第146話 しらない客人
ルディールが目覚めるとやる気が漲っておりいつでも魔界にソアレを助けに行ける様な状態だったが、どこから紛れ込んだのかベッドの上にはミーナが寝ていた。
「何というか昨日のわらわは余裕がなかったら気になって来たんじゃろうか?……ミーナの事じゃから部屋を間違えた可能性もあるが……もう少し寝かせておいてやるのう」
ルディールはそう言ってからミーナの頭を撫でて、起こさない様に一階に行くとスイベルが朝食の用意をしてくれていた。
「ルディール様、本日のご予定は?」
「そうじゃな~今日は休息するつもりじゃな……明日には魔界に行こうと思うから出来る範囲で下調べじゃな。コピオン殿に話を聞いたり図書館でリノセス家やシュラブネル家から頂いた本でまだ読んでないのがあったはずじゃからその辺りを調べる感じかのう」
「そうですか……劇的に変わる様な情報は無さそうですね。魔界は危険な所と聞きますし、ソアレ様の捜索が少しでも楽になれば良いと思いますが……」
そう言ってスイベルが心配そうにしていたので、ルディールは知らない世界に行くのは慣れるから大丈夫だと言った。
それからスイベルと話ながら朝食を食べているとミーナがあくびをしながらゆっくりと二階から降りてきた。
「ルーちゃん、スイベルさん。おふぁようございます」
「うむ、おはようじゃな。ミーナよ、人のベッド入るのは構わんが……まぁ良いか、女の子じゃし言うのは止めておいてやろう」
「いやいやいやいや途中まで言って止めたら逆に気になるからね!?」
さてどうじゃろな? とルディールがからかい、ミーナも加えて三人で朝食を食べ終わったので少しゆっくりしてから、ミーナと二人で村長の家にいる筈のコピオンの元に向かった。
村長の家に行くと老人と言うには目力がある二人がコーヒーを飲みながらチェスの様なボードゲームをしていた。
「全然楽しそうに見えぬのう……」
「なんというか戦場で宿敵にあった感じの顔してるね……」
ルディールでさえ話しかけるのに躊躇するほどの雰囲気だったが意を決して話しかけた。
「村長にコピオン殿。おはようございますなんじゃが少し良いか?」
呼びかけると村長はすぐに振り向き、どうしましたか?と言ってくれたがその瞬間にコピオンの手が素早く動きボード上の駒を動かしていた。
「ああルディールか、ひさしぶりだな。悪いが少し待っていてくれ、この勝負もう少しで私の勝ちだからな」
コピオンがそう言ったの村長が鼻で笑い「この局面からどうやって勝つつもりですか?」といいボード上を見ると駒の位置が変わっており劣勢になっていた様だった。
「……コピオン?先ほどと駒の位置が変わっていますが?」
「村長、とうとうボケたか?最初から私が有利だぞ?戦場で敵から目を離す老兵が文句を言う資格は無いと思うが?」
コピオンの言葉に村長は額に血管を浮かび上がらせ静かに席に着き、駒を動かす振りをしてコピオンの顔面に右ストレートを叩き込んだ。
「失礼。老兵なので駒を置くつもりが右ストレートになってしまいましたよ。はっはっは」
村長がそう言うとコピオンは「よくある事だお互いに歳は取りたくないものだ」と鼻血をぬぐってから村長の顔面を力の限り殴った。
村長とテーブルが吹き飛び、ミーナが慌てていると村長とコピオンはお互いに首を鳴らし取っ組み合いの喧嘩が始まった。
何をやっておるんじゃとルディールは呆れて見ていたが、歴戦の元冒険者どうしの殴り合いは凄まじく明らかに骨が折れる様な音がしたり鼻が変な方向に曲がっていたりした。
そのルディールは大きくため息をつき影魔法で二人を拘束し、回復魔法をかけ怪我を治しておいた。
「村長もコピオン殿も若いのう……」
ようやく二人は落ち着くとルディールとミーナを家の中に招き入れて、先ほどの事を謝り今日はどうしたのかと尋ねた。
コピオンがハーブティーを入れてくれたので、それを飲みながらウェルデニア付近で襲撃にあった事などを正確に伝えた。
村長もコピオンもルディールの話が終わるまで一切、言葉を話さずに黙って話を聞いていた。そして話し終えるとコピオンは孫のカーディフの安否を尋ねる。
「カーディフは無事だったのか?」
「うむ。内面的な事まではわらわは分からぬが命に別状はもうないぞ。ロードポーションを飲ませておいたからのう」
「すまない。ルディール恩に着る」
「いやいや、こっちこそ礼を言いたいわい。コピオン殿がロードポーションをくれたおかげで友人達を助けられたんじゃからな」
そう言ってからルディールは頭を下げ、魔界に行く事を伝え何か情報が無いかと尋ねた。
「魔界か……ローレットの勇者が行方不明になった時にウェルデニアから秘密裏に依頼がきたな。世界樹の番人が離れる訳にもいかないから断ったが……知り合いに捜索部隊にいた奴がいたから少し話は聞いた」
「ほうほう。覚えておる範囲で良いから教えてもらえるか?」
「ああ、太古の森、ヘルテン、死手の大滝の中にある空間の歪みから魔界に行ったらしい。その頃はまだ魔列車は無かった筈だからな」
魔界にいった連中が言うには白黒の世界を抜けると魔素が濃い世界に出てそこから捜索を始め、ヘルテンから入った部隊が魔族達が暮らす大きな街を見つけたと話した。
「死手の大滝から入った連中も小さな村を見つけて話を聞いたが勇者の行方は分からなかったそうだ」
「ウェルデニアの近くは何かあったのか?」
「そっちは入ってすぐに全滅したらしいぞ。魔界と言うぐらいだ。魔を宿した奴しかいないだろうから好戦的な奴が多いのだろう」
「なるほどのう……わらわはいつでも狭間の世界に行けるからそこから魔界にどうやって行くかが課題じゃな」
「そうか……前に魔神と遭遇した白黒の世界の事か」
村長は勇者が行方不明になっていた事を知らなかったので少し驚いていたが、話を聞いていると思い当たる節もあったので頷き納得していた。
「それと魔界に行って情報収集をするなら魔都ファボスに行くといい。そこには魔界の中では比較的、知性が多い者が集まる都市だそうだ」
「コピオン殿詳しいのう。聞きに来て良かったわい」
ルディールが感心していると前に虫の魔神から聞いておいた事がここで役に立ったなと笑っていた。
「デシヤンに聞きに行くのもありじゃが……言ったら着いてくとかいいそうじゃし。争い事に巻き込むのものう……アトラカナンタとはたぶん殺り合う事になるじゃろうし」
それからコピオンに分かる範囲で色々と教えてもらい二人に礼を行ってから図書館に向かおうとすると、村長がリベット村の図書館の本には魔界の事が詳しく書かれた本は無いと教えてくれた。
「本を片付けるついでに見ましたが、コピオンが言った事より詳しいものは無かったですよ」
「流石は村長じゃな。では行かなくて良い感じじゃな」
ルディールが出て行こうとするとコピオンから呼び止められ、孫に新しい弓を作ってやりたいから世界樹の枝を少しもらって良いかと言われたので、好きに使って良いぞと言ってからルディールは村長の家を後にした。
「わらわのやりたい事は終わったのう……ミーナは何かしたいことはあるのか?」
「ん?特にないけど……ルーちゃんと話がしたいかな?最近ゆっくり出来てないしね」
ミーナがそう言ったので村というには大きくなり露店が出ている辺りを二人でのんびりと歩き始めた。
「村が大きくなっていく……」
「うむ。良いことじゃな。リベット村産の作物は高く買い取って貰えるみたいじゃから、行商もほぼ毎日の様にくるしのう」
等と話ながら二人で露店の小物を見ていると、話し声が聞こえてきた。
「全然違うけど大丈夫なのかな……」
「地図と照らし合わせても間違いないですけど……正直少し難しい所ですね」
その声の方を向くと淡い栗色の髪に角が生えた少女と執事の様な男が少し困った様に話をしていた。
「ん?ルーちゃんどうしたの?」
「うむ、あそこの人がスナップに似ていると思ってな」
「うん?男の人だからバルケさんじゃない?それは置いといてルーちゃん右手出して」
ミーナにそう言われたのでルディールは右手を出すとミーナがルディールの手首にリボンの様な布を可愛く巻いた。
「ん?これは」
「うん、おまじないだね。ルーちゃん魔界にいくから無事に帰って来られるようにね」
「なるほど、わらわの抑えきれぬ力を沈める為の封印じゃな!」
ルディールはそう言って変なポーズを取り片目を隠し開いた方の目を無駄に魔法で光らすとミーナに呆れられた。
「クラスにもそういう友達いるけど流行ってるのかな?……ルーちゃん本当に気をつけてね」
「うっうむ。わらわに任せておくがよい」
ミーナの心配そうな表情にドキッとしていると先ほどの執事の様な男と目が合いかなり驚かれ丁寧に頭を下げられた。
その光景にミーナが知り合い?と尋ねるとルディールも全く心当たりが無く、ソアレと初めてあった時のような感じじゃろうと昔話をしながら家へと戻って行った。
「ルミディナ様、魔王様がおられましたよ」
「はい?どこに」
「そこにですが」と言ってその方向を指さすと自分と同じ様な角が生えた薄い金色の髪の少女と淡い栗色の髪の少女が歩いていた。
「……この際会いにいった方が早いような気がするんだけど、スバルはどう思う?」
「良いとは思いますが……余計な事を言わないが条件ですよ」
スバルが呆れながらそう言うとルミディナは任せないと胸を大きく叩き、「心の準備をしてから行くわ」と少し自信なさげに呟いた。
村長の家と露店にいた事で思った以上に時間がたっており、ルディールとミーナが家に戻るとスイベルが昼食の準備をしてまってくれていたので三人で昼食を取り始めた。
食べていると玄関のほうから呼び鈴がなったので、紅茶を入れていたスイベルが出ようとしたのでミーナが代わりに玄関に向かった。
ミーナが玄関を開けるとそこには先ほどの少女と執事が立っていた。
「えっと……ルーちゃんのお客さんかな?少しお待ちくださいね」と言った瞬間にその少女が「お母様!」と言ってミーナの胸に飛び込み泣き始めた。
その事でルディールとスイベルも集まってきたので執事の男は大きくため息をつき、手刀を少女の首に素早く当て意識を奪い頭をさげた。
「驚かせてすみません。この方のお母様によく似ていたので取り乱したようです。私の名前はスバルと言います、少しお話よろしいでしょうか?」
次回の更新は明日のお昼には投稿出来ると思いますが日曜日になるかもしれません。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。




