第171話 出来る事から
ソアレが起きてから一緒に学園に借金を返しに行こうと思っていたが、なかなか起きてこないのでルディールはミーナとセニアと魔法で遊んでいた。
「う~む……魔力的には余裕なんじゃが、この辺りが限界かのう」
そう言ってルディールが周りを見渡すと影で出来た百を超えるネズミがいた……
「ルディールさん……流石に一度消しませんか?魔法とはいえこれだけのネズミがいるのは……」
魔法とは分かっているのだが真っ黒けのネズミが大量に足下にいるのでセニアもミーナも少し気持ち悪くなっきたので、ルディールに頼んだがルディールはもう少し我慢する様に二人に頼んだ。
「かわいいとも思うが言いたい事もわかる……まぁもう少しの辛抱じゃから我慢するのじゃ」
そう言ってルディールは言葉に出さずに心の中で命令するとネズミ達は隊列を組んだりとルディールの命令を聞き、思い通りに動かせた。
「たぶんじゃが……大丈夫じゃろう。一度試しに町中に放つかのう」
魔法で作られたネズミ達に命じると影の中に潜っていき消える様に街中へと散っていった。
「ほっ……魔法だと分かっていてもルーちゃんのネズミさんはちょっと怖い。リージュさんのは可愛いんだけど……」
「ミーナよ、それは差別じゃぞ!」
「それで、ルディールさん。今のネズミさん達に何を命じたんですか?」
「うむ。人が行方不明になっておるじゃろ?その原因を探ろうと思ってな。街中に放った訳じゃな。なにかあればネズミ達から何かしら連絡があるから、そやつと視覚共有して原因を探ろうって感じじゃのう。あれ以上増やすとネズミ達からわらわに連絡出来ない感じじゃからな」
「そうなんですね……ネズミが嫌いな訳ではないですが、流石にあれだけの数がいると寒気がしますね」
「ん?限界まで出してやろうか?ネズミの形にするだけなら簡単じゃし」
「「絶対に止めて!」」
「しっかし、なかなかソアレが起きて来ないのう……まぁ昨日やり合ったからかなり疲れておるか……その事も聞きたいんじゃが」
そんな事をのんびり話ながらゆっくりしているとスイベルとスナップが起きてきて続くようにスティレ、カーディフそして最後に眠たそうにソアレが起きて来た。
ソアレになかなか起きてこなかった理由を尋ねると、ルディールと戦った事でまた少しコツを掴んだので変身時間を延ばせる方法を思いついたのと壊した講堂建て替え費用を出してもらった事を考えていたので寝るのが遅くなったと話した。
「という訳で……どう考えても返せないのでルディールさんお言葉に甘えさせて頂きます。ルディールさんが体で返せというなら喜んで返しますので、是非、体で返せと言ってください」
ソアレが朝から変な事を言ったので全員が呆れているとルディールが先ほど放ったネズミから連絡が入ったので、すぐに視覚を共有するとローレットの紋章が入った馬車が砂煙を上げながらこちらに向かっていた。
その事でルディールはとても嫌な予感がしたので皆に相談を持ちかけた。
「……のう皆の衆よ、嫌な予感がするからここでは無い何処かにいかぬか?ミーナはウェルデニアとかヘルテンに行った事はないじゃろ?行かぬか?灯台の街でも良いが」
「そうね……ルディ。私も嫌な予感がするわ……エアエデンが確実だけどヘルテンも良いわね!さっさといきましょう!」
「え?行った事ないから行って見たいけどルーちゃんもカーディフさんもどうしたんですか?」
もの凄い勢いで王族の馬車がこちらに向かっているので、今なら知らない振りをして逃げられると伝えるとソアレとカーディフは賛同してくれすぐに準備を始めたが、ミーナ、セニア、スティレは流石にダメだと賛同組を引き留めた。
「止めるでない!さっさと逃げるに限るじゃろ!出会ったら最後というパターンもあるんじゃぞ!」
「そうは言うが、ルディール殿、吉報かもしれないし行方不明者の事を教えに来てくれたのかも知れないぞ」
「そうだよ!ルーちゃん!」
そう正論を言ってきたのでルディールは感情論で言い返した。
「お主等!本当に元護衛と友人か!?王女様の事じゃからどうせ面倒くさい事になったから頭を下げて頼みに来るんじゃぞ!行方不明の事とかじゃったら城に呼ぶはずじゃぞ!わらわの事は信じなくてよいが!今まで助けられたカーディフの勘を信じなくてどうする」
「ルディールさん、それはそうかもしれませんが……王女様がいらっしゃるのに何処に行くと言うのは……」
「セニアよ、前に王女に聞いたじゃろ?本音と建て前は違うんじゃから大丈夫じゃ!ゆくぞ!皆の者!デシヤンを紹介してやるからヘルテンじゃ!」
反対する友人達を押し切りルディールは転移魔法を唱えようとした時にはすでに王女様がリノセス家に到着していたようで、ルディール達は王女直轄の暗部に包囲されもの凄く申し訳なさそうに頭を下げられた。
「……ルディール様、本当に申し訳あ……り……ま」
「動けんじゃろ!頭を下げられたら聞くしか無いからのう!聞く前にお前達の体の自由を奪わせてもらった!影の中に潜んでいる連中も動けまい!」
十数人いた暗部の手練れ達の動きを封じたのでルディールを知らない者は恐怖し、知っている者からしてもこうも簡単に動きを封じられるとは思わなかったので驚きを隠せなかった。
続いて即座に拘束魔法で縛り上げ暗部達をその辺りに転がし転移門に入ろうとした瞬間に呼び止められた。
「るーちゃん、どこかにいくの?魔法を教えて欲しいんだけど」
その声がした方向を見るとそこにはアコットがおり、ルディールが書いてあげた魔法書を持っていた。
「うむ!少しヘルテンに行くからアコットにもお土産を買って来てやろう」
そう言ってアコットに近づき頭を撫でてあげ、アイテムバッグの中からデスコックが作ったクッキーを取り出し手渡してあげた。
その優しさが命取りに繋がったともしらずに……
そしてアコットに手を振ってから転移しようとすると王女様が身体強化魔法を使い、凄まじい勢いで走ってきてルディール目がけてタックルをぶちかましその場に馬乗りになった。
「ルディールさん!私を助けてください!」
「お断りします!」
「ありがとうございます!」
会話になっていない会話だったのでその場にいた全員が大きくため息をつき色々と諦めたが、アコットだけは王女様のタックルに拍手して凄い凄い!と喜んでいた。
王女に捕まったルディールは暗部達を解放してから席に着き、王女様からとてもとても面倒くさい話を聞いた。
「ほれ見ろ!わらわの言った通りだったじゃろ!絶対に面倒くさい事になったじゃろうが!」
本当に面倒な話だったのでスティレもミーナも素直にルディールに謝った……
「ルディール殿、カーディフ……すまない」
「ルーちゃん、ごめんね……」
「まぁ過ぎてしまっては仕方ないから王女様の記憶を消して屋敷の前に捨てるか?」
流石にその案は却下されたが、話を聞いていた王女はルディール達にお願いした。
「本当に申し訳ありませんが、私のわがままの為にお付き合いください!」
「絶対に嫌じゃ!わらわは忙しいんじゃぞ!学園には行かねばならぬし、ソアレと魔法談義せねばならぬし!王妃様とお茶は光栄な事かもしれぬが一般人からすればお茶の味なぞわからぬぞ!」
「大丈夫ですよ!一国の王女の頼みを断ったり、他国の女王を投げ飛ばしたりそんな事が出来るルディールさんなら大丈夫です!さぁ行きましょう!今すぐ!」
「自分の保身の為に仲間を売った様な奴の言う事など聞くわけないじゃろ!」
ルディールがそう言ったので、すかさずスナップからルディール様がそれを言いますか……と言って呆れていた。
ルディールが頑なに断るので見かねたセニアとミーナがルディールに行ってあげてもいいのでは?と他人事の様に言っていた。
「えっ?ミーナさんもセニアさんも他人事の様に言っていますが、火食い鳥の皆様ごとお城へゴーですよ?」
その言葉で全員が慌てだしどうしよう!阿鼻叫喚し始めた……
「わっ私も行くのか……元護衛だけに気まずいな……」
「だから言ったのよ……」
「……引く事も覚えましょう。リーダー」
「セッセニアどうしよう!」
「わっ私は何度かお会いしているから……」
「と言う訳で王女様よ諦めよ!友人は大事にせねばならぬぞ!」
「ルディールさんがそれを言いますか!スナップさんを私に売りましたよね!?」
収拾がつかなくなり始めたのでスイベルが冷静にどうしましょう姉さん?と尋ねるとスナップはため息をついてからルディールの援護をした。
「王女様、たしかに周りから見ればルディール様が保身の為に私を売った様にも見えますが、私は普段あまりルディール様のお役にたっていないので頼られた事を嬉しく思っておりますわ」
「いや、スナップは役に立ちすぎじゃろ……」
「ルディール様も本気で王女様の事がお嫌いでないのなら、お茶をするだけですし頼みを聞いてあげても良いのでは?」
「王妃様じゃぞ?何を話せと……」
「そこは王女様の腕の見せ所ですわ。と言うよりルディール様もお話好きですからなんとかなると思いますわ」
スナップにそう言われ、なんだかんだで王女様にはお世話になっているし嫌いになる理由も無いので少し考えてからルディールは王女に伝えた。
「王女様にも世話になっておるからのう……しかたない諦めて行か……」
ルディールがそう言うと王女様はスナちゃーん!と叫びならがスナップに抱きつき喜びの涙を流した。
「お主等、いつの間にそんなに仲良くなっておったんじゃ……まぁ良いか。それで王女様よ、お茶会はいつなんじゃ?」
王女様はスナップの胸を揉んだりとセクハラしながら答えた。
「はい!早い方がいいと思いまして今日の午後です!……スナップさんスタイルいいですね」
その言葉に全員が選択を間違ったと心を一つにし色々と諦めた。
「皆さん、そんな嬉しそうな顔しなくても大丈夫ですよ!リージュとバルケさんはすでに確保済みです!スナップさんやったね!」
「スナップよ、一発ぐらいなら殴ってよいぞ?」
「わたくしもそう思いますわ……」
「そんな事言わないでくださいよ!チョメチョメした仲じゃないですか!」
「していませんわ!」
等と話しながら行く事が決まり準備する時間はあったのでミーナは制服に着替える為に寮に向かい、ルディールとソアレは返済の為に学園に向かい王女様は城へと戻って行った……とてもいい笑顔で。
ルディール、ミーナ、ソアレは方向が同じだったのでリノセス家を出て目的の場所に向かいながら話をしていた。
「大変な事になったね……制服でいいのかな?」
「うむ、制服が一番良いと思うぞ。前に謁見した時も制服じゃったしな」
「私も学生時代に国王様や王妃様にお会いした時は制服だったのでそれで良いと思いますよ」
「服の話になると思うがソアレの魔法使いの服装以外が想像できん……ミーナはできるか?」
ルディールの変な質問にミーナは考えながらソアレを上から下まで見て何度も確認したが、想像出来なかったようで苦笑しながら無難に何を着ても似合いそうとだけ言っていた。
「それを言い出したらルディールさんも同じなのでは?と思いましたが……メイド服を着たり家庭菜園の時に作業服を着たりしていましたね」
そんな事を話していると先に寮の近くに来たのでミーナが制服を取ってくると行って別れたので、ルディールとソアレは学園に入って行き学長室へと向かった。
都合の良い事に学長は学長室にいるらしく、案内してもらった教師に礼を言ってからドアをノックし中へ入って行った。
そしてもう一度謝り用意した黒硬貨500枚を机の上に載せ、数えてもらい破壊した講堂代を支払った。
「分かりました。何度も怒るような事はしませんが金輪際あのような事はしないでくださいね。ソアレ・フォーラスに言うのは二度目ですが!」
「……はい。ごめんなさい」
「まぁ学園長という立場では怒りますが、魔法使いという立場なら見方は変わります。よく講堂の結界を破壊出来ましたね。ルディール・ル・オントさんでしたか?その名は知りませんでしたがさぞ高名な魔法使いなんですね」
「いえ、リベット村に住む自重できない魔法使いです」
「そうですか……ソアレ・フォーラス。あなたが卒業した時はどうなるかと思いましたが、良き友人達に恵まれたようですね」
「……ありがとうございます」
学園長はソアレの昔を思い出しながら三人で少しの間魔法の事などについて話し合い、よかったら魔法学園で教師をしませんかと二人を誘った。
流石に二人は断ったがいつでもお待ちしていますと言ってくれたのでルディール達は礼を言ってから学園長室を後にした。
学園から出るとミーナが待ってくれていたので、学園長と話した事を話ながら皆が待つリノセス家へと戻り。
そしてローレットの紋章が入った馬車が来たのでルディール達は乗り込み城へと向かった。
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