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番外編 妹編 第1話思考違いの鉢合わせ

本編と関係ないこともないですが、一応番外編ということで書きました。

今回は裕希と、その双子の妹、里音との関係書いた物語です。本編にはまだ出てきていませんが、ネタバレになるような要素を含んだ内容とはなっていませんので、気軽に読んでいただきたく思います。


それではどうぞ!!

「なぁ、里音。」


「何?キモイからあんま話しかけんな。キモさが感染っちゃうんだけど。」


「俺のこと好きか?」


「はあ!?それ以上ふざけた事言ったら殴り殺すわよ!このド変態!!」


妹というのは2次元で思う程うまくいく存在ではないという意見には概ね賛成する。だが、現実世界で妹萌えしないというのには大反対である。

妹は可愛いし、萌える存在であるとよく思う。

裕希が小学生ぐらいの時、裕希と、その双子の妹とは一方的な形でだが、仲が悪かった。妹の名前は里音という。里音は「兄」という存在を拒絶してきた。否定し、批判し、蔑んできた。しかし、それと兄とは全くかけ離れている。裕希は里音という存在に溺愛し、愛でて愛してきた。全く、里音とは逆の思考なのだ。彼の妹に接する態度は非常に穏便で、優しいものだった。たまに、調子に乗ってふざけたりもするが、基本は優しい兄のような接し方でいたつもりだ。

なぜ彼女がそこまで自分を嫌うのか、考えた事はあまり無い。そんな時間があったら愛されるように努力していたはずた。彼女のその態度になれてしまっている訳では無いが、それでも諦めたりはしなかった。

里音も、裕希も、そんな調子で中学校生活を送った。裕希は愛し、里音は否定する、そんな毎日が過ぎて行った。

だからこそ、裕希と里音があんな関係になるなんて、奇跡でしかなかったのだろうと思えたのだ。

これは裕希と里音の今に至るまでの絆の話である。



その日の空はすごくどんよりしていた。とてもお出かけ日和とはいえない天気のだが、その日は出かけなくてはならない。

裕希にはネットで知り合った女友達がいた。何度か会ったこともあり、髪は肩まであり、黒く綺麗で、可愛いというより美人系の人だった。

今日はそんな彼女と遊園地に遊びに行くことになっている。一応裕希は友達としての建前の元、遊びに行くのだ。彼女の方も快く賛成してくれた。

ていうか、男女2人が2人きりで遊園地に遊びに行くとか、ただのデート以外の何でもねえじゃねえか。それに気付いてはしゃがない男子はこの世にいねえし、わざわざ予定が合わないので日にちを調整してこの日になったんだ。天気ごときで、遊びに行けなくてたまるか。

ということで、裕希は彼女とも話し、遊園地に傘を持っていくことにした。


「じゃあちょっと行ってくるわ、里音」


「気安く話しかけるな。そのまま電車に轢かれて死んじまえ。もう帰ってこなくていいから。」


里音の相変わらずの辛辣な態度をよそに聞き、裕希は家を出た。いつもならそんないちいちひどすぎることを言ったりはしないので、少し落ち込んでもいいところだが、今日はそんなことで凹んでしまうほど余裕のない日では無いということが少しでも救いになっているらしい。

その遊園地は有名な遊園地なのもあり、少し遠いところにある。だから、2人は横浜で待ち合わせることにした。横浜駅なら多少人が多いが、待ち合わせるのには適切だろう。

京浜東北線を使い、裕希は横浜駅へ向かう。彼女は関内駅に着いたあたりでもう着いたとの連絡があったので、今頃は駅前の交番の前で待っているのだろう。

お出かけの際、男の人が相手の女の子を待たせることは問題外であるとは思うのだが、もう遅れてしまってどうしようもない。後で謝っておくとして、裕希は横浜駅につくと、少し走って待ち合わせ場所へ向かった。

そこには


「よう。」


「女の子を、ましてや私よりあとに来るってどういう事なのかしら?15分ぐらい待ったのだけれど。」


「悪かったって。後でなんか奢るからさ。」


「お言葉に甘えさせてもらうわ。後で何か買ってもらいましょう。では、向かいましょうか?」


「おう。」


彼女の名は沢城凛という。名前の通り、見た目も性格もかなり凛としていると思う。その上、しゃべり方もどことなくお嬢様を思わせるものがあったりして、だが、別に接しにくいという訳では無い人なのだ。

彼女はあまりここから近いところに住んでいないらしく、東海道線を使ってはるばる来たらしい。尚更裕希に罪悪感が募る。

ともあれ、彼らは京急に乗り、目的の遊園地に向かった。


「お前、遊園地は初めてか?」


「ええ、そうよ。1回も行ったことないわ。」


「って事は、どこに行きたいとかはあまり無いか…。」


「まぁ、そうなるわね。だから今日の遊園地のプランはあなたに任せるとするわ。」


「そうか。ならまず始めにはジェットコースターに乗ろうか。初めての遊園地に来た人が乗る醍醐味だぜ。」


「意味がよくわからないけれど、分かったわ。その、ジェットコースターとやらに乗ってやりましょう。」


彼女は顔に笑みを浮かべた。その姿はとても楽しそうで思わず裕希の方も微笑まずにはいられなかった。

目的の遊園地がある最寄りの駅を降りると、遊園地はすぐ目の前にあった。人は休日なのもあってかなり混んでいて、こんな光景もまた、遊園地のひとつの楽しみでもあると感じたことは無いだろうかと聞きたいところなのだが……


「こりゃあ…すげえ人だな……。流石に多すぎるきがするぜ。ディズニーじゃあるまいし。」


「ディズニーって、ディズニーランドのことかしら?それなら行ったことあるわよ。」


「まじかよ。ならジェットコースター系乗ったことあるんじゃねえのか?」


「私がまだ幼かった時の話だからよく覚えてないわ。そもそも、ジェットコースターという言葉すら知らないのだからね。」


「そらお前、流石に箱入りすぎな。」


「悪かったわね。」


そのようなそわそわを紛らわすような会話をしながら10分、開園まで待っていると、客がぞろぞろ動きはじめた。開園したのだろう。

裕希と凛は思わず満面の笑みを顔にした。


「あのでっかい大がかりな建物は一体何なのかしら?………線路…?、のように見えなくも無いけれど……」


「あれがジェットコースターだよ。高いところにある線路の上をコースターが登ったり下ったりしながら走るんだよ。なかなか楽しいぜ。」


「私にはあの謎のコースターに乗るなんて恐怖としか思えないのだけれど、あなたがそう言うなら乗ってみましょう。」


開園直後は割とアトラクションは空いている。早目に列に並んだほうがいいだろう。

裕希と凛は走ってジェットコースターの列へ向かった。幸い、まだそのジェットコースターは30分待ち程度で、気狂いな程待つ事はなさそうだった。1度ディズニーのアトラクションで3時間半待ちをしたことがある裕希には容易いことである。

残りの列が少なくなってきた頃、


「ねえ、裕希……、その………ちょっと…高すぎはしませんかしら………?私、このアトラクションで楽しめるかどうか不安になってきましたわ。」


「大丈夫だ安心しろ。俺が付いてるから。」


「そんな、危険なことする前のセリフを吐かないでもらえる?つまりこれは、どういった目的地で乗る物なのかしら?」


「うーん……そうだな、絶叫するため?ほら、絶叫マシンとも言うし。」


「私今すぐお手洗いにいきたくなったわ。なので、今から戻る。」


「いや、おい!ちょっと待てって。大丈夫だって。これは絶叫を楽しむためのアトラクションなんだよ。苦手な人もたまーに、いるけど、基本は楽しいもんだからさ。」


「そ、そう?なら、……頑張ってみるわ。」


明らかにこの子はその苦手な人なんだろうなと分かっていながらそんなことを裕希は口にする。

順番はその後すぐに回ってきた。凛の聞いたことも無いものすごい発狂を片耳に聞きながら裕希も絶叫に力いっぱい叫んだ。

予想以上に彼女は楽しんでくれたらしい。


「後でまた乗っていいかしら?不覚にも、ジェットコースターにハマってしまったわ。」


「おうよ。俺もジェットコースター大好きだからな。」


それからいろいろなところ(主にアトラクション的な物)に行き、彼女といろいろな時間を過ごした。

楽しくて楽しくて、仕方なかった。この時間が一生続けばいいなと思う。

そう、あんなことが、起こらなければ。


「そろそろ昼食とろうぜ。その辺の店で食おうか。」


「そうね。私も少しお腹が空いてきた頃だったから……。」


お腹が空いたというセリフを恥ずかしがっていうところがとても可愛い。

入った店はハンバーガーショップだ。里音がハンバーガー好きなので、裕希も大好きになってしまったのだ。


「何食う?奢ってやるから、選べよ。」


「そう?ありがとう。じゃあ……」


「あんた、……何やってんの………?」


ふいに、後ろから声が聞こえた。それはとっても聞き覚えのある声で、世界中の誰よりも


「なんで……里音が、ここに………?」


「ーーーーーーー」


大好きでたまらない、愛しい妹の声だった。

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