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番外編 不死鳥の女神アテナ編 第2話

久々の番外編の更新です。

「へえ......、国民全員に王位ねえ。」


アリシアは実家に帰る道でとあるポスターを見た。

この国は、家族まで処刑し尽くした王様が暗殺されて以来、その暗殺者も自殺したため、王様がいないまま、ここまで来てしまっている現状にあるのだ。

それは国際法に基づく国の成立条件を満たしていなかった。国際法によれば、国を立つ上で必要な条件は国土があること、国民がいること、そして、統治者がいることである。この場合、3番目を満たしていない。


「やあアリシア、来たよ。」


「お、アテナ、やっはろー。見回り?」


「そうだね。最近は特に何もなくて暇だよ。打って変わって君は忙しそうだけれど。」


「そりゃあね。こちとら日に日に客が増えているものでして。ていうか、アテナも暇なんて言ってないでか弱い女の子とか助けに行っちゃいなよ。」


「別にかわいい女の子限定な訳では無いけれどね。」


「かわいいじゃないよか弱いだよ!それ違ったら全然意味違うから!」


「失礼、噛みました♩」


「違う、わざとだ。」


「噛みまみた!」


「わざとじゃない!?」


とは言いつつ、アリシアから見て、最近のアテナは(自分と比較してしまう癖があるから尚更なのか)本当に暇そうで、逆に悲しかった。

しかし、これでもアテナは裕福な暮らしをしている。何に使うのかもわからず必要以上の金を稼いでいるのだ。

金も、時間も持て余しているような状況である。

その割に、アリシアは民衆の中では稼いでる方とはいえ、アテナ程は金に余裕はない。時間も、学校(この国の言葉でいえば、アカデメイア)に通う時間も必要だし、仕事をする時間も必要だし、アテナのような余裕のある時間の使い方は普段からしていない。アテナと真逆の立場と言っても過言ではない。


「まあまあ、私もしたくて時間を持て余してる訳ではないんだよ。アカデメイアだって護兵として働くために中退させられたしね。君とは境遇が違うんだよ。......なにせ、あの時から私の運命は決まってるんだから。」


アリシアはアテナの言葉に口を噤んだ。

1度だけ、アテナの過去の話を聞いたことがあった。そう、この話自体が過去の話なのに、さらにまだ過去があるのだ。この作者は多分メリハリというものがなんなのかわかっていないのだろう。

アリシアはつい、その事を思い出してしまった。


アテナは元々、フランスではなく、ギリシャのアテネという都市国家(当時の言葉でいうポリス)に住んでいた守護兵だった。当時は7歳ぐらいだったらしい。

とは言っても、その頃のアテナは既に優秀な人材で、国民からは「アテネの守護神」と呼ばれたり、かの有名な哲学者ソクラテスやプラトンに声をかけられたりとその力は壮大だったようなのだ。

だが、アテナはやがてアテネを出ることになる。それも、追い出されたのではなく、自らの意思で、だ。

それも、アテナは大切な、1人だけしかいなかった妹を死なせてしまったからである。


名を、アルテミスという。



「まあ、言ってもそれだけの理由で出ていったんじゃないよ?あのあとスパルタにやられるのは分かりきっていたことだしね。ほんとはみんなしてアテネを出てフランスに亡命出来たらなぁって思ってたんだけどさ。」


「結局アテナだけなんだよね?ここに来たのって。」


「そうだよ。アポロン兄さんは東南アジアの方に行って、ヘルメス兄さんは今はロシアだっけな?あの人はふらふらいろんなとこ行ってるけどちゃんと私には連絡してるみたいだから安心だよ。アリシアに言ったことはないかな、私には他にも3人姉兄がいるんだけれど、アレスとロディ姉は全くどこにいんのか分からないんだ。」


「ん、その計算だとあと1人兄さんだか姉さんだかがいるはずでは?」



「ーーーああ、うん。もう死んでしまっているけれどね。」



あっさりと重い話を打ち明けてしまっていた。アリシアは戸惑わずにはいられない。


「なんか今日は私の思い出話みたいな回になっちゃいそうだけれど......だけど、安心して。君が思っているほど重い話でもないよ。私の1番上の姉、ペルセポネ=プロセルピナは私の産まれる前に自ら命を絶っている。要は自殺だよね。」


「じ、自殺...?」


「うん、自殺。我が姉ながらほんとに愚かだったと思うよ。まさか冥界の王ハーデスに惚れて死ぬなんてね。」


「その話はちょっと聞いたことあるかも......」


冥王ハーデスは冥界から生ける人間を、らゆる手を使って死へと誘う、そういう伝説上の神様みたいな存在だ。

だが彼はそのために、人を殺して冥界へと引きずり込むことはあっても、誘うような形で引き込むというような伝説は今まで存在しなかった。

だからこそ彼女、ペルセポネの死は有名なのだ。


「ま、その頃は色々あったんだよね。私もフランス語喋れなくていじめられたりしたし......。」


「なんだそれは。大事件じゃねえか。このアテナが直々にそいつらを成敗しに行ってもいいよ。というかそれが今日の私の仕事だ。よし決まった。」


「アテナの今日の仕事はその謎のやる気を終焉に追い込むことだよ。いいのよ、私の過去なんて。...今こうして仕事できてアカデメイアに行けて、アテナと巡り会うことが出来て、それだけでいいの。」


「ーーーふーん、そう。じゃあ私が先走ることはよそうかな。...ところで、なんか昼ごはん食べたいんだけれど、一緒にどっか店はいらない?奢るからさ。」


「ほんと?じゃあちょっと甘えてついていこうかな。今月は教科書代とか新しい機会の導入とかでどうもお金がないんだよね。」


「いいよいいよ。私はむしろこのくらいしか使い道がないから。」


アテナは率直に言うと優しい。優しすぎるところがある。

より正確に言うなら優しいと言うよりは、一途なのかもしれない。要はひとつのことに執着を起きすぎている。

それはアルテミスの時も、アリシアの時も、もう少し時が経ったあとのカストルの時もだ。

合理性さえ、理由さえあれば彼女は、大切な仲間のためならなんでも切り捨てる。そういう性格をしていた。

それが果たして正しいのか、アリシアには分かりかねていた。はっきりダメと言えれば、1人前ではあるのだろうが、アテナのその気持ちはわからないでもなかったのだ。


1人だけを思う彼女が羨ましく、思えたのだ。



宗教的観念が皆無の彼女らは昼は豪勢にも牛丼を食べて、(当時のフランスはコメが取れる環境がなく、基本的に米料理は高くつく)腹ごなしの散歩がてらに近くの公園へ寄った。

何の変哲もない公園だ。

何の、代わり映えもない公園だ。


しかし、そこは出会いの場ではあったのかもしれない。




「そこの2人、ちょっといいか?」




公園で団欒している彼女らにお声がかかった。アリシアにとっては皮肉にも運命の出会いだったと言わざるを得ないのかもしれない。


名を、マルコと言った。

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