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第2章 殺戮と救済のカウントダウン 第5話 お、そうだな(適当)

文化祭があって忙しかったんです許してください何でもしますから(なんでもするとは言ってない)

《別れてすぐ再会したんじゃあまり感動もないね…。》


「そんなことはねえぞ?俺、十中八九死んだかと思ってたもんな。」


《なんで?》


「俺が気づいた時にはもう火が回ってたからな、あの状況で1人で抜け出せたのも変だしレスキューが来た様子もなかったから。」


《変ていうな。別にそんぐらいできるし。ていうかそもそもその解釈はおかしいよ。》


「それこそなんでだよ?」



《だって私、火事だなって気づいた時点で早急に1人でにげてたもん。》



「……………………。」


《あ、あの?お兄ちゃん…?》


「……俺が見捨てられてるだけだった!!」


《み、見捨てた訳じゃないよ!逃げあと救出を頼んだりもしたし。》


「結局誰も来てねえけどな!……まあいい。それよりそっちの状況はどうなんだ。」


《今はアン女王率いるフランソワ国勢がカーリ率いるフランソワ急進派軍と交戦中だね。死傷者も結構出てて、これはもう戦争だよ。》


「そうか…。まずい事になったな。」


《私は回復属性だけど異時空から来てるからけが人の手当はできない。代わりに回復魔力を使った薬品を作る作業をしてる。》


「女王様は大丈夫なのか?」



《それなんだけど………身の確保はされてるから大丈夫。だけど国の管理が行き通ってないのね。だからその間、………私が国の政治管理者にしてくれるんだって。》



「嘘だろ?お前政治なんて管理できんのか?」


《わからないけど出来る限りやってみるね。あ、フェリス起きたら防衛に使えそうな薬品とかないか聞いてみて。またここにかけてくれればいいから。そんじゃ私は仕事に戻るね。これから防衛省との会議もあるし。くれぐれも死なないように。》


「そんな、出かける前の母ちゃんの『くれぐれも悪いことしないようにね』のノリで言わんといてくれ。……まあ死にはしないよ。じゃまた後でな。」


《うん!》


裕希は受話器を元の場所へ置いた。

短い時間だったがこの時間裕希はすごい汗をかいていた。リオンが死んでしまったと確信してからいくばく時が経っていたからだ。

しかし彼女は生きていた。そのことに驚きと喜びで涙を出すことすら忘れていたのだ。


『望みはあると言ったでしょ?私も本当に生きてるかどうかまではわからなかったけど、なんで君が、そんなに死ぬことの可能性が高いと思ったのかは、私にもわからないね。』


「まあな。よく考えれば1人で先に逃げてれば全然死ぬ要素なんてなかったわ。」


裕希の最愛の妹である里音リオンは裕希に、彼がカーリから逃げた時に、完全に忘れて置いていかれてしまったのである。裕希はそれを途中で引き返そうとしたのだが、アテナに止められ結局諦めてしまった。

たとえ生きていたにしても、妹の死を受け入れ諦めてしまったことは罪だ。

そう彼の中の気持ちは感じていた。

ただまあ、それは今考えることじゃない。その罪を償うのはまたいつかでいいだろう?


『生きていたと分かった途端やたらとポジティブ思考になったね、裕希。』


「うるせえな。いいだろ?」


「誰と喋ってるんですか?こんな平和な村に幽霊なんて連れ込まないで下さいですよ。」


ガチャっという音とともに彼女はドアの中から現れた。

彼女の名前はアルテミス。この村の住人で倒れた裕希を救ってくれた人だ。命の恩人と言えないことはないだろう。


「素直に命の恩人と言えばいいんですよ?私に名前を名乗らせておいて、自分は名乗ろうとしないそこの方。」


「ああ、名前言うの忘れてたか。俺は伊波裕希だ。さっき君がいった通り異時空から来た。」


「はい、ユウキさんですね。覚えました。それよりですよ…、」


「自分から振っといて『それより』とは一体………?」


「あなたが連れていた『フェリス様』というお方、マルコフランソワ第一王女というのはマジですか?」


「え?あ、ああ。そうだけど……見てわかんなかった?」





「マルコフランソワ連合王国のことなんて詳しく知るわけないじゃないですか。こっから2600キロメートルも離れてるんですよ?」




「……………………………?」


「…?どうしましたですか?」


「ちょい待ちね?」


と言い、裕希は後ろを向いてアテナに小声で聞いた。


「どういうことかさっぱりわからないのだけれど?教えてくれるかしら?」


『しゃ、喋り方が気持ち悪いよ、裕希。』


「いいから教えろ。」



『ここは、君たちの世界でいうギリシャあたりだ。さっき君がいたのはフランスで私は時間軸移動方というのを利用して、時間を止めて大体北海道から台湾、と例えるとちょっと長いけど……まあ、そんぐらいまでの距離を移動した。』



「ーー何やってくれてんだお前………。」


『しょうがないじゃない。城を出てからは森しかないんだよ。とりあえず近場で人がしばらく住めそうな場所って言ったらここしかなかったんだ。それに私が利用した時間軸移動方は時間が経ったことを人間は把握しないで時間軸もそのままの状態で場所だけを移動できる優れた魔法だ。ノウハウについては詳しくはフェリスに聞いてほしい。』


「聞かねえよ……。それで?つまりお前はしばらくここで住めと言いたいのか?」


「うん。ここで技術だめをしてからもう一度あの方法で国に戻ろう。」


アテナは淡々と事実を述べた。だが裕希にはそれは信じ難いことなので、あんまり理解してない。

地図を見れば一目瞭然だが、フランスとギリシャは同じヨーロッパ大陸でもかなり距離がある。もしどっかに避難したいのであればもっと適切な場所はあったはずなのに、アテナは"敢えて"この微妙な場所を選んでいるような気がする。

要するに彼女の考えに裏があるような気がするのだ。


「なんか企んでねえよな?」


『企んではいないよ。ただ、せっかくだからちょっとここに来てみたかっただけ。』


「せっかくってなんだよ………。」


「ちょっと何やってんですか?そういう不審な行為がですね、信用喪失に繋がるんですよ。知りませんけど絶対に幽霊だけは……」


「はいはいアルテミス。…幽霊連れてくるなとか言ってるところも子供っぽさ引き出してるの気づいてる?」


「やかましいですね……。神を信じるのと同じぐらい幽霊を信じるのは誇り高きことなんですよ?」


アテナと密談中にアルテミスは不審に思ったのか声をかけてきた。

アルテミスは怪訝な顔をしてしゃがんできた。


「…私は別に怪談的な何かを信じて怖がっているわけではないです。昔からの名残として悪霊、悪心、悪魔は恐ろしいものの象徴として信じている、ただそれだけです。」


「だから…分かったって。」


真面目な顔をした彼女は、少しアテナのような貫禄のある重みがあった。神を崇める人間がここまで頼もしく見えたのは初めてかもしれない。


「不思議だなお前は。」


「何がですか?」


「神って普通弱い人のための保険みたいなもんだろ?」


「その言葉は全国の宗教信者を敵に回すの理解して言ってます?」


「分かってるよ。でも俺はそう思ってたんだ。」


「…………そう、ですか。…それは悲しいですね。」


「ーーーそういうところだよ。」


「はい?」


「そうやって信じること、崇めることをバカにせずに、かといって神を否定する人間を否定することもなく悲しんで、そうやって優しく包み込むような、そういうとこが、信者っぽくないんだよ。」


「…そうですかね…。」


「ああ。俺はすこしかっこいいって思うけどね。」


「ーーーそうですか。それは、褒め言葉として受け取っておきます、です。」


自分で何を言っているのか途中でわからなくなった。彼女のその瞳の奥には、それに対する疑問とその意味がなんなのか察してしまったような複雑な気持ちが入り混じっているように思えた。

きっと今まで見てきた宗教信者がひどく哀れだったからだろう。彼女みたいに優しさで祈りをあげている人を見て悲しく思ったからだろう。

裕希はその言葉の重みをしばしば痛感した。



「アルテミス、俺はいつまでここにいていい?」


「別にずっといていいですよ。ただ王女と駆け落ちしたからと言ってここでいちゃいちゃするのはやめてくださいね?不愉快です。」


「そもそも駆け落ちじゃねえ。…でもいいのか?家計とか厳しくなるんだろ?」


「ほとんど自給自足なんで問題はないです。買うものは油とか塩みたいな調理に必要な材料ぐらいです。家計は土地増やすとかぐらいしか使ってないんで。」


「お、そうだな。(適当)」


「語録をぶち込むはやめてください。汚いです。」


アルテミスは今までに一番嫌そうな顔をしてそう言った。いや、まずこの世界のこんなちっちゃな村にも真夏の夜の淫(自主規制)




裕希は体調がだいぶ回復してきたのと同時にアルテミスに村を紹介してもらった。森を挟んで次の家だったりするのでかなり村自体は広いらしい。


「後、アルテミスって言いにくかったらアミって呼んでくれてもいいですよ。親にはそう言われてたから。」


「そうか、じゃあ遠慮なく呼ばせてもらうぜ。」


「了解です。…って、村を散策する前にさっきの話の続きみたいなのさせて欲しいんですが、真面目な話、なんで王国の方、それもフェリス王女なんて連れてきたんです?」


「あいつの命がカーリって殺戮の天使、間違えた殺戮の神によって危ぶまれてるからな。一緒に逃げてきたんだ。あいつもそのショックで倒れたんだろう。」


「なるほどそれでレイチェル…間違えましたフェリス様がここに。で、そのザック…間違えましたカーリってやつはなんなんです?」


「そのネタを持ってくために間違えたって言って引用するの禁止にしよう。そろそろ飽きた。」


「間違えただけなんで!」


「はいはい。カーリってのはなんかよくわからんが、フランソワ教って宗教の急進派のまとめ役的存在なのかな。いろんなとこでテロやってんだよ、あいつは。」


カーリは明らかにフェリスを殺そうとしていた。それがなんの意味になるかはわからない。ただ、予想される事案はいくつかある。


「目的としては王座を奪うという可能性が高い気がする。そうすればフランソワ教のフェリスを殺そうとする理由にもなるからな。ただそれだけではないんじゃないかなあ。」


「よくわからないですが大変みたいですね。」


「ああ。俺も戦える程度にはなりたいけど今はそんなに戦いの実力もねえから、しばらくは何もできないな…。」


「………ここです。」


アルテミスは会話が途切れてから間も開けずに足を止め、ある建物を指差した。

そこには『村立重魔子治療病院』やばそうな名前が書いてあった。

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