第166話 三つの手紙
何処かで噂をされていたのか、ルディールはくしゃみをしてから魔法が書かれた羊皮紙を読み始めた。
「……わからない事があれば聞いて頂ければすぐに答えますが、ルディールさんは読めば理解して覚えられるんですよね?」
「わらわがと言うよりは知恵と知識の指輪のおかげじゃがな」
「……真なる王の指輪といいましたか?凄い指輪ですね」
「これを持っていたら次の魔王らしいからのう……無くても強くて魔王を名乗れば魔王じゃし便利な指輪って感じじゃな」
「……便利ってなんなの?と言うような感じの性能ですが」
「チンピラ魔王と戦った時に分かったが、わらわが普段使っておる力はほぼ一部だったみたいな感じじゃな」
「……と言いますと?」
説明するよりみてもらった方がはやいと思いルディールは近くにあった小石を手に取り、指輪に魔力を流してから魔法でその小石を切ると切った所から根が生え、石だった物が小さな木の塊に変わりエアエデンに根を張った。
「世界樹の祈りはこんな感じじゃな。獣の王の指輪は使った感じじゃと理性などを無くし獣になる感じで、知恵と知識の指輪は多分じゃが記憶の書き換えや破壊も出来る感じっぽい」
「……えげつなくないですか?」
「他もあるが双子の聖女の指輪以外は使う事は無いじゃろな……他の指輪も全体的にかなり危ないくさい」
「……そうですか。大人になっていたルディールさんを見たかったのですが、あれも指輪の力で?」
「あれは魔素が濃い所で本気になるとああなるっぽいのう……たぶんじゃが魔力で代用が利くはずじゃから羽尻尾なしで良いならなれるぞ」
そう言ってから新しい魔法を覚えると言っていた割には雑談ばっかりしてるルディールが体に魔力を漲らせると少し光った後に大人の姿になっていた。
「……」
「こんな感じじゃな」とルディールが言うとソアレもスイベルも顔を赤くしていた。
「……ルディールさん。すみませんがいつもの姿になってもらえますか?」
変身したばかりだったがソアレの頼みだったので頭に?マークを浮かべたままルディールはいつもの子供の姿に戻った。
「ん?あれかメチャメチャ怖いとかいうヤツか?ルミディナもスバルもかなり怖がっておったからのう」
そう言って少し凹んでいるとソアレが訂正し話し、怖いのもありますが絵になる様な美しさだったので同性ですが心奪われそうになったと話した。
「私が普段ルディールさんラブなのは内面的な事も含めてなのでですが……大人の姿のルディールさんは……色々あぶないですね」
ソアレがそう言うとスイベルもコクコクと頷いていた。
「褒められる事は嬉しいんじゃが……素直に喜んでいいんじゃろか?参観日は舐められんように大人の姿で行ってやろうかのう」
「男子生徒に靴を舐めてもらえると思うので止めた方がいいですよ」
「それはそれで嫌じゃが……せっかくじゃし誰かしらからかって遊びたいのう」
などと三人で笑いあい、ようやくルディールはソアレに聞きながらアイテムバッグとアイテムボックスを繋ぐ魔法を勉強し始めた。
まずは一通り丁寧な字で書かれた羊皮紙を読み、ルディールは全てを頭に叩き込んだ。
「ん?感じ的には今ある系列とは別の系列の魔法になるんじゃな?」
「そうですね……ルディールさんは全ての属性を知っていますか?」
「火、水、風、土、大地、海、空、光、闇、時じゃったかな?光と闇の派生で聖と影の魔法があるが基本はその九つで良いと思う。細かく分ければ雷もあるが……風と空の複合じゃしのう」
そういうとソアレは思う事があったのか、後でその事についてお話しましょうとかなり真剣な表情だった。
「無属性という立ち位置で国やギルドには報告しようとは思うのですが……手続きが大変になると思うので、時魔法でも良いかな?と思うのですが……どう思いますか?」
「そうじゃな~……例えは変じゃがキノコも野菜では無いが野菜コーナーに売っておるからのう、あまり気にせんで良いと思うぞ?」
ルディールがそう言うとソアレは少し考えてから妙に納得したようで、確かにと言ってから何度も頷き登録する時に説明して時魔法にしておきますと話した。
「これ、ソアレがやった様に悪用すれば他人の持ち物を盗れるのう」
「……ルディールさんとお話ししたかった結果です。アトラカナンタも何処まで私の魔法が使えるか分かりませんので、対策も立てて申請するのでたぶん大丈夫だと思います。国の方でも対策しますし」
などと話しながら分からない事があれば聞き、ソアレのおかげでルディールは新しい魔法の習得に成功した。
そしてその魔法を唱え自身のアイテムバッグとリベット村のにある自室のアイテムボックスを繋ぐ事に成功し、いくつかの大小様々な拠点配置用のアイテムを取り出した。
「ここからリベット村まで届くんじゃから凄いもんじゃよな」
「……距離に応じて魔力消費は変わる事はありませんがかなりの距離は届きますよ。ルディールさんほどの魔力があれば別ですが常人にはキツい消費量なので少し使い所は難しいかもしれませんが」
ルディールが感心しながらソアレを見ていると当の本人はルディールがアイテムボックスから取り出したアイテムを物珍しそうに見ていた。
「じーーーー」
「……一つやろうか?と言っても拠点に飾る様なものじゃから特にステータスが上がったりする物はないが……」
「……簡単に説明してもらっていいですか?」
テーブルの上に何個かあるアイテムはゲーム中に拠点を飾るようなアイテムで壁に景色を写したり天井に星空を写したりとその程度のアイテムだったが、説明を聞くソアレの目は子供の様に輝いていた。
説明が終わるとソアレはその中の一つの海雲の絨毯と言うアイテムを指さしそのアイテムに決めた。
そして試しにその絨毯を広げると広げた場所は雲の上にいるような景色が広がっており時折切れ目から綺麗な青い海が広がっていた。
「……自分で言っておいてあれですが、もらって良いのでしょうか?」
「お主が欲しいなら別にええわい。拠点配置用のアイテムは思ったよりあるからのう。というか何処の海なんじゃろな?」
その不思議な絨毯をスイベルものぞき込み写しているのか映像なのか不思議な物ですねと話し、ルディールは思い出したかの様にソアレに空間を繋ぐ魔法の事を尋ねた。
「ソアレよ少し聞きたいんじゃが空間を繋ぐような魔法って今までにあったりするのか?」
「……空間ですか?……そうですね。転移魔法も空間を繋ぐ魔法と言えば魔法ですが違いますね……似ているだけですがアイテムバッグやマジックポストは空間と空間で繋がっているといって良いでしょう。ちなみに今、ルディールさんが覚えた魔法も空間と空間を繋いでいますよ」
「……ふむふむこの魔法がもしかしたらノイマン殿の研究を完成させる事になるかもしれんのう」
そういうとソアレがどういう事ですか?と頭を傾げたのでルディールはルミディナ達との事を話し、その世界の未来のルディールは時魔法と指輪の力で元の世界に帰る事が出来る可能性があると話した。
「……そうですか。帰るなとは言いませんが、そうやってルディールさんの口から話されると少しさみしいですね」
「ソアレよ。泣くのは反則じゃぞ」
「え?」
ソアレは自分では気がついていなかったがルディールに言われて、目尻を触ると涙があふれており、笑って誤魔化した。
「……これはリージュさんに年寄り扱いされても仕方ないですね。どうも涙腺が脆くなったようです……私も歳ですね」
ルディールはソアレにかける言葉が見つからなかったので、何も言わずに黙っていると突然、真なる王の指輪が光り出し机の上にルミディナ達が使った時魔法に似た扉が現れた。
突然の事に驚き慌てているとその扉が開き、二通の手紙を吐き出して消えた。
「手紙じゃな?」
「……手紙ですね」
「はい、手紙ですね。少し失礼します」最後にスイベルがそう言って二通の手紙を手に取り封は開けずに調べると危険な物は仕組まれておらず、ルディールに手渡した。
「ルディール様、ルディール様からとルミディナ様からです」
「ルミディナは分かるんじゃが……どこのルディールなんじゃろな?」と言ってからルディールは自分から送られて来た手紙を開けると確かに自分の字で書かれていた。
時魔法の完成。実験で手紙を過去に送りました。届きましたか?親愛なるルディール・ル・オント様。未来のルディール・ル・オントより。
追伸・ソアレを泣かさないように
そう書かれていたのでルディールは何故か笑ってしまいソアレに謝ってからその手紙をソアレに渡した。
「……私が読んでも大丈夫ですか?」
「うむ。わらわ的には面白かったが人に読まれて困る事は書かれて無かったのう」
ソアレがその手紙を読み、これはルディールさんですねと笑ったので次はルミディナから来た手紙を丁寧に封を切り読み始めた。
始めにルディールからもらった命の滴で結晶化したミーナが助かった事の礼が書かれており、母のミーナは今いる世界が三百年近く経っている事にとても戸惑っていたと書いてあった。
読み進めていくとルディールが死んだ事で一年近く塞ぎ込んでいたがようやく元気を取り戻し最近は良く二人で街に出かけると水滴で滲んだ字で書かれていた。
(うむ、戻ってから一年半ぐらいたったルミディナから送って来たんじゃな……)と考え読み続けるとルディールのおかげで直った真なる王の指輪のおかげで時魔法がもっと正確に扱えるようになったので、そちらの世界に行く事はしないが手紙で伝える事にしたと書いてあった。
そしてここからが本番なのですが……とかなりの筆圧で強く書かれた文章に入っていったのでルディールもルミディナ達に何かあったのか? と思い緊張しながら読んでいったが……
ルディールさん!私はとてもピンチです!スバルが使用人のセトとくっつきそうです!どうすればいいでしょうか!封筒に、時の護符を書き込んであるので、ルディールさんはもう時魔法を完成させると思うので完成したら次元門にいれてくれれば届きます、別の世界の娘を助けると思って知恵をお貸しください!。
追伸・母からも手紙があるようなので一緒にいれておきます
そう書かれていたので封筒の中を見ると別の少し高級そうな紙でルミディナとは少し違う綺麗な字で書かれた手紙があった。
ルディールが未来のミーナからわらわになんの手紙じゃろな?と思い読み始めると、まずは似たように命の滴で助けてもらった事への礼が書かれていた。
ミーナの字じゃな~と思って読んでいったが今は亡き向こうの世界のルディールに対する恋文の様な事が書いてありルディールの顔を赤くさせた。
「……ルディールさん顔が赤いですが大丈夫ですか?」
「うっうむ……大丈夫じゃな顔から湯気は出そうじゃが……」
周りのソアレやスイベルに気づかれる程ルディールは赤くなっていたが、読むのを止めるわけにもいかないので読み続けるとようやく最後の方になりこう書いてあった。
そちらの世界とこちらの世界は少し違う様ですが、ルディール……いえルーちゃんは自分の好きな道を進んでください。私は貴女と一緒になれて幸せでした。でも少しそちらの私が少し有利になるようにしておこうと思います。初めて会った時から好きでした、でも子供の頃の私はそれが恋だとは気がついていませんでしたが……貴女は気づいていましたか?」
そう締めくくられていたのでルディールはミーナの方向を向くとセニアとタッグを組みスイベルに挑んでいた、そして何故かルディールの視線に気がついた様でこちらに向かって手を振ったのでルディールも苦笑しながら手を振ると、スイベルに投げ飛ばされミーナは空を舞った……
「ふふっ、世の中面白いものじゃな」
「……良い事が書かれていたようですね」
ミーナの手紙は見せる訳にも行かなかったがソアレとスイベルにはルミディナの事を話してあったのでルディールはルミディナの手紙を渡した。
そして二人が読み終わるのを紅茶を飲みながらゆっくり待っていると、読み終わったスイベルが綺麗に折りたたみ封筒にいれルディールに返し、ルディールは丁寧にアイテムバッグに仕舞った。
「なかなか面白かったじゃろ?」
「……ルミディナさんピンチですね」
「ネタで小さい子は好きと言っておるが、今まで気も張っておったじゃろうし大人の女性に甘えたいのかものう……バルケとそっくりじゃな」
「姉さん、見た目は小さいですがしっかりしていますからね」
「……負け確定ですね」
「ルミディナの事は妹にしか見えんのじゃろうな。というか妹って言っておったしのう」
「……仕方ありませんね。皆で慰めの手紙を書きましょう」と言って特訓してる全員を呼び寄せる為に手招きした。
そして皆が何事か?と思って集まるとソアレが簡単にルミディナがスバルに振られそうだから慰めの手紙を書こうと言った。
「ソアレよ……言いたい事はわかるが……まぁ良いか」
「……間違ってないので大丈夫です」
ミーナ、スティレ、セニアは何と書けば良いのだろうと悩み、カーディフは思った事をささっと書きスイベルはスバルに書きますと紙と筆を手に取り書き始めた。
ソアレは何故か筆が進んでいるようで二枚三枚と書き、ルディールはルミディナと未来のミーナに手紙を書き始めた。
そして一人、一人と書き終わり最後にルディールも書き終わり皆から手紙を預かり大事にアイテムバッグにしまった。
出すのはいつになるか分からぬがとルディールが言うとソアレがすぐに出せますよと言ったが、二人のやり取りの意味が分からなかった周りは頭に?マークを浮かべていた。
それから皆でエアエデンで昼食を取り、午後からミーナとセニアの勉強を見たりしてゆっくりした時間が過ぎていった。
「そういえばセニアよ、テストの日はいつなんじゃ?」
「返ってくるのが参観日と聞きましたからその二日前ですね……」
「参観日に返って来るとは鬼畜じゃな……」
「ルーちゃんに点数悪いの見られたらどうしよう……」
そうミーナがいったのでルディールはミーナとセニアを見ながら話した。
「お主達はもう少し自信を持つ事じゃな。普段からちゃあんと勉強しておるからお主達なら大丈夫じゃ、しいていうなら簡単なミスをしないように最後までよく読む事。わらわが言う事はそれぐらいじゃな」
二人を励ましその日の夕方にはセニアとミーナを王都まで送り届け火食い鳥は参観日までルディールの家に泊まる事になった。
そしてその日の夜、災難続きのスナップはと言うと……
「スナップさん、明日には帰るんですね……楽しい一時はあっと言う間ですね。良ければ私の専属のメイドになりませんか?ルディールさんは私が説得しますので」
「ありがたいお話ですが……私はルディール様ぐらい温いのが丁度良いですわ」
「そうですか……では楽しかった思い出にお土産をどうぞ」
と言って小さなアイテムバッグをスナップに手渡した。
「ん?何ですの?」
「開けて見てください」
そう言われたのでスナップは礼を言ってから開けると、中には王女が持っていては確実に駄目な下着などが大量に入っていた。
「もちろん全部!新品ですよ!バルケさんとおっぱじめる時に使ってくださいね!全て魔法がかかっているのでサイズは気にしなくていいですよ!」
「最後の最後まで王女様で安心しましたわ!これとか大事な部分が隠されていませんわ!」
「いきなりそれを選ぶとは……流石スナップさん良い趣味していますね!」となんだかんだで二人は仲良くなっていた。
次回の更新は土曜日のお昼ぐらいになると思います。
最近、不滅のあなたへにはまっています、本を買おうか悩み中……十冊以上でてる本は買うときに少し躊躇します(笑)いつも誤字脱字報告ありがとうございます。




