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第134話 行方

 ルディールが新聞を読み終わりゆっくりしているとバルケとスナップがやってきたが、バルケの顔にははっきりと分かるぐらいに手形が着いており、スナップの髪は少し乱れ顔は赤くなっていた。


「……おはようじゃな」


「おっおはようございますですわ」


「おはようさん……そして何も聞かないでくれた事にありがとう」


 バルケとスナップが朝食を取り始めたのでルディールもデザートを食べながら今日の予定を話し合った。


「ルディール様、今日はどういうご予定ですの?」


「バルケアーマーの完成が明日ぐらいだとガンテツ殿が言っておったからのう、観光と調査じゃな」


「わかった。じゃあルー坊のやりたい事に付き合うか」


 バルケはそう言ってくれたがルディールは二人の顔を見てから断り一つ頼み事をした。


「いや、わらわは図書館に行くからお主達が良ければ少し頼まれてくれぬか?」といい昨日砕けた不実の指輪を取り出した。


「スナップとバルケはすまぬがこの指輪が修理ができるお店探しと魔列車と駅の調査を頼みたい」


「ん?それはいいが……指輪の修理できる所を知ってるから俺が一人で行ってルー坊とスナッポンで駅の調査と図書館に言ったほうがよくねーか?」


 そうバルケが意見したのでルディールはこの鈍感男がという様な顔でバルケを見てから理由を話した。


「お主、デシヤンの話を聞いておったか?わらわが駅に行ってあの姿になって理性を無くした魔神になったらどうする?止めてくれるか?」


「いや、それは無理だが……」


「そうじゃろ?それにバルケとスナップは強いが単体でもしもアトラカナンタに遭遇すれば負けるじゃろう?二人でおればわらわが駆けつける時間は余裕で稼げるじゃろ」


「ですが、ルディール様お一人で図書館で調べ物をするのは大変なのでは?」


「わらわは自分で思っておる以上に本が好きっぽいのでな、大変な事もそれがまた楽しいからのう。というかスノーベインに行った時の様にがっつりとは調べぬから大丈夫じゃぞ」


「わかりましたわ、ではバルケ様と行ってまいりますわ」


 そう言って二人もいつも通りだったのでこの二人全然気づいて無いな……と考えていると二人とも食べ終わったので、一度部屋に戻り後から合流する事になった。


 スナップと部屋に戻り指輪の修理代金がいくらかわからないので少し多めに渡し軽く説明した。


「直せそうじゃったら直してくれれば良いが、似たような指輪があったらそれを買ってきてくれてもよいぞ」


「わかりましたが、ルディール様は本当に大丈夫ですの?」


「うむ、本屋と図書館に行くぐらいじゃしな。駅の方にも興味はあるが今日はパスじゃ」


「わかりましたわ。ご期待に添えられるかどうかはわかりませんが調査してまいりますわ」


(スノーベインに行った時はミーナとセニアをからかっておったのに自分の事は鈍感なんじゃな~。お互いにいいように思っておらねば酔っておったとは言え人前でキスはすまい)


 二人のこれからの事を考えて少し笑っているとスナップに不思議そうな顔をされたので、簡単にごまかし遊びに行くぐらいの気軽さで調査してくれれば良いぞと言って部屋を出た。


 そしてロビーに行くとバルケがすでに待っており身だしなみを整えていたようで顔の手形も消えており、ルディールにだけ聞こえるように礼を言った。


 ルディールも何も言わずにうなずき二人と別れてまずは図書館へと向かった。


 図書館はこぢんまりしていて王都や中央都市に比べれば遙かに小さかった。受付で手続きをすると他の図書館の様に音消しのミサンガを貸してくれなかったのでその事を尋ねるとそこまで人はいないと言っていた。


 受付の人が言う様に中に入っていくとほとんど人がおらずルディールの足音だけが聞こえるような状況だった。


 本の種類は魔法工学の本などがメインでルディールが読みたい歴史の本などは思った以上に少なかったが、その中から気になった物を数冊ほど手に取り窓際に行き読み始めた。


(……魔法工学かなり面白いのう。銃とかも一応はあるっぽいが弓が主力なんじゃな?……こっちの世界のアーチャーを見ておると銃とか必要無いのかもしれぬのう)と友人とその祖父の弓を使う姿を想像していた。


 そんな事を考えながら本を読み進めていくと旧坑道の一番下の祠に古の腐姫の墓があると書かれていた。


 他に持ってきた本と見比べて調べると元は天使だったが、地上に降りてきた時にドワーフに恋をしたがドワーフは天使に見向きもせず武器や防具を作るのに精を出した。誰に向けるでもない嫉妬心が天使を地に墜とした。千年前の戦争では天使は全てのドワーフを守る為に戦い散っていった。

 そして天使に愛されたドワーフは失ってから初めて大事な物に気付き自分の生涯をかけ天使の墓を作り上げた。


「ゲーム中だと堕天しちゃったとか言っておるキャラだったのにのう……こっちの世界じゃとかなり真面目そうな感じなんじゃな」


 などと考えながら読み進めていくと現在は古の腐姫の墓までは水が溜まっており行く事が出来ないと書かれていた。


「ん?と言う事は古の腐姫の何かが影響して溜まった水を回復無効の水にしておるんじゃろうか?少し気になるのう」


 大方読みたい本を読み終えたので次は本屋を巡ろうと外に出ると、いつの間にかお昼を少し過ぎていたのでルディールはその辺の屋台で何かを食べながらのんびりと人混みを眺めているとバルケとスナップが一緒に歩いているのを見つけた。


「バルケとスナップか~。見た目は子供っぽいがしっかりしておるし見た目も美人じゃしそれで自分と同じぐらい強いから惹かれたんじゃろな~。スナップは強敵じゃからちゃんと伝えぬと伝わらぬぞ」


 誰に言った訳でもない独り言だったが的を射ており、バルケの方は少しうかれていたがスナップの方は真面目にルディールに頼まれた調査などをこなしているようだった。


「この距離でわらわに気づいてないならその内くっつきそうじゃな。まさに恋はモクモクじゃな」


 ルディールが屋台で買った鳥の串の様な物を食べながら感想を言っているとデシヤンが近づいて来てどういう意味ですかと尋ねた。


「うむ、恋をすると煙や蒸気がかかった様になり周りが見えなくなるって事じゃな」そう言って何本か買った鳥の串を数本デシヤンに渡し食べながら話した。


「それでデシヤンはどうしたんじゃ?」


「はい、ルディール様を見かけたので挨拶をと。後、古の腐姫の墓を見に行こうと思いましてその為に武器を買いに行こうと思っています。虫にばかり頼りすぎているのでもう少しルディール様の様に近接戦も視野に入れていこうかと」


「よし、良いもの見られて気分が良いからのう。わらわも一緒に行って良いか?」


「それはありがたい事ですが良いのでしょうか?」


 ここにいてバルケやスナップに気付かれて変に気を使われては面白くないので、二人に応援しておるぞとだけ言ってからイオスディシアンと昨日行った武器や防具が並ぶ地区に向かった。


 ルディールもまだヘルテンに詳しくなかったので昨日来たガンテツの店にやって来ると休憩時間だった様で火事かというような勢いで煙があがるパイプ式のたばこをふかしていた。


「ガンテツ殿がそうやって煙草をふかしているとなかなか絵になるが……向こうが見えないぐらい煙がでておるが大丈夫か?」


「昨日の角付きの嬢ちゃんか。バルケアーマーはまだだぞってバルケはどうした?」


「メイドさんもおらぬじゃろ?そういう事じゃな」


「はーあのバルケがな~。一時は隣の国の姫さんに言い寄られてたとか聞いたが、今はメイドとちちくりあってるとか羨ましい奴だな。小さい子が趣味なのか?」


「否定は出来ぬが……ああ見えてメイドさんはバルケより上じゃからな~甘えたいのかものう」


「魔法使いとかなら見た目以上に年食ってる奴もいるからそういうもんか、ドワーフもエルフも似たようなもんだしな……それで今日はどうしたんだ?」


「うむ、知り合いの魔神のデシヤンが剣を探しておってな、よかったら見繕ってくれるか?」


 ルディールがそう言うと頭を掻きながらしゃーねーなと言い着いて来いと店の中に入って行ったのでルディール達も後をおった。


 そして中に入ると上から下まで何度もイオスディシアンを観察し少し質問をした。


「デシヤンだったけか?お前は……剣はほぼ素人だな?と言うか近接戦がメインって訳じゃないだろ?」


 ガンテツが見ただけで当てたのでルディールもイオスディシアンも驚いたが、その通りだったのでそうだと答えた。


「だとしても魔神だしな……そこら辺の剣士よりは遙かに戦えるか……お前さんは複眼か?」


「ああ、人間に化けた時にみたが人とは見え方が異なるから、この姿の時は複眼だ」


「なるほどな、魔神だし寿命も長いか……」


 そう言ってから壁に掛けてあったシンプルな両刃の剣を持って来た。


「魔神だし魔力も多いから魔法剣とか自動追尾の蛇腹剣でもいいんだが、そういうのは剣になれてからの方が俺は良いと思うからシンプルな剣だ」


 イオスディシアンはその剣を取り眺めるとその刃に自分の姿が映っており引き込まれそうな綺麗な刃をしていた。


「材質は極光鉱だ。魔力を武器に纏うように流してみな」


 イオスディシアンはガンテツに言われた様に魔力を流すと刃の色がかわり美しいオーロラの様に輝き出した。


「切れ味はオリハルコンには劣るが魔力を流す力は遙かに極光鉱が上だからな、お前さんは魔神だから魔力を使った戦い方もしねーとな」


 イオスディシアンもその剣が気に入った様ですぐにその剣を買いついでに鞘も買い、着いて来てくれたルディールに礼を言った。


「ルディール様、お忙しいのにありがとうございました。」


「それは構わんが……デシヤン、お主の見た目で剣とか持ったらいかずちはねてソードが走りそうじゃから相方に妖精がいるぞ」


 真面目に変な事を言ったが二人には通じないので不思議そうな顔をされていた。


「よし、角付きの嬢ちゃん。今日中にはバルケアーマーを仕上げておくから明日の朝一で取りに来いってバルケに言っておいてくれるか?」


「うむ、わかったわい。流石に今日は帰ってくると思うから伝えておくわい」


「おう、朝帰りしたら来なくていいぞ」と大笑いしながら工房に戻って行ったのでルディールもデシヤンを連れて本屋などを巡ったりしていると、日も沈み夜になったのでまたデシヤンを連れて宿に戻るとスナップ達も帰って来ていたので、四人で夕食になった。


 そしてスナップが今日の事を報告しポケットの中から修理された不実の指輪を取り出しルディールに説明した。


「バルケ様が腕の良い職人を知っていましたので直してもらいましたわ。簡単な調整の方もしてもらったのでAランク辺りには見える筈ですわ」


「次は頼むぞ、不実の指輪よ……」


「俺達が行った所は昔からある店だからな、たぶん大丈夫だと思うぞ。追加で少し取られたが性能も上げてもらったからな」


「うむ、ありがとうじゃな。お金は足りたか?」


「はい、大丈夫ですわ」とスナップが言ったのでそれからルディールがイオスディシアンと武器屋にいった事などを話し、明日の朝一でガンテツが来るように言っていた事を伝えた。


 食事もおわりルディールが遠回しに今日あった事をスナップに尋ねると昼に見たまま変わらず特に進展は無かった様だった。


 そして昨日と同じようにスナップがお風呂に入っていると通信魔道具が鳴り今日はリージュからだった。


「お?今日はリージュなんじゃな?」


「ソアレさんの方が良かったですか?」


「安心せい、どちらがかけて来てくれても嬉しいわい」


「そういう事にしておきましょう。まぁソアレさんに伝える時は私からかかって来た方が嬉しいと伝えておきますが……ちなみに今はスティレさんに怒られて正座させられていますね」


「それを言うとお主が痛い目をみぬか?……何かお主と口喧嘩しておった頃が懐かしいのう」


「そんな事もありましたね~。あの頃はソアレさんも私に様付けだったのに……人は変わるものですね」


 そして他愛もない話をしていると明日からリージュとシュラブネル関係の使節団がウェルデニアに向かうと言い、もしかしたらしばらく通話できないかも知れないと話し、ルディールも気をつけてなと心配してから少し話をして通話を切った。


 そしてスナップがお風呂から上がってルディールも入りそろそろ寝ようかな? と思った頃にまた通信魔道具が鳴り、ソアレからリージュさんからの方が嬉しいってどういう事ですか?と連絡があった。


 そんなハプニング? が有りつつその日は過ぎていき。次の日も朝食を食べてスナップとバルケが集まってからガンテツの店へと向かった。


 ガンテツの店に着くと約束通り鎧ができておりすぐにバルケが試着し微調整などを施した。


「ばっちりだな。ガンテツさんありがとう!そういや何で早く仕上げてくれたんだ?」


 バルケがそう尋ねるとどっこいしょとイスに座りパイプ煙草をふかせて話し始めた。


「バルケよ、わりーがヘルテンの冒険者ギルドで依頼を受けてくれねーか?」


「ん?良いがどういうやつだ?装備の性能も見たいからルー坊やスナッポンが良いならの話だが……」


「危ないって言えば危ないか……旧坑道に水が溜まってるって話を聞いただろ?その水を抜いて古の腐姫様の墓までいける様にしてほしいんだ」


「ガンテツさんはそんな信仰心あったけ?」


「怪我が治らないってなるとリスクが大きいからな誰も好んで受けてくれねーよ。だがドワーフからしたら信仰もあるしな、それにあの精巧な墓をあのままにするのもなって思ってな。まぁ無理にとは言わねーよお前も生活あるしな」


 ガンテツがそう言うとバルケは少し悩んでからルディールとスナップに尋ねると二人も快く了承したのでその依頼を受ける事になった。


「おう、お前等ありがとよ。無理はすんなよ、冒険者ギルドに行けば詳細が聞けると思うからたのんだぞ」


 そういったのでバルケとスナップは頷き先に外に出たが、ルディールは少し気になったのでガンテツに尋ねた。


「わらわも空いておるからいいんじゃがどういう事じゃ?」


「角付きの嬢ちゃんはそういうのは鋭いのか……古の腐姫様の墓は簡単に言えば恋とか愛とかそういうのを結ぶ場所で行けば実るって話だからな」


「なるほどの~」


「まぁ、無理して行くような場所でもないから二人が無理しそうなら止めてやってくれ」


「うむ、まかしておけ」


 魔法使いとドワーフがお節介を焼いているのを外で待つ二人は知らなかった。

次回の更新は水曜日予定。


誤字脱字報告いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相方に妖精がいるぞ・・・ オーラソード!懐かしい。
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