表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/306

第16話 売り買い

 冒険者ギルドに着いた二人は、受付に行き山賊達から手に入れた、数々のアイテムの鑑定を頼んだ。


「畏まりました。冒険者証というギルドカードはお持ちですか?」


「いや、持ってはおらぬが、無いと鑑定してもらえぬのか?」


「いえ、少し手数料が掛かりますができますよ。ギルドカードを持っていると、他の都市でも内容が共有されるので手続きが楽になります」


「では、手を煩わしてすまぬが、ギルドカードを作るメリットとデメリットを教えてくれぬか?」


「メリットとデメリットですか?そうですね……」


 眼鏡をかけた少しつり目の受付嬢が少し考えてから話し出した。


 メリットとしては、冒険者ギルドとよばれる場所なら国中、他国を問わず解体や鑑定の手数料がいらず、身分証明書にもなるので関所や都市への通行が楽になり、他の都市でも情報が共有されるので、魔物を討伐した際にどこの都市からでも報告できると教えてくれた。


「あとデメリットは特にはありませんが、有事の際には戦力として呼ばれるのと討伐等のクエストが受けられないぐらいですね」


「なるほどのう…」

(これは、作らぬ方がマシじゃな……たぶん国が管理しておるし、何処で何をしてるかも筒抜けじゃな…)

「説明までさせておいてすまぬが、作らないので鑑定してもらえる場所を教えてもらえるか?」


「はい、分かりました。ではご案内しますので着いてきてもらえますか」


「ありがたい、では案内たのむ」


 それから三人で長めの通路を歩いているとミーナが話しかけてきた。


「ルーちゃん、冒険者にならなくてよかったの?」


「話を聞かせてもらった感じじゃと、冒険者じゃないと無理という事もほとんどなさそうじゃしな」


 二人ではなしていると前を歩く受付のお姉さんが話しかけてきた。


「冒険者ギルドに来られる方は名誉や一攫千金を求めて冒険者になる人がかなり多いんですよ」


「鑑定や解体だけで来る人は少ないのか?」


 一定数はいるがやはり少数だと教えてくれた。鑑定や解体は他の場所でもできるし、冒険者が報告のついでにする事が一般的だそうだ。


「となると、これからはここに来る事もそんなにないかのう」


「そうなるかもしれませんが、魔物の出現や盗賊が出た等の情報は冒険者ギルドが一番早く掲示しますので、他の都市などに行く時は確認してから行くといいと思いますよ。後、まだ出回ってない情報ですが太古の森に潜伏していた山賊が、捕まったと言う話も出て来ていますので」


 二人はルディールが捕まえました。とは言えず適当に相槌をうっていると鑑定所についたようで、ここですよと教えてくれた後に、鑑定所の担当の人を呼び。ご用があればまたどうぞ、と冒険者ギルドに戻って行った。


 ルディール達は礼を言い、鑑定所でアイテムの鑑定を頼んだ。


「分かりました。かなりの数がございますので、全部で金貨10枚になりますがよろしいでしょうか?」


 断る理由も特にないので金貨10枚を渡し鑑定を依頼した。


「では鑑定してきますので、しばらくお待ちください」


「……鑑定するだけで金貨10枚いるんだ……」


「まぁ、必要経費じゃろうな」


 それから二人で雑談をしたり中を見て回っていると受付から声がかかり、二人は奥へ案内された。


「全ての鑑定が終わりました。効果などはこちらの用紙に書いてあります」


 ルディールは礼を言い紙を受け取り中を読み始めると、鑑定人がこちらを見ていたので声をかけた。


「なんじゃ?わらわの顔に何かついておるか?」


「鑑定品の中に盗品がありましたので、もしかして太古の森の山賊を捕まえた方ですか?」


「と言うよりも、捕まえた人と一緒におっただけじゃな。今日は貴族様の家に行っておる故に鑑定を任された訳じゃ」


「なるほど、そうだったんですね」


「そういう事じゃ。それと盗品と分かったら返した方がよいのか?それとどうして盗品とわかったのじゃ?質問ばかりで申し訳ないが……」


 大丈夫ですよと言って鑑定人が話し始めた。いくら盗品でも返さなくてはならない法律というものは無いらしい。盗賊や賊達の持ち物はほとんどが盗品なので、返してしまうと冒険者のうま味がほとんど無くなるため、捕まえる人が減ってしまうとの事。盗品の確認は盗られた人の記憶を魔法で読んで、照らし合わせる事で分かると教えてくれた。


「ほー凄いものじゃな!では盗品はどこの物かと言うのもわかると言う事じゃな?」


「はい。一応その用紙にも書いてありますが、三大商会のエニアック・イオード・パラメト商会の物が大半ですね」


「ふむ……では少し手間をかけるが、イオード商会とパラメト商会の盗品は返品させてもらう形で手続きを頼む」


 その一言が意外だったのか、鑑定士 が驚きながら『いいのですか?』と聞いてきた。


「わらわはリベット村に住んでおって、行商達には普段から世話になっておる礼じゃな。後は……お主が少し説得した様な感じの事を言っておけ、さすればお主の株もあがるじゃろ。鑑定と説明の礼じゃ」


「あっありがとうございます。エニアック商会の方はどうしますか?」


「……どこか足がつかず売れる所はあるか?」




「と言う訳で、ミーナよ。すまぬが先に売りに行くぞ」


「それはいいんだけど、どうして返したの?」


「これからの村の事もあるしのう。未来への投資じゃな」


「へぇ~そうなんだ。エニアック商会は返さなくてよかったの?」


「こないだの大牙じしで足下見られた礼じゃな。まともに取引できん相手にはまともに相手をせんでよいからのう」


「ルーちゃん、凄い笑顔だね……」


「うむ!先ほど鑑定士さんが値段の方を簡単にだしてくれたが、笑いが止まらんわい!」


(ミーナには言わなくて良いが、セニア達の護衛を全滅させた原因っぽいアイテムも見つかったしのう。魔力封じの宝玉か…魔法使いには最悪のアイテムじゃな、これはポッケナイナイじゃ)


 などと思って来た道を戻っていると、人通りの少ない方から何かが破壊された様な音が聞こえ、その後に男達の声が聞こえた。


「てめぇ!ぶっ殺してやる!」


「やれるもんならやってみやがれ!」


 その声を聞いたミーナが少し怯えながらルディールに聞く。


「えっ何か、あったのかな?」


「おお!喧嘩じゃ!ミーナよ見に行くぞ!」


「……何でうれしそうなの?」


「ああいうのは見てる方が面白いのじゃ!」


 そういって二人で声のする方向に行くとそこには、片腕が義手の男とその男より少し大きな男が何でもありの大げんかを繰り広げていた。


 二人の喧嘩を観戦していると劣勢になった大男が椅子をつかみ力いっぱいに投げ、義手の男にかすり軌道がそれ、ミーナのいる方に飛んできた。


 かなりの速度で飛んできたイスだったが、ルディールが難なく掴み、大男の顔面めがけて投げ返した。


 ガコン!と顎が跳ね上がり大男は目を回し倒れた。


 周りがポカンとしていると、相手をしていた義手の男がルディールの胸ぐらを掴み威圧し声を荒げる。


「おい!男の喧嘩に何しやがる!」


「何しやがると言われても、友人に怪我させられそうになったからやり返しただけじゃろ」


「それもそーか……じゃねーよ!」


 この落とし前どうつけんだよ!と言った所で知らぬ間に集まった野次馬の中から見た事のある、剣士とレンジャーの女達がでてきた。


「おい。片腕、その御仁から手を離せ。離さぬなら私達が相手をしよう」


 その二人の姿に男は少したじろぐ。


「おっお前達は」


「あ~。【焼き鳥】のスティレとカーディフじゃったっけ?」


 胸ぐらを片腕と呼ばれる男に掴まれながら思い出して答えると、男に何で名前の方はあってんのにPT名がおしいんだよ!と言われていた。


「……魔法使い殿。その節は世話になった。それと焼き鳥ではなく【火食い鳥】だ!」


 と女剣士が叫ぶが当の本人達はまだ胸ぐらをつかんだまま。


「あれじゃな?焼き鳥とか思い出すと、不思議と食べたくなるのう」


「あーそうだな。麦酒とか冷やして一杯やりたくなるな」


「お主、なかなか分かっておるではないか。ついでに手を離すと良い奴じゃぞ?」


「……ああ、わかったよ。別にお前がなんかしたわけじゃないしな」


「うむ。物わかりが良くてたすかるわい」


 それから焼き鳥のメンバーの方を向いて、どうしたんじゃ?とルディールが話しかけると二人とも難しい顔をしてからレンジャーのカーディフが口を開く。


「私、やっぱりこいつ嫌いだわ……というか私達にした事を覚えてるんでしょうね!それと名前を教えなさいよ!角付き!」


「ギーメイ・ウーソノじゃ。ちゃんと助けてやった事は覚えておるぞ。胸無し」


 その一言が逆鱗だったようでカーディフが切れルディールに罵詈雑言の嵐を浴びせる。


「カーディフ!落ち着け!この前の礼を言いにきたんだろ!」


「スティレ!離せ!こいつが!こいつが!」


 そしてルディールが笑顔で口を開き、火にガソリンを投下する……


「カーディフよ。一言よいか?」


「あん?何よ!」


「お主の話など聞いてない」


 ブチッと何かが切れる音がして、またカーディフが女性が使うとは思えない言葉でルディールを罵っていくが、そこに先ほどの男達の喧嘩で呼ばれていた兵士達がやって来た。


「おい!冒険者共よ!ここで喧嘩をするなら!しょっ引くぞ!……ん?オントさんもいましたか、どうかしました?」


 その兵士達はルディール達の取り調べをした人達だった。


「急にその二人の冒険者に絡まれて…兵士さん達は助けにきてくれたのですか?」


 ルディールは即座に態度を泣きそうな儚げな少女に変え、兵士達に助けを求めた。


「はっはい!助けに来ました!おい!お前達!この二人を留置所につれていけ!」


 兵士達は一糸乱れぬ動きで焼き鳥の二人を拘束した。


「ちょっと!離しなさいよ!あんた達!だまされてるわよ!」


「私達が助けに来たんだ!」


「では、オントさん。この二人を連れて行きますので良い観光を!」


 ルディールはまた男性が好きそうな笑顔で答える。


「はい。皆様のおかげで助かりました、ありがとうございます。お仕事は大変だと思いますが頑張ってくださいね」


 二人を連れて行く兵士達を笑顔で手を振りながら見送り振り返ると、ミーナと片腕と呼ばれた男が妙に仲良くなっており、お前さんも大変だな、そう言って貰えると助かります。というような会話をしていた。それから気絶していた男に回復魔法をかけ、男達と別れて買い取りをしてくれる場所に向かった。


 目的の場所はカウンターが一つ一つ仕切られ、何を売ったかなどは、外にはまったく解らない様に作られた場所だった。ルディールはその場所で売る事を決め、自分に必要の無い物は全て売りミーナが使えそうな物は残し、総額は金貨500枚ほどになった。


「金貨500枚……何買うと無くなるんだろ…私もお金持ちになりたい!」


(うーむ。村長とミーナと三人で分けるつもりじゃが、気を遣わせても悪いから村長と相談じゃな)


「そういえば、さっきレンジャーさんに名乗ってた、ええと、ギーメイ・ウーソノって何だったの?」


「ん?名と姓を入れ替えてーを抜くと分かるぞ、というかお主、何かうれしそうじゃな」


「内緒だよ、ええとウソノ・ギメイ……嘘の偽名……あの人絶対にまた怒ってるよね。そういえば胸の事で凄い怒ってたけど、何かあったのかな?」


「まぁ持っておる人間にはわからぬ事じゃからのう。お主もわらわも、それなりには有るからのう……。ミーナよ学校に行くなら一つ覚えておくと良いぞ」


「えっ何を?」


「身体的な特徴というのは、他人からみたら素敵な事でも、本人からしてみればコンプレックスだったりするものじゃ。人を褒めたりする時は持ち物を褒めるぐらいにしといた方が揉めなくてよいぞ」


「そっそうなんだ……気をつけよう」


 話をしているとミーナの目的地の服屋が見えてきたので中に入っていった。その服屋は庶民がくるにはかなり高い所だったが店員さんは愛想良く迎えてくれた。それからミーナが店員さんに下着売り場の場所を聞き、選び始めた。時折ミーナの方から高っ!と言う声が聞こえてきた。


 ルディールは値段の違いがかなりある事が気になったので店員さんを呼んで理由を聞くと、高いのは魔法の絹糸で作ってあるので、体型が変わったりしても体にフィットして形を崩さないとかなんとか言っていた。


「では、店員さん。すまぬがあそこで悩んでおる娘に値段は言わなくてよいからのう5~6着ほど見繕ってもらえるか?来月辺りから王都の魔法学校に行くからそこで、恥ずかしくない程度のを考慮して選んで貰えるとありがたい」


「そうですね、金貨三枚あたりので選ぶと間違いないと思いますけど、どうしますか?」


「うむ。その辺りはわらわが払うから頼まれてくれるか?」


「はい。わかりました」


 それからミーナは貴族の人が着るような下着を選んでもらい数着ほど持ってきて、ルディールも部屋着を数枚ほどもって一緒にお金を払った。


「ルーちゃんありがとうなんだけど、なんだけど…いくらしたの?すっごく高そうな感じの下着なんだけど!」


「今のわらわの財布はみなぎっておるからのう。はした金じゃ!」


「肌触りとかおかしいんだよ!」


「まぁそれは置いといて。勝負下着などは買ったのか?」


「?誰かと戦うの?」


 二人のやりとりに先ほどの店員さんがクスリと笑う


「店員さんに聞けばよいじゃろ」


 そう言うとミーナは先ほどの店員さんの所に聞きに行き、耳元で話しかけられ聞いていると、見る見るうちに顔が赤くなり戻ってきた。


「そっ、そういうのは、まっまだはやいかな……」

 

「ふむ。理解した様じゃな。まぁ欲しくなればまた買えばよいじゃろ」


「……ルーちゃんは持ってるの?」


「さて、どうじゃろな?」


  用も済ましたので店をでると、もう陽が傾き夕方になっていた。


「ルーちゃん。ご飯どうする?外で食べてもどる?」


「そうじゃな、ミーナが良ければお主の叔父さんの所で良いと思うがのう。賑やかな方が好きじゃしな」


「じゃあ、そうしようか」


 宿に戻ると、一階の酒場は開店しており、まだ人は少なかったがちらほらと飲み始めている人達がいた。そしてルディール達に気がついたミーナの叔父が声をかけてきた。


「おっ?もう帰ってきたのか。飯は食ってきたか?」


「いや、騒がしい方が好きでのう。こちらで食べようと思って帰ってきたんじゃ」


 三人で話していると、横のテーブルから声がかかった。


「おっ?昼間の角付きの嬢ちゃんじゃねーか」


「うむ?片腕のええと……地上げ屋さんじゃったか?」


「冒険者だ!」

次回の投稿は月曜日か火曜日になります。


それとPVが3000超えました!ブックマークも20超えました!皆様ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ