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第15話 中央都市カプラ

 ミーナやセニア達が寝静まった頃、ルディールは昼間に捕まえた山賊達の所に来て考え事をしていた。


「はぁ~……よその世界に来て、どこの誰に貰ったかも判らぬ力で、悪人じゃが一生懸命生きてる人間に何をしておるんじゃろうな……かといってセニア達を見殺しにするわけにもいかんし、どうするんが一番ええんじゃろな?」


 答えのでない独り言が風に流されていく……


「割り切ってぶっ殺すとか絶対に無理じゃし……はぁ~……物のついでじゃ、回復魔法の実験に付き合ってもらおうかのう。今夜は満月じゃしわらわの魔力が一番高い時じゃしな」


 ルディールの持つ真なる王の指輪の中に眠る。太陽と月の指輪と世界樹の祈りという二つの指輪がある。


 その二つの指輪の性能は、装備品に太陽神と月光神の寵愛があれば、日の出てる時は身体能力が向上しHP自動回復。夜は魔力が大幅強化されMP自動回復。


 もう一つは装備者の生命力UPと触れている相手の生命力UPと回復量UPがある。


「サークルハイヒール!」


 山賊達の古傷は治す事は出来なかったが、投げ捨てた時にできた傷や、引きずった時にできた傷は綺麗に治った。


「あまり治らん……本職でもないしのう……次は森山賊のボスじゃな」


 そういって次は山賊のボスの体に触れ回復魔法を唱える。すると指輪の効果で回復量が上がっており、無くなった目以外の全てを治した。


「わらわの回復魔法の限界は人体欠損までという感じじゃな」


 空を見上げてまた考え事をしていると、後ろから声がかかる。


「どうかしました?」


 暗がりからスッと村長が近づいてきた。


「村長か…すまんが一つ失礼な事を言っていいか?」


「はい?どうぞ。」


「村長の見た目で、そのような感じで暗がりから出てくると、実は山賊の黒幕は村長だった的な感じになるのう……」


 ふっふっふ… バレましたか… 仕方ありませんねと村長が腰の獲物に手をかける。


 その言葉にルディールはキョトンとして、少し間を置いてから二人で大きく笑いあった。


「村長はノリが良いのう」


「オントさんもなかなか面白い事を言う、それで何をしていたんです?何か悩んでいる様でしたが?」


「回復魔法のテストと人生という荒波について考えておったぐらいじゃな」


「……なるほど、では年寄りの戯言を一つ。オントさんが悩んでいる様な事は、きっと自分が死ぬ間際で分かる事だと思いますよ。私もいい年ですが、今でもああしていればよかった、こうしていれば良かったと思いますからね」


「なるほどのう……ままならないものじゃの~」


「ですが、ままならないから人なんでしょうね」


 しばらく二人で話をしその日は過ぎていった。


 次の日お昼前には中央都市に着きたいので早めに出発した。


「……ミーナは何をそこまで緊張しておるんじゃ?」


「えっ?だってセニア様もアコット様も領主様の娘様だよ!?粗相があったらどうしようかと思って……」


 その言葉を聞いて、昨日助けたセニアが話す。


「ミーナさんは同い年ですし。来月から同じ学校ですから、様とかつけなくて大丈夫ですよ?」


「いっいえいえ」


「ミーナお主、セニアが『オーホッホッホ!私を敬わない愚民共は首チョンパよ!オーホッホッホ!』とか言うと思っておるんじゃろ」


 ルディールの口からセニアの声が出てきてミーナは呆れセニアと妹のアコットは驚いていた。


「ルディールさん。私そんな事言いませんからね」


 姉が呆れ顔で抗議していると、妹の方は目を輝かせながら話しかけてきた。


「ルーちゃん!すごいすごい!もう一回やって!」


「こ~ら!アコットちゃんと勉強しているのかしら~私の様に立派な貴族様になりたかったらちゃんと学びなさ~い。オーホッホッホ!」


「すごい!すごい!にてるにてる!」


「似てませんから!」


「身分の違いもあるし、思う所もあるじゃろうが、適当な所で妥協せぬとお互いにしんどくなるぞ?」


「ううっ……わかったよ、セニアさんこれからよろしくお願いします」


「はい。ミーナさん、こちらこそよろしくお願いします」


 そう言って二人で握手をした所でルディールが茶々を入れる。


「ミーナよ、わらわに会った時の様に『あぁん!クソ貴族がウチの村になんのよーだよ!』ぐらい言っても良いぞ」


「ちゃんと敬語使ってたよ!それと、どうやって私の声とかだしてるの⁉」


「本当ですね……それはそうとルディールさんにアコットが懐いていますが、邪魔ではありませんか?」


「ルーちゃん、邪魔じゃないよね~」


 ルディールの隣に座り髪をとかして髪形をかえてもらっているアコットの光景にセニアは子供が好きなのか?と訊ねた。


「素直な子供は好きじゃぞ。小生意気なクソガキとかなら、その辺に埋めるか、川に流すんじゃがな。ほれ、アコットよこの髪形でよいか?」


「うん!ルーちゃんありがとー」


 しばらく穏やかな時間? が流れ村長が見えて来ましたよと、教えてくれた所でルディールが荷台から顔を出しその方向を見る。


 そこには立派な大きな門があり数々の馬車や色々な種族の人達が通り、街の大きさを見せつけた。


「おお!立派なもんじゃ!こうあれじゃな!ヘヴンリーディザスターとしては、あの門に破壊魔法の一発でも打ち込みたくなるのう!」


「ルーちゃん!やっちゃえー!」


「「絶対に止めて!!」」


 村長が相方のバイコーンに女三人そろえば姦しいとはまさにこの事ですね。と言った辺りでルディール達が連れている山賊達に気が付き兵士達が向かってきた。


 兵士たちを見たルディールが準備運動を始め、首をならして『さてルディールさんの本気を見せてやろう』と言い、全員が頭に?マーク浮かべ取り調べが始まると、アコット以外は絶句した。


「ではオントさんは、辺境のリベット村におられるんですね?」


「ええ、中央都市の様に、煌びやかな所ではありませんが、少し病弱な私にとっては静かでとても過ごしやすい所ですよ」


 その整った美しい顔立ちの少女に兵士達の顔も綻ぶ。


「オントさんの様な女性が山賊を捕まえたというのが信じられませんよ、ははっ」


「あら、私からしてみれば皆様方の様な素敵な殿方が兵士様をしている方が信じられませんよ。それに私は後ろから少し魔法を使っていただけで、セニア様やアコット様を助けられたのは村長さんですから」


 ルディールの花の咲いた様な笑顔に兵士達の鼻の下は伸び取り調べは終わった。


「オントさん、山賊の持ち物は全て確認しましたが、危険な物はありませんでしたので、全て持って帰られて結構です。それと山賊の懸賞金をこちらに用意しました」


「わかりました」


 ルディールは金貨に近づき数十枚ほど袋に入れてから。


「ありがとうございました。また困った事が、ありましたらよろしくお願いしますね。少ないですが皆さんでお使い下さい」


 そう言って兵士達に袋に詰めた金貨を渡した


「あっありがとうございます。セニア様、アコット様お屋敷までの馬車が用意できてますのでどうぞ」


 その言葉でルディールをお前誰やねん!的な目で見ていたセニアが我に返る。


「あっはい……わかりました」


 兵士達と別れ五人は馬車に向かうが、村長は自分の馬車があるので、それでリノセス家に向かうので後で合流しましょうと一度別れた。


「さてと、わらわとミーナはここまでじゃな」


「あっ元に戻った」


「ルディールさん達はリノセス家に来ないのですか?」


「邪魔くさいのに行くわけないじゃろ……」


「ルーちゃん……貴族様の前でそういう事いっちゃ駄目だよ」


 えー!ルーちゃん行こうよ!としばらくアコットが駄々をこねたが、ルディールも行く所があると説明し何とか事なきを得た。


「あーそうじゃ。セニアよ。ちとこっちに来い」


 馬車に乗っているセニアを呼び二人で話をする。


「どうかしましたか?」


 ルディールはアイテムバッグの中から七色の水晶でできたバクによく似た動物の小さい置物を取り出した。


「これをお主にやろう。悪夢を食べてくれるまじないの置物じゃ。寝てる時に悪夢を見なくなり、ふとした時につらい事を思い出さなくなるアイテムらしい」


「……いいんですか?」


「お主もじゃが、妹の方も大丈夫そうに見えて、かなりこたえておるからのう……しばらくそれを飾って一緒に寝てやれ。」


「……分かりました……ありがとうございます、ありがとうございます」


 セニアは何度も頭を下げ、馬車に戻っていくと入れ違いでアコットがルディールに向かって走ってきた。


「ルーちゃん。ありがとう、そしてそうだんがあります」


「黙ってお姉ちゃんについてきたので、お父様におこられます。おこられないようにする方法はありますか?」


 それが聞こえたミーナが近づいてきて、素直に怒られた方がいいよと言っていたがルディールが少し考えてから答える。


「まずは、お主のとーちゃんに怒られる前に抱き着いて先に謝る。次に上目遣いで泣きながら会いたかったと伝えて、最後に適当に褒める。後は、普段からどこまでしたら怒られる。ここまでなら大丈夫と言うのを、とーちゃんかーちゃんと話して見極める事じゃな」


「わかりました、せんせー」


「うむ。元気でよろしい」


 ルディール達が手を振り馬車を見送るとミーナが不思議そうに話しかけてきた。


「さっきのルーちゃんと今のルーちゃんってどっちが本当なんだろね?と言うかアコットさんに変な事教えちゃ駄目だよ」


「あら?ミーナさんはどちらが、本当の私だと思いますか?今日は一日こちらでお話しましょうか?」


「……ごめんなさい。いつもの方でお願いします。ルーちゃんはセニアさんの家に行かなくてよかったの?」


「なんじゃい。お主は行きたかったのか?行くなら送って行くが、お主の叔父さんの場所を教えてからにしてくれるとありがたいのう」


「あーその話し方が安心する……悪くいう訳じゃないけど行きたくないよ……胃に穴が空くと思う」


「じゃろ?セニア達が貴族という理由で助けた訳でもないしのう。縁があればまた会うじゃろう。さてとせっかくの中央都市じゃ!まずはお主の叔父さんの所に行くのじゃ!」


「おー!」


 二人で人通りの多い道をさけ、ミーナの案内で少し歩き目的の場所に着く。そこはミーナの家に少し似ており一階が酒場で二階と三階が泊まる所になった宿だと教えてくれた。


 中に入るとミーナの父親に似た男がおり二人の姿を見ると話しかけてきた。


「おう。ミーナちゃん、いらっしゃい。兄貴から手紙が来たから部屋空けといたぞ。そっちの嬢ちゃんも聞いたぞ。おめーみたいなのが泊まる宿じゃねーかも知れんがゆっくりしていけや」


「絶対にこっちに泊まる方が、わらわにはあっとると思うんじゃ」


「ルーちゃん中身は庶民だもんね」


 その言葉を聞いて、ミーナの叔父は豪快に笑いながらルディール達に部屋のカギを渡した。


「わりーが部屋は一つしか余ってねーからミーナちゃんと嬢ちゃんで、一緒に使ってくれや。ベッドは二つあるから大丈夫だろ」


「了解した。ミーナに襲われぬ様に気を付けよう」


「しないから!」


 三階にあがりカギを開けて、これからどうするかを二人で話し合った。


「お主、持ち物はどうする?アイテムバッグに入れてあるが、ここに置いていくか?」


「う~ん…ルーちゃんのバッグに余裕があるなら持っていてほしいかな。とられる事は無いと思うけど、ルーちゃんが持ってる方が安全だと思う」


「うむ。後はお主は中央都市で行きたい所は何処じゃ?」


「もうすぐ学校で、下着とか欲しいから服屋さんと小物とか売ってる雑貨屋さんかな~、ルーちゃんは?」


「山賊達の持ち物の鑑定と換金ができる場所じゃな。後は冒険者ギルドを見て、本屋と図書館がメインじゃな」


「私も数回しか中央都市って、来た事なくて詳しくないから叔父さんに聞いて行こうか」


 一階に降りて酒場の準備をするミーナの叔父に、中央都市について詳しく聞くと中央に冒険者ギルドなどが集まった役所の様な所があり、そこで魔物の解体や鑑定などをしてくれるらしい。


 解体や鑑定が終わったあと、すぐ売れるように、周りに数々の商会の店舗があると教えてくれた。


「本屋もその辺にあると思うが、図書館は貴族が多い地区にいかねーと、ねーな」


「うむ。了解じゃ」


「後は晩飯だがうちでも食えるが、酒場だからな~、ここで食うよりよそで食った方が静かに食えるぞ」


「ふむふむ。今日は鑑定してもらって、ミーナのパンツ買いに行って終わる感じじゃな。他は明日で良いか」


「そうだけど…その言い方はやめてね」


「なんじゃい。恥ずかしがる年頃でもあるまい」


「恥ずかしがる年頃だよ!」


 二人は宿を出て目的の場所に向かい始めた。 中央都市はこの国の物流の中心であり、人や物が集まる場所でもある。空には飛竜や荷物を載せた鳥が飛び、街の中では大きなトカゲの様な生き物が荷を引っ張たりしてルディールの心を躍らせた。


「リベット村の様な静かな所も良いが、このようなファンタジー全開!な光景にも心躍るのう!」


「ファンタジーってなんだろう?人も多いからお祭りかなって思うよね!」


 道に立ち並ぶ露店で小腹を満たし、小物を見たり買ったりして、目的地に向かった。


 その場所は城を思わせる様な大きな建物がそびえ立っており、二人は少し圧倒されながら中に入った。


 入ってすぐに受付? 案内所? の様な場所があり、ルディールはアイテム鑑定のできる場所を受付のお姉さんに聞いた。


「鑑定などは冒険者ギルドの方でやっています。やはり冒険者の方々が鑑定する事が多いので、同じ場所にあるんですよ」


 丁寧に教えてくれたので二人はお礼を言い冒険者ギルドに向かった。 ギルドに近づくに連れ武装した人達が増え、二人は彼らとすれ違いながら目的の場所に着いた。

水曜日に投稿できたのでうまくいけば、次回は金曜日か土曜日に投稿できるかもしれません。

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