表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/306

第116話 霊薬

 ルディールがミーナから無事に竜鱗華草を譲ってもらい、家に戻って来るとカーディフはとても眠そうにあくびをしていた。


「あーそうか、世界樹についた時は夜だと言うておったのう。今は昼過ぎじゃから夜通し深樹におったんじゃな~」


「それでこんなに眠いのね……上手くいった?……と言うか何で顎が赤いのよ」


「うむ、もらってきたぞ。油断しておった訳ではないが……死角からの攻撃じゃったな」


 ルディールがそう言うとミーナちゃんに会いに行って何故死角から攻撃されるか、と不思議そうな顔をしていたが眠気が勝った様で少し寝てくるわと言ってスナップが綺麗にした客間に向かっていった。


「夕食の時に起こせばよいか?」


「あーごめん。それでお願いね」


 そしてルディールは手に入れた竜鱗華草をコピオンに見せる為に庭に行くと畑から薬草などを取り何かの薬を作っていた。


「コピオン殿よ。もらって来たぞ」


「ほぉ、それが竜鱗華草か、面白い形をしている」


「と言うか何を作っておるんじゃ?コピオン殿は薬師でもあったな」


「千人助けて万人殺せる畑が目の前にあったからな、少し薬を作っている」


「そんな危ない畑じゃったか……」


「いや、並の薬師なら使い方が分からない草花が多い、巧妙に隠されているが深樹の植物も数点ある」


 自分のアイテムバッグから数個の小瓶を取り出し、出来た液体をこぼさないようにゆっくりと入れアイテムバッグにしまった。


「一ついるか?」


「何に使うか言ってくれねば分からぬぞ」


「そうだな、井戸に入れるのがおすすめだ」


「毒か……やじりにでも塗るのか?」


 そうだと答え、その毒の効果を教えると思っていた以上に凶悪だったので、ルディールが持つとうっかり落としそうなので貰う事を断った。


「さてと、その竜鱗華草と三つの実でどうやって世界樹を治す薬を作るんだ?本には書いてないぞ」


「数がないから失敗できんし……森の智者達に聞いてみるかのう」


 そう言って森の方を向くと森の智者達も竜鱗華草の行方が気になっていたようで近くでルディールの帰りを待っていた。


 そして一人の森の智者が前に出てきてルディールに葉を束ね記号が書かれた物をルディールに手渡し説明した。


「なるほどのう、これにのっておるんじゃな?わらわは薬は作れぬから解読してからコピオン殿に説明する事になるがそれでもよいか?」


 森の智者達は頷いたので、ルディールは終わったらちゃんと返すからしばらく預かっておくと言うと、何人かは森の中へ帰っていき残った何人かは庭の手入れを始めた。


「コピオン殿、作り方を知っておったみたいじゃからノートっぽいのを借りてきたので、今から解読するから少し待つのじゃぞ」


「ああ、分かったがそれを少し見せてもらえるか?」


 断る理由もなかったのでコピオンに渡すと丁寧に開き読むと言うよりは文字の羅列の見ている様だった。


「ルディールはこれを読めるのか?」


「うむ、何故読めるのか?と聞かれたら困るが、ぱっと見た感じは読めたのう、全部見たわけではないがな」


「なるほどな……ルディールがもし仕事に困る事があれば樹都ウェルデニアに行くといい、そこで森の智者達が字をかける事を発表すれば食い扶持には困らないし、ウェルデニアや深樹の周りにある古代の遺跡にはこれと同じ記号が多々あるからな」


「なるほどの~。じゃが読める理由を説明せねばならんなら無理じゃろ、自分でも説明できぬしな」


「確かにな、その時がくれば俺が国に紹介してやろう。これでも昔は世界樹の番人だ」


「そうなったらよろしく頼むわい」


 と、言ってからルディールは自分の部屋で解読するからコピオンに少し寝ておくか?と尋ねるとまだ作りたい薬があるから庭の草花を少しもらうと言った。


「別に構わぬが……毒は勘弁してくれると助かるのう」


「薬も量を間違えれば毒だが、おとなしく良薬でも作っておく。ルディール、解読は任せたぞ」


 任された! と言ってルディールは自室に戻り書く物を用意して丁寧に葉の束を開き、知恵と知識の指輪で解読された字を羊皮紙に書き写していた。


「面白い字じゃな、同じ記号でも前後の配列で読み方が変わるんじゃな」




  時間をかけ丁寧に羊皮紙に文字を書いていると、いつの間にか日が暮れており夕食の時間になりスナップが呼びに来た。


「ルディール様、夕食のお時間ですがどうされますか?」


 ルディールもずっと解読していたので休憩がてらにスナップと一緒に食堂に向かうその途中で客間で爆睡しているカーディフを起こした。


 そして食堂に行くとコピオンが待っており、食事を始めると進捗状況を尋ねた。


「どうだ、上手くいってるか?」


「謎解きの様に書かれていたらどうしようかと思ったが、ちゃんと作り方が書いてあるから今日中には終わるのう」


「そうか、解読が終わったらいつでも呼んでくれ」


 ルディールとコピオンが話していると寝ていたカーディフは、意味が分かっていなかったので事の経緯を説明した。


「ルディ連れて古代遺跡調査の依頼にいこうかしら……学者みたいに守らなくてよさそうだし」


「なんでもかんでも読める訳ではないと思うがのう」


「なるほどね~、あっそうだ。お爺ちゃん時間あったらハイポーション作ってくれない?もう手持ちが少なくて……」


 そんな事を話しながら夕食の時間はすぎていき、ルディールはまた解読を進め始めた。


 そして数時間ほど経過した頃にようやく解読が終わり、書き起こした羊皮紙を持ち二階から降りてくると遅い時間にもかかわらず、食堂でカーディフが小瓶に液体を詰め、コピオンが草花を抹したり抽出したりして何かをまた作っていた。


「カーディフ、コピオン殿。解読の方終わったんじゃが、何か面白そうな物を作っておるのう」


「面白そうに見えるけど気遣うわよっと。お爺ちゃん出来たわよ」


 コピオンは抽出した液体をカーディフが詰めた小瓶に入れさらに抹した粉末をかけた。


 そして液体が混ざり合うと綺麗な虹色に輝いた。


「もしかして……ロードポーションか?」


「ああそうだ、ルディール、先に渡しておく。カーディフも一本持っておけ」


 そう言うとコピオンはルディールに二本渡し、カーディフに一本のロードポーションを手渡した。


「良いのか?まだ出来るかどうかも分からんのじゃぞ?」


「かまわん。カーディフから聞いたぞ、前に猿から助けてやったらしいな、その礼だ」


「そういえばそんな事もあったのう。懐かしい」


 そう言ってロードポーションをもらって喜んでいるカーディフを上から下までまじまじと見ていると、その視線に気づいた様で何?と聞かれたので正直に答えたら殴られた。


「どっからどう見ても只の狂犬じゃったのに何故殴るか!」


「だれが狂犬か!……まぁロードポーションもらって機嫌がいいから許してあげるわ」


 殴ってから言う台詞か! と突っ込もうかとも思ったが機嫌の良さそうなカーディフを見ると、まぁ良いかと言う気分になりコピオンに羊皮紙を手渡すと少し不思議そうな顔をされた。


「俺がロードポーションを作れる事を尋ねないのか?」


「ん~聞きたいと言えば聞きたいが、わらわも目立ちたくなくて隠れておるからのう、友人の色々できる凄いお爺ちゃんぐらいにしか見ておらんわい」


「なるほどな……孫をよろしく頼むと言っておいてやろう」


 そう言って二人で少し笑っているとカーディフも少し嬉しそうに笑っていた、それからルディールは解読した薬の作り方ををコピオンに説明しようとしたが、コピオンの方が専門なので渡した羊皮紙でほとんど理解出来たようだった。


「分かりやすいな……これなら今日中には出来そうだ」


「えっ?お爺ちゃんそんなに簡単なの?」


「ああ、材料だけがネックなだけで薬師と名乗る連中ならだれでも出来る。要は三つの果実を均等に混ぜて絞りその汁を花で受ければできあがりだ」


「へ~簡単そうだから私でもできそうね」


 カーディフがそう言うとルディールもコピオンも絶対にお前は失敗すると言うような顔をしたので、何処に失敗する要素があるのよ! と文句を言ってきたのでルディールが答えた。


「簡単な事だと舐めてかかっておる奴は失敗するもんじゃぞ?」


「そういう事だ」


「うぐっ……」


「では、俺はこれからこの薬を作る。夜も遅いからお前達は寝ててくれ」


「それはありがたい提案なんじゃが、手伝わなくてよいのか?」


 そう尋ねると、コピオンはお前は解読してくれたから次は俺の仕事だから任せてくれと言ったので、ルディールもカーディフも断る理由がなかったので任せる事にした。


 コピオンが作業を始めたのでルディールは自室にカーディフは客間に戻った。


 それから少ししてルディールは深樹や解読で疲れた体をお風呂で休め、まだ作業していたコピオンに声をかけてから自室のベッドに横になると、思った以上に疲れていたようで襲って来た睡魔に抵抗せずに身を委ねた。




 日が昇り前に作ったフレイムコッコの鳴き声でルディールは目覚めると魔法で顔を洗い、一階に降りてくるとコピオンも丁度客間から出て来た所だった。


「コピオン殿、おはよう」


「ああ、おはよう」


 それだけ挨拶をし、食堂に行くとスイベルが朝食を準備してくれてあったので礼を言ってから朝食をとり薬の事を尋ねた。


「薬の方は上手くいったのか?」


「ああ、お前が寝る前に挨拶に来ただろ?あの後、半時間ほどで完成した」


 そういうと鞄の中から緑色に輝く液体が入った瓶を取り出し、テーブルの上に置きルディールに見せた。


 その瓶の中の液体は確かに緑色ではあったが常に色がかわり全く同じ緑色にはならず世界中の森を詰め込んだような色をしていた。


「綺麗な色じゃな。このまま飾っておきたいのう、試すまでは分からぬが完成したと言う感じじゃな」


「ああ、俺もこれで完成だと思う。これは多分だが深森の霊薬と呼ばれる薬だ。俺が子供の頃に祖父におとぎ話で聞いた事があったな……出来た時に思い出したよ」


 そう言ってテーブルの端を指さすと、イスから根が張り花が咲き所々に実がなっていた。


「一滴だけかけてあのざまだ、おとぎ話だとすべての植物が命を吹き返すだったな」


「何というか凄まじい薬じゃな……人体に被害はないんじゃろうか?」


「使い方次第だろ、種でも飲み込ませて気化したこれを嗅がせれば内部から発芽するだろし、木矢に塗ってタイミングよく撃てば体に根が張るだろうな」


「うむ。さすが狩人兼薬師じゃな……貴重なご意見ありがとうじゃな、で?その毒薬はいつ世界樹に使う予定じゃ?」


「ああ、カーディフが起きたら向かおう。連中も待っているようだ」


 そう言って窓の方をみると大量の森の智者達が窓に張り付き目だけ光らせ中の様子をうかがっていた。


「うおっ!こわっ!……新手のホラーじゃな」


 その瞬間にルディールはまた変な事思いついたので、窓の近くに行き森の智者達に一つ頼み事をすると、一人残らず散っていった。


「何を頼んだんだ?」


 ルディールが答えようとした瞬間に二階から叫び声があがった……




「じゃあ、朝ご飯も食べたし向かいましょうか?」


「うむ、そうじゃのう。また森の智者達に送ってもらうかのう」


 妙に機嫌がいいカーディフと右の頬に手の型がついたルディールがそう言うと、コピオンも笑いながら同意したので、庭にいる森の智者達に頼みまた深樹にある世界樹にまで送ってもらった。


 そして世界樹に着くとルディール達が来た時と少しだけ変わっており、コピオンが調べルディール達に伝えた。


「もう戻ったようだが、足跡が大量にあるな……この前の連中が着いたようだな」


「世界樹のほうは変わっておらんのじゃろ?」


 カーディフの方も何か痕跡を見つけた様で調べると確かに大人数の人がここにいて、急いで戻ったような後があると言っていた。


「食べ散らかしたっていうなら別なんだけど、こう急いで荷物に詰めて落としたって感じなのよ。……所でルディ、出来た薬なんだけど、誰が使うか考えないと駄目よ。誰が来たかまではバレて無いと思うけど、誰かがいたのはバレてると思うから、世界樹が治ったってなれば国を挙げて探すと思うわよ」


「確かにな……流石にそうなればローレットにも話がいくだろう、王族に問われたら嘘をついてもいいが、出来ればやめておく方がいいだろう」


 確かにの~っと腕を組み少し悩んでいると心配そうにこちらを見ている森の智者達と目が合いルディールは閃いた。


「よし閃いた。森の智者達が治したと言う事にして薬を使ってもらえば、万事解決じゃろう。嘘は言っておらぬが本当の事も言う必要もないじゃろうし」


「それって大丈夫なの?」


「大丈夫じゃないかも知れぬが、上手くいくかも知れぬからな。森の智者達は滅多に会えぬ人達なんじゃろ?」


「あーそうだった……分かってるのって形だけなのよね確か……でもいいの?エルフ国だとたぶん英雄になれるわよ?」


「チヤホヤはされたいが友人に褒められるぐらいでわらわは十分じゃしのう」


「なるほどね~」


 コピオンも国に関わると面倒だからそれでいいと納得してくれたので、ルディールは森の智者達に話しかけ内容を説明し薬を渡した。


 するとまだ隠れていた様で森の中からかなりの人数が現れルディールに跪き頭を下げた。


 そして薬を受け取った一人が世界樹に近寄って行き、瓶の蓋を開け深森の霊薬を振りかけた。

次回の更新は金曜日になります。


久しぶりに3DS起動してタクティクスオウガをプレイ中、だけど画面が小さい!スーファミ買おうか悩み中……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ