第129話 提供
色々あって少し落ち着いてからルディールとスナップとミューラッカは玉座の間が無くなったので応接室に案内され温かい紅茶を飲んでいた。
「スナップよ……何か言ってやった方がよいんじゃろか?」
「応接室も無くなって良いならいいと思いますが……変な事を言わない事をオススメしますわ」
ルディールとスナップが少しうんざりしていると、落ち着いたミューラッカが話しかけきた。
「人をからかいに来た訳では無いだろう?何をしに来た?」
「スナップよ……もうあれじゃな。からかいに来たと言って帰るか?」
「応接室が吹き飛んでも良いのでしたら構いませんわ」
ルディールは、まぁ良いかと言ってアイテムバッグの中から魔道具の設計図や修理方法などを記した羊皮紙の束を取り出した。
「ん?これはなんだ?」
「少し前にわらわの事を気にかけてくれた礼と、世の中を少し便利にしようとした結果じゃな」とルディールは言ってから羊皮紙に書かれた内容を説明した。
「本当か?」流石のミューラッカもその事が信じられず何度もルディールに聞き返した。
「たまには嘘も言うが本当じゃわい」
ルディールがそう言うとわかったと言ってから立ち上がり、二人に着いて来いと言って応接室を出た。
ルディールとスナップも断る理由も無かったのでミューラッカの後を追った。
ミューラッカは途中で執事に何かを指示し部屋に入って行くとそこは会議室のような場所でルディールとスナップを座らせた。
そしてしばらく待っていると一人の年老いた魔法使いが入って来て、挨拶をし魔法の研究開発の代表だとミューラッカがルディールに説明した。
その人物はルディールの事を知っていた様で握手を求めてから席についた。
「ミューラッカ様、簡単にですが聞きましたが通信魔道具の技術提供があったと聞きましたが?」
「ああ、私では専門的な事はわからないからお前を呼んだ。ルディールこの設計図を見せて良いか?」
「うむ、いいんじゃが……国のお偉いさんがなぜわらわを知っておるんじゃ?」
「お前……何回この城を壊したと思っているんだ?どこの国でもそうだと思うが、城を壊したとなれば顔ぐらい覚えられるぞ」
「いやいやいや!破壊した九割はお主じゃぞ!」とルディールは抗議したが無視され、設計図を手渡した。
「わかりやすく書いたつもりじゃが、分かりにくかったら聞いてくれて良いぞ」と言った後にミューミューには理解できんようじゃったがな!と言おうとしてスナップに口を封じられた。
「ルディール様はチャンスがあれば余計な事を言おうとしますわね……」
魔法研究の代表もページを一枚一枚めくる事に驚き分からない事があればルディールに尋ね、読み終わる頃には疲れていた様だったがルディールに礼を言い頭を下げた。
「どうだ?分かったか?」
「はい、ミューラッカ様。この設計図があれば現存する通信器具は修理でき、新たに作る事も可能でしょう……」
「含みのある言い方だな……何か問題があるのか?」
「はい、全ての材料はスノーベインでも手に入りますが、少し特殊な加工法でなければ出来ない事もありますので、今日明日すぐに出来ると言う物ではありません。ただ修理の方ならすぐにでも可能です」
「なるほどな」とミューラッカは少し考えてから話し始めた。
「ドワーフの国にスノーベインから技術指導を受けに行っている連中がいるだろう?それを呼び戻せ。後ドワーフ達の中にこちらで働いても良いと考えている奴がいれば連れてこい。好待遇で迎えよう」
「よろしいので?」
「かまわん、この設計図にはそれほどの価値がある。つらい時代は私達の世代で終わらせねばな」
「わかりました。では早急に人を集め話し合い専門の部門を立ち上げ、先に修理の部門から立ち上げ技術者がそろい次第、製造部門をすぐに稼働できるようにしましょう」
ルディールとスナップが置いてけぼりになっている間にどんどん話は進んで行った。
「それでこの技術を特許として各国に通達しますが、開発者のお名前はどうしますか?」
「ルディールの名前でいいだろう」
「いやいやいや、わらわは他国の人間じゃし、お主の国の人物にしておいてくれ、目立ちたくて技術提供した訳でもないからのう」
「そうか……だったらルディールの偽名でいいだろう。何かないか?」
ミューラッカに聞かれたのでいつも通りあまり考えずルルルの花子とだけ答えておいた。
「ルディール様ありがとうございます。この設計図のおかげでスノーベインは今よりもっとよくなります」
「そう言ってくれるとありがたいが、トップが戦闘狂じゃからな優しさを忘れんようにな」ルディールがそう言うと老人は大きく笑い反面教師にしていますから大丈夫ですよと言った。
「ミューラッカに軽口たたける人物が隊長殿以外におるんじゃな」とルディールが驚いているとミューラッカがそこの年寄りは私の魔法の師だとため息をつきながら教えてくれた。
ルディールがなるほどの~と言って納得した後に、スナップが嫌な予感を感じルディールの口を塞ごうとしたが「わらわも弟子や子供達に魔法を教えておるがどう間違えたらこんなんになるんじゃ?」と言ってミューラッカを指さしたので会議室が吹き飛んだ。
「……ルディール様、ご友人ですから良いですが、国のトップを指さしてこんなん扱いはどうかと思いますわ」
「わらわも悪いとは思うが……どこからどう見ても凶人じゃろうに……」
誰が凶人だ! とミューラッカは眉間に皺を寄せたが応接室に移ったので執事に紅茶を入れさせ静かに口に含んだ。
そしてようやく落ち着いてからルディールに静かに礼を言い頭を下げた。
「うむ、気にするで無い。わらわに出来る範囲での事じゃからな、お主がそれを使って他国に侵略すると言うならすぐにでも止めるがそれはないじゃろうしな」
「そこまで馬鹿ではないさ」と言ってからもう一度だけルディールに礼をいった。
「そうそう、話は全然変わるしこちらの方が重要なんじゃがウェルデニア近くで魔神を見たぞ、その内ローレットからも詳しく話が来ると思うんじゃが」
そう話し、ルディールは魔神の姿が画かれた羊皮紙をミューラッカに渡した。
少しは驚いたが通信魔道具と比べればどうと言う事はないとあまり興味はなさげだった。
「虫っぽいのがイオスディシアンでこっちがアトラカナンタじゃな……と言うか全然興味なさそうじゃな。魔王も出たんじゃぞ?」
「後で見るといい」と言ってルディールに向かって拳サイズの魔石を投げた。
これはなんじゃ?と尋ねる前にミューラッカが守護竜の所にも魔神がまた現れたので倒して手に入れたと語った。
「……何というか流石じゃな」
「お前や守護竜に比べても遙かに弱い。あの程度が何匹来ようがスノーベインは落ちる事はないだろう」
「お主や守護竜殿以外でも倒せそうなのはいるのか?」
「単体では無理かもしれないが、アバランチが上位五人もいれば倒せるな、もう歳だが私の師でも善戦はできるだろう」
そう言われたが雪合戦をしていた隊長達の姿が脳内で再生され、まったく強そうには見えなかったので素直に感心してしまった。
「なるほどの~ミューラッカよ。すまぬがもしもの時はローレットを少し助けてやってくれ」
「それは魔道具の借りか?」
「それでも良いが……友人の頼みぐらいで聞いておいてくれればよいぞ」
ルディールがそう言うと目をパチパチとした後に大きく笑い、それなら仕方ないと手が空いていたら殲滅してやろうと言った。
「頼もしいのか危なっかしいのかわからんのう……」
そして魔王について少し守護竜に聞きたかったのでミューラッカに許可をもらい守護竜がいる雪山まで転移した。
ルディール達が転移すると守護竜は寝ていた様だったが、すぐに目を覚ましルディール達を歓迎した。
「久方ぶりだなルディールよ」
「うむ、相変わらず格好いいのう。元気そうで何よりじゃわい」
自分より遙かな強者のルディールに褒められた事を少し喜び何の用だと尋ねた。
「狭間の世界で間接的にじゃが、ラフォールファボスとかいう魔王を見たんじゃがしらぬか?」
そう尋ねると中央の首が左右に頭を振りその名は知らないが前の魔王に名前は似ていると言い話し始めた。
「前の魔王の名はユアルファボスと言う名だったな、関係あるかは分からないが……」
ルディールはその名前に聞き覚えはなかったが、ラフォールファボスが前魔王の子供と言う事を話しその辺りであった事をミューラッカや守護竜に説明した。
「名前が似ているだけ以外の共通点はないな……魔界は広い、強者と言うだけならかなりの数がいる。その中の一人が前魔王の子供と言い魔王軍を作ったとしても問題はないが……」
「人間界に攻めて来ておるのが問題なんじゃよな、魔神が来ておるしな……観光で来るぐらいじゃったら別に良いんじゃが敵意ありありじゃしな」
守護竜は頷き、右の首が物陰を見たのでルディール達もそこをみると服を着た二足歩行のカエルが氷漬けにされていた。
「まだ残っていたのか」とミューラッカが言い、これが先ほど見せた魔石の持ち主だと話した。
「名前は聞いたか?」とルディールが尋ねるとミューラッカは聞いていないと言ったが守護竜は聞いておりヤルトゲオスと名乗っていたと伝えた。
「う~ん……見た目も名前も一緒なんじゃよな……。イオスディシアンにアトラカナンタにヤルトゲオスか~なんなんじゃろな?」
ルディールがそう悩んでいるとこれで復活できないだろうと守護竜が尻尾を氷り付けにされたヤルトゲオスに叩き粉々に砕いた。
「ヤルトゲオスは今回は何をしに来たんじゃ?」
「我の状態を確認しにきたのと」
「私を魔王軍に勧誘しにきたな」
守護竜が話していたのを遮りミューラッカがそう話した。
「私の魔神の血は思っているよりも濃いらしいからな、魔王軍に入れと言われたが断ったよ。自分より弱い連中の下に付くことはしないし、これでも国民を預かる身だからな」
「お主らしいのう」
「それでルディールはこれからどうする?ノーティアに戻るように命じてすぐに式でも挙げるか?」
「挙げるか!休暇がてらにドワーフの国まで行ってみようと思っておる」
ルディールがそう言うと守護竜が何かを思い出した様で話しかけた。
「まだあるかどうかは分からないが、あそこには古の腐姫の墓が地下深くにあった筈だ」
「……観光で行くつもりじゃったのに何故そんなのがあるんじゃ?今回は観光じゃ観光。気が向いたら見に行くがパスじゃパス!」
ルディールがそう言うとスナップはそうなると良いですわねと笑っていた。
「それに鉱都ヘルテンは魔界に近い、ルディールなら大丈夫だが気をつけろよ」
「……止めて灯台の街に二~三日魚釣りに行った方が良い気がしてきた」
「それはわたくしが気疲れしますから、おとなしく鉱都に行きましょう」
それから魔神の事などを話し合い守護竜に礼を言ってから城の応接室に転移した。
「ルディールは鉱都に行くんだな?」
「うむ、まだ行った事がないのでな少し興味があってな」
ルディールがそう言うとミューラッカは明日の朝にはスノーベインからヘルテンに飛空艇を出すからそれに乗って行けといってくれた。
「ローレットからだと飛空艇が出ている数が少ないだろう。スノーベインの船で行くといい」
「良いのか?邪魔にはならぬか?」
「そう思うなら道中の護衛をしておけ。ローレットとドワーフの国は仲が悪いでは無いが友好国ではない。スノーベインとヘルテンは友好国だからな」
「なるほどのう。色々あるんじゃな……ではすまぬが、三人乗ると思うから伝えておいてくれるか?」
「わかった手配しておこう。明日の朝に街の飛空艇に行けば乗せてもらえる」
これ以上ここにいてもまた喧嘩になりそうだったし、ミューラッカも魔道具開発が気になっていた様だったので、ルディールはミューラッカに礼を言ってから城を後にした。
バルケがいる宿まで戻ると日は沈んでいたが、スノーベインの兵士達が大量に集まっており酒場でバルケとどんちゃん騒ぎをしていた。
「……できあがっておるのう」
「ですわね……」
するとルディール達に気がついたバルケとアバランチの隊長がこちらにやって来た。
「ミューラッカ様のご友人であるルディール殿に敬礼!」
隊長がそう言うと全員酔ってはいたが一糸乱れぬ動きでその場にいた全員が敬礼をした。
「酔っ払っておるのう……」
「ルー坊、どうだった?何度か爆発はあったみたいだったが……」
「うむ。悪い事はまったく無かったのう。明日スノーベインからヘルテンに、急遽飛空艇がでるみたいじゃから乗せて貰える事になったわい」
「おおっ良かったじゃねーか。おれもまた鉱都に行きたかったから丁度よかったぜ」
バルケの方も前に倒したパンツァービートルの外殻を加工したかった様なので本当に丁度よかったと言いながら隊長と肩を組み一気に酒をあおった。
「それで、魔法使い殿?先ほどの敬礼どうでしたか?良かったら何か奢ってください」と隊長が厚かましく言って来たので何か奢ってやろうといいカウンターに向かった。
そしてカウンターにいるマスターに今回の酒代は全部自分が払うと言った。
その瞬間に拍手喝采が起こり今日この場にいた幸運な兵士達はルディールに感謝し祭りが始まった。
バルケとスノーベインの関係も気になったが、もしそれがバルケにとって辛い記憶だったとしたら? と考えると興味本位で聞く物では無いなとルディールは判断しスナップを巻き添えに酒や料理が飛び交う戦場へと身を投じその日は過ぎていった。
そして次の日、三人は飛空艇が出る時間にぎりぎり間に合いドワーフの国、鉱都ヘルテンへと向かった。
「昨日の記憶が無い……」
「バルケ様、奇遇ですわね……わたくしもですわ」
「面白い事と言えばお主等が皆の前でチューしたぐらいじゃな~」
「嘘だよな?」「嘘ですわよね?」
「さて、どうじゃろな?」
次回の更新は月曜日か火曜日予定。
書いたら書き終わったので更新しました。誤字脱字の報告ありがとうございます。




