第135話 旧坑道
バルケを先頭にヘルテンの冒険者ギルドに向かうとそこには大きく立派な建物があり多種多様な冒険者達が出入りしていた。
「偏見じゃが冒険者ギルドにくると絡まれるイメージしかないのう。後、受付は基本的に美人さんとかじゃな」
「絡まれる方は偏見だろ……受付の方は王都で実験してたな。美人とかイケメンにしたら依頼の達成率が少しだが上がったんだとよ。長期的な面でみたらその方がいいって事でそういうのになってるな……ギルドのお偉いさんの好みが出てくるけどな」
中央都市のギルドの職員さんは眼鏡をかけてただろ?そういう事だと言って冒険者ギルドの裏話を教えてくれた。
「そうじゃない所もあったりするが大体そんなもんだぞ。メイド服の職員もいたりするからな」
「何というか職権乱用じゃな……」
「冒険者ギルドのトップになろうと思ってもそう簡単になれねーしな。最低でもAランク相当の実力と色々テストがあるみたいだから、ある程度のわがままは許されるんじゃねーのか?」
「冒険者を纏める様な仕事ですものね」
そんな事を話しながら冒険者ギルドの中を通り受け付けに行き依頼の事を尋ねた。
「ヘルテンの冒険者ギルドへようこそ。どういったご用件でしょうか?」と若い女性の職員さんが言ったのでバルケは旧坑道の水の依頼について説明を求める。
「知り合いから旧坑道に貯まった水の依頼を受けてくれと頼まれたがまだ残ってるか?」
少々お待ちくださいといい、ボソボソと何かを唱えると職員さん達の後ろにある巨大な本棚の中から二、三枚の羊皮紙が飛んで来て職員さんの前に止まった。
「ありましたが、Bランクのより上でないと受ける事ができないのでギルドカードを見せてもらえますか?」
そう聞かれたのでバルケはアイテムバッグの中からギルドカードを取り出し職員さんに渡すとまた何か魔法の様な物を唱え小さな魔方陣を掌に発生させた。
そしてその魔方陣の上にバルケのギルドカードを乗せるとカードも光りだし、何かを読み取り光が消えるとバルケに礼を言ってから返した。
「バルケ様、ありがとうございます。Aランクと言う事が確認できましたのでこの依頼は受ける事ができます。応接室で詳しく説明しますがどうされますか?」
職員さんにそう尋ねられたのでバルケはルディールとスナップの意見も聞きたかったので二人に訪ねた。
「どうする?水を抜くぐらいだからそこまで詳しく聞かなくてもいいと思うが……聞いとくか?」
「バルケ様……どうしてそう短絡的なんですの」
「古い坑道とはいえ地図ぐらいあるじゃろうし聞いておいて損はあるまい。職員さん。わらわとこのメイドさんは冒険者ではないが一緒に話を聞いても大丈夫なのか?協力者という感じなんじゃが……」
「はい、大丈夫ですよ。冒険者の方々に協力して依頼をこなす人は多いので。ではこちらへどうぞ」
職員さんは立ち上がり奥へ向かったのでルディール達も後を追った。
他の職員さん達が忙しく走り回る廊下を抜けて応接室に案内されると紅茶を入れてくれてから坑道の地図を用意してから説明を始めた。
「まず先にバルケ様、この依頼を受けて頂きありがとうございました。誰も受けてくれないので半年ほど放置されていましたので……」
「どうして誰も受けなかったんだ?そこまで危険な依頼じゃねーだろ?」
「依頼料が安すぎるのと溜まった水がかかれば数週間は回復無効なので冒険者の方々は嫌がります。その間は冒険者業はできませんからね」
ある程度は坑道に穴を開けて進みますが通路の関係もありどうしても水の中に入らないと駄目な所があり距離があるので、並の魔法使いだと水よけの魔法が最後まで持たないと話した。
「AランクやSランクの方々が受けてくれるような依頼でもありませんし……」
「それならCランクでも受けられる様にすればよかったのでは無いのか?横から口だししてすまぬが」
「大丈夫ですよ。旧坑道なので街に害を及ぼすほどの事はないですがCランクでは少し手こずると思われる魔物が出てくるので安全策を取ってBランク以上にしています。水を抜くだけでお亡くなりになられたら私達職員も辛いので……」
職員さんの説明にルディール達も納得できたので、次は出現する魔物や水を除去する方法を尋ねた。
「バルケさんはAランクですのでそこまで注意する魔物や魔虫はいませんが……洞窟ムカデや鎧ガザミ……あとはシャベルモグラ等々」
「じゃあ、そこまで凶悪な魔物はいないんだな?穴蔵トカゲとか紅山椒とか」
「いませんいません。この辺りは確かに魔界に近いですが冒険者の数も多いので人に害をなす魔物や獣はすぐに討伐されるのでバルケさんが言った様なAランク相当の魔物は坑道にはいませんね。少し離れると大量にいますが……百目牛とか討伐ありますけどついでに受けますか?」
「ついででSランクが受ける依頼を受ける訳ないだろ……」
雑談を交えて話をし溜まっている水について尋ねると机に広げた地図に印がして有り、この場所に穴を開けると溜まった水が地下水脈に流れると話した。
その水を流すのは良いが生態系に影響が出ないのかとルディールが質問すると溜まっている場所から離すと一日もしない内にその効力をなくすと言った。
(古の腐姫の墓につながってる水が回復無効って感じなんじゃな)
それから職員さんに旧坑道の地図に最短で安全なルートを書いて貰いその地図を受け取り礼を言ってからルディール達は冒険者ギルドを後にした。
「それでバルケよどうする?このまま行っても良いが」
「さっきのねーちゃんも言ってたのもあるが、この地図を見てもわかるが余裕で一日半ぐらいはかかるから食料とかの買い出しだな。ルー坊とスナッポンもいるからマジックテントとか買ってもいいかもな」
「あの合宿の時に学生達が使っておったヤツか……」ルディールはそう言ってスナップにマジックテントの事を説明し意見を求めた。
顎に人差し指をあて少し考えてから必要ないと話した。
「そこまで強くないとはいえ魔物の出る場所でそこまで気を抜いていい物ではありませんし、睡眠もそこまで必要ありませんから無くても大丈夫ですわ」
ルディールとバルケは頷き必要な物を買いそろえる為に市場の様な所に向かいそこで三人分の食料とランタンの燃料や必要な物を買っていった。
「ルディール様がいるのにランタンの燃料とか魔除けのアイテムがいるんですの?」とスナップは不思議におもいバルケに訪ねた。
「ああ、地図を見た感じだと迷路みたいになってるからな。もし崩れてはぐれたりした時の為だな」とバルケは説明し軽く笑った。
必要な物をそろえ鉱山に向かうドワーフ達と一緒に巨大なトカゲの背中に乗り、坑道へと向かった。その道中でこの生き物ついて訪ねると分類的にはドラゴンの仲間で鉱石を主食としているので大昔からドワーフと共生関係にあると教えてくれた。ドワーフが鉱石を掘りそのドラゴンが外敵から身を守りその報酬で主食の鉱石を分け与えるという話だ。
そして鉱山に着くと途中に分かれ道があり乗っていたドワーフに旧坑道に行くなら向こうの道だと教えてもらったので、ルディール達は礼を言ってからドラゴンから降りた。
旧坑道に行く道は古く錆びたトロッコの線路がまだ残っておりこれをたどって行けば目的の場所のようだ。
「ここからしばらく歩くと大きな門と鉱夫達が使っていた建物があるってギルドのねーちゃんが言ってたな」
「魔物とかが出るのは旧坑道からなんじゃろ?」
「ああ、この辺りはさっき乗ってたドラゴンが定期的に徘徊して食ってるらしいからいないらしいぞ」
「襲われたらどうするんですの?」
「頭と鼻がいいから匂いで魔物と人とかの区別がつくんだとよ」
そんな事を話しながら薄暗い線路がある道を歩いていると時折、天井を先ほどのドラゴンが歩いておりこちらを見ると鼻をスンスンと動かし去っていった。
「おとなしそうな感じじゃが強いんじゃろか?」
「ドラゴンって名前がついてるぐらいだから多分強いぞ。有事の際にはドワーフ達が造った鎧とか着るしな」
それからしばらく歩いていると小屋というには重厚な建物がありその近くには凝った作りで少し錆びた巨大な鉄格子があった。
鉄格子には「ここからは旧坑道!現在ドワーフ以外使用禁止」と大きく書かれており鍵もかかっていたので勝手に入って良いものか? 三人が少し戸惑っていると重厚な建物の中から何人かのドワーフ達が出てきた。
冒険者ギルドから依頼を受けてくれた冒険者がいると連絡があったと話しルディール達に依頼を受けてくれた事に礼を言った。
使われていない坑道にどうしているのかと尋ねると、使われていなくてもある程度は見回りをしないと何があるか分からないし、自分達の家系は代々、古の腐姫様の墓守だと話した。
「ここの小屋も坑道が使われていた頃はほかの連中も使っていたから案外住みやすい、外に出るにしても岩砕きに乗って行けばすぐだからな。岩砕きってのはここに来るまでに乗ってきたドラゴンの事だ」
それから墓の事を少し話しているとドワーフ達が少しニヤニヤとしていたので、ルディールが剣士とメイドの方じゃなと言うとバルケの背中を叩き「頑張れよ!にーちゃん」と言ってからその巨大な鉄格子を開けてくれたのでルディール達は礼を言ってから奥へと入っていった。
「ルディール様、先ほどのドワーフさん達のはどういう意味ですの?」
「ああ、俺も意味が分からねーが……というか力がつえーから背中がいてー!」
「よく分からない事なら良い風に取っておけば良いぞ。旧坑道の攻略を頑張れでよいじゃろ。わらわも正直よく分からんしのう」
ルディールがそう言うとバルケがため息をつき、おまえの顔みたら分かるが……分かって言ってるだろと言い、あまり気にしないようにして先を進み始めた。
鉄格子があった辺りは場所によっては空が見えていたので比較的明るかったが、旧坑道に入って少し歩くとランタン無しでは先も見えないぐらいに暗く、スナップが何かに躓きそれをバルケが助ける光景がルディールの目の前で行われていた。
(アニメや漫画で見るとそんな事ありえんじゃろ!とか文句を言いながらみておったが実際に目の前でやられると応援したくなるから不思議なもんじゃな~)等と考えながら坑道で注意する事をバルケに尋ねた。
「バルケよ、周囲を明るくする魔法があるんじゃが使っても大丈夫か?わらわは鉱山とか初めてじゃから使って良い物かどうかかは分からんのでな」
「松明とかならガスが溜まってたりしたら火が付くこともあるが魔法なら大丈夫だな。流石にランタンだけじゃ暗すぎるから点けてくれるか?」
「うむ、任せておけ。光魔法はこちらの世界に来た時に洗礼を受けたからのう……かなり練習したから大方なんでもできるぞ」
そう言って詠唱すると小さな球体が現れ暗かった坑道内を明るく照らし、ルディールが魔力を込めると青い光になったりチカチカと発光したり様々な事が出来る様になっていた。
そしてルディールがピンク色にするとスナップには聞こえていなかったがバルケが娼館みたいだなと言っていた……
「バルケよ……友人としての忠告じゃ。思っていてもそういうのは真面目に言わぬ方が良いぞ」
「あっ、すまね……」
スナップはルディールの出した光の球体に興味津々で、ルディールに様々なリクエストをだしていた。
ルディールの魔法のおかげでかなり明るくなり光を嫌う魔物などは襲って来なかったのでバルケは地図を確認しながら進んだ。
途中で崩れた道もあったが冒険者ギルドの職員さんの情報は正確だった様で行き止まりになる事はなかった。
起伏の激しい場所や湿った場所、キノコが生えた場所などを通りヘルメットとサングラスをつけたモグラと遭遇したりして先を進んでいると、少しだけ広い場所にでたので少し休憩しようと言う事になった。
バルケはその場にあぐらを掻いて座りルディールとスナップは魔法障壁を適度な高さに張りその場に座った。
「感じ的にどんなもんじゃ?」ルディールがそう聞くとバルケは水を飲んでから答える。
「まだ三分の一も来てねーな。ルー坊の魔法のおかげで明るくて進みやすいし戦闘になってないから進みは速いがそれでも遠いな」
「坑道ですから仕方ありませんわ。整備された街道とは違いますから」
バルケはそうだよな~とぼやきもう少し休憩してから行くかと言ったので、スナップはアイテムバッグの中から紅茶の準備をして皆に振る舞った。
「スナップよありがとう。毎日のんでおるが場所が変わると味も変わるんじゃな」と言ってゆっくりしているとルディールの索敵魔法に何かが引っかかりバルケも戦闘態勢に入った。
「ルー坊、何か来るぞ」
「うむ。敵対する感じはせぬから……職員さんが言っておった様な魔物か?」
進む方向からこちらに向かって気配が近づいて来たので少しピリピリとした気配になり、ようやく姿が見えるとその姿は二足歩行の虫でルディール達の知り合いだった……
「デシヤン……そう言えばお主も来ると言うておったな」
緊張の糸が切れたのでどうやって入ったのかと聞くと入り口にいたドワーフ達に言えば快く開けてくれたと話しついでに迷子中だと言った。
「……休憩してから一緒に行くか?」
「すみません……お願いします」
そしてスナップがイオスディシアンの分も紅茶を入れてあげ少し軽食も取ってから、一人増えたメンバーでまた奥へと進んで行った。
次回の更新は金曜日予定です。
一日一万時書きたい!と思う今日この頃。いつも誤字脱字報告ありがとうございます。




