第132話 アクセサリー
「さてと、一人でうろうろするのも良い物じゃが……変にからかってもあれじゃしな~見かけたら本人の運が良いのか悪いのか分からぬが……どうしようかの~」
などと言いながら先ほどいた武器や防具などが売っていた辺りとは違う雑貨や宝石の様な物が売っている場所をルディールは一人で色々と見ていた。
そして運が良いのか悪いのか、バルケと言う獲物が女性が好みそうなアクセサリーを売っているお店で難しいそうな顔をして店員さんを怖がらせていた。
「……あいつは何をやっておるんじゃ」と呆れたが友人だし相談ぐらいには乗ってやるかと近づいて行ったが、思った以上に真剣だった様で真横にルディールが来ても気が付いていなかった。
「……普段こういうの買わねーから分からねぇな」と誰に行った訳でもなくバルケは呟いた。
「バルケは欲しい物とかあるのか?」
「あー……前にルー坊に蹴られた時に剣を地面ぶっさして受けたから吹っ飛ばされ無かったが、普通に受けてたら滑って剣が飛ばされてたからな~柄に巻く滑らない皮が欲しいな」
「なるほどの~お主らしいが……アクセサリーの話じゃぞ?」
二人の間に少し沈黙が流れ……いつの間にか来ていたルディールにバルケは驚き飛び退いた。
「ななな!ルー坊!いつの間にいやがった!」
「うむ!なななのルー坊じゃぞ。お主がおなごに何かプレゼントしようとしておった辺りからおったのう」
「いやいやいや。俺は何も言ってねーだろ!何で女って決めつけてるんだよ!」
「ん~そうじゃな。強いていえば勘じゃが当たっておると思うがのう」とルディールが言ったのでバルケは否定し、じゃあ渡す相手を当てて見ろよ!と言った。
「もし当てたら素直に謝ってやるよ!因みにミューミューじゃねーぞ。ルー坊が知らない女なんて何人いると思ってるんだよ」
「スナップじゃろ?」
ルディールは迷う素振りを見せずに率直に答えると、二人の間に短い様な長い時間が流れバルケが膝から崩れ落ちた……
「友人相手にマウントを取ろうとは思っておらぬし、邪魔だから向こうへ行けと言うなら見なかった事にして何処かへ行くし、相談相手になって欲しいと言うなら真剣に考えるぞ?」
その言葉を聞いたバルケは少しだけ悩み一つ疑問をぶつけた。
「一つだけいいか……」
「うむ。良いぞ」
「何でわかったんだ?」
「そうじゃな~お主とスナップは似たような所があるしのう。他にも色々あるが……しいて言うなれば、昔のわらわのにやけ顔に似ておったからのう」
昔の事を思い出しのたうち回りたくなったが少し寂しさも思い出したのでなんとも言えない気分にルディールはなっていた。
バルケはまじか!まじか!と言って店内を転がり店員さんをさらに怖がらせていたので、ルディールが店員に恋の病だから優しく見守ってあげてくださいと言うと苦笑していた。
ようやく落ち着いた様でルディールに頭を下げ、どういうのが喜ばれるかを尋ねた。
「ルディールさん……どういうのが喜ばれるのでしょうか?」
「お主、今すぐそのさん付けを止めぬと……バルケお兄ちゃん。ルーちゃんはね、これが良いと思うの。みたいな感じで話すぞ?」
ルディールはスナップの声を少し子供っぽくした様な声を出し、変に畏まったバルケを脅した。その効果は絶大だった様でバルケが絶句した後に素直に謝りいつもの話し方に戻った。
「その特技、馬鹿にしてたが末恐ろしいな……」
「休暇中はスナップの声で毎朝起こしてやろうか?」
「しやがったらベッドに引きずり込むからな」
そしてバルケがスナップにプレゼントする為のアクセサリーを二人で選び始めたが、少し挙動不審な剣士に魔法使いの方は笑っていた。
「それで、ルー坊……どんなのがいいと思う?」とバルケに尋ねられたので、いつも世話になってるメイドの姿を思い出し考えた。
「正直、どれをプレゼントしても喜んで貰えると思うが……」と言って店内を見ると猫の顔の形をしたブローチが目についた。
「最後はバルケが選ぶんじゃが、参考程度じゃとこの猫のブローチじゃな」
「可愛いと思うが子供っぽくないか?」
「かも知れぬが、スナップは猫好きじゃぞ?よく家の前で近所の猫たちと遊んでおるからのう」
等と話しながら長い時間をかけようやくプレゼント決めルディールに教えてもらった事を参考に先ほどの猫のブローチを買った。
「ルー坊。助かったありがとう……後、すまねぇ……どうやって渡したらいいんだ?」
そう言ったので、任せておけといい苦笑した。
「後はお主次第じゃから頑張るのじゃぞっと、そろそろ良い時間じゃから先に工房に行っておるぞ」
ルディールがそう言って店を出ると後ろからもう一度だけ礼の言葉が届いたので振り向かずに手だけ挙げておいた。
待ち合わせ場所に先に向かうとスナップはもう来ており店の横で静かに立っていた。
スナップに声をかけ二人で世間話をしているとバルケがやって来て普段通りの筈なのだが緊張している様に見えた。
「全員、そろった様じゃな。ではバルケの剣を取りにいくか?」
「おっおう」
バルケの様子が少し変だったのでスナップが頭の上に?マークを浮かべていた。
そして少しその場に三人は固まってしまったのでルディールがバルケに話しかけた。
「バルケよ?スナップには渡したか?何か儲かった事があったから、普段から世話になっておる人に小物を配っておるんじゃろ?」
ルディールにいきなり話を振られ慌てたが、すぐに持ち直し丁寧にラッピングされた袋を取り出した。
「あースナッポンにはまだ渡してなかったな。ちょくちょく助けてもらってる礼だ。いらなかったら捨ててくれていいぞ」と言ってスナップに紙袋を手渡した。
スナップはキョトンとしていたが捨てませんわよ。と言って丁寧に袋を開け中身を確認すると誰が見ても分かるぐらいには表情に出ていた。
「とても可愛いですわね。バルケ様ありがとうございますわ」
本人はいつも通りに礼を言ったつもりだったのだろうが、笑顔が何か輝いており、すぐにそのブローチを身につけた。
ルディールも変にからかうことはせずにスナップに似合っていると褒め、バルケは明らかに顔が赤くなり恥ずかしさを隠す様に剣を取りに行くと言いすぐに向かった。
そして二人になるとスナップがルディールの腕を掴み店の裏に引きずり込んだ。
ドン!とルディールを壁に押しつけ、腕で退路を防ぐ形をスナップが取った。
「……まさかわらわが壁ドンをされるとは思わなかったのう……と言うか顔!近い近い!」
バルケが店に入って行った時は嬉しそうな感じだけの様な気がしたが、実際の所はスナップはかなりにパニックになっていた。
「るるる!ルディール様!どどどどどどうしましょう!とのとのとの殿方から」
「スナップよ。分かったからとりあえず落ち着くんじゃ……わらわとキスしたいのか?」
ルディールがそう言うとスナップは慌てて離れ、何度か深呼吸をした。
「そそそそれでですね!」
深呼吸をした意味がまったく無かったので、また何度か深呼吸をさせ少し落ち着いてもらった。
「落ち着いたか?」
「はっはい。たぶん大丈夫ですわ」
「それで、どうしたんじゃ?」
「お恥ずかしながら長い間エアエデンにいましたので、お父様以外の異性から何かをプレゼントされた事はございませんのでどうしたら良いかと……」
「なるほどのう……じゃったら変に意識せずにお返しに何か返せばよかろう。別にバルケの事は悪くは思っておるまい?」
「そっそうですわね……改めて考えると友人と言っていい仲ではあると思いますけど……」
「そう思うなら何かお返しを買いに行くか?よければ相談に乗るぞ?」
ルディールがそう言うとスナップは何を買って良いのか本当に分からなかったようで素直に頭を下げよろしくお願いしますと頼んだ。
そしてガンテツの店に入り、剣のグリップに巻く革や柄頭に付けるちょっとしたアクセサリーを一緒に見た。
「ルディール様、この様な物でよろしいんでしょうか?」
「うむ。わらわと戦った時に滑るみたいな事を言うておったからそれでよいと思うが、最終的にはお主が決めればええわい」
そう言うとスナップは柄頭に付けるアクセサリーと少し高めのグリップに巻く魔獣の革を購入した。
それから何度か深呼吸をしてから表面上はいつもの雰囲気に戻り工房の奥へと向かった。
奥に着くと丁度いいことにバルケとガンテツがバルケカリバーの微調整をしていたのでルディール達は近づき様子を確認する。
そしてスナップはバルケに声をかけ先ほど買った物をすぐに手渡した。
「バルケ様、先ほどのお礼ですわ。良ければこれをどうぞ」
「おっおう。サンキューな」
他から見ればいつも通りだが、ルディールからみれば二人ともパニック寸前なんだろなと考えていると少しおかしく笑ってしまった。
そしてガンテツに頼みバルケカリバーに革とアクセサリーを付けてもらい完成し二人の距離が少しだけ近くなった様な気がした。
その光景を微笑ましく見ているとガンテツがルディールの近くに来てあの二人はできてるのか?と尋ねた。
「鍛冶でいうなら火入れといった所じゃのう」
「なるほどな。もうちょっと落ち着いたらからかってやるか」
「ガンテツ殿。バルケアーマーはいつぐらいに完成しそうなんじゃ?」
「そうだな。弟子共に下処理させてるから明後日の昼には出来てるな、金属系の鎧じゃねーから一から作らなくていいからはえーぞ」
「了解じゃな。明日もゆっくりできそうじゃのう」
それから少しガンテツと少し世間話をしていると、もう少し経ったら面白い物が見られるから、崖から中央の城辺りを見てこいとルディール達を追い出そうとしたので礼を言ってから外に出た。
「まだ間に合うか?ルー坊は俺に魔法障壁とか張れるよな?」と聞かれたのでルディールは全員に魔法障壁を張った。
「張ったがどうするんじゃ?」
「それは後のお楽しみだ。悪いがエアエデンに行った時みたいに中央にある城の近くまで引っ張っていってくれるか?」
「うむ。よかろう」と言って背中に翼を生やしシャドーステッチでバルケを縛り崖から空へ飛び立った。
スナップも後を追って空を飛んだ。空は他の種族も飛んでおりルディールやスナップが飛んだ位では特に変に思われる事は無かった。
「流石にドワーフは飛んでおらぬが、ハーピーや悪魔族は飛んでおるんじゃな~」
「まぁな、羽があるならここは飛んだ方が早いからな」
「それでどの辺りに降りればいいんじゃ?」
ルディールがそう聞くと近くに広場が見えるだろ?と言ったのでそこまで飛んで行き、その場にゆっくりと着地した。
それからこっちだ、と言って先を歩き出したので着いて行くと大きな建物が立ち、その中は線路があり駅の様な造りになっていた。
「ん?線路があるが……流石に電気ではないから汽車でもくるのか?少し線路が大きい気もするが……」
「お前……ローレットとかスノーベインに無いのに良く知ってるな。本ばっかり読んでる訳じゃないんだな」
「いや、ローレットとかスノーベインで見た本には乗ってなかったぞ。わらわの前の世界の知識なんじゃが……線路が途中で切れておるぞ?」
ルディールがそう言った直後に駅の様な所にアナウンスが流れた。
「魔界から魔列車が到着します。魔界風が駅内に入りますので魔法防御等の手段を持たない種族は直ちに避難してください。繰り返します……」
「なるほどのう……それで魔法障壁を張ってくれって言ったんじゃな。そういえばバルケは人間じゃったな」
「どこからどう見ても人間ですわよ……」と珍しくスナップがバルケの味方をしたのでルディールは少し驚いたが微笑ましく笑っていた。
(いつもだったら只のバルケかと思いましたわとか、笑顔で言いそうじゃのにのう。わらわの時もギルメン達にからかわれたり見守られたりしたのう……ってからかわれた記憶しかないないわ!)
等と昔の事を思い出して笑っているとバルケに「何笑っているんだよ」と少し怒られていると大きな汽笛が鳴り響き、ルディールが使用する転移魔法に似た魔力の流れができてから、巨大な転移門が召喚されその中からルディールが元いた世界の物より遙かに巨大な列車が現れた。
そして門から魔力を帯びた強烈な突風が起こってからようやく指定の位置で停止しバルケの方を見ると突風で転びそうになっていたスナップを助けていた。
「銀の翼に望みを乗せそうな感じの列車じゃな~」とルディールが独り言を言っているとバキン!と近くで何かが弾け飛んだ様な音がしてそれを探すと不実の指輪が砕けて落ちている。
「いまいち仕事をしないまま壊れたのう……って何で壊れたんじゃ?」そう言って悩んでいると列車から降りてきた低位の魔神や周りにいた悪魔族がルディールの方を見て怯えていた。
「ん?なんじゃ?」
「ルッルー坊……ほっといてイチャついていたのは悪かったから頼むから落ち着け……」
「ドアホウ!そんな事で怒らぬわ!」
と言ったがバルケの顔からは明らかに余裕が無くなり変な汗を流していた。
ルディールも何が何か分かっていなかったので頭の上に?マークを浮かべていると、スナップもかなり怯えながらルディールに手鏡を渡した。
「ルッルディール様、こっこれをどうぞですわ……」
そして鏡を見ると、ルディールの目はブチ切れ状態より真っ赤になり、顔には変な模様も現れ角は少し大きくなり、背中には六枚では無く十枚の羽と尻尾が現れ、魔力が黒い稲妻の様にバチバチと音をたて石畳を破壊していた。
「はぁ!?いやいやいや!どうなっておるんじゃ!?」
見た目の危険さに反して中身はいつものルディールだったので、スナップはようやく少し落ち着きとっとりあえず気合いと根性で力を押さえるのですわ!とルディールに叫んだ。
ルディールは頷き、スナップの意見を元に気合いと根性を入れるとさらに周りの石畳を破壊したのでかなり焦っていると、訳が分からないまま元の姿に戻った。
「おおう……戻ったのは良いが?何が原因じゃ?」
いつの間にか周りにいた魔神や悪魔は逃げ出して駅の中はとても静かになっており、カツンカツンと足音がルディール達に近づき話しかけ来た。
「魔界風の影響を受けて魔神本来の力が出たんでしょう」
その声をした方向を見ると、そこには虫の魔神の姿があった。
次回の更新は日曜日になると思います。
新作書きたい!と思っていますが、朝起きが停まりそうなので書けないでいます。
最近、チェックしても誤字脱字が消えないので謎の勢力からハッキングされているのではないか?と妄想しています……いつもご報告ありがとうございます。




