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第2章 殺戮と救済のカウントダウン 第7話 アテナとアリシア


真白の騎士馬がリードも付けずに猛スピードで通り過ぎていく。空は曇っていて今にも雨が降りそうというくらいのどんよりとした天気の夜に、彼女は森を歩いていた。


「近くで戦いが………。おされてるのか。」


彼女は心配になって、その足を速める。

北西ヨーロッパ大陸での悪魔軍出没はなんとか鎮圧することが出来た。そちらの方はむしろ相手側の時間稼ぎでしかなかったのかというぐらいには弱かった。

問題は中央ヨーロッパの特に東フランス、現代の地図でいうところのチェコやスロバキア、ハンガリー辺りだ。そこには今、悪魔軍第一隊の1部が参戦している。

荒れ果てた森林を見ていてもそこらじゅうに国軍の鎧や兜、死体すらも転がっていた。その状況を見てもおされてることぐらいは分かる。


「とりあえずは雑魚を倒しつつ、どっかでマルコに会わないとな。」


そう彼女は、アテナは言った。



彼女には色々な霊子が宿っていた。

霊子は霊のように生きていた者の意識魔子ではなくどこかで生まれた超魔力非生物魔子が体に空気を伝って取り込まれたもののことを言う。姿形は人間の脳を通ったこともあり、人間が見たことあるものにしか見えないが、実際にそれは生物ではないのだ。

その彼女の霊子の一つに『不死鳥』というものがある。

不死鳥は文字通り死なない鳥で、翼の上に人ひとりぐらいは乗れる戦いにおいて優れた効果を発揮する。

他にも彼女は『アイギス』や、『TAM(タム)』(←Time axis movementの略)などを持っているが、不死鳥は目に生物が見える物理的な霊子なのでいちばん気に入っているようだ。

彼女はそれを使い、北西ヨーロッパからここまで来ていた。それまで深刻という訳でもないが、一応のためだ。


「さて、もうここは戦場か。」


開けた場所までアテナは降りてきた。野原だった場所では剣同士、槍同士の戦いが行われている。

アテナは『アイギス』の霊子を使い、グラウクスの槍とイーリスの盾を具現化する。どちらも武防具として強力な槍と盾だ。


アテナは無駄な戦いを避け、なるべくその腕を振るわさずに、青年マルコを探した。

マルコはこの300年続く保守フランス戦争(この名がつくのは何千億年という時を経たあとである)における国軍の総司令官であり、フランス王国の王女アリシアの騎士だ。

アテナはこの戦いの状況を知るべく、彼を探している。


「お、アテナじゃん。やっほー!!」


「そんな大声で再開祝うような場でもないと思うけど………」


笑顔で白馬を連れてこちらに向かってくるのはヘスティアだ。女の子である。

アテナも10代の青春してそうな女の子だが、彼女はそろそろ18にいくぐらいのちょっと大人だ。

この世界の戦争では珍しい女戦士である。


「ヘスティア、マルコがどこにいるか知ってる?」


「マルコさんか………ここら辺の座標にはいなさそうだから、h6ぐらいかなあ。」


「ありがとう。じゃあとりあえずそっちに行ってみるよ。」


「うん。頑張って!」


そう言うと彼女は手を振って馬を走らせた。

アテナはヘスティアに言われた通りの東フランスh6座標に向かう。


するとひとりの黒髪の悪魔が私の前を邪魔する。


「逃げてんじゃねぇぞ、女が。」


「私にはちゃんとアテナって名が…………」


「Je vais aussi me battre!」


フランス語で国軍の誰かが話しかけてきた。アテナにはフランス語はさっぱり分からないのだが、彼はどうやら私の代わりに戦ってくれるようだ。


「Merci!」


「Vous êtes les bienvenus!」


返してきた言葉も分からなかったが、簡単なフランス語でアテナはお礼を言い、絡んできた悪魔を超えた。

この広い場所いっぱいに広がっている戦争はアテナの移動を著しく邪魔した。先程のように立ちはだかってくる悪魔は死なない程度にグラウクスの槍の根の部分で突いたし、死にそうな国軍は助けるべく少しだけ参戦したりもした。


そんなこんなでようやくマルコを見つけることが出来た。


「お、アテナか。北西は終わったのか?」


「うん。楽勝だったよ。こっちが大変そうというふうに聞いたんで不死鳥使って来たよ。」


「そうだな、結構きついかもしんない。フランソワがどうなってんのかも知りたいし、一旦本部戻るか。アリシアはどこに?」


「アリシア?うーん、城じゃない?」


やはり騎士なだけあり、マルコは過剰にアリシアの安否を気にするようだ。マルコと同じ、最高騎士に属する兵達が何十人と守っている状況にアリシアはいるのでほぼ問題ないとは思われるが。


「じゃあとりあえず城行こう。アテナも来れるか?」


「アリシアがいるなら行きたいけど、ここは大丈夫なのかい?この地域だけでも鎮圧してから行った方が良くないか?」


「ルシフェルがいるし、大丈夫だと思う。数は多いが、そんなに強くはなさそうだし、今んとこ中悪魔も出現してない。アリシアが心配だ。」


「本音が出てるよ本音が。まあいいけどね。じゃあ戻るか。」


アテナはそう言い、マルコの白馬の上に乗り、本城部へ向かった。

マルコが向かう少し遠回りだが安全、という道はゆるやかな丘だった。ところどころに花や草が広がっている草原である。

先程の光景とはうって変わりすぎている。


「ここもああやって戦争で潰されていくのかな……。」


「なんだ、アテナ。お前もそういう女の子らしいこと考えんのか。」


「失礼だなマルコは。私はどう見ても最初から女の子だよ。」


「喋り方とかたまにおっさんくせえぞお前。あとこの年で国軍のトップ兵として働けて飯食えてんのも普通の女の子とは言えねえ。」


「仕方ないだろう?国は私たちで守らなくちゃいけないんだから。」


「おっさんくさいというところに何も突っ込まなかったなアテナ……」


アテナは昔から兵として強い実績を残させようと親から女の子としての道を絶たされたのだ。これはただのおこがましい親からの押しつけとも言えるが、アテナはそれでも良かったと思っている。

こうやって国を守るために働けている、戦えるということは、それ自体彼女自身の生き甲斐なのだ。これから女の子として華道やら茶道やら戦車道やらをするよりずっといい、そうアテナは思っている。

そうやって育て上げられた故にやはり男らしさが出てしまうのか、彼女の喋り方はやや男くさいところがある。それが兵士達の間で彼女がからかわれる原因でもある。


「まあいいけどよ、それがお前の生き方なんだったらな。………それで実際俺よりも強いんだからな…。」


「でも、君には騎士としてどう考えても負けてるよ。助けられてばっかりだし、アリシアをいつも任せてしまうしね。何より君は守り抜くための霊を持ち合わせ、使いこなせてる。これはとってもすごいことだよ。」


「……まあな。パラディンの霊はアリシアを守るために絶対必要だ。それを無駄使いとか、宝物の持ち腐れだけはしないようにしてる。」


「剣技は私の方が幼い頃からやってる訳だし強くて当たり前だよね。そんなに気に病むことでもないから元気だしなよ。」


「別に気に病んでねえし。そういうこと言うから余計ムカつくんだけどな?」


そう言うと彼女は笑った。その無邪気な子どもらしい声に釣られてマルコも微笑を浮かべる。


しばらく雑談をしてるうちに一行は本城部にたどり着いた。所要時間は、100kmほど離れた場所にあるため、2時間ほどかかっている。


「眠いから寝ていい?私眠くてアリシアとまともに話できなそう。あ、マルコ程度だったらいけると思うけど。」


「それはアリシアの話がハイレベル過ぎるという意味なのか、俺の話が低レベル過ぎるのかどっちなんだ。」


アテナはマルコの呟きの様な問いかけを無視し、言いつつもアリシアの部屋に向かった。マルコは不満そうに黙ってアテナの後ろを着いていく。


階段を上がり向かって左に三番目の部屋に、アテナ達は入った。



「あ、アテナ!やっはろー!!」


「やっはろー(=゜ω゜)ノ!」


「なんだその俺の青春ラブコメ並にまちがってそうな挨拶は。」


アリシアが退屈そうな顔を一気に明るくさせてアテナに飛びかかった。





石はまだまだ奥底にあり、やっと海底に着いたぐらいで、見つかるまでにはまだまだかかりそうだ。

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