃は命に届くと言った。
「それだけで十分に魔王の素質はあるさ……では、そろそろ向かうか」
「ミーナとルミディナはどうする?城まで行けばセニアやリージュがおると思うんじゃが一緒に行くか?」
そう尋ねるとミーナは少し考えて目立つのは避けたいからルミディナと別で城に向かうと言ったのでルディールは頷いてから魔王と空に飛び上がりまだ起きないアトラカナンタを連れ城へと向かった。
城へ向かっていると魔王がルディールに話しかけてきた。
「ルディール。私の事はややこしくなるから親とでも言っておけ」
「見た目的にはねーちゃんの様な気がするがのう……」
そういうと魔王は笑いながらルディールと同じ短い髪を魔法で伸ばし腰までかかる長い髪に変えた。
これで少しは親に見えるだろうとまた笑っている魔王をルディールは不思議に思い、同じ人物だがどうして別の世界の自分にここまでしてくれるのかを尋ねた。
すると魔王はその場で止まり、ルディールの目を見ながら、自分の娘が世話になり妻を救ってくれた恩人の助けになるのなら喜んで手を貸すと言ってくれた。
「これぐらいならたやすい事だ。お前が世界を滅ぼしたくなったら声をかけてくれればいつでも手助けするぞ」
「せぬわ!自分に言うのも変なもんじゃがありがとう」
「ああ、気にするな。所で……アトラカナンタよ。いつまで狸寝入りをしているつもりだ」
魔王がそういうとアトラカナンタがもぞもぞと動き、いつもの様にあはっという口癖を言ってから話しかけた。
「あはっ?いつから気がついてたの?」
「さあな。話は聞いていただろう?お前が引き続き魔王だ。頼んだぞ」
アトラカナンタは魔王を何度か上から下まで見てから質問をした。
「君って別の世界のルディールなんだよね?魔王を続けるのは構わないけど人間に殺されるのは嫌だよ?」
「お前が殺される事になったら私が助けてやるが……そうはならん。戦争を仕掛けたのはお前達だが……魔神の方が強者だからなそこまで強くは言えまい。今のローレットならルディールやミューラッカさえいなければ魔神が10もいれば落ちるからな」
「じゃがそれじゃと……ローレットがやられ損になるじゃろ」
「ああ。だがある程度は仕方ない。今回はたまたま勝てただけだが、お前がナイン・アンヘルを使わなければ負け戦だ。だが……ローレットには魔法の提供と鉱山の採掘権をやっておけ」
「ん?何処の鉱山?未来のルディールって話だけど地理は同じなんだよね?」
アトラカナンタがそう尋ねると魔王は山の名前を言ったが魔界には一度しか行ったことの無いルディールは蚊帳の外だった。
「まぁ魔族達も放置してる山だから別に良いけど……」
「お前達、魔族はイマイチ使わないだろうがあそこにはオリハルコンの鉱脈や他の鉱石、魔石が大量に採れる。それこそ今回の事でもお釣りがくるほどのな」
「それなら別にいいか……魔族も人間に何か奪われるのは我慢ならないだろうし。でも人間は魔界に来られないし来られても大変だと思うけど?」
アトラカナンタがそう言ったのルディールがどういう事か尋ねると、あの山は長い間放置されててドラゴンや高位の魔獣が住み着いているから魔神はともかく並の魔族は近づかないと教えてくれた。
「後は人間しだいさ。ここまで好条件をだして反発するなら私の世界の様にいずれ滅ぶ」
「あはっ。同じルディールの筈なのに魔王の方が落ち着いてるね。こっちのはガキっぽいのに」とアトラカンタはルディールに殴られた頬をさすり落書きを消しつつ文句をネチネチと言い始めた。
「動けないバカナタンの事は放っておいてさっさと行くかのう。十年ぐらい牢屋にぶち込む様に頼んでおくわい」
「十年って……君の方が馬鹿じゃないの?」
「言葉の綾も知らぬお主が馬鹿じゃろ」
喧嘩を別の世界の自分と信頼できる魔神の口喧嘩をルディオントは眺め、この世界は大丈夫だなっと呟くと街での戦闘が終わった事で王女達が外に出てきていたのでその近くに降り立った。
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