第四猫 異世界へのいざない
読者の皆様。どうもお久しぶりです、ミヤビです。
かなり前回と期間が開いてしまった件についてしまっては申し訳ございませんでした。
いやー・・・・・・二つ同時ってのは難しいね。
というわけで最新話、どうぞ!
今日はあの白い猫。通称シロを拾ってからちょうど一週間が経過した日。
あの日から数日間降り積もった雪は、その後あっという間に溶け、雪の存在はまるで夢だったかのように跡形もなく消え去っていた。
こんなことがあったのだから何か他にも面白いことでも起きるんじゃないかな、と思っていたが別段変わったことはなく、今まで通りの日常を送り続けている。
強いて言うならシロの様子を見に三浦と末永、それから楓先輩がうちに来ることが多くなったことくらいか。
特に楓先輩は大学受験を推薦で通ったとかで時間があるらしく、しょっちゅう来ている。
推薦なら推薦でやることがあると思うんだけどね・・・・・・
とまあ、俺の現状はこんな感じ。
・・・・・・ちょっと前まではそう思っていた。
その季節外れのまったりとした温かな日常は、ある日からばったりと変わってしまった。
* * *
「たーだーいーまー」
朝早くからの学校が終わってくたくたの俺は、その疲れを言葉に思いっきり乗せて帰宅の挨拶をする。
もちろん返す声はない。。
寂しい・・・・・・と昔は思っていた。
今はもう慣れてしまって特に何か感じることはないし、むしろ誰かのことを気にすることなくいろいろとできるので良いと思っている。
しかし、その分同じくらいのことを自分で管理しなければいけないのだ。
炊事洗濯家事全般、朝は誰も起こさないし生活リズムが崩れても誰も注意はしてくれない。
自由というのは全部が全部いいことではないのだ。
まいにっち〜まいにっち〜僕は過労〜。
ほんっと今日も疲れた。
マジで『学校は社会生活の模倣』とはよくいったものである。
どれだけ行きたくなくても、学校には行かなければ行けないし。仕事(勉強)をしないと怒られたりするし。他人との距離とかコミュニケーションとか考えないといけないし。
そう考えると我々は幼いころから社会で生き抜くための訓練をさせられているということを痛感する。
もうこれ教育っていうよりは、調教なんじゃないの? そうか、学校とは社畜の養成所だったのか。とすると教師は調教師ということになる。なるほど、なら女教師ものにSMが多いのも合点がいく。あかん、CEROに引っかかる。
疲れているからか脳内にはぐるぐるとくだらない思想が渦巻き、混沌と化していた。
そのだるーっとした気持ちのまま、だるーっとリビングのドアを開ける。
この先にはおそらくシロがソファーかテーブルか、はたまた冷蔵庫の上なんかに陣取ってムスーッといるのだろう。そういや、今日の晩飯考えてなかったな、シロの分はどうしようか。ビンの鮭フレークとかでいいかな。いや、健康に悪そうだから残り少ない高級猫缶にしようか。
と、シロの今日の晩御飯が決まったそのときだった。
「おーい。シロ、ただいm・・・・・・っ!?」
「あ、ユイ。お帰りなさい。遅かったですね」
疲れ切った俺を迎えたのは白い猫ではなく、白髪の少女だった。
少女は白を基調としたノースリーブのドレスを纏っていた。どちらかというとワンピースに近い感じだ。絹のような肌が肩まで惜しみなく露出し、そのまま滑らかな曲線を描き腰へと至る。そこでは結ばれた青いリボンが純白のドレスの清楚さを引き立たせていた。
おかしい、何かがおかしい。俺疲れすぎなんじゃないの?
ナニコレ・・・・・・。
いつも通りの一日を送って家に帰ってきたらなぜかドレス姿の白髪美少女がいるんだが。
なにそれどこのラノベ?と言いたくなる状況である。
幻かと思って目をこするが、いくらこすったところでその子の姿は消えることはなくむしろはっきりと見えてきて現実味を帯びてきている。
「ユイ、どうしたのですか? そんなに目こすったら痛くなりますよ」
そう言って俺の手を少女はつかんだ。
真っ白な指がきゅっと優しく絡む。うおっ・・・・・柔らかっ。女の子の手ってこんなに柔らかいもんなの? このまま溺れちゃいそうなくらいものすごい感じ。
「え、えと・・・・・・。ど、どち、どちら様ですか?」
やっとの思いで声をしぼりだしたせいで、少し裏返ってしまう。
「・・・・・・」
少女は不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込む。
長い白髪が揺れ、ふわっとなんかよくわからん香りがした。よくわからんがいい香り。多分、花かなんかの。キラキラしたエフェクト付きで。
「まだ、分かりませんか?」
唐突な問いに驚く。
”分かりませんか”ってことは彼女は俺が知っている人らしい。
だが見覚えがない。ということは長らく見ていない人なのか。
といっても家には鍵かけといたし、合い鍵も三浦ん家の親しか持ってない。
他に合い鍵を持っている人がいたとしたら親戚だろう。
親戚にいとことかはいたけど、確かみんな俺より大きく年が下回っていたはず。
ならば彼女はいったい誰なのだろう?
新手の詐欺かなんかかとも思ったが、俺なんかを狙うような理由がわからん。
金だってろくにあるわけではないし、将来も特に有望ではない。おいそれマジか。
「わかり・・・・・ませんか?」
少女は少し距離を詰めてもう一度問う。
別段、女性恐怖症というわけでもないがこの年にもなると、こうやって女性に近づかれるのはなぜかいろいろと気まずいわけで。
少女の視線から逃れようと、部屋の方へ視線を移した時。
「ぁ・・・・・・!」
ある、一つのことに気付いてしまった。大事なピースがその部屋には欠けていたのだ。
真っ白な、ふわふわとした、あの愛らしいヤツが。
視線を少女に戻すと、向こうはこちらが気付いたことを悟ったらしい。どこか満足げな笑みを浮かべていた。
「なあ・・・・・・お前、もしか、して・・・・・・」
俺がうまく口に出せないでもごもごとしていると少女は小さくうなずき、ほほえんだ、
「お前”シロ”・・・・・・か?」
「はい、そうですよ。私が”シロ”です」
その揺るぎない堂々とした回答に、俺は絶句してしまった。
おいおい、こんなことって現実にありえんの・・・・・?
夢でも見てんじゃないの? 夢ならぜひとも覚めないでほしい。
まあ人の夢と書いて儚いと読むくらいだし、これが夢ならもうとっくに覚めている頃だろう。
それに夢だったら今日一日がまるまる消えるということになる。それは天が許しても俺が許さん。
以上の理由によりこれは夢ではなく現実である。異議は認めん。
・・・・・・・・・・・・アホくさ。
いかにもバカ丸出しの理論を脳内で展開してくうちに慌てていたメンタルも落ち着きを取り戻し、現状を把握できるまでには回復した。
「っと・・・・・・とりあえず”シロ”でいいか?」
「ええ、とりあえずはそれで結構です」
俺はコホンと咳ばらいをして、質問のタイミングを計る。
「えと、なんでそんな姿になったんだ? お前、猫だったろ」
聞くと、シロはばつが少々困ったような表情で頭をかいた。
「う〜ん、最初にそれをお聞きになりますか、唯」
「・・・・・・何か、まずかったか?」
「いえ、まずいというわけではないのですが・・・・・・」
そこまで言うとシロは一度考えるように顎に手を当てる。
思わず、白く細い指先にスーッと視線が引き寄せられてしまった。
改めてみるとすげえ綺麗だな。ホントにどっか遠い外国、いや異世界から来たような人間離れした現実離れしたような容姿だ。
え、これ大丈夫? 犯罪とかになんないよね・・・・・?
俺がいらぬ心配をしているうちにシロは考えをまとめ終わったらしい。たたずまいを正すとやけに凛々しい声でとんでもないことを口にした。
「簡潔に説明しますと、私はここではないとある異世界からやってきた者です」
・・・・・・(沈黙)。
おい、マジか。
ただそれだけが、頭の中に浮かんだ。
え? え? え? んなこと本当にあるの?
さっき急に部屋の中に女の子がいたのも驚いたけど、こっちはその十倍くらいは衝撃的だ。
いやまあね、帰ったら見知らぬ女の子がうちにいたなんつーことはざらにあるだろ。
・・・・・いや、ねえか。もしいたとしてもそれは多分、か〇ぽさんの手下かヤク〇トレディーさんだな。うちには来ないけど。
「・・・・・・唯、聞いていますか?」
衝撃の事実に俺が放心状態でいると、シロが顔を覗き込んできた。
うわあ、すげえ肌白いしなんかいい匂いするし髪の毛綺麗だし。
いろいろと頭の中がいっぱいいっぱいになってしまい、「あぁ」と情けない返事がこぼれる。
「いいですか、ですから私と契約して私の守護者になってほしいと―」
「ん? あぁ、守護者ね守護者・・・・・・は?」
守護者? 保護者じゃなくって?
なんぞそれ、と半眼でシロを見るとシロはにっこり笑って。
「はい、守護者です」
と、それがさも常識であるかのように口にした。
たった数分間にとんでもないことをいくつも聞かされた脳はパンク寸前だったし、なんもかもいきなりで気持ちは焦るばかりでなにが何だかわからなかったが、そのやたら頼りがいのある凛々しい笑顔を見ていると自分の中にも、よくわからん自信が灯ったのを感じた。
いかがでしたでしょうか。
久しぶりの神待ち猫ということで文体があいまいなまま書き進めてしまったので今までと変わった印象だったかもしれないですね。
原因は多分、長く書いていなかった事と、とある有名な作品の影響を受けてしまったことですね。
その作品をご存知の方ならおそらくすぐわかるくらいには地の文に影響が出ています・・・・・・
仕方ないんよ、面白いからアレ。
とまあそんな感じで、第四猫でした。
それではまた次話でお会いできることを楽しみにしています。いつになるかわからんけどな!!
2017 3/17 家族の鼻歌がやかましいなと思いつつ。