第145話 始動
ルディールがミーナ達にあった事を説明している頃、ローレット大陸の上空で魔力が乱れ、小柄な少女とその従者であろう男が姿を現した。
「ねぇ、スバル……もしかして間違えた?」
「いえ、合っていますよ。どうかされましたか?」
「リベットとか無いし見た事無い城があるじゃない?」
背中には翼があり頭には角の生えた淡い栗色の髪の少女が従者の男に話しかける。
「私の記憶違いで無い限り、そこに見える村がリベットですね」
スバルと呼ばれた男の答えに自分が知っている場所とは大きく異なっていたので少女はとても戸惑っていた。
「とは言え……私の記憶とはかなり違う所があるのでリベットに行く前に少し情報収集をした方が良いかもしれませんね」
「魔王様は気難しいって話だし……変な事を言って揉める事は避けたいわね……まずはそこの街に行ってみましょう」
「分かりました、ルミディナ様」
ルミディナと呼ばれた少女が魔法を唱えると、影が二人を飲み何処かに転移したようで空はまた静けさを取り戻した。
「ソアレ姉様はリージュ様や火食い鳥の方々を助けて行方不明になったんですね……」
セニアはソアレが行方不明になり不安そうな表情はしていたが、実の姉の様にしたっているソアレがリージュやカーディフ達を助けたのでその声は誇らしげだった。
「うむ、さすがはソアレじゃな。安心せいわらわが魔界に乗り込んで連れて帰ってくるわい」
セニアとリージュはルディールにお願いしますと頭をさげた。
「えっと……ルーちゃん。すぐに魔界にいくの?」
ミーナは不安そうに尋ねたがルディールはリージュのおかげで余裕が戻っていたのでいつもの様に答えた。
「いや、魔力も減っておるし、魔界の事はまったく分からぬから少し調べてからじゃな。行くならヘルテンからじゃろうが……向こうで待ち受けられておる可能性もあるから、早くても明後日じゃな……ソアレの事は気になるが助けるのであれば準備をしっかりしていかないと駄目じゃしな」
「魔界か~」
「ミーナよ流石に今回は連れて行って欲しいと言われても無理じゃぞ」
「今日から連休だから他の所だったら行きたいけど、さすがに魔界はいいよ」
「ミーナよ、魔界は良い所一度はいらっしゃいなんじゃぞ」
「ルディールさんそれ、天国は良い所すぎて誰も帰ってこないと言ってるのと変わらない気がします……」
皆といつもの様に雑談をしているとルディールが魔界に行くので王女はその事で相談と少しお願いをした。
「ルディールさんが魔界にいくんですよね?」
「ん?王女様よ、どうしたんじゃ?」
「いえ、こんな事があったばかりなので続けては無いとは思いますが、魔神の襲撃が合った時の為に学生達の護衛を頼もうかと思っていましたが無理そうですね……」
「ソアレを助けに行けるのは今の所わらわぐらいしかおらぬからのう……」
王女様もソアレを助ける方法はそれしかなかったのでそれ以上は食いつかなかった。
「それでルディールさん。ソアレさんを助けるついでで良いので、もし勇者様の痕跡を見つけたら教えてもらえますか?」
そう言って王女様自身は見た事は無いが数十年前にファルスという勇者が魔界に行って行方不明だと話した。
その後にエルフやドワーフや魔人で高ランクPTを数十組ほど送り出したが、何の手がかりもなく国宝の聖剣ごと失ったと教えてくれた。
「勘の良い方は知っている事ですが国が隠している事なので、今言った事は皆さん黙っていてくれると助かります」
「……王女様よ。お主がトップになったらあまりそういう事はせぬようにな……ローレットには全くXランクがおらぬではないか」
「ローレット暗部のルディールさんがいるので大丈夫です!」
王女様がそう言うとその場にいた全員に冷たい目で見られたので一言謝り話を続けた。
「それで話を戻しますが勇者ファルス様か聖剣の情報を得られたら教えて欲しいのです」
「それは構わぬが……ソアレがメインじゃから本当についでになるぞ?」
王女もソアレの方が大事なので見かけたらで良い言って勇者の事について少し話し始めた。
勇者はスノーベインのミューラッカの様に魔神の血が濃くその為、身体、魔力と供に強く、先代ローレットの王に魔界の調査を命じられ行方不明になったとの事だった。
かなり前の事なので生きてはいないだろうが、ローレットの為に生きてくれた人なので、お墓を建ててあげたいと言うのが先代の願いと話した。
「物語じゃと魔王とかになってたりするんじゃが……どうなんじゃろな?」
「ルディールさんやめてくださいよ。ローレットから魔王が出たら他国に顔向けできませんよ……聖剣も聖剣と言うだけあって悪魔や魔神にかなり影響がある武器なのでもし見かけたら……」
「へし折ってやるわい。そういう恨みを買いそうな物はいらんじゃろ」
「いりますよ!武器は使い方しだいですよ!魔神相手に戦争にでもなったらどう対抗するんですか!……まぁ?ルディールさんがいくら強いといってもローレットの国宝ですし神鉄製ですから折れませんよ」
王女が冗談半分にからかいながらルディールを煽ったので、他の三人は絶対に折られるなと呆れていた。
「ソアレが無事に帰ってきたら聖剣を折るのに魔界にまた行くのも良いかもしれぬのう……っと、それは良いが学生達の護衛を探しておるんじゃろ?じゃたら冒険者の黒点と採光が空いておるから今なら雇えるぞ」
「黒点の方はあまり良い噂を聞きませんが?大丈夫でしょうか?」と王女様が心配そうだったので今回の事や前回あった時の話をして、ルディールから見た印象になるがその事を伝えた。
「黒点の方なら魔神相手に誰も欠けずに戦っておったぞ。決めるのは王女様じゃからそれ以上は何もいわぬがな」
国からの依頼ですが、学生の護衛になりますから引き受けて貰えるか分かりませんが少し話をしてみますと言ってから、リージュを気遣いミーナとセニアにまた教室で会いましょうを言って王女様は冒険者ギルドへと向かって行った。
「リージュも元気になった様じゃし、わらわもまだまだやる事があるからそろそろ行くかのう」
ルディールがそう言うとセニアが予定を尋ねた。
「ルディールさんはこれからどうするのですか?」
「そうじゃな、バルケ、スナップ、スティレ、カーディフが王都の冒険者ギルドに行っておるから迎えに行ってからじゃな」
そう言うとリージュが手を挙げて、スティレとカーディフにお礼を言いたいので二人が空いていそうだったらシュラブネル家に来て欲しいとルディールに伝えた。
ルディールも断る理由がなかったので頷き冒険者ギルドに向かおうとすると、リージュからソアレさんを助けて魔界から戻ってきたらデートに行きましょうと誘われたので、呆れながら分かったと返事をした。
「ミーナとセニアはどうする?わらわは明日はリベット村で休憩するつもりじゃが……」
セニアは父と母の手伝いをし、ミーナはルディールさえ良ければ私もリベット村に戻りたいと言ったので、リージュに礼をいい部屋から出ようとするとミーナとセニアだけが呼ばれルディールは部屋の外で待ってもらう形になった。
それからしばらくして二人が戻ってくると少し顔は赤かったような気がしたがルディールは二人を連れ冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドに着くと王女様が黒点と採光を雇った様でちょうど出て来て城へ向かう所だった、タレスとテラーがルディールに気がつくと軽く手をあげ馬車に乗り込んでいった。
そしてバルケ達を探そうとしていると、スティレとカーディフが物陰に隠れており、ルディールに気がつくと人差し指を口に当てるポーズをしてから呼び寄せた。
何事かと思って三人は静かに近づいていくとスティレが指さしたので、その方向を見るとバルケの服装の乱れをスナップが背伸びして直していた。
「……どこのバカップルか」
ミーナとセニアは真っ赤になりながらも興味津々で二人を見ており、スティレとカーディフは前から気がついていた様だったので二人の邪魔をしないという条件で皆に伝えた。
ミーナとセニアはとても驚いたが二人を祝福しスティレとカーディフも少し呆れながらだが二人を祝った。
そしてバルケとスナップがこちらに気付く様に仕向け合流し、リージュが目覚めた事や、スティレとカーディフに直接お礼を言いたい事を伝えた。
「わかった。すぐに向かおう……ルディール殿。ソアレを任せた」
「ルディ、私達じゃ魔界に行けないからお願いね」
「うむ、任せておけ。お主達もわらわがおらぬ間は任せたぞ」
と行って三人で拳をぶつけその場で別れた。
「ルディール様、ではわたくし達はリベット村に戻りましょうか」
「いや、スナップは王都のリノセス家でセニアやミーナの護衛を任せたい。正直何があるか分からぬからな……リベット村は過剰戦力じゃからな、あそこが落ちる事はあるまい」
スナップは少し思う所はあったが分かりましたと言いセニアに少しの間よろしくお願いしますわと挨拶をした。
するとセニアは少し考え、バルケに話しかけた。
「バルケさん、良ければルディールさんが戻るまでリノセス家に雇われませんか?スナップさんと同じ様に通学中の私やミーナの護衛をお願いしたいので」
「ん?それはいいが……リノセス家ならSランク冒険者か傭兵雇った方がよくないか?」
「それはありますが信用できて実力があるのはバルケさんでしょう」
バルケも現在は依頼を受けていなかったので、軽くスナップの方を見てから分かったよろしく頼むとセニアに頭を下げた。
そして冒険者ギルドからリノセス家に向かう道中でセニアの近くにルディールとミーナが集まり話しかけた。
「ふふふ、さすがセニアじゃな」
「セニア、さすがだね!」
と二人に褒められ少しセニアは照れていたが、自分の立場だったら応援してもらいたいのでとバルケとスナップに聞こえない様に話した。
それからセニアを家に送って行きソアレ姉様をよろしくお願いしますと頼まれて、リノセス夫人に見つかる前にミーナを連れてルディールはリベット村の自分の家に飛んだ。
家に着くと戻っていたスイベルがお帰りなさいと出迎えてくれたので、ミーナも釣られてただいまと言った。
「私の家じゃなかった!」
「お主の家みたいなものじゃろ」
「そういえばルーちゃん、どうしてリベット村に戻ってきたの?王都とか中央都市の方が魔界の情報を集めやすいんじゃないの?」
「ん?わらわはこの村が大好きじゃからのう。休息するならここ以外はありえぬよ。リージュに教えてもらったがさっきまでは本当に余裕が無かったからのう」
自分が生まれた村を大好きだと言って貰えたミーナは嬉しくなり、ルディールの手を引っ張って家の中へと入って行きその日はゆっくりと過ぎて行った。
次回の更新は土曜日予定だけど明日投稿できる可能性あり。
一日35004000字になると少し誤字脱字が減った気がします(0とは言って無い)いつも誤字脱字報告ありがとうございます。




