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第105話 王女の依頼

 ガチ泣きしているローレット王国の王女様ことシェルビアをセニアが慰めて落ち着かせていると、ミーナはルディール、ソアレ、リージュを正座させ怒っていた。


「皆さん!王女様を泣かせて何しているんですか!」


「言いたい事はわかるが、王女様もめんどく……ゴホン。悪いと思うじゃが……」


「友達が出来て舞い上がってただけだから、明らかにルーちゃん達が悪いです!」


「リージュにソアレよ。最近ミーナがわらわの味方してくれないんじゃが?」


 そう言うとソアレもリージュも私達はルディールさんの味方ですから安心してくださいと自分達の株を上げているとミーナがさらに怒りだしだ。


 少し経ってからようやく王女様はまだ顔は赤かったが落ち着いたのでルディールは謝り話しかける。


 シェルビア、ごめんなさいねと言って王女の顎に手指をそえ少しだけ持ち上げて謝ったのだが、ミーナには納得頂けなかった様でルディールは頬をつねられた。


「はい、ごめんなさいすみませんでした。反応が面白いので、つい調子に乗ってしまいました」


「はあぁぁ、もう落ち着きましたので大丈夫ですよ。もうしないでくださいね」


「うむ。王女様は今日は何でわらわを呼んだんじゃ?封蝋までした手紙を送って来たから何か話があったのではないか?」


 ルディールがそう言うと、シェルビアでもいいですよと、ボソッと言った。その声が聞こえたリージュとソアレはニヤニヤしながら話を聞いていた。


「ゴホン、スノーベインで何があったかを聞くのが七割ですが、一つお願いがありましてお呼びしました」


 ちゃんと王女の顔になり姿勢を正しルディールに向かい合ったので、ルディールは王女が言うよりも先にそのお願いを受けた。


「うむ、別にかまわんぞ」


「あの……何も言ってないんですが?」


「と言うか、お主の性格上、断った所で断れない様に何重にも策を持って来て、わらわがここに来た時点で詰み状態だったはずじゃからな」


 ルディールの言う通り、王女は確かに断られても謝礼などでなんとか依頼を受けてもらおうとしていたのだが、かなり簡単に受けてくれたので肩透かしをくらった。


「いえ、ありがたいのですけど断られる事を前提で裏の裏まで考えていたのでその苦労が無駄に終わったと言うか何というか……」


「コインで考えたら裏の裏は表じゃぞ。友人に頼み事をする時はあまり考え過ぎぬ事じゃな」


 少し口を膨らませ、は~いと言った表情は年相応の女の子だった。


「それでですね。近々リージュの学年と私達の学年で森で野外合宿があるのですが、その時に護衛をお願い出来ませんか?」


 ルディールは少し考えてからそれは難しいと伝えた。


「出来なくは無いが人選ミスじゃぞ。探知や索敵ならできるが守ったりするのはわらわは苦手じゃしな。何人いるかは知らぬが、かなりの人数じゃろう?」


「いえ、ルディールさん一人では無いですよ。私やリージュやセニアもいますしそれこそ爵位持ちの家柄の子供が多いので、学校も何かあっては大変ではすまないので防衛には力を入れてますよ。それこそ、最低でもBランクから始まり一番多いのはAランクでSランクも数は少ないですが護衛に入りますよ」


 ソアレも小さく手をあげ、私達火食い鳥も行きますと教えてくれた。


「うむ、行くのはいいがわらわが行く意味あるのかと言う話になるんじゃがな?誘拐とか計画があったりするのか?」


「そう言うのは無いのですが、ルディールさん回復魔法は使えますし、正直……ルディールさん一人で何でもできるんじゃね?って感じなので保険でキープしときたいと言うのが本音ですね」


「まぁ、引き受けると言ったから別にいいんじゃが……」


 別にわらわいらなくね? 等と考えているとリージュから簡単にだが補足の説明を入れてくれた。


 冒険者達はどうしても貴族達に顔を売りたいので、平民や爵位の低い生徒達の護衛がおざなりになると話し、去年は死者こそは出なかったがけが人が多数出たと教えてくれた。


「分からんでも無い話じゃな。この場に王女と公爵家の娘が二人いるのが異常なだけであって、そんなに知り合えるものではないじゃろうからな」


「そうですね、シュラブネル家もお抱えの冒険者がいますから、よほどの事がないと次に頼む時はその方達になりますし、頼まなくても侯爵家より上になってくると護衛も強いので自分達で解決出来る事も多いですしね」


「なるほどのう……冒険者も大変じゃな」


 ルディールがそう言ってソアレの方を見ると小さく手を上げて、火食い鳥はありがたい事にかなり恵まれていますので割とイージーモードですよ。と笑っていたが、初めて会った時に格上の炎毛猿とやり合っていた姿を見たりしているので、そこまで簡単な事では無いなと思っていた。


「それで、いつから戦闘訓練があるんじゃ?」


「戦闘訓練ではありません、野外合宿です。まぁ低位の魔獣とか倒すのが目的ですから戦闘訓練なんですけど……丁度今日から一週間後で二泊三日の合宿ですね。位置的には太古の森辺りになります。エルフ達には了解を得ていますので大丈夫ですよ」


「了解した。という事はわらわは何の実績もないからリノセス家の護衛としていくんじゃろ?当日はリノセス家に来たらいいのか?」


 そう言うと王女様はため息をつき話し始めた。


「ほんとそれですよ……ルディールさん身の丈にあった地位をとってくださいよ、冒険者になってパパッとドラゴン数匹倒してSかXランクにしてきてくれませんか?ミューラッカ様に勝てるのにいつまで経っても無名ですし……」


「簡単な仕事なら頼まれれば受けておるし、別にこのままで良いじゃろ」


「良くないですけどね、ノーティア様と初めて会話した時になんて言われたか知っていますか?『ルディール様はローレット王国では迫害されているのでしょうか?本人は違うとおっしゃっていましたが』……でしたよ」


 ルディールが冒険者だと未開拓の土地を調べに行って貰ったり凶悪なモンスターの討伐なども頼めるが、いくら強かろうと一人で行かせる事は出来ないし、他の冒険者とPT組んで行って貰いたいのだが、無名なので組んでくれるSランククラスの冒険者いないので少し困っていた。


「もういっその事、私の直轄の騎士か護衛になりませんか?一人やめて冒険者になったので……」


「パワハラするからじゃぞ。わらわの事を評価してくれているのはありがたいが騎士はパスじゃな。よほど困った事があれば言ってくれれば手を貸すわい」


「陛下やお爺さま達が頑張って隣国と仲良くしていてくれたおかげで平和ですが、本来ならルディールさんは遊ばせておける人では無いんですけどね……」


 そこで学生達の護衛の話が終わったので、ルディールは火食い鳥のリーダーのスティレに用事があったのでソアレに尋ねた。


「ソアレよ、護衛の日まで少しで良いが時間空いておるか?」


「……空いていますよ。火食い鳥でルディールさんの家に行って護衛の日まで時間を潰そうと思っていましたから」


「うむ、行幸じゃな。スティレ用の身体強化魔法がほぼ完成したから、好きな時に来てくれていいぞ」


「……分かりました。確かバルケさんも合宿の護衛に参加すると言っていましたので、スティレの特訓相手に一緒に連れていきますね」


 などと仕事の話をしたりスノーベインに行く前にリージュが教えた魔法を習得した事など話しているとすぐに時間が過ぎていき、そして次の日、ソアレがルディールに習った転移魔法でエアエデンにやって来た。


 ルディールもすでにエアエデンで待っており温かく出迎えた。


「バルケもスティレもカーディフも久しぶりじゃな」


「おう、ルー坊も元気そうだな」


「ルディール殿、お久しぶりで」


「アンタも元気そうね」


 そしてスナップが紅茶を入れてくれ、バルケが礼を言ってから一気飲みしてスティレが魔法を教えてもらった後、いつでも戦える様に暖機運転してくるわ! と言ってスナップとエアエデンの庭で戦い始めた。


 ルディールは少し呆れたが当初の目的のスティレに魔法を教える。


「かなり簡単に言えば身体強化系の魔法じゃな。何かに特化して強化されると言うよりはバランス良くブーストがかかる魔法に仕上げておいたぞ」


「かたじけない。この羊皮紙に書いてある魔法がそうなのか?」


「うむ、スノーベインに行った時に血識と言うのを教えてもらったからのう。わらわがいた世界の知識と合わせてちょっと作ってみた。お主の血を一滴流してみるのじゃ」


 スティレは意味が分かって無かったがナイフで指先を少し切り、血判を押す様に羊皮紙に血を付けると、光り出し魔方陣がスティレに吸い込まれる様に消えていった。


「ルディ、今のは?」


「うむ、この世界の昔の技術なんじゃが、特殊なインクで書かれた魔法書だと読んだだけで使える様になると、知り合った竜に教えてもらったからのう、後は先ほど言った事と合わせてスティレだけが使える様に仕上げたという感じじゃな」


 そう言ってスティレの方を見るとちゃんと成功していたようで頭の中に知らない魔法が浮かぶと言っていた。


「ルディール殿、感覚的にだがこの魔法は調整できるようだが?」


「うむ、細かく五段階調整出来るようにはしてあるぞ。一段階は無理なく使え、使用すると自身の体の調子が一番良くなる程度。二段階からはかなりの身体能力が強化される。この辺りからは筋肉痛がでるかも?三段階以降は緊急用、カラダもってくれよ!能力三倍じゃあ!」


「…ルディール殿、四段階以降は?」


「四はまだ三の強化版じゃから使えるが、五は脳のリミッター解除プラス身体のリミッター解除プラスその状態のまま全体の能力引き上げじゃな。一分間はギリギリ使えるぞ……地力を鍛えて三までで戦闘を終える事じゃな」


「ルディール殿、この魔法に名前はないのか?」


「ん?わらわが名付けて良いならルルルブーストって言う名前になるぞ。それを戦闘中に叫びたくないなら自分で考えい、もうお主の魔法じゃ」


 ルディールに大きく頭を下げてからスティレは少し試して来ると言って先に戦闘をしていたバルケ達の所に向かった。


 そしてソアレが少し疑問に思った事があったようなのでルディールに尋ねた。


「……ルディールさん先ほどの魔法ですが、使い勝手よさそうなので一段階と二段階程度なら誰でも使える様にしてよかったのでは?魔方陣で見た感じではほとんど魔力を使わない様ですし」


「身体強化なら私も教えてほしいんだけど」


「ん?カーディフ用はちゃんとあるぞ。ソアレの質問じゃがスノーベインに行った時にミューラッカに魔法を作るのはいいが広めすぎるなと注意されてのう……」


「あのリノセス家から提供されたって事になったルディールの足場の魔法ですか?」


「うむ、色々はしょるがその足場の魔法の危険性を分かった上でミューラッカは折れてくれたみたいじゃからな、今後は魔法を便利なもので考えるより危険物と考えようと思ってのう」


 と、話していると一段階目を使用したスティレが吹っ飛ばされてきたので早速二段階目に引き上げてまた走って行ったが、とりあえず無視して話を進めた。


 「……なるほど、使い方次第ですからね。ルディールさんが考えた特定の人物だけに覚えられる方法はかなり使えるので国に申請してみては?」


「昨日の今日じゃぞ?王女様に何言われるか分かった物ではないわい」


 久しぶりに会った友人達とまだ話す事は沢山あり、スイベルに紅茶を入れてもらい戦闘訓練をしているスティレ達を見ながらまだ話は続いた。

次回の更新は明後日になります。


この話で合宿まで行っても良かったのですがすこしゆっくりめにしました~。いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

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