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第2章 殺戮と救済のカウントダウン 第13話 サポートに徹する不死鳥の女神

なんとも言えない緊張感だ。

というのも、そこまで深く、強く緊張しているというわけではないのだ。

はっきり言って、その大悪魔というのは、アテナにとってすれば、敵という程の相手でもないのだろう。1度アテネに訪れた災厄などにに比べれば、それはさも、ミミズぐらいのものだと思う。

だが、今日戦うのは圧倒的なまでの力を誇る(自称)アテナではなくか弱い(自称)カストルだ。この場合、カストルは自分の手で、親である大悪魔を倒さなければ昇地することは出来ない。彼女自身が倒さなければ本末転倒もいいところだ。

うーん、実際下っ端悪魔に追いかけられていた背景とか見る限り、悪魔1人倒すのも一苦労なんじゃないだろうか。ましてや、大悪魔なんて無数に飛ぶ蜂の中から特定の1匹を探し当てて掴み取るぐらいに、到底倒せるものでもない気がする。...どんな例えだ......。


「その謎の比喩も訳分からない思考回路の回転の仕方も今に始まったことではないし、アテナは少しあたしのことを舐めすぎてるよ。」


「いや、待て待て待て待て。その考えは早とちりじゃあないか?いくら私がロリコンだからといって流石に君の体を、それも足の裏を満遍なく金印でも扱うが如く丁寧に舐めまわしたなんて記憶は、果たして、全くないぞ?きっとそれはなにかの思い違いだ。うん、そのはずだ。」


「具体的な上自分に言い聞かせてるみたいでむしろ信憑性増してるんですが......心配しなくてもアテナはロリコンだってわかってるよ。」


「私の発言の本質部分を取り違えてる気がするんだけれど...。」


だめだ、どう頑張ってもシリアスな流れになっていかない......。これだから心配なんだよなあ。(話がどうしてもシリアスにならないのは、どう見てもアテナのせいだった)

そうこうするうちにやがて、トロッコはスピードを緩め始め、幾秒とかからずまもなく止まった。

薄暗く広がるその空間は夜のそれと似ていた。仰々しい城の佇まいもそれを後押ししている。

山の中に作ったのもあり、城の1部が半端な高さで、山の内側の輪郭に突き刺さっていた。

見たことも感じたこともない初見の光景に口を閉ざすアテナを置き、カストルは裏側に回り込むように城の周りを歩いた。


「それにしてもでかいな。フランスの王城程ではないけれど、それに匹敵するほどのスケールだよ。」


「へえ、そうなんだ。あたし、あんま外でたことないから分かんないや。」


「それは.........悪い事聞き出してしまったね、ごめん。」


「アテナは悪くないよ、気にしないで。私が引きこもってただけなんだから。」


「私の気遣いを返せよ。悪いのは私じゃなくてむしろ君だろ...。」


カストルはアテナの気遣いを笑って返した。多分、彼女は気遣いなど必要としていなかったのだろう。きっと引きこもってた、というのも嘘だ。いや、結果的に家を出さしてもらえなかったのであれば、引きこもっていたも同じか。

不本意ながら引きこもっていたわけだ。

そう考えれば、彼女は嘘などついていない。


「ま、あたしにも色々あるの。」


「うん、まあ分かってるよ。権力がある人も、いくらたくさんお金を持っていても、悩みや理不尽は抱えてるはずだ。ーーそういえば聞いていなかったけれど、カストル。君の父親はどんな人なんだい?」


「えー、すごいね、筋肉質。」


「流れ的に外見の話などしていないだろ...。ていうか、筋肉なんて私はどうでもいい。君のその言い草だと、まるで私が筋肉があるかどうかで好みを判断する特殊な性癖がある人みたいではないか。」


「特殊な性癖なら持ってるじゃない。ロリコンとか。」


「ロリコンは決して特殊な性癖ではないのだよ?あれは1種の性的マイノリティなんだ。それを人格否定のように悪と言ってはダメだ。」


「否定して!ロリコンじゃないって否定して!!」


うーん、自分ってこういうキャラだったかしら......。ロリコンというより、むしろ、自分こそがロリであるような気がするんだけれど、果たしてどうだろう。

アテナがアイデンティティの崩壊をカストルに悟らされれながら、それを危惧していると、





「ーーーーーか、カストル様ですか!?」





「デネボラ!なぜこんな所に...?」


声をかけてきたのは上位級の悪魔であった。どうやらカストルと人見知りなようだ。

執事のような服装をした若い悪魔で、立ち姿の軸や、帯刀している剣から、幼くして剣技を磨き上げているような強者的オーラを感じた。

アテナも実を言うとそういう奴だった。


「カストル様こそ、こんなところで何をなさっているんですか...?しかも人間なんて連れて。」


「いや、その、ーーまあ色々あったのよ。」


「はぐらかすの下手すぎでしょ。初めまして、デネボラさん。私はアテナだ。」


「はぁ。よろしくするかどうか分かりませんがよろしくお願いしますね。その前に一つお願いがあります。」


「ん?なんだい?」


そんなふうに素朴な疑問に回答する意思を示したアテナだが、実は、彼女自身がこの時点で大きな謎を抱いていた。

カストルの時は、始め彼女を悪魔だと思っていなかったからというのもあるのだが、アテナは、基本、悪魔と分かりきっている者と対峙した時点でそいつを殺してしまうだろう。そういう癖みたいな部分は間違いなくある。


「僕を殺さないで頂けますか。いくら死ぬまでカストル様をお守りすると言っても、今死んでしまってはあまりに役立たずに終わってしまいますので。」


「.........私そんな恐ろしく見える?」


「見える......と言うよりは、そういうふうに聞きます。アテナという人間の女は地球上のどの悪魔よりも強くて無慈悲で恐ろしいと。」


「うわぁ...。ひどい評判だね。」


「私としては、これでも人間としての常識をこなしてるだけなんだけれどね。」


彼女は意外にも、自分の考えとは違うことを言っていた。対極を言っていた。

というのも、どう考えても、アテナは人間の常識をはるかに超えていたり下回ったりしていたと言わざるを得ない。そういう根拠となるものがあらゆる所にある。


アテナの兄、ヘルメスの口癖が、おそらくアテナにそういう癖を植え付けてきている。


『自分の匠がぶれてしまうといけないから、他人に教わってはいけない。それが出来る者こそ真の職人と言えよう。』


もしそうであるなら、実は彼女は戦いのスペシャリストでも、革新的な先駆者でもない。容量の多いメモリーカードでしかないのだ。大量生産可能な諸々の技術を備えた記憶媒体に過ぎないのだ。

アテナはそんな、解なしなんて扱いをうける運命にある虚数解のような人間にはなりさがりたくなかった。ちゃんと実数として存在し、なんなら重解にすらなりたかったのかもしれない。そういう生活を日々繰り返してきた。


「アテナ、来るよ......!!」


「......!」


気づけばステルスを発動していたのかの如く背後を取られていた。アテナはその正体が誰かも分からないまま腕で横殴りし、突き飛ばした。


「ぐえっ...!!」


「悪魔に後ろを取られてしまったかあ......。困るなあ、これから大事な局面だってのに。」


「くっ......人間がこんな所に...場違いだとは思わねえのか......!!」


元気が有り余っている様子で、アテナに突き飛ばされた悪魔はゆっくりと立ち上がって反抗の言葉を口にした。


「黙って、どうぞ。お前ら低脳ステハゲ野郎がノコノコ地上に出回らないように退治しに来たんだろうが。」


「......今すぐ帰れ。カストル様から離れろ!」


「なんで帰る必要があるんですか(正論)。お前らは私に斬られてそこらへんで野垂れ死んでるのがお似合いなんだよ。」


そう言って彼女は声に力もも入ってないまま脳天へと槍を突き刺してその悪魔を殺した。

悪魔からは黒々しい、液体のような気体のようなよくわからないものが溢れ出し、やがてその形状を無くした。


「き、斬られるのがお似合いと言う割に突き刺して殺してるんですがそれは...。」


「確かにお似合いだとは思うけれど、私がお似合いな殺し方を悪魔ごときにする義理もないし、ウザかったからさっさと息の根を止めたかった。」


「やっぱ人間とは思えないほどの無慈悲さだった......。」


「..................。」


同意したくはなかったので黙って先へ進むこととした。


一行が向かうはカストルの父親がいる王間という所であった。そこには王様の他、王妃様までもがいるらしく、その場所に入るまでには様々な番人をくぐり抜けていかなければならない。

そこまでしようとすると、その過程の中で、人間が乗り込んできたことは城中にバレるし、カストル様が何やら暴れているらしいということも王には伝わるだろう。状況は良いとはいえない。

何せ、城の中はどこを歩いても下っ端悪魔兵どもが屯しているのだから、アテナには居場所がなかった。


「ここに人間がいるぞ!!」


「殺せ!!!」


考え事をしていると、そこにはいつの間に悪魔が現れていた。



「まずは取り押さえるとかじゃないのかよ。」


アテナは下っ端の悪魔に3人がかりで襲いかかられると、腕を掴まれた。そのままバタンと後ろに倒された。


「アテナ!!」


カストルはアテナの身が危ないということに気づいた。だが、その時にはもう遅く、アテナは取り押さえられていた。


「大人しくしろ!」


「3対1で勝てるわけないだろ!!」


「馬鹿野郎おめー、俺は勝つぞ。」


アテナはそこから脱するため、手から水属性魔法を使い3人の悪魔を流し飛ばした。すると1人の悪魔が自ら這い上がってきて、無言で短剣をふりかざした。

アテナは前に転がって攻撃をかわし、相手の足首につかみかかって足で首を蹴った。


「あぐっ...!」


「3人攻撃をする人間の屑がこの野郎。あ、お前人間じゃなくて悪魔か。」


予想外にもほかの2人の悪魔は水の流れによって失神しているようだった。それがわかると、アテナは先程首を蹴った方の悪魔の首を掴んで拾い上げた。


「くそ......カストル様から...はな...」


「なんで離れる必要があるんですか(反抗)。あのさぁ......いきなり目の前に現れたと思ったら急に襲って来たりしないでくれる?そんなことしなけりゃもう少し楽に殺せたと思うんだよ?」


「だま...れよ......」


「お前こそ黙ってくれよ。悪魔の抵抗の声なんか聞きたくないんだよ。...いやー、むかむかするね。もうちょっと煽ってから殺すのでもよかったんだけどさ、もう死んでもらうわ。」


「やめ......」


「†悔い改めて†」


アテナは最後にそう言うと走って高く飛び上がり、悪魔の顔を思い切り壁に殴りつけて殺した。

返り血はどす黒い色をしていた。




「あの、アテナ...?」


「なんだい、カストル?」


「いちいち殺すのにそんな時間かけないでくれる?目立つし時間もったいないから。」


「き...肝に銘じておくよ......。」


カストルに釘を刺されたアテナは、残りの悪魔の首を切って殺害し、その場を立ち去った。

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