第176話 炎の王都
「さてとリージュを助けに行くかのう……城からじゃと近いが向かう途中に襲われてる人がおれば助けて良いんじゃよな?」
「駄目です……とは言いませんし言っても助けるでしょうから早めにシュラブネル家に行ってもらえれば大丈夫ですよ」
そう言うとスティレも同じ様な事を尋ねたので王女は倒せそうなら倒しても良いですが、火食い鳥の皆様はAランクなのでいくらソアレさんが強いと言っても無理をせず学生達をお願いしますと言った。
「黒点や採光が寮の護衛もしていた筈ですしノーティア様もいるのである程度の戦力は確保できているので無理はしないようにお願いします」
「分かりました。城が落ちる事があってはならないですが……王女様もお気を付けて」
「それを言い出したら何も出来ませんからね。城は落ちませんよ」と少し不安そうだったが笑いながら王女はそう言った。
一人の少女を不安にさせる事を少し躊躇ったが言っておかねばならない事があったのでルディールは二つほど王女に伝えた。
「王女様よ、魔法が使える様になってわらわ達が通信に出られない時は……わらわも火食い鳥達も死んだと思って行動するようにな。それともう一つじゃが転移魔法が使える宮廷魔導師がおったじゃろ?あれの近くにお主も国王もおるように、危ないと思ったらリベット村にすぐ逃げる事」
「リベット村ですか?」
「うむ……この際じゃから言うがわらわの家にコックと動く花がおったじゃろ?」
「あの少し怖い感じの料理上手なコックさんと畑に咲いてる花ですよね?それがどうかしましたか?」
「どちらもわらわがやり合いたくないぐらいには強いから避難場所としておけ」
「はい?……本当ですか?」
ルディールは内緒じゃぞと言って人差し指口に持って行き片目を瞑ったが、王女も火食い鳥もイマイチ信用していなかったが、この場でつく様な嘘ではないので分かりましたと言った。
「この戦いが終わったら色々!詳しくききますからね!ですからあまり不吉な事は言わないでください!……後、セニアにもう一度会ってから行ってくださいね」
ルディールはわかったわいと言ってから火食い鳥達と部屋を後にした。
「……ではルディールさん。また後でお会いしましょう」
「ん?お主達はセニアの所にいかんのか?」
「セニアとは今生の別れって訳でもないから別にいいわよ。早く寮の子達を助けに行ってあげないとね」
「とはってなんじゃとはって」
そう言うとカーディフがじっとルディールを見つめていた。
「ルディ、絶対に無茶したら駄目よ。いくらアンタが強くても余裕があるうちに逃げなさい」
「いつもの勘か……うむ、その辺りは心得ておるわい」
カーディフは大きくため息をつきながら本当に分かってるのかな~とソアレを先に門の方に向かった。
その後でスティレがやって来てルディールにこの戦いが終わったらまた魔法を教えて欲しいと頼んだので、ルディールも快く了承し火食い鳥達と別れた。
そしてセニアを探して先ほど別れた場所に行くとマジックテントが沢山立っており、メイド達に護衛されるようにセニアが空を眺めて心配そうにしていた。
その姿にルディールの悪戯心が刺激され、先に気がついた武装メイド達にセニアに黙っているように手を合わせてお願いし、獲物を狙う獣の様に静かに後ろから近づいた。
そして射程内に入るとルディールはセニアに後ろから飛びついた。
「うむ、セニアゲットじゃな」と言って優しく抱きつくとセニアは慌てに慌て顔を真っ赤にしたがルディールの手に自分を重ねた。
「怖いじゃろうと思うが……何とかなるじゃろ王都の人達も皆強いからのう。それにしてもお主は温かいのう」
「そっそれはルディールさんが抱きついているからであって……」
「さてとセニアを満喫したしシュラブネル家を助けにいってくるかのう……公爵や夫人は?」
そう尋ねると父は国王の所にいき、母は魔法使いなので装備を整えてから城壁を守る為にあそこにいますと言って門の方を指さした。
ルディールはセニアの不安と取り払うように後ろから優しく話かけ分かる範囲での事を伝えた。
「ありがとうございます……それとアコットは少し疲れたようでそこのマジックテントで寝ているので良ければ撫でて行ってやってください」
「うむ……分かったわい。後ソアレ達が学園の寮生達を助けに行っておるから、その内ミーナやクラスメイト達が来るじゃろうから少しは気が紛れるじゃろう」
「分かりました。リージュ様をよろしくお願いします。ルディールさんもお気を付けて校内戦では私が優勝しますからルディールさんに願い事を叶えてもらわないと駄目なので」
そう行って笑うセニアの笑顔にルディールは少しドキッとしたので笑って誤魔化してから、テントの中のアコットを撫でて、ルディールは大きく跳躍し城壁の上に飛び乗った。
その場所から見渡すといたる所から炎があがり美しかった王都が見る影もなくその光景にルディールは唖然とし血が滲むほど拳を強く握った。
「自分で怪我をしていれば世話はないわい。ここまでやっておる相手に容赦はせんでええじゃろ……さてとリージュの家の方角はこっちじゃな」
そう言ってからシュラブネル家がある方角を見ると幸いな事にまだ火などは上がっていなかった。その事で少し安心しルディールは城壁の上から飛び降り屋根の上を飛ぶ様に跳ねて向かった。
(見慣れたゲーム召喚獣もおるがまったくしらぬ魔物も召喚されておるか……)
シュラブネル家に向かう途中、近くで戦闘音が聞こえたのでルディールは少しだけその方向に飛ぶと足下で騎士や冒険者達が街の人々を守り魔神と召喚された魔物と戦っていた。
蝙蝠の様な魔神は空を飛び、魔法が使えない冒険者や騎士達は苦戦を強いられいたので、調子に乗っていた魔神は接近するルディールに全く気づいていなかった。
漫画とかじゃと不意打ちする時に叫ぶ奴がおるが……普通はせんよな?等と考え静かに魔神の背後に回り込み、正確に急所をつき魔石を引き抜き、自分が死んだ事も分からないまま魔神を絶命させると召喚された魔物も消えていった。
いくら魔法が使えないとはいえルディールの身体能力はこの世界では他の追随を許さ無いほど高いので、よほどの相手でない限り負ける事はあり得なかった。
そして冒険者と騎士の前に降り立ち話しかける。
「大丈夫か?怪我人がおるならポーションぐらいならあるが……急ぎじゃからのう」
そう言うと一人の騎士が前に出て話しかけて来た。
「ご助力感謝する。まだこちらに怪我人はいないので大丈夫だが、貴女は……確か……」
「名も無き魔法使いじゃが……現状はローレット・シェルビア王女様の直轄の部隊で動いておる。今はシュラブネル公爵達の安全確保の命令で動いておる感じじゃな。まぁそれを証明する物は持ち合わせておらぬから。城までいけば確認出来るとおもうが」
「いえ、こちらも助けて頂いた身なので疑っている訳ではありません。ただ魔法も使わずに魔神を消滅させる者がローレットにいたのかなと驚いていた所です」
そう言われたのでルディールは余計な事を言わずに後の事は王女に任せようと思い、騎士や冒険者達に現在魔法が使えない事の原因を教え、少しの間タイムラグがあるので魔法を使いたければその間だと伝えておいた。
「それで先ほど少し魔法が使えたのか……」
「うむ。魔力を使う物は駄目じゃな。狼の姿をした魔神さえ倒せれば使える様になると思うが……かなり厄介じゃからのう」
「情報ありがとうございます。他の騎士や冒険者達もその魔神の情報を伝えるようにします」
その騎士の何というか頭の柔軟さに少し驚いたが自分が屋根と飛んで来た方向に戻れば魔神はいなかったと伝え、その騎士達に別れを言ってからルディールはまた屋根の上に飛び乗り駆けるるようにリージュの家に向かった。
「魔法も使えないのに……どんな身体能力だよ」と先ほどの騎士とは別の騎士が驚いていたがルディールと会話していた騎士が自身の部下に教えた。
「あの人は単体で陛下直轄の者や宮廷魔導師、王宮騎士をまとめて相手にできる人だぞ。前に陛下の前で戦っていたのを見たが……圧勝だったぞ」
「……そういえば前に言っていましたね。角の生えた魔法使いがどうのこうの……それなら頼もしいですね」
「うむ。我々も先を急ぐぞ」
「「「はっ」」」
ルディールは知らなかったが騎士はルディールの強さを知っておりその力が味方側だと言う事に少し安心し心に余裕ができたので民間人達を守りながら城へと急いだ。
(次、魔法を使えるようになったら試したいが……狼の咆哮を喰らうと消えるからのう。ネルフェニオンを先に倒すしか無いか……)等を考えて屋根上を走り見かけた視界に入った魔獣を倒しながら進むとシュラブネル家が見えてきて、敷地には大量の魔獣の死骸などがあった。
急いで屋敷まで向かうと傭兵や前に見た屈強な門番達がシュラブネル家を守っていた。
「おい!なんだお前は!」と傭兵がルディールを見て叫びすぐに戦闘態勢を取ったが、良くも悪くもルディールに見覚えがある門番がおり、リージュの友人だと言う事を知っていたので特に何かを追求することも無く通した。
その事でルディールは礼を言ってから怪我人などの事を尋ねたがシュラブネル家から回復薬等を提供してもらっているので今の所は大きな怪我人もいないと話した。
そしてリージュ達がいる場所を教えてもらうとすると、いつの間にか話がいっていた様で、執事がこちらですとルディールを出迎えた。
「執事殿、久しぶりじゃな……怪我人とかはどうなんじゃ?」
「今の所は大丈夫ですが……近くの貴族や民間人達をシュラブネル様のご指示でこの屋敷に匿い助けるのに使ったので、このままではいずれ尽きるかと……それで?ルディール様はどうしてここに?」
自身がシュラブネル家の人達を心配していたのと、王女様の部隊になったのでシュラブネル公爵達を安全に城まで送り届ける任務中だと話すと執事はありがとうございますとルディールに頭を下げた。
そして扉の前までやってくるとノックすると返事があったのでルディール様が王女様の使いでやって来ましたと執事が言うと中から入れと声が聞こえた。
ルディールと執事が中に入ると、リージュとシュラブネル夫妻。そしてルディールが見ても分かるほどの強者と思われる傭兵の四人がいたのでここに来た経緯と魔法が使えない理由を伝える。
「分かったがすぐには城に向かうことはできんぞ。まだここに避難してくる連中もいるだろうからな」
見た目はどうみても悪役の公爵なのに言う事はまともなんじゃよなー等とかなり失礼な事を考えているとリージュにルディールさん顔に出ていますからねと呆れられ夫人には笑われていた。
「かと言ってここでずっとおる訳にも行くまい。魔神達もここが目的で襲ってくる訳でないと思うが……その内に回復薬もつきるんじゃろ?」
「言われなくとも分かっているが……お前に言われるのは何か癪だな」
シュラブネル公爵はそう言うと夫人と娘のリージュとここに避難している連中を連れて城に行けといい自分と傭兵や門番はここに残ると話した。
「お父様!それは!」
「リージュ黙っていろ!これは決定だ」
揉め始めると近くにいた護衛の傭兵も付き合いが長いようでまたか……と少し呆れていた。
そして少しルディールが考え事をしているとタイミング良く魔法が使える様になった。
「そういう訳だ。そこの人の話を聞いてない角付きわかったか?」
「うむ。聞いて無いから分からんし、リージュの頼みなら聞くがお主の頼みは聞かん」とシュラブネル公爵を煽った。
そういうとシュラブネル公爵のこめかみにお血管が浮き上がりいつでもキレる準備が整った。
「貴様!」
「この戦いが終わったら夫人と娘に味方をしてもらうからわらわの勝ちじゃぞ公爵。おやすみ……スリーピング」
そう言って魔法を唱えると公爵は寝てしまい静かになったのでルディールがすぐに行動にでた。
「リージュよ。聞きたい事もあるじゃろうが……先に転移する」
「え?この部屋にいる人だけですよね?他の方々は」
ルディールは任せておけと言い親指を立てたあとに転移魔法を使い、シュラブネル公爵家の敷地内の全ての生き物を影の中に引きずり込んだ。
そしてそのまま城の庭に転移して、先に一人だけ影の中から現れ十分に広さを確認してから少し選別してから飲み込んだ生き物を影から吐き出した。
「うむ成功じゃな。お主の家は猫とかおったんじゃな」と言うと何が起こったか分からないリージュは少し慌てたが、ここが城の中だとすぐに理解し、執事に伝え、慌てる人達に伝える様に指示した。
その猫はシュラブネル夫人が飼っていたようでルディールの手から抜けでて夫人の元に行くとリージュが話しかけて来た。
「ルディールさん今の転移魔法ですよね?」
「うむ、シャドーステッチとの複合技じゃがな……夜ならわらわの魔力も相当あがるからのう。説明する間に魔法を無効化されてもたまらんから強行してきた訳じゃな。陛下や王女にはシュラブネル公爵の頭脳がいるじゃろうし」
「そうですか……かなり強引ですが……ああでもしないと父はずっと残るでしょうからね。すぐに起きますか?」
「そこまでキツい魔法では無いし弱くかけておいたからその内起きるじゃろ。その前にわらわは行くから後で面倒くさい事にならぬようにリージュと夫人に頼んでよいか?」
リージュは少し呆れながらだが分かりましたと笑い、夫人も頭を下げた。
リージュはルディールにこれからどうするか?を尋ねるとお主達の救出が終わったのでソアレ達の援軍に行き魔神の殲滅じゃなと答えた。
するとあまり時間がないので引き留める事はしませんがと言ってからルディールの手を優しく握った。
「ルディールさん……本当に気を付けてくださいね」
「うむ。無事に帰って来るから安心せい」
と言って少しの間見つめ合っていると横からちゃちゃを入れるように先ほどの傭兵が話しかけてきた。
恋仲を邪魔する様で悪いがと言ってきたので無視して話を聞くと自分を含めて何人かの護衛はシュラブネル家に戻してくれと言い、理由を聞くと公爵が逃げ遅れた人達の事を気にしていたので自分達がシュラブネル家から城まで護衛をすると言った。
「分かったが……死ぬかも知れないがええんじゃな?」
「ああ、シュラブネル様に助けられた命だ。ここが使い所だろ」
そう言って二十人近くの傭兵が集まったのルディールはリージュに後の事は任せると言ってからまだ魔法が使えたのでもう一度シュラブネル家に飛んだ。
そして傭兵達に別れを言い先ほどの魔法で引きずり込んだ小動物なども庭に離してから空へと飛び上がった。
「まだ魔法が使えるのか?ネルフェニオンが戦闘になったか倒されたか?じゃったら今がチャンスじゃな……街で無ければ隕石おとしたり小惑星を爆発させたり出来るんじゃが……それやると街が無くなるからのう……っと……お出ましか」
ルディールは少し離れた背後に見覚えのある気配とラフォールファボス並の気配が五つも感じたのでゆっくりと振り返ると……その姿を確認し言葉を無くした。
「あはっ!ルーちゃんお久しぶり。いい体が手に入ったから自慢しに来たのと決着を付けに来たよ」
声はアトラカナンタだったがその体はミーナ・ルトゥムの物で背中から六枚の水の翼と竜のような尻尾が生えていた……
次回からソアレとかスナップとかリベット村辺りの場面に切りかわる事もあるので少し読みにくいかも知れませんがご了承くださいませ。次回の更新は上手くいけば明日です。
いつも誤字脱字ありがとうございます。




