第11話 整形外科?回目
もはや何回目の整形外科かわからないため適当なサブタイトルとなっております。
上司より5月の出張の可否を仄めかされ、追い詰められたおっさんはその翌週の月曜日に成形外科を訪問していた。
既に薬の追加や再注射により何度も整形外科クリニックを訪問しているおっさんはもう手慣れたもの、待ち時間もスマホをしていれば良いだけで、ぶっちゃけ家でいるときとやっている事は何も変わらない、むしろ整形外科の待合いスペースが我が家のリビングかってくらい寛ぎ、
(それにしても、ここの整形外科クリニックは若い看護婦がいないなぁ、ここの看護婦の平均年齢って50歳くらいなんじゃないの、ここの先生は40少し超えたくらいに見えるから…熟女好きかよ。どうせなら若くて可愛い看護婦に診察してもらって…。)
なんて大変失礼な事を考えていた。
ベテランは経験豊富で安定感があり安心してお任せできます、ほんとごめんさない。
そして1時間以上過ぎたころ、ようやくおっさんは呼び出しを受けるのであった。
診察室に入ると賢そうな先生が座って液晶ディスプレイを見ていた。
先生もおっさんのあしらいは慣れたものである。
「おっさん、今日は突然どうしたんですが次の注射は来週の予定なんですが…。」
何だか困った奴が来ちゃったよって感じである。
「じつは、カクカクシカジカでカクカクシカジカなんですよ。」
要点を纏めるとおっさんは、
・仙骨硬膜外ブロック注射の効果の期間が短くなったような気がすること。
・5月に海外出張が控えていること。
・出張は長ければ2週間かかること。
・このままでは左遷、窓際、首?になること(嘘です。)。
・成形外科エモーン助けてよー。
という事を泣きついたのであった。
それに対して先生は
「そうですか。それは困りましたね、しかしまだ手立てが無いわけではないです。それは…。」
「それは…、ゴクリ。」
「神経根ブロック注射です。」
「神経根ブロックだってー。」(棒読み。すっとぼけー。)
実はおっさん神経根ブロック注射については少しだけネット知識ではあるが知っていたのである。
従来の仙骨硬膜外ブロック注射について調べた際に偶然(必然だろ)知ってしまったのだ。
おそらくこの情報化社会において仙骨硬膜外ブロック注射は知っていて神経根ブロック注射は全く知りません、なんて事にはならないくらい調べれば、ミレニアムな打線の高橋、松井、清原のように名を連ねるのである。
(古くて分かりづらい例えで申し訳ない。)
茶番と知りつつ?それでも先生は
「仙骨硬膜外ブロック注射が神経の周りに注射を打つのに対して、神経根ブロック注射は痛みの原因となっている神経根に直接ブロック注射を打つ方法です。
正確に神経を狙う必要があるので、針の侵入をレントゲンで撮影しながら痛みの原因と思われる箇所の神経根に注射を打ちます。
一応麻酔はしますが、それでも神経に直接針を刺すわけですので、かなりの痛みを伴います。」
「ほうほう。」(知ってる。)
「ミエログラフィーと呼ばれる手法で造影剤を先に体内に流し込むことで本来見えない神経を見えるようにし、それから神経根ブロック注射を打ちます。」
「ほうほう。」(知ってる。)
白々しく、さも今知ったかのように神妙な顔つきで聞くおっさん。
しかし予想外の発言が先生から飛び出す。
「でもミエログラフィーは人体への影響が大きいので今回は造影剤は使わずに神経根ブロック注射をしたいと思います。」
「えっ、ミエログラフィーは無し?」
(確か神経はレントゲンでは映らないから、造影剤で見えるようにするのでは…ハテナ?)
「概ね、神経がどのあたりにあるのは多少の個体差はありますが、大体はわかりますので、大丈夫です。」
自信満々に言う先生に、気おされたおっさんは。
「では、お願いします。」
と思わず言ってしまうのであった。
「では、注射の準備にとりかかりますか。
レントゲンが使えなくなりますので、全ての診察が終わってからなのでおそらく、後30分後くらいかと思うのですが、予定は大丈夫でしょうか。
注射後も30分はレントゲン台の上で安静にしないといけませんが。」
まさかのいきなりの注射のお誘いに戸惑うおっさん。
(まじで、これからかよ。まだ心の準備が、どーしよう、どーしよう。)
何故おっさんがここまで戸惑うのか皆様も神経根ブロックとネット検索すれば自ずと理解できるであろう。
おっさんがネットで調べたところによると神経根ブロック注射の印象は以下の通り
痛い。
すごく痛い。
めちゃくちゃ痛い。
死ぬほど痛い。
こんな痛みは人生で初めて。
陣痛並の痛さ。
泣いた。
となっており、痛いか泣くかの二択かってくらいネガティブな感想しか無いのである。
そして完全に恐れをなしたおっさんは
「いやー、そういえばこの後予定がありまして…、別日にしていただけないでしょうか。」
(ヘルニアで5分も歩けない社畜のアラフォーが月曜日の20時以降に予定なんてあるか!)
「それでは今週末の金曜日の20時にしましょうか。
予約しておきますね。」
一瞬先生がニヤリと笑ったような気がした。