第1章 時空干渉と契約 2話 戯言は神々単位の時間の無駄遣い
「今日の夕飯はオムライスにする?あんた好きでしょ。」
「いや、別に普通だけど……。なんでだよ?」
「あんたよくわかんないカフェかなんかでよく頼んだりするじゃない。あの、ウエイトレスさんがなんか言ってから食べるやつ。」
「それメイドカフェのことだよ!!母親の『おいしくなあれ』とかうまかねえよ!誰得だよ、マジで誰得だよ!!」
「そんな全力で否定しなくても」
秋がしゅんとうなだれている。その姿は先と比べて、母親らしくない。
秋は「子供の趣は私の趣なんだから!」と言って、やけに裕希の趣味にかかわってくる。そのせいか、オタク趣味についてある程度知識を得ているようだが、持ち前の天然を最大限に引き出して、日常生活にまでそれをこじらせているのだから厄介だ。
「しょうがないわね、じゃあぴゅあぴゅあナポリタンでいい?」
「なにもしょうがなくない件。なんなんだよぴゅあぴゅあって………。」
こんなコントのような会話しか最近はしていない気がする。彼女はそれでも俺にかかわってくるのでそこは母親としての優しさというものが素直に理解できる。
双子で妹がいるのだが、そちらのほうとは母と少々仲が悪いようだ。まあ彼女も反抗期の時期なんだろう。(裕希も反抗期のような症状が少し出ている。)どちらも俺とは仲が良好なので一応無関係ということで放っておいているが。
そんなことを今更ながら考えて歩いていると
「----なんだ、あれは?」
向かいの歩道橋を見知らぬ少女が歩いている。
歳は13か14ぐらいだろうか、背は自分より少し低い気がする。金髪の長い髪を結ばずにおろしてゆらゆらと揺らしている姿は様になり、遠目から見てもとても美しいと表現すべき風に思うような少女だ。 紫色のゴスロリ風のワンピースを着て紋章のようなマークを袖の裾につけている。どういうわけか、背中には杖を、肩にはその紋章が書いてあるトートバックをかけている。
はたから見たら明らかに痛い人の一族だろう
明らかに魔法使いみたいな恰好をしている。住宅街でその恰好をしているとその美しい姿とともに、最高に目立つ。そのまま町へ行ったら大変なことになりそうだ。
「………、お母さん」
「なあに?今日のごはんは『ときめき☆カレーライスに』、」
「ちょっと同胞を見つけた。先帰ってて。」
「…?そう、分かったけど、早めに帰りなさいよ。」
「はいはい。」
母にそれだけ伝えると、裕希はその少女の方へ駆けた。そんなに速いスピードで歩いていたわけではないので、すぐに追いつけるはずだ。
案の定、すぐに彼女のところへは辿り着けた。
「おい、お前。」
「……………ほう、お前か。」
振り向いたその少女は、少女らしいかわいらしい顔をこちらに向けて裕希という初めて会うはずの少年に理解したような表情をした。危うく突っ込むところを見とれて終わらせてしまうところだった。
「お前の中で勝手に理解されても困る。どこかで会ったことあるんだったら教えてくれ。」
「馬鹿を言うでないぞ。そなたのような特徴的な顔面、忘れるわけがあるまい。」
「とりあえず第1印象だけでは馬鹿にされている子だけはわかった。それは置いといて、お前のその衣装で外を出歩いてると社会的に破壊されるぞ。秋葉原じゃないんだから、友達に見つかったら完全にひかれるぞ?」
嫌味をこめて悪態をつけて彼女にそう言ったが、彼女のその余裕な表情は変わらず、
「何を言っているのか全然理解できないが、この服装は敵に簡単に破壊されないための装備品みたいなものじゃ。簡単に破壊されるなどありえん。」
「お前も同じくらい馬鹿を言っている自覚があるのかと聞きたいが、こういうのはたいてい自覚していないことが多いらしい。俺みたいに自分の馬鹿を自覚している場合は少ないからな。」
そう、少年伊波裕希は自覚してでもなお厨二病を貫き通している数少ない例外の厨二病なのだ。ロマンを求めるために、常日頃、自分の厨二病をどんどん深くさせることによって生まれる新たな魂の導きが………(以下略)
「そなたの戯言に付き合うつもりはない。そんなことより、そなた、私と少し付き合ってほしい。」
「俺の戯言には付き合ってくれないのに?」
「うむ。戯言とは最上級の時空の無駄使いよ。有意義に時間を使うことが私たち人間に与えられた使命だと、考えるべきじゃな。」
「はいはいはいはい。でも、俺は痛いお前のために忠告に来ただけだから、もう帰りたいんだけど。早く帰んないと母親に怒られるんで。」
「まあ、そう言うでない。少しその公園で話すだけじゃ。そなたの戯言と比べれば何千倍もましじゃよ。」
「気にしすぎな!!」
顔をしかめる裕希を少女はなだめるように手を上下に動かした。そのしゃべり方も厨二病的な恰好や表現も誰かから影響されたのかと思うと哀れに思う。
「まあ、少しくらいならいいか。かわいいからついて行ってやる。」
「話が分かるようで助かる。」
裕希の今の発言が危ないとは気づいていないらしい。
「それで、話ってなんだ?まさか愛の告白か?俺ロリコン属性ないからお前とはやっていけない気がする。」
「あのベンチに座ってくれ。話はそのあとする。あとなんか飲み物おごって。」
「華麗すぎるスルーをありがとう。あと初対面の人間におごり要求とかどんだけの節操なしだよ。」
少女は近くの公園に入りそんなことを言う。裕希はコーヒーを2本買ってくると少女に手渡した。二人がすわれる感じのベンチに腰掛け、アイスコーヒーを口にする。
「苦っ!!」
「無理せんでいい。背伸びしたい年頃だというのも理解しているつもりじゃからな。」
「理解してほしくないけど反論できない………。」
その一方、彼女は表情を一切変えることなく、アイスコーヒーを優雅に飲んでいる。その姿は写真に収めておきたいぐらい美しかった。何をしても様になりそうだ。
「まずはそなたの名前が聞きたい。」
「俺?俺は伊波裕希だけど……。なんか俺のこと知ってんのかと思ったわ。」
「そなたに関しては顔しか覚えていなかったわ。すまぬ。」
「謝らなくてもいいけど。ちなみになんで顔覚えてるのか聞いていい?」
「そ………、それは…、」
なぜか動揺している。裕樹は他人の弱みに付け込もうとするほどいやな性格は持ち合わせていない。何か恥ずかしい場面で俺の顔でも見たりしたのだろうと思っていると。
「さっき、走っていたじゃろう………?」
「ああ、それでか。」
「そ、そんなことはどうでもよいのじゃ。ユーキか。珍しい名前じゃな。」
「珍しいか?俺のクラスに裕希3人いるんだけどな。」
いきなり見ず知らずの人を公園に呼び出していったいなんだというのか。自分もなかなか怪しい人物だというのは認めざるを得ないが、こいつはそれを越している。
まさかこれから、殺されたりするんじゃないかと考えて鳥肌を立たせた。だが、少女は面白そうに笑っている。
「…………、なんだよ?それで、お前の名前は?」
「私はフェリス=フランソワ。フェリスと呼んでくれればいい。よろしく。」
「よろしくするぐらい一緒にいるつもりじゃなかったんだけども?」
フェリスと名乗る少女が、手のひらをこちらへ向けた。その手のひらを握り返すと、
「さて、本題に入るとするか。」
「まさか本当に、お前の名前知っちゃったから俺を生かしておかない的な展開か!?」
「……………………。」
「すみましぇん。本題に入ってくださいまし。」
呆れたような顔を向けた顔からは危険な感じはしなかった。だが、裕希もそれなりの覚悟をしてうなずくと、
「私はこれより、503年先の『未来』から来たフランス国王から派遣された使者なんじゃよ。」
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?
今回はちょっと短すぎたかもwww