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第2章 殺戮と救済のカウントダウン 第11話 裏切りの予感

「いや、私まだ悪魔にあったことないんだけどさ、怖いから会いたくないなあ......」


「私たちは毎日のようにあってるけどね?」


「いやね?私、昔から悪魔を目にしたら死が訪れるって言われてたからほんとに城から出たくなかったのよ。ほんとに無理...」


「そんなわけないんだよなあ。絶対お前を城から出させないための使用人の屁理屈だろ。まあ人はいつか死ぬわけだから間違ったことは言ってねえし。」


「そういうこと!?」


「メイドさんたちも必死だなあ......」


人気の少ないけもの道を進みつつ、彼らは気を紛らわすために会話をしながら進んでいた。

後ろからカストルは追いかけるようについてくる。


「カストル、アテナの前にいけ。後から襲撃されたら大変だろ。」


「私の背中はどうなるんですかねえ。」


「お前は、.........頑張ってくれ。」


「い、いいんですよ?私だって戦えます!」


カストルは気をつかうように苦笑しつつそのまま後からついてきた。とは言いつつ心配なのかアテナも随時後ろを見ながら前の方へ走る。

情けないかもしれないが、今は逃げるしかないのだ。戦略的撤退というやつである。

多勢に無勢とは今日のためにあるのだと言わんばかりの量の敵があちこちを歩き回っていた。もはや彼らには戦うという選択肢以前の問題だった。要は、それくらいの量なのだ。


「ひとつ思うんだけれど、いい?」


「どうした、アテナ?」


その後アテナは信じられないことを言い放った



「私たちはここに来た意味を見出すべきだ。つまりは、まだ帰るべきじゃない。」



「は?」


驚きの言葉を放ったのは、驚くことにマルコのみだった。と言うよりかは、言葉を放つ余裕を持っていたのが彼のみだったと言うべきか。


「状況よく分かってんのか?」


「もちろん。でもね、そんなことは関係ないんだよ。逆に聞くけど、このまま私たちが一緒に帰ってしまえば、どうなると思う?何が残ると思う?」


「それは......」


マルコやアリシアは思案した。考え、案じ、考察を出そうとした。ただ、それが本当に正しいかと言われれば、それは否である。異なっていると言わざるを得ない。

なぜなら


「君たちに聞いているんじゃないのだから。」


「...........................」


「お前......一体何が言いたいんだよ?」



「これは他でもない、君、カストルの問題なんだよ。」



「私......ですか?」


意外にも彼女、カストルは無表情だった。より正確に言うなら、表情を隠しているようだった。

ただ、いずれにしても彼女はアテナが言うことの本意が分からなかった。自身のやるべき事が分からなかったのだ。

いや、それは、そう考えてしまうのは甘えだった。そんなことは分かりきっているはずなのに目をそらしていたのだ。


「カストル、君は逃げようと思ったのだろう?」


「はい。」


「自分が愚かだとは思わないんだろう?」


「それは...どうなんですかね...」


「悪魔としての威厳は全くないんだろう?」


「はい。」


「そのためなら信頼する悪魔への裏切り行為だとしても自分を許せるのだろう?」


「許せませんよ。でも、いいんです。私は悪魔ですから、許される存在である意味がないんです。」



「そんなものは言い訳だよ。」



「......そうですか.........。」


「ああ、間違いなくね。」


「なら、私は何をすればいいのですか?」




「それが私たちの、君たちの最終目標だよ。要するに、君のお父さんを殺すんだよ。」




その時の彼女の顔はああ、なるほど、というような感情を暗に示していた。

理解はしたが納得はしない、したくないという感じだった。



その後、道を戻るという形は取らなかったけれども、出口へとは向かわなかった。山の中へ、大悪魔のいる所へと向かった。

実を言うと、悪魔が人間、あるいは天使や神などに転生するには大きく3つ条件があった。

1つは悪魔の領域を抜け出すこと。悪魔領域にある物質的、雰囲気的エネルギーは特定の悪魔の昇地を妨げてしまうのだ。

その際に2つ目の条件が付随してくる。それが1人以上の人間と共にいること。つまりその信頼すべき人間とやらなくてはいけない儀式的なものが必要になってくるのだ。

その、やらなければいけないこと、というのが3つ目の条件、実の父親が大悪魔である場合、そいつを殺してやるということだ。これは要するに、たとえ相手が父親であろうと悪魔は憎むべき、殺すべき敵なのだという認識を確認するための宣戦布告のようなものである。

従って彼女、カストルが人間に転生したいのであれば、父親を殺すことが必要で、アテナのやってしまいたいことと結びつき、その上2つ目の条件である誰かとともに父親を殺すことも達成できるというwin-winな関係なのである。

アリシアとマルコには城へ戻って貰うことにした。長期戦になることを予想すれば、アリシアは国政に、マルコは軍の運営に支障が出ることになる。そう考えると、もう3人で遊ぶようなゆるふわな回は終わったのである。


「最初からそんな回は来てなかったような気がしますが.........」


「...それに関してはまあ私も出発する前から予想していたよ。なんたって悪魔領域だからね。」


アテナは優しい口調で答える。

アテナは、自身のことを最悪なやつだと思っている。正直、悪魔よりも悪魔なのではないかと思っているのだ。悪魔はどんな境遇でどんな思想でどんな謙遜をしていたとしても殺さなければならなく、その事に躊躇いを感じない。そのくせ、このように守りたい、本当に気まぐれに守りたいと思ったものだけ選りすぐり、自分勝手に助けるのだ。それは、人として許されざる行為だ。悪魔を殺すことはともかく、助けることは、たとえ悪魔からしてみれば助かったことだとしても人間からすれば文字通り悪。ただし、基本的に悪魔を殺すことを生業としている彼女は当たり前のように、悪魔にとっても悪。両者にも憎まれるべき最悪の人間の完成である。

しかし、それでも彼女は認めた。自分を許した。彼女は愛されるべき人に愛されたかった。その為にはほかの連中に嫌われることは彼女にとってはむしろ望まれることだ。

そしてそれが、たまたまカストルに向いたというわけで、要は傲慢な愛ほしさの押しつけなのだ。


「私はさ、傲慢で強欲で自分勝手な社会性のないクズだけど、君はそんな私をどう思う?」


アテナは自分の境遇を振り返り、そんなことを口にした。“口にした”という表現は存外正しい表現だ。彼女は独り言のようにその声を漏らし、答えを求めようとしなかった。聞きたくなかった訳ではない。彼女にそれを答えさせたくなかった。

そんなアテナにカストルは答えた。



「それは立場的な評価をしてほしいのか、感想を聞いてほしいのか、どっちなんですか?」



「...?どういう意味かな?」


「うーん、そうですねえ、...客観的にどう見られるかということか、私個人がどう思ってるか、どっちを聞きたいのかなってことですよ。」


「......まあ、どっちも聞きたいかな。」


アテナは自分に嫌気がさした。彼女に罵られることで自分の罪悪感を癒そうとしているのだ。それは、結局なんの解決にもならないし、何も進展に繋がらない。意味があるとは思えない質問である。

カストルは間をあけるように呼吸をしてから答えた。


「客観的には最低ですよ。もうそれは人間でもあくまでもありません。悪人です。悪魔のように最悪の心を持つ人間でしかありません。」


「......は、はは、ひどい言い草だね。まあ間違ってないけど。」



「間違ってますよ。そんなものは間違ってる。悪いのはあなたではない。世界なのですから。」



「何言ってるんだよ。そんな壮大な話ではないと思うよ。」


「客観的というのはマジョリティの意見でしかありません。そうですね、世界というより、社会がいけないのでしょうね。」


そんな訳の分からないことを言う。

というか何が言いたいのかわからなかった。

カストルが現状をどうしたいのか、アテナをどう変えたいのか教えて欲しかった


そしてこれが、彼女の言葉だった





「ですが、......でもっ!!私はあなたのこと、優しすぎて、かっこよすぎて、愛しすぎて、ほんと、惚れちゃいたいぐらいだいだい、だいすきだよ!だからみんなのことなんて気にしないでよ!だから、まよわないでよ!」


「ーーーーえ?」


「お願い、......お願いですから、私を助けるのをやめないでください...。」



カストルの口から出たのは、今のアテナには不覚にも気づけなかった事だが、裏切られることを拒むが故の命乞いだったのだ。

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