第二猫 すみません、ファンタジーはまだです
えーサブタイトルにもあるようにファンタジーはまだです、ハイ。本当にすみません。なんとなくキャラの紹介をしておきたいなというのと、末永ちゃんの話し方とか立ち位置を固定化したいということで今回が追加されました。あ、この時点だと末永ちゃんはネタバレでしたね・・・
雪を見ていたらあっという間に6限は終わり、ついでにショートホームルームもさっさと終わった。
俺が見入っていた雪はいまだ降り続いていてクラスの中の帰宅部組は窓際で「わ~」とか「雪だ~!」とか言ってはしゃいでいた。
その気持ちも分からなくはないが俺はあまり騒ぐタイプではないし、帰ってやるべきことが山盛りなので急いで帰らなくてはいけないのだ。・・・・洗濯物干しっぱなしだし、チクショウ。
早々に荷物をまとめ、コートを着て急ぎ足で教室を出ようとした俺は呼び止められた。
声の感じからしてまさかとは思ったがやはりそこには茶色のポニーテールがあった。
「唯、ちょっといい?」
「なんか用か?急がないと洗濯物ぬれちゃうんだけど・・・」
そう言うと三浦は「あ・・・」みたいな顔になった。
「そうなの?なんで干しっぱなし?」
「天気予報に雪なんてなかったからな、朝は晴れてたし」
「そうだったっけ?まあ、いいや」
いやいや、俺にとってはさっきの英表の授業の数十倍は大事なことなんだが・・・こいつにはわかるまい。
「で、要件はなんだ?」
「ああ、そうだったね」
忘れてたんかい!!
俺は別にツッコミキャラではないのであくまで心の中で三浦にツッコむ。
「えとね、今日親が両方夜勤でいないから唯んちで夕飯食べて良い?」
「なんだ、そんなことならメールとかでも良かったろ」
「いや~それがさ、最近なんか物忘れが多くてね。思い出したから言っておこうと思ってさ」
「ふーん、そうか。じゃあ、部活終わったら家来いよ。それじゃ、また」
と言って俺は三浦に背を向ける。
「あ、ちょっと待って!」
またも呼び止められた。今度は何だ・・・?
「今日の夕飯なに?」
なんだ、そんなことか。そういや特に決めてなかったな・・・・
そうだな・・・・・あいつが来るんなら、アレにしてやるか。
「お前が来るから今日はハンバーグにしてやるよ、だから前みたいに寄り道すんなよ?」
そういうと三浦は目をキラキラとさせ、笑顔になった。
「ホントに?やった~!なら、部活さっさと終わらせてすぐ帰るね!!」
「おう、それじゃあな」
「うん、またね~!!」
そう言って俺は三浦と別れ、帰路についた。
* * * *
「ううっ、寒っ」
玄関を出ると強烈な寒さが頬を刺した。
外は雪が静かに降り続け、いつのまにか地面には真っ白な冬のカーペットが敷き詰められていた。
周りの生徒たちはいつもとは違いどこか楽し気に下校している。
俺はその中を早歩きで進んでいった。
早くせねば洗濯物が危ない、終わったはずの洗濯物をもう一度洗い直して干しなおすというのはすなわち、過去のその時間がなかったというのと同じことである。
そんな事態は是が非でもあってはならない。いくら慣れているとはいっても一日の作業が二倍になってしまうのは御免だ。
そんな感じで校門近くまで早歩きで来ると見覚えのある人物がそこには立っていた。
「あ、来た来た。どうもお疲れ様です、先輩」
「おう、お前もな」
ペコリと律儀にお辞儀をするこの女子生徒の名は”末永 くだら”だ。
『先輩』と呼ばれたことからわかるようにこいつは俺の一学年下の後輩である。
俺は部活に入っていないので部活の後輩ではない。
なぜこいつと俺が親しいかというと・・・それはまた後で話そう。それよりも洗濯物が優先だ。
「で、そこに立ったということは何か用か?」
「あ、はい。今日先輩のうちでご飯いいですか?」
「なんだ、お前もか。いいぞ7時くらいにうちに来い。今日はハンバーグの予定だ」
「わあ!本当ですか?じゃあ7時にお伺いしますね」
「そうしてくれ。じゃ、俺急いでるから」
そう言うとなぜか末永ははっとした表情になり俺を見た。
なに?なんか付いてるか、俺の顔。
「先輩、いま『お前もか』って言いましたよね?」
「ああ、言ったな。それがどうかしたか?」
・・・・まさかとは思うが、こいつ・・・・・・・気付いたか?
末永の表情が一層険しくなり、疑うような目で俺をジロリと見ると。
「そして今日のメインはハンバーグ。と、いうことは・・・・」
「・・・・・・・・・・・そうだよ、三浦も来るよ」
「やっぱり!!そうなんですね!」
「なんだよ、なにか問題か?」
「いえ、別に。何でもありませんよ?気にしないでください」
いや、そう言われると気になってしまうのが人間という生物の特徴でな、特に秘密とか未知とかいうことは解き明かさないと気が済まないのだ。
ほら、もう地球上に未知の世界なんて深海ぐらいしかないだろ?どんなに高い山も、終わりの見えないジャングルも、雲の上にだって人間の手は届いている。それだけでは飽き足らず本当に終わりない宇宙にだって手を伸ばしている。
だからといって俺はそんなに人のことを知ろうとは思わないので追及したりなんかはしない。
「そうか、なら気にしない。ちゃんと7時には来いよ?」
「はい、ではまた7時に」
「ああ、じゃあな」
そう言って俺はまた歩き出す。
いかん、また時間を食ってしまった。これでは洗濯物が危ない。
そう思った俺はさっきよりも早く歩みを進めた。
いかがでしたでしょうか。本当にすみません、次話からはたぶんファンタジー入ります。あえて言っておくと次で猫を拾います、ハイ。次回は・・・猫拾う→飯食う→数日後・・・という流れになると思います。もしかしたら飯食うで終わりかもしれません。そうだったらごめんなさい。がんばれよ!次回のMiyabi!疲れに負けるな~。それではまた次話でお会いしませう。