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第144話 目覚め

 黒点や採光達が調べた事を兵士達に丁寧に伝え遺体などを丁寧に合宿場に運びおおよそ引き継ぎが終わると、黒点のリーダーのタレスと採光のリーダーのテラーがルディールに話しかけた。


「さっきも説明したが魔神の方は確実に何処かに転移しているな、ウチの魔法使いに魔法で追跡させたが途中でプツリと切れてると言ってたから、そいつの話だと多分だが魔界に入ったんだろうって事だ」


「ん?ヘルテンから魔界に行ったのか?」


「いや、そこまで遠く無いって話だからこの森の何処かにも死手の大滝の様に魔界に繋がってる所があるんだろう」


「魔界か……ソアレはそこにいそうじゃな」


「あくまでも可能性だぞ。お前の様な角付きとかは別だが基本的に人間は魔界には行けないからな。障壁をずっと張り続ける事は無理だからな」


「魔素が濃すぎて確か人間は無理なんじゃよな?」


「ああ、そういう事だ。もし魔界に行くならエルフかドワーフか魔人の護衛をつけて行くんだな」


 タレスは自分の話はそこで一旦終わりだと言うと、次は採光のテラーが雇い主のルディールに報告し始めた。


「崖の近くの森の中にこんな物があった」と言いアイテムバックの中からソレを取りだした。ソレは人の皮の様でその姿にルディールは見覚えがあった。


「アトラカナンタのがわか……カーディフが見た触手の様な物はほぼ間違いなく中身じゃろうな」


「採光が調べた内容もほぼ黒点達と同じだ。エルフ達の死体も見つけたが傷が使節団が持っていた武器の傷だった」


「そうするとやはりスティレが言っていた様に少しずつじゃが、国と国の関係を壊して行くのも目的の一つなんじゃろな?まぁ……大元の目的は全然わからぬが」


 黒点や採光と話しているとリノセス公爵もやって来たので、もう一度同じ事を説明すると、シュラブネル公爵に手紙を書きその情報を送るといった。


「早いに越した事は無いだろう……エルフや人間を操れるなら数人ほど生かしておいてローレットの人間に襲われたという事にするかも知れないからな……というかその魔神の皮、気持ち悪いな」


「玄関にでも飾りますか?」


「どこの邪教徒だよ。話だとその中身が本体なんだよな……」


「寄生虫の魔神なので中身だけでは生きて行けないので、こういうがわが必要なので少し違いますが本体で間違いないですね。この皮もらっていいですか?出会ったら突き返してやろうと思うので」


「それを使って捜索魔法かけてもいいが……魔界まで行っていたらどうしようも無いしな。シュラブネル公爵には俺から話しておくから持って行っていいぞ」


 ルディールはリノセス公爵に礼を言ってからアトラカナンタのがわをアイテムバッグの中に仕舞い次の指示を仰いだ。


 だが、シュラブネル公爵の言った様に兵士達への引き継ぎが終わっておりこれからは国が関わってくる事なので、ここに居て手伝ってもいいが自分達でソアレの捜索に行っても構わないと言われた。


「分かりました。こちらでも情報が入りましたらお知らせしますので失礼します」と言い、もう一度リージュに会いに行こうとした所でリノセス公爵から呼び止められた。


「ルディール・ル・オント。ソアレの事を追いかけて魔界に行くのはいいがウチのセニアやアコットを泣かさないようにな」


「任せておいてくださいと言えるほど自信は無いですが……大丈夫だと思います。公爵も十分にお気を付けください」


 そう言ってルディールはもう一度頭を下げてから仲間達と黒点、採光を連れて王都の冒険者ギルドの中庭まで転移し、職員さんに頼み部屋を借りこれからを話し合った。


「まずは黒点と採光達よありがとう。お主達のおかげで大方の行き先が決まったわい」


 ルディールはそう言って頭をさげ追加報酬で黒硬貨を二枚ずつ渡しておいた。


「お前な……半日もいないし痕跡を探すだけでそれだけ払うなよ」


「わらわからすればそれだけ価値があった事だから気にせず取っておくんじゃな」


 タレスが頭を掻いていると黒点のメンバー達がいらないならメンバーで分けますよ?と言って怒られていたが採光達はルディールに頭を下げ受け取った。


「わかった、ありがたくもらっておく。それでお前は魔界に行くのか?」


「うむ。シュラブネルの令嬢が目覚めて少し話をしたら向かうかのう」


「そうか……一つ忠告だ。一歩引いて物事を見るようにな、先走る奴から帰って来れなくなるぞ」


「……うむ。よく分からんが忠告感謝じゃな」


「分かるだろ!はぁ……依頼料ももらいすぎているからな、冒険者ギルドの方でも雷光の情報を聞いといてやるよ」


 そう言って黒点達は出て行ったので採光達も後に続き、部屋にはルディール達が残った。


「ルー坊、悪いが俺とステ公と平べったいのは冒険者ギルドに報告に行って来るわ」


「誰が平べったいのか!」


「ステ公……」


 カーディフがバルケの後頭部を殴りスナップに自業自得ですわと言われ、頭を押さえながら今回の事は黒点や採光も報告しているだろうが当事者達も報告しておいた方がいいとルディールに伝えた。


「うむ。その方が良いじゃろうな……スナップ悪いがそこの余計な事を言いそうなバルケに着いて行ってやってくれ」


「それは構いませんが……ルディール様は大丈夫ですの?」


 スイベルもいるしリージュの容態を確認しに行くだけだから大丈夫だと言って、ルディールはスイベルを連れてもう一度シュラブネル家に向かった。


 その道中でスイベルがルディールに質問してきた。


「ルディール様、少しよろしいでしょうか?」


「うん?……というかバルケとスナップか?」


「はい。二人の距離が近いので、もしかして付き合い始めたのでしょうか?」


 そう言ってスイベルはソアレの痕跡を探している時にバルケの胸の中でスナップが泣いていた事などをルディールに話した。


 ルディールはヘルテンに行った時にかなり色々あり、とりあえず友達同士から始めましょうと言う事に落ち着いたとスイベルに伝えた。


「その話を聞いておると、もう一歩進んだ感じじゃのう……スイベルじゃから大丈夫と思うが出来れば応援してやって欲しいとは思うがのう」


「からかうより影ながら見ている方が面白いので応援しながら見守ります」


「スナップとスイベルは子供は出来たりするのか?ほとんど人間と変わらんのじゃよな?」


「骨格が違うだけで皮膚や内臓はほとんど人間と同じなのでやれば出来ますよ……からかうのは良くないですが。一度、バルケお義兄さんとお呼びしてもいいですか?」


 ルディールがその時は呼んで欲しい等と話しているとシュラブネル公爵家に着いたので呼び鈴を鳴らし中へ入れてもらった。


 そしてバンティスと呼ばれた執事に案内されもう一度リージュの部屋に行くと母親はおらず、先ほど来た時と同じ様に微動だにせず静かに寝ていた。


 執事がルディールを残し静かに部屋を出て行くとルディールはリージュの隣に座り、母親と同じ様に頭を撫でた。


「いくら体や魔法が強かろうが友人達を守ってやれないならあまり意味はないのう……」


「ルディール様、そんな事はありませんよ。私や姉さんを救って頂きましたし沢山の方を助けていますよ」


 スイベルにそう言われたので思う所はあったが素直に礼を言ってからルディールは自分にはこの世界は少し辛いと涙を流した。


 そしてその涙がリージュに一滴落ちると、リージュは身じろぎしてからゆっくりと目を覚まし目の前にいる人の名を呼んだ。


「……ルディールさん?」


 名を呼ばれたのでルディールは涙を拭ってから笑顔で答えた。


「うむ。ルディールさんじゃぞ。リージュよ、おかえり」


 目が覚めた時に自分の大好きな人が目の前にいたので少し恥ずかしそうだったが、ゆっくりと自身に起こった事を思い出し始めた。


 その顔がみるみるうちに青くなっていったのでルディールはリージュを静かに抱き寄せ、頭を撫でてやった。


「リージュよ……わかっておる。もう大丈夫じゃぞ」


 ルディールがそういうとリージュは堰を切ったように泣き叫び、何度もソアレ達の名前を叫んだがその度にやさしく背中をなで続けた。


 


 長い時間、子供の様に泣き叫びようやくリージュが落ち着き、火食い鳥の事などを尋ねて来たのでルディールは気遣いながら事の経緯を説明した。


「……そうですか。スティレさんとカーディフさんは無事なんですね」


「うむ。ピンピンとは言わぬが元気にしておるぞ。後でお主が起きたと教えてやれば喜ぶじゃろう……その前にスイベルよ。済まぬがリージュが起きたと伝えてくれるか?」


 スイベルは分かりましたと頭を下げ、部屋を出て誰かを呼びに言った。


「ソアレさんは行方不明なんですよね?」


「うむ。じゃが色々な人達のおかげで、多分魔神に寄生され魔界におると解った感じじゃな。お主も起きたし、すぐにでも向かうつもりじゃな」


 そう言うとリージュは静かにルディールの手を取り少しふらつきながらベッドから立ち上がった。


「リージュよ!どうした立ち上がって大丈夫か?」


 ルディールが心配しながらリージュに手を引かれるとリージュが普段使っているだろうと思われ鏡面台にルディールを座らせた。


「ルディールさん……いつも心配してくれてありがとうございます。でも一度、自分の姿を見てください」


 意味は分からなかったが鏡を見るとルディールが映っていたが、その姿はひどく顔は涙の後や汚れがあり、美しい髪はボサボサになり、立派な角には葉っぱが付いていたり、服は乱れていたりと散々な姿だった。


 ひどい顔じゃなとルディールが感想を言うと、リージュが櫛を持って静かにルディールの髪をとかし、薄く化粧をして涙の後を隠し服を整えると、自分の顔が見えない様に後ろから抱きつきルディールに話しかけた。


「ルディールさん……貴方は私の憧れです。どんな時でもいつもの自分を忘れないでくださいね」


 ルディールは友人達が傷つき倒れたので心に余裕がなくなり、執事の前で指輪の能力を使う等のミスをしたがリージュの行動で少し余裕が戻ってきた。


「そうじゃな……リージュよありがとう。余裕が無かったようじゃから助かったわい」


「いえいえ、どうしたしまして……ルディールさんもう少しこのままでいいですか?」


「うむ。少し恥ずかしいが、わらわの方こそお願いしますじゃな」


 リージュがルディールの背中に抱きついてしばらくすると、部屋の扉が大きく開け放たれ、見知った顔がリージュを心配し入って来た。


「リージュ!大丈夫ですか!」


「王女様!リージュさんが心配なのは分かりますがそんなに強く開け放つとビックリしますから!」


「王女様!ルーちゃんみたいな事したらだめですよ!」


 と、王女様とセニアとミーナがリージュを心配してやってきたが、ルディールに抱きつくリージュの姿を見てごめんなさいお邪魔しました!と謝り部屋を出て行った。


「はぁ……あの三人は元気じゃな、さてリージュよ誤解を解く為に呼んでくるわい」


「ふふっ。誤解じゃないので解かなくてもいいですよ。でもせっかくお見舞いに来てくれたので呼んできてもらえますか?」


 ルディールも三人に今回の事を説明しないしないといけないので、リージュをもう一度ベッドに座らせてからゆっくりと探しに向かった。

次回の更新は金曜日予定になります。


いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

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