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第178話 メイドと執事

 ルディールの転移魔法で中央都市のリノセス家に送ってもらったスナップは、すぐにスイベルを呼ぶと王都にもいたはずのメイド長がここにもいた。


 その事を詳しく尋ねようと思ったが、時間が勿体ないので王都の状況を説明し中央都市の状況を尋ねた。


「そうですか……ありがとうございます。それでこちらから連絡が出来ない訳ですね。中央都市は魔法は使えますが……何体の魔神がいるかは不明です。中央都市に城はないので各ギルドやリノセス家の様な貴族の方々が民間人を保護しています」


「分かりましたわメイド長様。わたくしとスイベルで都市内を回り逃げ遅れている人達がいれば連れてまいりますわ」


「分かりました。スナップさん、スイベルさんよろしくお願いします。武装メイド達をお供に連れていってもらえれば良いのですが……今はリノセス家を守るのと情報収集で一杯ですので……」


「そのお気持ちだけで十分ですわ。では行ってまいりますわ」


 スナップがそう言って部屋から出て行こうとすると、メイド長が思い出したかの様に呼び止め話しかけた。


「そうそう、スナップさん」


「なんですの?」


「バルケさんを護衛として雇っていて、玄関の辺りにいると思うので連れていっても大丈夫ですよ」と言って普段あまり笑わないメイド長が笑っていたので、スナップは吹き出ししばらくむせてから礼を言って玄関へと向かった。


 玄関に行くと大剣を背負った剣士が難しい顔をしながら外を警戒しておりスナップ達の気配に気がつくと少し表情が柔らかくなった。


「お?スナップとベルベルか……どうしたんだ?」


「どうしたんだ?ではありませんわ。街の人達を助けにいきますわよ」


「はぁ?確認が出来た魔神は五体ほどだぞ?この広い中央都市にどれだけいるか分かって無いのにいくのか?」


「ええ、王都は現在魔法が使えませんから増援は期待できませんが、かといって出来る事をしないというのは何か違う気がしますわ」


「おまえな……」


「それでバルケ様は一緒に来てくれないんですの?」


 スナップがそう言うとバルケは頭を掻き大きくため息を吐いてから分かったよと言ってからスナップ達に同行する事になった。


「義兄さんは姉さんの尻に敷かれるタイプですね」


「誰が義兄さんだ!」


 等と話しながらスナップ達が外に出ると王都ほどひどくはなかったが、それでも至る所から煙や炎が上がっておりスナップはその光景に息をのんだ。


 バルケに大丈夫か?と心配されたので、大丈夫ですわと力強く返事をし、歩を進めながら見上げ、上空に佇むエアエデンを確認した。


「これだけ人がいないと好都合ですわね……エアエデンの砲撃は使えないとしても、その他の機能は使えますわね……スイベル。エアエデンの索敵はどうなっていますか?」


「はい、数人の私で中央都市を調べていますが……もうすぐ終わります……終わりました。魔神と思われる魔力反応は十ですね……いえ。何かが高速で接近しているので正確には十一ですね」


「思った以上に多くはないですわね……分かりました。全てのスイベルを呼びますわ。一人はリノセス家に報告に行き残りは全てここに来なさいですわ」


「それだと魔神の索敵が出来なくなりますが……」


「一度、索敵してある程度の数が分かったのでそれで十分ですわ。実際に魔神の強さがイオスディシアン様ほどでしたら余力を残して戦えるものではありませんし」


 バルケも同じ事を考えていた様で、少し前にPTを組んで坑道を調べた虫の魔神の事を思い出していた。


 反対する理由もなかったのでスイベルは分かりましたと言ってから六体のスイベルをエアエデンから転送させたので、それなりの人数になり瓦礫の下や建物中にいる人の救助や消火活動を行い数は少ないが召喚された魔物を駆逐していった。


 救助を始めると冒険者達も街に出ている様で情報交換を始めた、そして残りのスイベルも合流できたので、冒険者達は同じ姿のメイドが多数いるので不思議なものを見るような顔をしていた。


「分かった。じゃあ俺達はその事を冒険者ギルドに伝えに行くが、その怪我人達はどうする?連れて行ってギルドで治してもらおうか?」


「ああ、頼む。こっちは回復はポーション頼みだからそっちに回復魔法持ちがいるなら任せたい」


 同じ冒険者どうしで付き合いのあったバルケが助けた人達を任せ、また新しい救助者を探しに向かった。


 冒険者達と別れ被害の多い区画に入っていくとバスケもスナップも近くに魔神の気配を感じいつでも戦闘をとれる体勢を整え息を潜めた。そしてけたたましい音と共に目の前の屋敷を破壊して二体の殺し合う魔神が現れた。


 一体の魔神が足の下にいる魔神に剣を突き立てると急所を貫いたようで崩れる様に負けた魔神は消えていく。


 そしてその虫の様な魔神と目が合うと話しかけてきた。


「なんだ……知っている気配がすると思えば、お前達か」


「デシヤン様!どうしてここに!」


「まぁ……いいが、ルディール様のように略して言うな。久しぶりだなスナップにバルケだったな。そこの同じ顔は?」


 スナップ達は虫の魔神イオスディシアンと再会したのでスイベルが妹である事を伝え、王都であった事を話した。


「別にいいが……私が敵だったらどうするつもりだ?」


「敵なんですの?魔神を倒していましたし……ルディール様と敵対するおつもりで?」


 そう笑ってからスナップが言うとイオスディシアンはため息を吐いてからお前も大変な奴を嫁にしたなとバルケを哀れんだ。


「まだ嫁じゃねーよ!」「まだ嫁ではありませんわ」


 そう二人が同じタイミングで言ったのでイオスディシアンもスイベルも大きくため息をついてから話し始めた。


 数日前に鉱都ヘルテンで穏健派の魔神に出会い話を聞くと、新しく魔王になったアトラカナンタが王都をメインに周辺に攻撃を仕掛けると情報を流されたのでルディールに加勢する為に急いで来たと話した。


「えっ?と言う事はリベット村までは飛空艇できたんですわよね?」


「ああ、ここから鉱都までは遠いからな。マジックアイテムで人に擬態してお前が今言った村まできてそこから飛んで来たという訳だ」


「でっでしたらリベット村はどうなっていましたの!?魔神の襲撃は!?」


 スナップもルディールと同じ様にリベット村が第二の故郷になっていたので村の人達の顔を思い出し、かなり動揺しながらイオスディシアンに詰め寄った。


「お前が自分の目で見た物しか信じられんと言うなら別だが、あの村は大丈夫だ」


 その言葉の意味がスナップ達にはイマイチ分からなかったが嘘を言っている感じでもなく、気にはなるが気にかける程の余力がなかったのでその言葉を信じる事にした。


「村の事は気になりますが……今は余裕がありませんわね」


「ああ、そうだな」


 スナップが金色のガントレットを装着し、バルケが大剣を構えるといつの間にか数体の魔神に囲まれていた。


「昔からいる魔神では無いがそこまで弱い訳でもない。気を付けろよ」とイオスディシアンが言い、近くの魔神に斬りかかると戦闘が始まり、スナップに四人のスイベルがつきバルケにも四人のスイベルの補佐がついた。


「さてと……相手は魔神ですわね」そう言ってスナップが耳に手をあてぼそぼそと何かを話した。


 そして魔神相手にスナップが前にでてスイベルが援護をする戦い方をしたが負けるまでは行かなかったが少し押され気味の戦闘が続いた。


 一瞬の隙をつきスナップのロケットパンチが魔神の顔に直撃し、そのまま少し吹き飛ばすとそのタイミングを待っていたかのように空から一本に光が降り注ぎ魔神を包み込み蒸発させた。


 バルケも少し危なかったがスイベル達が魔神の気をそらした瞬間に真っ二つにたたっ切りそのまま勝利したが、なぜかバルケを狙う様に空から連続で魔神を消滅させた光が降り注いだ。


「おい!スナップ!なんで俺を狙うんだよ!」


「あっあら?スプリガンの遠距離武器で狙撃させていますから狙いがそこまでそれる事はないのですが……」


「明らかに俺を狙ってるぞ!あのゴーレムもどきだろ!」


「義兄さん……嫌われているのでは?」


「嫌われる様な事した記憶がねーわ!」


 そのまま何回かバルケを狙う光が降り注いだが、ようやく諦めたようで、中央都市のいたる所に同じ様に光が降り注いだ。


 イオスディシアンの方も苦戦する事も無く終わったようで空から落ちてくる光について尋ねた。


「あれはなんだ?」


「援護射撃ですわ。知り合いですから警戒しなくても大丈夫ですわ」


「……バルケが狙われていた様に見えたが、まぁいいか」


「よくねーわ!」


 バルケとイオスディシアンが騒いでいるとエアエデンのスプリガンから確認された魔神をほぼ消滅させたと信号が届いた。


「という事は残りを倒してしまえば王都の援軍にいけますわね」


 スナップがそういったが事情が分からないバルケとイオスディシアンにスイベルが説明すると二人とも全く納得のできない顔をしていた。


「言いたい事もあのゴーレムもどきの事も知ってるが……何か納得できねー」


「私はそのスプリガンとか言うのを全く知らないからさらに納得いかない訳だが?」


「そうは言っても仕方ありませんわ。敵に容赦している時間もありませんし、ささっと残りを倒しますわ!」


 スナップがそういって手を上に上げると、後ろから何の気配もなく手を叩く音が聞こえた。


「お見事ですな。魔王様から空に注意しておけと言われていましたので、気にはしていましたがあのような攻撃方法がございましたとは」


 執事の様な男に敵意が全くなかったのでスナップもバルケも少し油断をしていたが、その男を知っているイオスディシアンだけは明らかに警戒し周りに虫を多数召喚しいつでも戦える状態を作り話しかける。


「バルスナとその妹……油断するなこいつはセルバンティスという初代魔王様の執事だった魔神だ。……それでセルバンティス。どうしてここに?」


「これはこれはお久しぶりです。イオスディシアン様。簡単に申し上げればアトラカナンタ様が新しい魔王になられまして人間界を攻めると言う事なのでここは私が受け持ちました」


「穏健派には簡単にしか聞いてないが、ラフォールファボスはどうした?」


 イオスディシアンがそう言うとルディールが魔界に行った話をスナップは聞いていたので協力者の事は伏せ、戦闘中だったので簡素に話した。


 自分より強者だったラフォールファボスが簡単に倒された事に驚き少し疑ったがセルバンティスからも本当ですよと言われたのでイオスディシアンは少し呆れ苦笑した。


「何というか流石だな……それでセルバンティス。一つ聞きたいがお前はルディール様と敵対するでいいんだな?私はルディール様側につくぞ?」


「私も魔神の端くれですし魔王様に従うのがお仕事ですから魔王様側ですよ。こちらも先ほどの攻撃で仲間がいなくなったので孤軍奮闘させてもらいましょう」


 セルバンティスはそう言って両手の手袋をもう一度はめ直した。


「お前達!気を抜くなよ!こいつは私より遙かに強い!」


 イオスディシアンは叫びそれが開戦の合図になったがセルバンティスはイオスディシアンですら反応出来ない速度で接近し即座に剣を持っていた手を切り飛ばしそのまま胸に蹴りを入れ中央都市の家を何軒も貫通し吹き飛ばした。


「虫使いなのですからあまり前に出るのはオススメしませんよ。一緒に来た魔神達ほど私は弱くありませんので」


 今のセルバンティスの動きを見て、スナップは自分達では勝てないと判断し即座にエアエデンのスプリガンにこちらに来るように指示をだした。


 だがスイベルの様に転送される訳ではないのでスプリガンが来るまでの長い時間が始まった。


 スナップは髪を赤く染めあげ八人のスイベルと共に人には追えない見切れない動きを見せたが、セルバンティスにはまったく通用せずルディールに買ってもらったガントレットも破壊され、一瞬で七人のスイベルも消滅させられた。


 バルケも閃光玉のようなもので一瞬のふいを付き斬りかかったが、届かずオリハルコン大剣は握り潰され片腕を失った。


「人間にしてはなかなか良い動きですが……もう少し命をかけないと届きませんよ?」


「バルケ様!大丈夫ですの!」


 そう叫びスナップはアイテムバックからハイポーションを取り出しバルケの無くなった腕にかけると生える事は無いが傷が塞がり血は止まった。


「すまねぇ!助かったが……なかなか骨の折れる相手だな……スナップ、スイベル!俺が前に出るから支援は任せたぞ」


 そう言ってバルケが腰の短剣を手に持ち構えると、セルバンティスの背後からイオスディシアンが首を狙って切りかかったが、片手で軽く流されまた蹴り飛ばされ次は地面に叩き付けられた。


「今は敵対していますが同じ魔神ですからね、殺しはしませんがこの戦いが終わるまではおとなしくしておいてください」


 それだけ言ってスナップ達では追えない速さで動き、バルケを片手で軽々つかみそのまま、スナップとスイベルに叩き付ける様に投げると、勢いが殺す事ができずそのまま建物を貫通し倒壊させ何とかとまった。


 スイベルはそのまま意識を失い、スナップとバルケが何とか立ち上がるととどめを刺すようにセルバンティスがゆっくりと歩いてきた。


 そして空から何本もの光が降り注ぎ、セルバンティスを後退させスナップ達から距離を取らせた。


 セルバンティスが空を見上げると一つ目のゴーレムにしては精練された物が宙に留まり、それとよく似たよく似た小型の物が辺りを囲み観察するようにせわしく目に当たる部分を動かしていた。


 そして数体が今まで戦っていたスナップ達やイオスディシアンを保護する様な動きをしてからメインカメラがセルバンティスを見つめ続けた。


「お名前もお伺いしても?」とセルバンティスが言った直後に高火力のレーザーを発射した。不意を突かれたセルバンティスは片足を失う。


「私の魔法障壁を軽々と貫通するとは……アトラカナンタ様が空から何か来ると言っていましたが」


 そう言ってから消し飛んだ足に力を込めると無くなった部分が再生しスナップ達やイオスディシアンには取らなかった戦闘姿勢をとり戦いが始まった。

次回の更新はたぶん明後日になります。そろそろ九章も終わります。


いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

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