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第153話 魔王と踊れ


 ルディールとラフォールファボスの戦いをルミディナとスバルは少し離れた所から観戦していた。


 ルミディナが少し困った顔をしながらスバルに話しかける。

 

「先ほどの魔法攻撃……この世界のアトラカナンタは私達が知っているアトラカナンタよりも遙かに強いようですね……」


「……私達がアトラカナンタごとソアレ・フォーラスを消滅させるのは少し厳しいかも知れませんね。ルミディナ様。」


「分かっています。ですがこちらの世界のルディールさんは聞いた話よりも優しすぎる気がしますのでまだチャンスはありますよ」


「……情でも湧きましたか?」


「いえ、この世界のソアレ・フォーラスが少し羨ましいなと」


 ルミディナのその言葉にスバルは何も言わず戦闘の行方を見守った。




(とっとっと、アトラカナンタの奴、何処に行きおった?近くにはおると思うんじゃが……ルミディナ達も何か狙っておるのか観戦しておるし……)


 戦闘中に考え事をしていたルディールは少し油断した隙を狙われ、ラフォールファボスの魔法攻撃が直撃してしまい吹き飛ばされ新魔王城を壁を突き破ってようやく止まった。


 少しのダメージは負ったものの自動回復ですぐ回復する程度だったので辺りを見渡すと巻き込まれた悪魔や魔族のメイド達が怪我を負っていた。


 ルディールは巻き込んでしまった事を謝り回復魔法をかけてやり、城の近くは巻き込まれるから早く逃げる様に指示をしたが、その瞬間にその魔族達を巻き込む様にラフォールファボスの魔法がルディールを襲った。


 なんとか防御魔法が間に合い無関係な魔族達を守ったがルディールはラフォールファボスに対して怒りの感情が芽生え始めた。


「……綺麗事じゃがお主の相手はわらわじゃろう?あまり配下を巻き込むなよ?」


「ふんっ!ここは魔界だぞ。お前は何を言っている!自分の命は自分で守れない奴に用はない!」


「まぁ、良いか……それも一つの考え方じゃな」それ以上は何も言わず戦闘を再開したが、ルディールは新魔王城から逃げる人達を守る様に戦っていたのでそこを突かれた。


「お前……魔神のくせに自分よりはるかに弱い者を守るのか?」


「魔神じゃからのう。お主は王のくせに自分に仕える者を守らんのか?」


 そう言うとラフォールファボスは笑いながら、ルディールでは無く逃げ惑う魔族達を攻撃し始めた。


「はははっ!偽物の魔王よ!お前は確かに強いがその愚かさが敗因だ!その指輪もらうぞ!我が声が聞こえし魔神達よ!ここに集まれ!」


 ラフォールファボスが新魔王城や弱い者に攻撃しルディールがそれを守る様に動いていると、魔王に従う十数体の魔神が現れた。


 そしてラフォールファボスに一度、膝を突き頭を下げてから命を受け、ある者は逃げ惑う者を攻撃し始め、ある者はラフォールファボスと供にルディールを攻撃し始めた。


「お主等!無抵抗の者に何をやっておるんじゃ!」とルディールが叫ぶと一瞬は止まったがまた攻撃を始めた。


 ルディールは加勢に来た魔神を拘束したり、怪我をした者達を回復させたり倒壊しそうな新魔王城を止めながら戦っていたが、さすがに手数が足りずにとうとう数人の魔神に取り押さえられ、至近距離でラフォールファボスが持つ最大の攻撃魔法を喰らい新魔王城までとばされ着弾した。


 そして大爆発を起こし新魔王城は倒壊しそれに飲み込まれていった。


「ふんっ。いくら強いと言っても魔神が数十体もいれば相手にもならんか……初代魔王は一人で魔王軍と戦えるほどだと聞くがそれも所詮は噂か……名も知らぬ女の魔神よ。お前が言った通り指輪があろうが無かろうがこの私が魔王だ!」


 そういって勝ちを確信しルディールを探すように残った魔神達に命令を出した。


「アトラカナンタも何処かで見ているだろうが何処で出てくる?……この妙な二つの気配も気になるが……まずは今の角付きの生死だな」


 そう言ってラフォールファボスも倒壊した魔王城に近づいていく。


 その光景を見ていたルミディナも背中の翼は巨大化しルディールと同じ様に尻尾が生え角は大きくなり拳を握りしめ耐えていた。


「ルミディナ様!お気持ちは分かりますが押さえてください!ルディール様はまだ生きておられます!」


「分かっています!」と言い返したがルミディナの周りには時計の様な魔方陣が幾つも現れ、いつでもラフォールファボスを殺せる様に準備が整っていた。




(はぁ……友人の女の子を助けたいだけなのにどうしてこうなったんじゃろな?)


 ルディールは余裕がありそうにそう言ったが、片腕は吹き飛び足はラフォールファボスの魔法で大怪我をしさらに倒壊した城に押しつぶされ感覚は無かった。


「ロードポーションがあれば治るんじゃが使ったからのう……ごほっ……腹に何かが刺さっておるが痛みはないか……帰れたらあの三人に文句を言おう。うむ」


 ルディールはそう言いながらアイテムバッグを取ろうしたが片方は瓦礫の中で、もう片方は感覚が無かった……回復魔法を唱えようとしたが先ほどの増援に来た魔神か、ラフォールファボスの攻撃のせいかは分からなかったが魔法が使えず回復する事ができなかった。


(……ここで死ぬんじゃろうか?未来のわらわはミーナやスナップの子に恨まれる事でもしたんじゃろか?)


 等と考えながら目を瞑るとこちらの世界に来てから仲良くなった友人達の記憶が走馬灯の様に流れていった。


(リージュはこんな感じじゃったな!そうそう、うんこくさいとか言うておったのう……昔と比べると笑顔が可愛いのう。セニアは少し自信なさげじゃたが今ではかなり堂々として格好いいんじゃよな!ミーナは魔法使いになったんじゃよな!成長速度が半端ないのう……ミーナはわらわをより強くなりそうな気がするのう)


 と昔の友人達の記憶に感想を言っているとソアレとの記憶が流れ始めた


(ソアレよ……わらわはお主のような魔法使いになりたかったのう。知識は豊富じゃしスティレやカーディフという良い仲間にも恵まれておるしのう。お主はちゃんと皆の元に帰らせてやるわい)


 ルディールは途切れそうになる意識を無理矢理たたき起こし、自身の中にあるどす黒い感情に身を委ねた。


「もうそれ以外はどうでもいいか……」




 そう言った瞬間にルディールの近くを探していた魔神達はもだえ苦しみ、お互いに殺し合いを始めお互いが絶命するまで続き、死んだ瞬間に芽がでて根が張りその場に樹木になった。


 そして残ったラフォールファボスの近くにいた魔神達も狂った様に主にも襲いかかった。


「お前達、何をする!気でも触れたか!」


 襲いかかってきた魔神達を切り捨てると、崩れた瓦礫の中にとてつもない魔力が渦巻いている事に気がつき、その中心に向かって先ほどルディールに攻撃した黒い炎の魔法で攻撃し瓦礫ごと辺りを焼き払った。


「なんだ……今の魔力は……」


 そう言って少し後ずさると黒い炎を中心からルディール・ル・オントに似た姿の何かが現れた。


 背丈より長い尻尾が生え背中には計十枚の翼が生え角は巨大化し、本来の姿に戻ったかの様にも見えたが、少女の姿では無く大人の女性になっていた。


 そして周りに纏っていた赤黒い雷は、様々な動物の形になり、ラフォールファボスが放った黒い炎を喰らい木になった魔神も喰っていた。


 その姿にラフォールファボスは言葉を忘れ、本能で怯え体が震えていた。


「この俺が恐れているだと!?お前はなんなんだ!」


 そう叫んだ瞬間にルディールが右手をゆっくり横に払うとラフォールファボスの膝から下が消滅した。


 一瞬何をされたか分かっていなかったが地面に崩れ落ち、激痛がはしりようやく自分の膝からしたが無くなっている事に気づいた。


「なっ!なんだ貴様!何をした!」と叫んだがルディールは何も答えず近づいていく、ラフォールファボスは無くなった足を回復させようとしたが一切の回復を受け付けなかった。


 ラフォールファボスはその力が古の腐姫の呪いだと判断し、即座に自身の膝から下を焼き止血した。


 その光景を見てルディールはようやく口を開いた。


「自害するのなら待ってやるがどうする?お前ごときでは私には勝てんよ」


 ふざけるな!とラフォールは叫びルディールに斬りかかったが、簡単に止められそのまま腕を引きちぎられた。


「私はな……お前達の様な敵に優しくしすぎたと思う。もう二匹いるからな。自分で死ぬか私の手にかかって死ぬか選べ、それが私の最後の優しさだ」


 そう言って次はお前達の番と言わんばかりにルミディナとスバルに殺意を飛ばした。


 その圧倒的な殺意にルミディナは怯えスバルはルミディナを守る様に戦闘態勢に入り前に立った。


「魔王になるまでは正解ですが……明らかに私達を敵と判断していますね」


「ご友人の命を狙っていますからね……後はソアレ・フォーラスを殺して帰るだけですが……両方無理そうですね」


「ですね……ミーナお母様、私達をお守りください」


 ルミディナ達がそう話している間に、ラフォールファボスは体を焼いて止血し、残った腕で剣を持ちルディールに斬りかかった。


「五体満足なら貴様ごときに俺が!」そう叫んだが簡単に剣をルディールに奪われ、次はその剣で腕を切り捨てられ胸に剣を突き刺された。


「お前は魔王だったな……ほんの少し遊んでやる。本気を見せよ」


 そう言ってルディールが魔法を唱えるとラフォールファボスの左右に双子の聖女が現れ、無くなった腕や足を再生させ消えた。


 治った事に驚いたが、ラフォールファボスは目の前にいるルディールを殺す為にすぐに剣をとりすべての魔力を解放させ斬りかかった。


 ルディールはその本気を難なく掴みため息をついた。


「それが本気か?私は言わなかったか?」


(なっなんなんだこの女は!おっ俺の本気がいともたやすく受け止めただと)


 ラフォールファボスは力の限り切りつけ近距離で最大の攻撃魔法を放ったがルディールに傷一つつけられなかった。


「これ以上は時間の無駄か……お前達魔神は敵だからな」


 そう言って剣を離し、そのまま本気で尻尾を振るとバキン!と何かが折れた様な音がしてラフォールファボスはそのまま地面に叩きつけられ大きな砂煙を上げ大地を揺らした。


 その衝撃で出来たクレータの中心にルディールが生死を確認するために近づくと、剣は折れてはいたがラフォールファボスはまだなんとか生きていた。


「さすがは魔王という事か……」


 ラフォールファボスは自分が勝てない事を悟りルディールに助けてくれと懇願したが、ルディールは翼を焼き四肢を切り刻んだ。


「お互いに偽物と言えど魔王だ。余計な言葉は無しにしよう」


 そう言ってルディールは魔王にとどめをさすついでに魔都にいる魔神や悪魔達も一掃しようと考え、真なる王の指輪の力を一つずつ解放していき、最後に今まで使い方が分からなかった【戦女神の指輪】に力を込めようと手を突き出した。


「今なら使い方がわかるな……ん?」


 ルディールの視界に腕に巻かれたリボンが目に付き一人の少女の事を思い出した。

次回の更新は多分明後日になります。今日はPC版、R-TYPE FINAL 2の発売日なので!


自分で言うのもあれですが、誤字脱字が少し減った様な気がします(0になったとは言ってない)いつもご報告ありがとうございます。

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