第1章 時空干渉と契約 3話 過去人に次元は渉れない
相変わらず、文字数少ねえ………!
てか集中力続かねえ……!!
「一ついいか……?」
「なんじゃ?」
「お前、さすがにやばいぞ。厨二病こじらせすぎんなよ。マジで周りに迷惑かかるから。」
「……?私は病気はインフルエンザしかかかったことないぞ?風邪はかかったことはあるが、それは病気とは言わんじゃろう。」
「くどいようで悪いが、自覚していない時点で、重症だからな。」
よくそんなぺらぺらとそういう単語が出るなと感心する。まあ人のことは言えないし、言いたくはなかったが。
「まあ、過去人には信じられんじゃろうがな、全てが誠じゃ。」
「すまない。信じようにも、あんまりなことなんでな。」
つまりフェリスは未来から来た使者だと、タイムマシンでも使って未来から過去へ時間移動したと、そう言っているのだろう。
たったそれだけのことだが、理解はしても信じることは到底できない。人類が過去へ行くことをどれだけ期待し、望んできたことか。そのため多くの人々が研究で時間を使い、注いできても不可能だったのだ。それを少女が簡単に超えたというのであれば、それを信じる者はロリコンぐらいだろうと思いたい。
「なんなら、見せてやろうか?」
「え…?今すぐできるの?」
「できるけど、今私が言ったことを信じるというのは前提として、最後まで話を聞いてくれたらじゃな。」
そういうことならと、とりあえず、信じるというより、”時間移動はロリにもできる”という風に仮定して聞いてみることとしようか。
「……まだ信じておらんようじゃな。ならば話の信ぴょう性を上げるために、『次元』について話してみることとしよう。」
「また厨二チックな単語出てきたな…………。」
とは言っても、実際は裕希も「次元」についてよく知っているわけではない。知っているといえば、中学の数学の授業でこの世は3つの次元から成り立っているということをやったぐらいだ。
「そなたらはこの世は3次元でできていると考えておるのじゃろう?」
「多分な。確か数学の授業でそう言ってた気がする。ていうかそもそも次元ってなんなのよ?」
情けない話だが、14歳の少女二次元について語らせることにするか。
「言われんでもその話はするつもりじゃ。次元について無能な過去人に簡単に理解できるように説明もちゃんと考えておいたんじゃから。」
「準備がいいようでよかです……。」
何か自慢げに胸を張るフェリス。その話し相手がなぜ裕希なのかそれは彼自身一番理解できないところだ。そういう科学技術は東大学生とかに話してやれ。
「ならば、そなたらは3つの次元を軸として生きていると習わされているのか。実際それは半分正解で半分誤りじゃ。」
「ってーと?」
「半分正解というのは、その4つの次元は確かに存在していて、それは今ここにいる人間全員が干渉できるからじゃ。半分間違いというのは、それだけじゃないということじゃな。」
半分予想していた回答だった。その4つの次元以外の次元というのが時間渡りと関係しているのだろう。
「私たちの時空ではそのほかに二つ、5次元まで見つかっている。」
「2つも!?」
「大きな声を出す出ないぞユーキ。この時代のほかの人間にはあまり聞かれたくない事情じゃ。そんなに吠えてばっかだとそなたのことは馬鹿犬と呼ぶぞ。」
「馬なのか鹿なのか犬なのか分からなくなるといけないからそれは勘弁。あとほかの人に聞かれても『なんだ、あの厨二病は?』って思われるだけだから大丈夫だと思うよ。」
「話の腰を折るな。続けさせろ。」
「………分かったけど、だんだん言葉がきつくなっている気がするのは気のせいかい?」
「勝手に気のせいにするな。正真正銘そなたのせいじゃ。」
こいつとしゃべっているとスルーされることが少なくて逆に気持ちい。
「………次元はふつう、グラフを使ってあらわすのじゃが、それじゃと分かりにくいから書いて説明することとしよう。まず、点で作り出される次元、これがすべての始まりを示す”零次元”または”0次元”じゃ。どの世界のあらゆるものも、この次元から作り出されているから、俗に神次元とも呼ばれた。次に、そこから線が伸びて点が二つに分かれた世界これを”1次元”という。線が1本あるから”1次元”じゃ。そして、その線が原点からさらにもう1本伸びた世界、これがみんな大好き”2次元”じゃ。」
「みんな大好きとかいうな。大いに誤解される。」
「さらに、原点からもう1本、3本目の線が伸びたものが3次元じゃ。」
都合上、絵は表示できないが、指で砂に絵を描いていく0次元の上には点が、1次元の上には線が、2次元の上には平面状のものが、3次元の上には立体状のものが描かれ、3次元を描き終えたところでフェリスは手を止めた。
「ん、確かに、4次元からは線であらわされてもピンとこねえな。」
「うむ。それもそのはず。なぜならそれは見えない線じゃからな。」
見えない線も次元の1つに含まれてしまうのか。
「その見えざる線を絵に描いて表現するのはできなくもないが、私には難しい。じゃから頭の中で考えてみてほしい。」
「すまん、俺の苦手分野だわそれ。」
「なあに、簡単なことじゃ。立体を測るときに…………そうじゃな、分かりやすいから立方体としよう。1辺4センチの立方体の体積はどうやって測る?」
「いくら引きこもっててもさすがにそれくらいは分かるよ。4×4×4で………、えーっと……64か!」
「次元の話をしているときに其の答え方は小学生レベルの回答じゃな。」
「素直にほめてくれてもいいのよ?」
「わあすごいすごい。よくがんばったね。」
「ごめん今のなし……」
フェリスの辛辣すぎる対応にだんだん慣れてきた。フェリスの方も裕希の軽口に対する対応に慣れてきている故成り立つ会話だろう。
「間違ってはおらぬから安心せよ。じゃが私の問題に対する回答は4³としておこう。」
「なるほど。」
フェリスは立ち上がると裕希の前に立った。
「次元を数値で表す時にはそれぞれの数分乗算するのが基本形じゃ。つまり4次元は一次元の数を4回乗算するんじゃよ。これがどういうことかわかるか?」
「うーーん………、」
線が構成する1次元をいくつも組み合わせ、2次元になりその平面がさらに何本も組み合わせることによって3次元となるのだろう。つまり………
「3次元空間が無数に、新たに次元を構成している…………!?」
「回答にたどりつくまでが遅いわ。」
「それは悪うござんした。」
どこまでも冷たいフェリスの対応をスルーしつつ、こいつの妙な上から目線さを気にしていた。相変わらずの余裕な笑みは変えずに本題に戻る。
「最初はそれが見つかるまで、時間が4次元を構成していると仮定して研究が進められた。その頃は技術もある程度発達していて、宇宙からダークマターを集める装置も、その研究で初めて使われた。」
「そんなすごそうなもん、何に使うんだよ!?」
ダークマターを使わなくてはいけないなど、これ一つとして聞いていないんだが。いったい何にそんなすごそうなものを使うというのか。
「時間移動するには莫大なエネルギーが必要なんじゃ。その莫大なエネルギーというのは地球に存在するもので作れるほど簡単なものではない。引力を利用した大きなエネルギーを使うにはブラックホールを作り出すより他、適切な方法は見つからなかったんじゃよ。」
「何、お前ら、地球上にブラックホール作ったのかよ!?」
「それしか方法が見つからなかったんじゃ。」
確かにワームホールを利用した時間移動は割とスタンダードだろう。瞬間移動の応用によく使われたりするのだろうが、それは時間移動でも可能だったのか。
「ダークマターを利用してワームホールを作り出し、たくさんの機械を送り込んで時間移動を試んできたが、まあそう簡単にはいくまい。送り込んだ機械はすべて分子レベルに分解されて消滅して終わった。だが、実験が始まって2か月後、ワームホールの中に存在する異常な引力変化を察知した。」
「すまない。全然わからん。理解が追い付かない。」
「―――――――――わからんのならその部分だけ聞き流せばいい。」
フェリスの呆れ顔ももう見飽きてきたころだ。自分の無能さがわかって話しかけたんだろうといいたい。わからなくて困るのなら最初から話しかけるな。
「その反応の異常さは明らかにおかしかった。なのでそれを受け、私たちはすぐにその異常反応を察知したと思われる個所に探査機をすぐに向かわせた。」
「ん……………………?」
よくそんなすべてのものが消滅するような引力に耐えられる探査機を作れたものだと思う。うわさには聞いていたが、まさか一般的なものだと分子レベルまで分解させてしまうとは思わない。
「……………そ、それで、お望みの過去には行けたのかよ?」
「まあな。一応そこには27年前の地球があって、私たちも大喜びした。そして私たちはその時間と時間をつなぐ境界線を時空境と名付け、私はノーベル物理学賞をもらうことができたんじゃ。」
「さっきから聞いてれば謎だったんだけど、研究の第一人者って、お前のことかよ!?」
「今更何を………そうじゃ、私じゃよ。もっとほめたたえてくれてもよいのじゃが、話を続ける。」
どこまでもブレないフェリスに裕希は少し感心しつつ、この少女が少し頼もしく見えてきたのは気のせいで収めておいて、ロリにしてもやるやつはやるのだなとこの世のギャップに感動していた。
その後も、フェリスは話を続けている。
その場所は決してただの場所ではなく、時間と空間を統括してもなお消えることのない永遠の公園だった。広がるは荒野、砂すら消えてしまった無人の惑星。そこに存在したのは何億年も前からあった公園という名の遺跡。遺跡という名の聖域。戦いが始まった聖地では一人の女神が君臨し、悪星で生まれた最悪の悪魔から、何もなくなった星を守り切っていた。彼女は加護霊を持たない。特殊な魔力を持ち合わせていたりなどしない。一人、ただ一人で磨き上げてきた努力が完成させた地球最高の戦士であり騎士。それが彼女だった。だからこそ彼女は強い。負けることによって強くなる戦士かつ騎士なのだから。何のために今まで戦ってきたのかなど愚問。今この大切なものを守り抜く、この瞬間のためで、決して自分の欲望のためではない。だがこの公園は例外。あの少女と、伝説の加護霊使いの出会いの場所なのだ。一概に自分のためというと語弊があるが、これは彼らの名誉のため、命をかけて守り抜く。
その意思故に死んでしまった女神は伝説の加護霊使いのもとへ5600億年後、再び君臨する。
君が必要だ。裕希。