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59話 「新・生徒会」

 




 ――「おい、あいつが例の?」


 ざわざわとした雑音の中から、そんな男子生徒の声がやけに鮮明にきこえてくる。

 誰かが言った“あいつ”というのが、隣にいるアリスでも、その隣のクライムでもないことは明白だった。ましてや背後に控えるようにして立っている生徒会の先輩たちでもないのだろう。


 恐らく、なんてもったいぶらずともきっと僕のことだ。

 ふと意識して周囲を見わたせば、誰もが驚きと、どこかマイナスの感情が入り混じった目で僕を見ているのがよくわかる。


 新生徒会メンバーのお披露目。

 闘技大会を優勝した僕は、かねてより生徒会への加入が決まっていたアリスとクライムと共に、今こうして大勢の生徒たちを見下ろす形で檀上に立っているわけである。


 場所はフェリス魔法騎士学園内にある中で最も大きな講堂。

 在校生たちはみな学年ごとに分かれて、着席し、まるで観劇(かんげき)をしているかのようにこちらを見上げている。

 今にして思えばきっとここで入学式の時にロイド先輩やセレナさんの姿を下から眺めていたのだろう。


 当時の僕は、義務感のようなものを感じながら入学式を迎えていたわけで、はっきり言ってまるで記憶があいまいである。


『クライム・エルロード、アリス・ローゼ、そして今年度、闘技大会の覇者であるユノ・アスタリオ。以上三名が新たに生徒会へ加入することが決定した』


 そうロイド先輩が言ってすぐにまばらに拍手の音が広がっていった。


 その音を聴きながら、少しだけ。ほんの少しだけ実感がわいてくる。

 僕は、目標の一つであった生徒会入りを無事に果たすことができたのだ。

 そしてその事実が、ある一つの結果となって表れていた。

 僕は大勢の生徒たちからは死角となっている檀上の隅に視線をやった。


「ユノさん……!」


 白い翼(飛べない)を小さくバサバサとはためかせながら、キラキラと輝く瞳で僕を見る神様。

 ……か、かわいい。そしてあまりにも神々しい。

 思わず頬が緩んでしまう。

 こうして嬉しそうな神様の顔を見ることができたのだから、闘技大会を優勝したことにやはり意味はあったのだ。


「……へんなかお」


 アリスがじとっとした目で一瞬僕を見て、そう小さく呟く。


「……ごほん」


 あぶないあぶない。確かに、この晴れ舞台で緩みきった顔を見せるわけにはいかない。

 ただでさえ無能で有名だった僕である。

 そんな僕が今や事実上の新入生の代表になったのだ。神様の知名度を広める為とはいえ、気合を入れなければ。


 それから少しして、新生徒会のお披露目が終わり、僕らは各学年で別れている在校生たちの列に並ぶようにして席についた。


 想像していたよりもあっさり終わったな、なんて感想が正直なところだ。

 それよりも、同じく檀上にいた生徒会の先輩方が僕に向けていた目が少し険しかったような気がするのは気のせいだろうか?


 ……気のせいだったらいいな。なんて。


『私たち生徒会はこれまでも、そしてこれからも――』


 壇上ではロイド先輩と入れ替わるようにして生徒会長のセレナさんが闘技大会の総括やこれからの生徒会活動についての演説を行っている。

 そんな時、ふと隣にいたアリスが僕の顔を横目でじっと見ていることに気がついた。


「……アリス? どうかした?」


「……」


 僕がそう小さく声をかけると、少しだけためらうような仕草で


「…………ねぇユノ。契約って、どんな感じなの?」


 と、そんな問いを僕に投げかけた。


「契約?」


「……」


 こくりと小さく頷くアリス。

 その漠然とした問いに僕はどう答えるべきなのだろうと少し迷っていると、察するようにして、アリスはまじめな顔をして青空のような瞳をまっすぐ僕へと向けてきた。


「神様と契約すれば……私も強くなれるかな?」


「……」


「ユノ、みたいに」


 そう最後にささやくように言って、アリスは檀上にいるセレナさんの方へと視線を戻した。

 ……どう、答えるのが正解なんだろう。

 もちろん神との契約によって得られる恩恵は大きい。それが高名な神であればあるほどそう言い切れるだろう。

 けれど、そんなことはアリスだってわかっているはずで。


「……あのね。ユノ……私――」


 壇上に視線を向けたまま、そう何かを言いかけたアリスは続きを口にすることなく、やがて瞳を閉じて小さく首を横にふった。


「……自分で決めなくちゃだめだよね」


「……アリス……?」


「……なんでもない」


 最後にそう言って、アリスは口を結んだ。


「……」


 ――『神様と契約すれば……私も強くなれるかな? ユノ、みたいに』


 頭の中でアリスの言葉が反芻(はんすう)する。

 きっと今の僕では、この問いに正しく答えることはできないのだろう。

 強くはなれるさ。けれど僕は、きっと例外だから。

 僕自身も知らない、いや、知ってしまった多くの謎。


 その答えを、僕は求めるべきなのだろうか。


「……」


 その場で深呼吸。

 あれこれ、考えてばかりいても仕方がない。一つ一つ目の前のことからやっていこう。

 こうして新たに生徒会にも入ったわけだし。


「……」


 ……………………生徒会ってなにするんだろ?



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