かみわた‼︎ 第1話 フェリス=フランソワは今日も研究をするようだ
日常を描くストーリーです〜。本編とは全然関係ないですけど読んでみてね!
フェリス=フランソワは今日も研究をするようだ。
裕希とリオンはもう自分の部屋に戻り、恐らく寝ている。もう日付も変わって一時間といったところなのだが、フェリスの1日はまだ終わらない。先刻にもいった通り、研究をするのだ。
今回フェリスは新しい論文を出すために、全く新鮮な研究をするつもりだ。普通誰にも出来ない、彼女だからこそできる研究である。
それが死属性についてだ。
滅多に見ない属性で、だからこそ研究されなかったテーマだ。まあ死属性を持っていた人が今までにいなかったわけではないが、もしその人が研究材料として使われるには本人に許可を得なければならなく、それを引き受ける人もいなかった。彼女はその滅多にいないという死属性で、もちろん研究をしたがった人たちの依頼も全て断った。
なぜならフェリス自らがその研究を1人でしてみたかったからだ。
水属性と死属性、二つの属性を持つ彼女は、自身の研究でノーベル賞を取るほどの科学者だ。自分のなかにある属性なのだ。研究者としては解き明かしたいに決まっている。
「危ないからユーキたちとやるわけにはいかないからな…。」
死属性は文字通り、基本的に相手を死なせてしまう魔属性で、その属性を持った者は国家のリストに載り、信用によっては危険視される。死なせてしまうとは言うが、もし死属性魔法が相手に当たったとしても、ある程度魔力を溜めていなければ相手を死なせることもないらしい。詳しいことは試したことがないので分かっていないが、それはいわば、魔法の毒というべき物だろう。
だからこそ、その実態は極めて謎深い。これは調べてみるしかない。
フェリスは化学室へ入った。血の中に含まれるだろう死属性魔子を注射器を使って、回収するのだ。
「ほんとは自分だけで注射するのは危ないんだけど……」
フェリスは痛みに耐えつつ、自分の血を回収した。それを試験管に移し、圧力機の中へ入れる。
魔子から分子を分解させるには化合物から単体へ分解させるのと同じように、エネルギーが必要な場合がほとんどだ。様々なエネルギーの掛け方はあるが、一番スタンダードなのが圧力をかけることだ。エネルギーを必要とせず、圧縮する力によって分子を押し出すようにして分解するのだ。
そこから分解された物質が死属性の中に含まれる、いわゆる毒だ。
まずはそれを確かめてみよう。
彼女以外いない静寂の部屋でフェリスは魔子が分解されるのを待つ。
5分ぐらい経ったようだ。
「ふむ………。」
圧力機のガラス越しで、試験管の中には無色の結晶だった。これが死属性の中にある化合物だろう。
圧力機から取り出して試験管をよくみてみる。
「…これは、潮解か……?」
中の結晶が溶けてだんだんなくなっているようだ。恐らく潮解だと思われる。詳しくは各々で調べてもらいたい。
潮解は、NaOHやKOHなどのアルカリ金属水酸化物に起きる現象で、他にMgCl2、CaCl2などにも見られる。簡単に言えば空気中の水とくっついて物質が何もしなくても水を含む、つまり水溶液になる現象だ。
そうと分かれば次は実験に移る。
NaOHだった場合、例えば…
塩化鉄3と水酸化ナトリウムは水溶液として
FeCl3+3NaOHー→Fe(OH)3↓+3NaCl
であり、水酸化鉄3は赤茶色の沈殿になるはずだ。こうやって何かの物質を生成して当てていく方法で、フェリスは何の物質かを求めている。
だがもし本当に水酸化ナトリウムだった場合、実はこんな面倒な事をしなくても求める方法がある。それが石灰水の反応を見る方法だ。
そもそも水酸化ナトリウムは空気中の二酸化炭素と結合しやすいという性質を持っている。もし本当にそこにあるのが水酸化ナトリウムならば、気体の二酸化炭素と水酸化ナトリウムを入れた試験管を用意して、ある程度それを放置していれば、その中に入れたはずの二酸化炭素は水酸化ナトリウムと結合し、水と炭酸ナトリウムができ、二酸化炭素は無くなるはずである。
それを確かめるのが石灰水だ。
石灰水は二酸化炭素と交わると白く濁る性質を持っている。つまり先ほど言った試験管に二酸化炭素がない空間で石灰水を入れても白く濁らなければ、あの物質は完全に水酸化ナトリウムであるという事である。
いちいちこんな詳しい説明はしたくないのだが、水酸化ナトリウムについてだけは言わしてもらった。
なぜなら
「間違いない、これはNaOHだ。」
それは彼女の予想は一発で大的中したからだ。
石灰水は予想通り白く濁らなかった。そしてその後できた物質を二酸化炭素と水で合成したら炭酸水素ナトリウムになった。つまり二酸化炭素と水酸化ナトリウムは結合して炭酸ナトリウムになっていたのだ。
「水酸化ナトリウムだったのか、私の魔子の中の分子は……。」
魔子は基本的に原子の単体2つを分子扱いして結合現象を起こす。火属性だったらOの原子を2つくっつけて1つの火属性魔子になれるのだ。
ただ例外が少なからずある。例えば回復属性だ。
あれは結合する分子をある程度問わない。つまり自分の思った分子と結合できるのだ。都合のいい分子と結合する事で、相手の体にいい物質を送り込ませて、回復できるのだ。(PHが7以上の物質とは結合できないので、相手に毒を送り込んだりは不可能)
今回はものすごく早く発見できてしまったのだが、これはものすごく新しい発見だ。
今までに水酸化イオンと魔子が結合する例はなかった。人間の体に弱いアルカリ性の物質を血の中にを巡らせるわけにいかないからだ。
ところがフェリスの中には水酸化ナトリウムという毒薬があった。魔子の中の分子は肝臓で一度分解されるため、たとえ魔子中のなかにある毒薬だとしても、普通、体の中に入ってはだめなはずなのにだ。
このことからわかることはもう1つある。
それはフェリス、いや、もう少し言うならば死属性を持っている者全員に言えることだ。
大昔の死属性持ちの王女といわれた、アリシアは水銀を飲むことができたといわれる。普通なら死ぬのが当たり前の状況だが彼女は全然死ななかったと言う。この研究ではその事をしっかり説明することができるのだ。
おそらくアリシアは死属性の魔子中にHgを含んでいたのだろう。それによって水銀の耐性を体に持ててるのだ。
フェリスの場合は水酸化ナトリウムだ。NaOHを属性として持っているからそれに対して耐性を持っている。また、普通は毒であるこれらの物質はもちろん、他人の身体には入れば毒なので死ぬ。つまり、それが死属性という名前の由来だ。
「これはまたお金が入るなあ〜〜♡」
次の日、フェリスは論文を書いた。ユーキにいつまで起きてたんだと怒られてしまったが、いつも通りに華麗にスルーしました。
この論文を発表するのはまた別の日だ。
フェリス達の日常は、まだ、もう少しだけ、続く。
明後日MFに提出します!




