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第1章 時空契約と干渉 第20話 安心と焦燥

すいません、4月中に終わりませんでした。体調が悪かったから仕方ないね☆


アテナは裕希が死ぬ時、時を止めて、死から逃すことができる、という風に言った。そもそも時を止めるということ自体かなり胡散臭いのだが、その上彼女は裕希の体を乗っ取り、勝手に操作し始めた。

体が勝手に動かされているというのはとても不思議な感覚だ。

自分が動かしている、という意識はないのだが、自分の体が動いているという感覚はとても鮮明で、しかも激しい動きを感じても全く疲れず、何か違うことを考えることもできるのだ。

こればっかりは自ら体験しないとわからないだろうと言いたくなるぐらい不可思議な気持ちだ。


『聞こえるかい?』


『ーーーーーおう。』


アテナ(裕希の体を持った)は30メートルほど先に落ちたはずの剣を走って拾い上げると、裕希の心に話しかけてきた。耳の中でリバーブがかかり、はっきりとは聞こえないが、何を言っているのかはだいたい分かる。


『何が起きてるん……うわっ!!』


裕希がこの状況について説明してもらおうと意識すると、アテナは拾った「魔剣」を肩に乗せ、大悪魔に向かって走り始めた。

こいつ、戦いながら質疑に応答するつもりか。


『君が私に体を乗っ取られたことについてだよね?』


『ああ。……お前、戦闘しながら、俺なんかと話してて勝てんのか?』


『当たり前でしょ?舐めないでよ。……っと。』


大悪魔の正面から狙おうと、アテナは真っ直ぐ剣を振り下ろした。するとそれをよんだ大悪魔は空中でくるっと回転し、アテナの後ろへ回り込んだ。だが、アテナはそれすらもよんでいたようで、回し蹴りで後ろの大悪魔を突き飛ばした。

こんないろいろとカオスな状況で会話なんてできねえだろ。


「…っく、……なによ、急に強くなっちゃって。ただ、本気をだしたにしては大したことないわね。私も、その、本気を出せば、倒せそうなぐらいの強さね……。」


「そう?なら本気を出したらどう?」


「…………。」


アテナは腰に手を当てると、余裕がある表情でそんなことを言った。

こいつ、何万年に一度の天災に煽りをかけ始めたぞ………。


「………そう。本当に、それしかないのね。」


「うん。君たちがまた世界を終わらせる前に、君を終わらせなくちゃ。」


「ーーーふふ、……殺せるのならね?」


大悪魔のその言葉をきっかけに、彼女らはまた双剣どうしの決闘を始めた。

大悪魔はさっきよりもやや俊敏になった気がするが、アテナは相変わらず落ち着いた動き、ドラムの叩き方でいえば神保彰のような、戦い方だ。それにしても神保彰はなんであんなコンパクトなドラムセットで、そんなに大きくもない体と動きであんな演奏ができるんだ?特に一番最後の締めとか訳わからん動きしかしてねえし、なんなんでしょうね。


『余計なことを考えている気がするんだけど…。』


『戦いに集中している戦士に聞くことじゃないかもしれないが、さっきの話はまだ終わってねえぞ。なんで俺の体を乗っ取ってんだ。聞いてねえぞ。』


『そもそも霊というのは君たちの意識魔子もそうだけど、それと運動神経をつなぐ器官に干渉する。要するに乗っ取ることなんて霊なら容易いことなんだよ。』


『お、おう。ちなみにそれも聞いてないけどな。』


『聞かれなかったからね。でも大丈夫。私は今、一時的に君の体の一部しか支配してないから悪霊みたいにその個体全てを乗っ取ったりはしないよ。ただ、この相手は君には倒すのが難しいと思ったから今は私が戦っているだけ。』


自分の動きを客観的に見るのは初めてだから上手くわからないが、少なくとも今のこの体の使い手であるアテナは、裕希という大したことのない体を使ってでも大悪魔と渡り合えるぐらいなので、相当戦位を経験して、なれてきたのだと思う。

裕希とは過ごしてきた時間の重みが違うのだ。


「あれを、使うしかないわね。」


「……………。」


大悪魔はそう言うと空中へ浮遊した。どう言う仕組みで飛んでいるのかの理屈を後でフェリスに聞きたいところだが、今はそれどころではない。

彼女は手をあげると、先ほど裕希が殺されかけた原因でもある、糸状のものを背中から4本だした。その姿はまるで人間ではなく、神々しささえ覚えるぐらいの"なにか"を感じた。

アテナは全くうろたえなかった。ただその本気の姿を静かに、冷静に、冷酷として見ていた。

似たような表情をよくフェリスはする。例えば、裕希が「戯言」を吐くときだ。意味のない虚言を聞くことは彼女は大嫌いで、だからこそ全力で否定して来た。

アテナの今の表情はそんな、意味のない茶番を見せられているオーディエンスのような、退屈な顔だ。


そこに「大悪魔」を倒すんだという重みは全く感じられない。


そんな姿に裕希は何も言葉を生み出せない。否定すべきだとも思わないし、肯定すべきだとも思わないし、それ以外の何か特別な言葉をかけてあげるべきだとも思えなかった。


なら、この場所に本当にあるべきものは?必要なものは?失くしたものは?欠けているものは?違和感があるか?



『俺は、どうしたらいい?』






『君のやるべき事は終わらせること、この生まれていく不安と比例してできた死の循環が作り出した矛盾を終わらせることだよ。』






上手く聞こえる前に、大悪魔の糸状の物が飛んできて、その言葉はかき消された。

裕希は先ほどアテナに霊として裏側から、くるべきだった死から逃してくれた。アテナが違う場所から見守ってくれたから、裕希は今生きている。

でも今はどうだ?

裕希がアテナの立場に立っている今、裕希はアテナの命を守る事はできるのか?アテナが裕希の体で時間を止めて死から自分の力で逃げるのか?


そんなことできるのか?


裕希は死を覚悟した。


だが、



「魔剣の切れ味、なかなかなものでしょ?」


「っ!?あ……がっ……………ああああっ!!………ぁぁっ……ーーーー」



まさに断末魔だった。裕希自身が感じたはずの死はまさに目の前で違う個体に起きていた。

アテナが

魔剣を使い、

彼女の糸状の攻撃(先に裕希が死にかけた原因)を

ズバッと切り捨てた。


大悪魔はそのまま残りの糸を背中にしまった。(一体どこから出てきているのかは不明)聞いたこともないような苦しみの叫び声を上げている。何か言葉を吐いているような気もするが、さすがに奇声のようなソレを聞き取る事は出来なかった。

なに、あの糸切られるとそんなに痛いの…?それ知っててアテナ切ったの?……や、やりますねぇ…。これからはアテナ、怒らせないようにしたほうがいいな(汗)

と、くだらないことを考えられるぐらい、正気を取り戻していると、


「ーーーーーーーーーん?」


急に縛られた世界から解放されたような、例えるなら、耳鳴りが急に止まった時のような、少し心地よい感覚だ。

ただ、同時に思った事は急になにが起きたんだという事。目の前を見て見た。大悪魔が体を抱きしめて痛みを和らげようともがいている。

左方向を見て見た。フェリスとリオンが、こちらを心配そうに見ている。

この情報だけでなにが起きたのか、裕希は鮮明に理解し、同時に最悪の事態になったと、焦燥に燃えることとなった。



アテナが、大悪魔を倒す前に、裕希に身体を返してきたのだ。


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