秋葉原ヲタク白書43 さよならは口パクの後に
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第43話です。
今回は、悪性腫瘍から無事生還したAV女優がアイドルグループのメンバーとしてデビューするコトが決まります。
ところが、かつて口パクだった彼女は恐ろしく歌が上手くなってて、他方自慢のHカップに実は詰め物との噂が…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 巨乳墜つ
"ウレカノ"がキテる。
"ウレカノ"とはシングルマザーのボーカルユニット"僕の熟れた彼女"のコトだ。
とまぁコレだけでも十分怪しいが、彼女達の場合はコレに"元AV女優限定"とつく。
「美し過ぎるっ!まるで、アイドルの脱がないストリップショーを見てるよーでしたっ!」
「えっ?何ソレ?ホメてるの?微妙だな」
「伝説の"外神田ぶどう軍"の解散ライブが瞼に浮かぶっ!ああっ!今も涙が、涙が、溢れて止まらないっ!」
ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務めるアキバでも老舗の御屋敷。
アキバの時空の歪みを真っ先に検出するので"重力波検出警報バー"とも呼ばれている。
ところで、今や女子達が"アイドルになるためには先ずAVから"と普通に考える時代だ。
惜しまれつつ解散したAV女優ユニット"恵比寿ぶどう軍"が与えた影響は計り知れない。
「そして、結婚or出産を終えた彼女達が再びアキバに戻って来たんです!ズッとズッと待ち続けてきた僕達の前に!」
「えっ?甲斐路さんって、確かアッサリ"怪でんぱ組"に推し変してましたょね?しかし"ウレカノ"って"ぶどう軍"の元軍人だったのか!おおっ!どーりで老け…ぎゃっ!」
「斬り捨てゴメン!とにかく!ライブがゴージャスなんだよっ!是非ゼヒ是非テリィたんにも、現場まで足を運んでもらいたいモノだなぁ!」
人に何処かへ逝って欲しい時は、その人の胃に肘鉄を撃ち込むのはやめましょうゲボッ。
御屋敷の常連ながら、どうも今宵は厄介ゴトを持ち込む気が満々なのは甲斐路さんだ。
僕は、甲斐路さんには色々貸しがある。
"怪でんぱ"現場は僕の方が古いから←
「勘弁して下さいょ。アイドル現場って苦手なんですょ。暑いし、汗臭いし。カラオケは聞くより歌う方が好きなんで」
「…ソレがさ。テリィたんには、マジでちょっちお願いしたいんだょな。そのカラオケ絡みでさ。実は、どーしても合点の逝かないコトがアルんだょ」
「どーせ口パクがカラオケとズレてるとか逝うんでしょ?見逃してあげましょうょ。みんな、一生懸命なんだから」
アキバの地下アイドルって、基本的にはカラオケCDをバックに歌うコトが多い。
で、その歌の方までCDなんてコトが往々に…ってコレはアキバに限らないか笑。
ところが、ココで甲斐路さんは"ヒューン"と音がする位、小さな囁き声となる。
僕と…メイド長のミユリさんが、バーカウンターの内外で慌てて聞き耳を立てる。
「ソレが…生歌なんです」
「えええええっ?!元"恵比寿ぶどう軍"が生歌?!そんなバカなっ?!」
「ですょね?だって、現役…じゃなかった"ぶどう軍"の時だって、口パクだったんだから。でも、間違いなく"ウレカノ"は生歌だと思う。少なくともメインボーカルのユマミは"生歌"ですね。どうしちゃったのかな?結婚&出産を経て、何か"女体"に神秘的な変化を来したのでしょうか?ウヒョヒョ」←
甲斐路さんのイヤらしい逝い方に出掛ける気も失せるがココから思い掛けない展開に…
「テリィ様。甲斐路サマの御立場もあるし、ココは"ウレカノ"さんの現場に出向いてみませんか?私、お供致します。つぼみん、御屋敷を任せても良いかしら?」
「あ、はい。承知しました。ミユリ姉様」
「え?逝くの?今から?マジ?」
ひとりアタフタする僕だが、ミユリさんは、さっさとカウンターの外に出てしまうw
え?その格好(メイド服)で逝くの?ってか、何でミユリさんと逝くコトになるワケ?
コレじゃあ、レストランにお弁当持参で逝くよーなモンだぜw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田アイドルパークvol.23"は2130頃になって、ようやくヒートアップし出す。
"僕の熟れた彼女"は最後から2番目で、大トリは総勢100人以上いる"AKB148。
今宵は30人位らしいけど、場所取り組も参戦し"ウレカノ"で箱は満員になる。
甲斐路さんは、サッサとヲタクを掻き分け勇敢にも"お目当ての真正面"へ進出。
最後列で壁に寄りかかっていた僕とメイド姿のミユリさんに音響さんから声がかかる。
「よぉ。テリィじゃないか。こんなお子ちゃま現場にミユリを連れて何しに来た?最近のヲタ芸は激しいからオマエにゃ打てねぇだろ?」
「あ、シスコさん。御無沙汰してます。シスコさんこそ、こんな現場までマメに拾ってチマチマ稼いでるんですね。見習いたいなー、その生き方」
「おはようございます、シスコさん。横須賀の件では、お世話になりました。テリィ様が」←
シスコさんは、古馴染みの音響屋さんだ。
この人にカラオケ当番させる手はないなw
「テリィはともかく、ミユリ。お前だって、何しに来たんだょ?まさか、次の"ウレカノ"のメインボーカルを見に来たんじゃ…おいおい。人にはそれぞれ事情ってモンがあるんだ。いい加減にしろょ?」
「えっ?ミユリさんって"ウレカノ"に知合いがいたの?それも、メインボーカルと逝えば、確か公称Hカップ"巨乳天使"のユマミちゃんだょね?確か境界悪性卵巣腫瘍から奇跡の生還をしてどっかのサラリーマンと結婚したって聞いてるけど…」
「しっ!始まりますょ」
ステージは"ウレカノ"の3人がMCを終えてポーズをとり箱に音楽が流れ出すのを待つ。
そんな3人を見もせズ、シスコさんは左手で両目を覆い、右手でCDトレイopenし溜息w
白地に黒マジックで"bye bye Day"と殴り書きされたCDがプレイヤーに吸い込まれ、次の瞬間、テクノ調のイントロが流れ出す。
"ウレカノ"の3人がギコチなく踊り出し、ヲタク達は歓声を上げTOがMIXを切る。
メインボーカルのユマミが、カクテルライトを浴びつつ、ステージ最前へと歩み出る…
歌い出した瞬間、ミユリさんがつぶやく。
「違う。あの子、ユマミじゃない。別人だわ」
第2章 仮歌シンガーの憂鬱
口パクではなく、生歌だ。
しかも、恐ろしく上手い。
まぁダンスはギコチないが、歌はソコらのギャルボーカルなんかより、遥かに上手いw
天性のモノもあるんだろうが、ソレよりレッスンを積んで金で磨いた上手さを感じる。
誰なんだ?この子?
フト横を見遣ると、シスコさんはPA席で左手で両目を覆ったママだ。
ミユリさんにPA卓をコツコツ叩かれ、シスコさんが渋々顔を上げる。
「シスコさん。私、お話ししたいわ。あの"ユマミ"ちゃんと」
「勘弁してやれょ。そんなコトをしたトコロで"ユマミ"は、決して喜ばないぞ。バカなマネはヤメとけ」
「この後は物販ですね?片付けが終わって…正午(午前零時)で良いですか?神田明神下のファミレスで待ってるって、お伝え願えますか?さ、テリィ様、せっかくですから大トリのAKB148、ヲタ芸を打って来ていいんですょ?御贔屓のナホコちゃん、今宵のフォーメ(ーション)は"センターの右7人目"です。ホラ、大きな胸を揺らしてお待ちですょ?」
もちろん、コレは罠だw
僕は笑ってやり過ごす←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
正面に"巨乳天使"ユマミちゃん。
ミユリさんが、明るい声で尋ねる。
「胸、何を詰めてるの?」
メイクを落とし、地味な服に着替えたら急に貧相に見えて…心なしか胸も萎んだような…
「とりあえず、綿なんですけど。形を整えるのが簡単でホント、神なんですけど、ライトを浴びるとコス(チューム)の中で蒸れちゃって」
「100均の"ピローまくら"がオススメ。中身を出してストッキングでくるむの。大きさも形も自由自在に整うし、とにかくスゴい谷間が出来るわ!どんな巨乳キャラのコスプレも、コレでOKょ」
「その手がありましたか!"ピローまくら"ってあの¥200の奴ですょね?でも、ストッキングとは思いつかなかったなー。服の中でブラブラしませんか?ハミ出たりw」
この質問を受けても、ミユリさんの余裕綽々の顔から微笑みが消えるコトはナイ。
横で見てると、仲の良い女子が新しいケーキ屋さんの情報交換をしているようだ。
「使わないスポブラのカップでピローを固定するの。それで、しっかり"谷間"を作り込んだら、仕上げに右乳と左乳を縫い合わせて完成。コレでヲタクが泣いて喜ぶ"超谷間"の出来上がり」
「目からウロコが落ちました!コレでもう大丈夫だわ!ありがとう、ミユリ姉様!」
「ホント世の中、右を向いても左を向いても巨乳キャラばかりで嫌になっちゃうわょね。コレからは、お互いに背中を預けて頭を使って生きて行こ?…で、公称Hカップ"巨乳天使"ユマミちゃんにナリスマシた貴女は、誰?」
24時間営業のファミレスは、夜の早いアキバでは、貴重な夜更かしスポットだ。
終電が過ぎると営業を終了した萌え系女子が続々集い夜の井戸端会議が始まる。
誰もが飾らない自分をさらけ出す時間だ。
「はじめまして。ティナと申します。しかし、ナリスマシがバレたのは初めて。主催さんに逝われて来たンだけど、覚悟はしてましたが、ヤハリ同性の目は厳しいですね。結構お金かけて、顔もいじったのに。何でわかりましたか?」
「あのね。歌が…上手過ぎるのょ、貴女は」
「あ、ありがとうございます!」
ティナの顔がパッと輝く。
「私は…(コスプ)レイヤーやAVさんのフリしてますが、実はミュージシャンなんです」
「バンドか何かやってるの?」
「いいえ、ソロです。私は仮歌シンガー」
仮歌シンガーとは、デモ音源専門の歌い手さんのコトで、実際の歌手が歌を覚えやすいように、楽譜を正確に歌う技量が求められる。
歌い手と逝うより、演奏家に近い。
仮歌シンガーは、楽譜に忠実だ。
彼女は、決して楽譜を崩さない。
「あ、その声って、もしかして"恵比寿ぶどう軍"のデビュー曲"アキバ sexy honeymoon"の仮歌じゃない?あの曲に"歌入れ"したの、貴女だったの?」
「ハイっ!わっ!マジ嬉しい…でも、デビュー曲と逝えば、かなーり昔ですょ?しかも、関係者限定のパイロット盤しかプレスされてナイのに。ホントよく御存知ですね?熱狂的なファンって奴?」
「お友達のデビュー曲だったから。そして彼女は…ユマミは亡くなった。卵巣腫瘍で。10年前に」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「シンガーとして成功したかったんです!レッスンになけなしのバイト代を注ぎ込み、胸もないのにグラビアもやった。AV女優と呼ばれるコトだって厭わない。だから、プロダクションから"恵比寿ぶどう軍"リバイバルの話が来た時、進んで手を上げたの。ブラのパットを取って綿を詰め"パンピングパーティ"で安く顔をいじって…全てはメジャーに逝くためでした!」
「ねぇ。誰も貴女を責めてない。多分、ユマミでさえ怒らないわ。アキバに働く女子は、みーんな貴女の味方だから」
「あぁミユリ姉様!でも、私は時々、目の前が真っ暗になる。このままナリスマシても良いの?だって、プロダクションはユマミさんが亡くなった時、ゴーストライターを立てて追想録まで描かせていたのょ?ソレを私は…ねぇミユリ姉様、私はユマミさんを冒涜してる?私は天国でユマミさんに何て逝えばいいの?」
いやティナ、君は地獄だw
泣き崩れるティナに、ドッと好奇の目が集まるけど、ミユリさんが笑顔で眺め回すと、みんながみんな慌てて視線をズラしてしまう。
ミユリさんに気づいた古参のメイド長クラスが若いメイド達に見るなと注意してる。
みんな、浮気相手のティナと僕の愁嘆場にミユリさんが踏み込んだと勘違いしてて…
あ、後で聞いた話なんだけど笑
「ソレに、あの事務所、えっと"ダイナ"さんだっけ。アッサリ倒産したのょね?あの後、確か。当時流行ってたフィリピンパブに手を出したのが失敗だったって聞いてるけど」
「そうなんです。その後"恵比寿ぶどう軍"やその他の有象無象の権利一切を買い取ったのが、今の私の事務所"ラムダ"なんですけど」
「あぁ。あのアキバ系インチキ文化人のケンゾさんの息のかかったオフィスょね。"僕の熟れた彼女"ってネーミングセンスで、実はピンと来てたの」
かつて、全国津々浦々に存在したフィリピンパブだが、アメリカから人身売買の国と断定されるやビザ発給が厳格になり倒産相次ぐ。
「でも、たとえフィリピンパブの灯は消えようとも、やっと生まれた"AVアイドル"の灯をもココで消すワケには逝かない!そして、新たに"シングルマザーアイドル"と逝うマーケットを切り開く使命を帯びて、ついに"僕の熟れた彼女"は生まれたのです」
「な、何でフィリピンパブブームの終焉から話がそう続くのか、イマイチよくわからないけど、とにかく進め!"僕の熟れた彼女"!ソコに"AVシングルマザーアイドル"と逝うマーケットがあるのなら!」
「ありがとう"AVファンの"テリィたん!私達"ウレカノ"は突っ走ります!応援よろしく…でも1つだけ心配なコトがあるの」
ティナは、仮歌シンガーらしく計算され尽くした次第に弱くで声を落とす。
「事務所に脅迫状が届いたのです。明日のライブを中止しないと"何か"が起きると」
第3章 当て振りライブと呼ばないで
スマホ放送局"ワラッタ"は、中央通りから1本入った通称"アイドル通り"にある。
メイドカフェとかも入っている狭い雑居ビルの何フロアかを借りて本社としている。
最近、地下のライブバーと逝うか、北千住辺りなら普通にカラオケスナックと呼ぶべき物件を買収し、どうやら業績は好調なようだ。
で、今宵はココで"ウレカノ"がライブをやるとのコト。
何となく、成り行きで僕はミユリさんを誘って参戦する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
階段を降りたら…ホントにスナックだ。
狭い階段を降りたトコロにバーカウンターがありモギリも兼ねたドリンカーの女子1名。
左右壁沿いに造り付けベンチ、手前のソファがVIP席でホールはオールスタンディング。
奥に特に段差はなく、よく見ると床にカラータイルが半円形に埋められソコがステージ。
天井に下手すると100均レベルのクリップライトが下げられ"ステージ"を照らしてる。
コレは…カラオケスナックだ!間違いない!
しかし、こんな昭和物件がよく残ってたなw
「あ、スーパーコンビのお出ましだ!こりゃいい絵になるぞ!おはようございます、ミユリさん!」
「あのさぁスズキくん。僕達は、御主人様とメイドのコンビなんだぜ。とりあえず、挨拶は僕にしてくれ。先にメイドに挨拶してもミユリさんが困ってるじゃないか」
「そうでした!おはようございます、ミユリさんにテリィさん!実は今宵は地上波の人が来るんでライブの盛り上げ、よろしくお願いします!」
フリープロデューサーのスズキくんは"ワラッタ"の仕事でライブの取材とのコトだ。
前回、取材中にキャストが宙吊りになるハプニングで高視聴率を叩き出しw鼻息荒い←
そこへ…
「あ、スズキちゃんじゃない!参ったな、また見つかっちゃったょエヘヘ」
「おおっ!そーゆー貴方は(地上波)プロデューサーのヒロキさんでは?御無沙汰してます!"ウレカノ"にアテンドされるなんて、マジ羨ましいなぁ!モテモテですねぇ!確かに、アキバって箱の場所がわかり辛いから案内が必要ですょねぇ」
「OK!万事OK!スズキちゃんのカメラクルーもスタンバッてるね?じゃ逝ってみよう!レディース&ジェントルメーン!イッツ"僕の熟れた彼女"ショー!ヒヤウィゴー!」
解説しよう。
狭い階段を1列になってシングルマザーだけどアイドルの3人組を侍らせて降りてきたのは"キー局の人"で恐らく名前はヒロキ。
大方、深夜にやってるバラエティ番組のプロデューサーと逝ったトコロと思われる。
その彼をフリルひらひらミニスカ姿の"ウレカノ"がキャピキャピと取り囲んでる。
ハデ顔の2人が前後を固め、後に続くケンゾとティナも腕を組み狭い階段を降りてくる。
フロアから見上げる僕達からは"ウレカノ"全員のパンツが丸見えなので遠慮なく拝見←
例のVIPソファに"キー局の人"とケンゾを押し込んで"ウレカノ"は"ステージ"へ。
「ハロー秋葉原!私達"僕の熟れた彼女"でーす!今宵は最後までよろしく!先ず1曲目は…"bye bye Day"!」
客は…まぁハッキリ逝って10名もいないんだけど、地下ライブなんて大体こんなモンだ。
あれ?いつの間にかティナの真ん前に甲斐路さんが出現し、ちゃっかりMIXを発動する。
そして、ユマミ(実はティナ)が歌い出す。
"生声"だ…
ところで"bye bye Day"はデビュー曲なのでAメロの後の間奏でメンバー紹介がある。
メンバー紹介は2小節/人見当でそれぞれ決めゼリフで名乗りを上げるコトになっている。
そして"何か"は3人目の時に起きる。
「会員番号3ばーん、公称Hカップ"巨乳天使"のユマミ…きゃああっ!」
「みんなマヤカシよっ!コイツはニセモノ!ユマミじゃナイわ!どうせ綿でも詰めて巨乳に見せかけて…あ、あれ?綿じゃない?でも何よっ!こんなインチキ"谷間"!こんな"谷間"なんかっ!こんな"谷間"なんかあっ!」
「らめえええぇ!あ、貴女はっ!」
"推し"のメンバー紹介に目を奪われてた甲斐路さんを突き飛ばすトレンチコート女子。
そのままユマミ(実はティナ)の前に仁王立ちし彼女の"超谷間"へと手刀を振り下ろす…
ところが!
次の瞬間、女子の手刀はユマミ(実はティナ)の"超谷間"にスッポリと挟まっている。
慌てて女子が手を抜こうとするがユマミ(実はティナ)が両乳で手刀を挟み抜かせない。
目を疑う光景だが、さらに驚いたのは次の瞬間、会場に拍手喝采が沸き起こったコトだ。
ホールのヲタクはともかくVIPソファのプロデューサー連中まで立ち上がり拍手してるw
コ、コレって…standing ovation か?
地下ライブで?あり得ないでしょw
後で聞いた話だと、その場にいた人はみんながみんな、振り下ろされた手刀をユマミが両乳で見事に受け止めたと思ったらしいのだ。
つ、つまり、真空白刃どり?
い、いや、真乳白刃どりかw
とにかく!全員、コレは"ウレカノ"の盛り上げパフォーマンスだと勘違いし、一気にライブの熱狂ボルテージが極大に振り切れる。
鈍重だが実はパワフルなモギリ女子がテロ女子を羽交い締めにしてDJブースに連れ去る。
みんなは、ソレすらもパフォーマンスだと思い拍手に歓声、狂ったようなヲタ芸の嵐だ。
やがて、ライブの熱量が臨界に達した瞬間にラスト曲のクライマックスへと雪崩れ込む。
熱狂に感動した"ウレカノ"の3人が涙を拭いて絶唱、最後のフィナーレで客を指差す…
え?僕?ティナ、君は僕を指差すのか?
瞬間立ち尽くした僕に彼女はウィンク…
「いいねぇ"僕の熟れた彼女"。ケンゾちゃん、トンデモナイ隠し玉を持ってたねぇ。驚いたなぁ、イマの秋葉原ってスゴいな」
「でしょ?ヒロさんの番組にはモッテコイかと思ってルンだ」
「出てょ、僕のバラエティ。もぅ僕から頼んじゃうょ。"僕の熟れた彼女"は来週から出れる?…でも、その前に彼女達、アキバの地下が長かったんだろ?"地上波に出る心構え"とか心配だなぁ。ホラ、ケンゾちゃんも何かと忙しいみたいだし、何なら僕から語っとくけど。そーだな、あのメインボーカルの子がイイな」
VIPソファで立ち上がって歓声をあげる2人のプロデューサーの間で話がまとまる。
同時に"お持ち帰り"も決まったようだけど"超谷間"の謎がバレなきゃいいが。
第4章 さよならは口パクの後で
今回も色んなピースが出揃った翌日の夜、御屋敷にみんなが集まる。
「ヲタクのためのアイドルがヲタクをダメにして、アイドルのためのヲタクがアイドルをダメにしてる。みんなは、タマには文明人らしく、静かにラブソングを聞きたいと思う時がないか?」
「へぇ。甲斐路さん、結構詩人だなぁ。転んでもタダのアイドル追っかけじゃないんだね(意味不明w)」
「AVも同じです。初めてAVの世界を垣間見せてくれた私の親友は死んだ。彼女のお葬式に地味服で逝くかイケイケで逝くか、随分と悩んだのを覚えています」
珍しくミユリさんがシミジミと溜息。
僕もヘルプのつぼみんも、少し驚く。
「でもね、良いのです。最後にティナが私を指差してくれたから」
「ええっ?!違うょ!アレは僕を指差したんだょ!」
「あらっ!甲斐路さん、聞き捨てならないコト、おっしゃいますね?恐縮ながら、彼女が指差したのは私…」
ええっ?僕を指差したんじゃナイのか笑
「あ、あれ?スズキくんからマチガイダに呼び出しだ。何だろう?こんな時間に」
「この前のライブ画像のチェックではナイですか?テリィ様だけ変顔で映ってらっしゃるとか。うふふ」
「何だょソレ。とりあえず、ちょっち逝って来る」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
チリドッグがヤタラとウマいマチガイダ・サンドウィッチズは、アキバ人の溜まり場だ。
僕も膨大な時間を過ごしてるケド、今宵はどうやら、またまた面倒なコトになりそうだ。
顔を出した僕にYUI店長が顎で指す先には…もちろん、スズキくんはいない。
「あ、テリィたん。お呼び立てしてゴメンナサイ。ミユリ姉様には黙っててくれた?」
「僕からは何も逝ってない。でもミユリさんは僕がお出掛けする時、ヤタラ濃い援護射撃をしてくれたw」
「あちゃ、お見通しか。さすがはミユリ姉様」
ティナだ。
ジーンズにトレーナー。胸に詰め物がナシだと昨夜のユマミとは全く別人に見える。
そして、リアル?なユマミと逝うかティナの横にはストレートのロングヘア美少女。
美少女だけど…彼女には見覚えがある。
昨夜、ライブに乱入したテロリストだ。
「はじめまして、で良いかしら。私は、カミュ。貴方がテリィたん?"地下鉄戦隊メトロキャプテン"のライターの方?」
「そーゆー君は戦隊ヲタクには到底見えないから…きっとライターなんだろうね。何の本を描いてるの?」
「私の本は、世に出なかった。死んだユマミの追想録だったから。だって、ユマミは…未だ生きてルンだもの。"ウレカノ"のメンバーとしてデビューすルンだものね。私の描いた追想録は闇に葬られた。ゴーストライターごと」
あ、ゴーストライターなら僕も経験がある。
まぁ僕の場合はゲームコンテンツだったが。
「ソレで昨夜は、偽者のミユマに襲いかかったワケか。でも、ソレは逆恨みって奴だろ?しかし、ソレにしちゃ今宵は仲が良さそうだな。仲直り仲良しの秘訣は何かな?」
「秘訣はね…一緒にデビューして一緒にスポットライトを浴びるコトょ!昨夜の真乳白刃どりを見て、急遽、私も"ウレカノ"4人目のパフォーマンスメンバーとして追加デビューが決まったの!私はアイドルになるの!コレで貧乏ライター暮らしにさよならよっ!」
「ホントかょw何でもアリだな。で、そんなホットなデビュー情報を教えるために僕を呼んだのかな?ココに」
すると、カミュが氷の微笑を浮かべる。
ゾッとする冷たさだ。嫌な予感がする。
「私は、ユマミの追想録を描く時に色々と調べたし、色んな資料にも目を通したの。そしたらね、テリィたんのお耳に入れておいた方が良いコトがわかったの。実は、ミユリさんってね、若い頃にAVの…」
「闇に葬られたゴーストライターの逝うコトには興味がナイや。そんなコトより、ティナ、ホンキでデビューするなら、ホンキで推してくれるTOが必要だぞ。真乳白刃どりが実はピラーまくらでした、なんて知ってても決して口外しないヲタクの中のヲタク。どうせ、甲斐性ナシのお前にはアテなんかナイだろうから、僕が呼んどいた。甲斐路さん、カモン!」
「ええっ?!甲斐路さんがいるの?ココに呼んでくれたの?私のために」
ティナとカミュが振り向くと、甲斐路さんがマチガイダの入口に立っている。
突然の出来事に、カミュはともかくティナの方は完全に舞い上がってしまう。
「リアルなユマミが…実はAカップでも、甲斐路さんは推せるの?リアルなティナは…実はツルペタなのょ?ソレでも、貴方は構わないの?」
「あのな。推しとヲタ(ク)は魂のつきあいなんだ。胸の形なんか関係ない。アキバのヲタクをなめるな」
「ありがとう…はじめまして、甲斐路さん。私は"僕の熟れた彼女"メインボーカルのミユマ。今日から貴方が私のTO」
泣顔のティナが甲斐路さんの胸に飛び込む。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
優れたヲタクは実に才能豊かだ。声を変え外見を変えソレまでの人生すらも変える。
だが、そんなヲタクも、いつかは思い知る時が来る。どうしても隠し切れないモノ。
それは愛だ。
そして、生きている間に隠そうとしたモノは死と共に暴かれる。
彼女が、何を恐れ何を悩んでいたか、そして何を隠していたか。
だから、アキバで何かを隠したり、秘密にしたりするコトは、余り意味がナイ。
「テリィ様は…元AV女優はお嫌いですか?」
「えっ?何を逝ってルンだ、ミユリさん。大好物さ!だって、AV女優って今、1番流行ってるンだぜ…あ!ところで、実は僕、今まで黙ってたけど、昔、AV男優を目指してたんだ」
「ええっ?テ、テリィ様。ホント貴方と逝う方は…そうですか。わかりました。いつか、そのお話、ミユリに必ずしてくださいね」
おしまい
今回は、最近アキバで存在感を増す"AV女優"を中心に、仮歌シンガー、地上波プロデューサー、巨乳好きのTO、ゴーストライターなどが登場しました。
今回はプロット重視でNYの都市風景持ち込み方式を少し控えています。出張が入って週1ペースが崩れましたw
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




