第8話 仙骨硬膜外ブロック
電話が掛かってきた翌日、どうにも解決法が思いつかないオッサンは。
「成形外科エモーン、助けてよー、神経痛がいじめるよー。」
って困ったときの整形外医院頼みといった感じで、定時ダッシュでいつもの成形外科を訪れていた。
今日も御老体の方で待合室は混雑しており安定の2時間待ちコースである。
いつもの如くスマホで時間を潰しながらひたすら待つ、なろうでブックマークしている小説を読む。
無料でこのクオリティの小説が読めるとはホントいい時代になったものである、なろうのおかげで待ち時間も苦にならないとは、全くなろうサマサマですよ。
そして混雑も緩和された頃にようやくオッサンの名前が呼ばれる。
診察室に入るといつもの如く賢そうな先生が座って待っていた。
「久しぶりですね。その後いかがでしたか?」
「それが、カクカクシカジカでカクカクシカジカなんですよ。」
オッサンの状況と今回来た経緯を簡潔に説明する(泣きつく?)オッサン、正直2分程度の会話のキャッチボールである。
オッサンとの会話はいつも5分もかからないのになぜにいつもこんなに混雑しているんだ、と思わなくもないオッサンであった。
「それは困りましたね。ではブロック注射に挑戦してみませんか?」
(ブロック注射?何だ?)
子供の頃にメチャクチャ遊んだLEGO社の玩具を思い浮かべたオッサンであったが、賢そうな先生が言うには痛みの原因となっている神経根の近くに神経を麻痺される注射を打つことで痛みを和らげることができるそうな。
だたし、効果には個人差や注射を打つ場所の当たり外れのようなものがあり絶対に効果が期待できるというものでは無く、一度打つと2週間は間を置く必要があり、効果の持続時間も1日から2週間程度と非常に振れ幅が大きいのも特徴であると。
また神経を麻痺させているだけで、ヘルニアの出っ張りを治しているわけではないため基本は安静にする必要がある。
また稀に身体に薬液が合わない人もいる等、多少の副作用もあるとのことであった。
何よりもオッサンを躊躇させたのは注射が長い。
(なんじゃこりゃ、こんな注射見たこと無いぞ見るからに痛そうだぞ、しかも背中とお尻の間と太ももの上の方の2箇所も注射を打つのかよ。)
オッサンは年甲斐も無く注射が怖い、とはいえこれで今の痛みが少しでも良くなるなら一時の痛みなんて。
という事でブロック注射を打つ事を決意したオッサンであった。
血圧測定して、注射後30分は寝たままという事でトイレに行ってさあ準備OK、診察台にうつ伏せになり準備OK、そこに年配の看護婦さんがやってきて。
「注射打ちますので、ズボンを少しおろして下さい。」
と言われ少し恥ずかしいなっと思いながらズボンを下ろし、半ケツの状態で待つこと数分で賢そうな先生がやってきて
「はじめますねー、まず皮膚麻酔してから注射しますから、少しチックってしますよ。」
(ついに来たか、少しとか言ってホントはメチャクチャ痛いんだろ、俺は騙されないぞ。)
等と疑り深いオッサン。
ケツの上をガーゼでフキフキ
(これが皮膚麻酔か。)
そして少しチックとする痛みがすると
「これから薬液を注入しますねー。」
(何だ、この腰に感じる違和感は)
痛くは無いが、少しズーンとする感じ。
説明下手ですみません。
「痛みとか、吐き気、気分が悪いとかは無いでか。」
「全くありません。」
そして注射を初めて10秒程で腰の注射が終わり、太ももの注射に移る。
こちらも同じく、皮膚麻酔後少しチックとした痛みの後に少しズーンとした重みを感じる。
「終わりましたので、30分程度横になって下さい。また来ますので。」
血圧を測定した後、さっさと次の患者の対応に移る先生と看護婦さん。
大した痛みも無く、気分が悪くなることも無く、拍子抜けしたオッサンであった。
そしてまたもや寝ながらスマホで時間を潰すこと30分後看護婦さんがやってきた。
「30分経ちましたので、立ってみましょう。まずは座って少しづつ脚に力を入れてく感じで立って下さい。」
徐に起き上がり、言われたように少しずつ立つオッサンそして
(立てただと?、痛みも殆ど無いだと、普通に立てるだと。)
頭の中に、昔見たアニメの、スイスの山で車椅子の少女が立ち上がったときの赤いチョッキを着た少女のセリフが鳴り響く。
(やったぜ赤チョッキ、俺立てたよ。感動もんだぜ、ヒャッホー!)
「どうですか、痛みや気持ち悪さ等は無いですか。」
「ありがとうございます。痛くありません、もう完治しました。」
「完治してませんので、くれぐれも安静にして下さい。後今日はお風呂は控えて下さい。」
というツッコミを受け、痛みから開放されたオッサンは頭の中はバラ色で会計(3000円くらい?だったような。)を済ませ帰路につくのであった。
ブロック注射ってしゅごい。




