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第1章 時空契約と干渉 第18話信じて、受け入れること


Minecraftのフラットの世界に理不尽にも立たされたスティーブの気持ちが、裕希はわかった気がした。ただ、今まで壁や岩、森などという障壁に塞がれている本来の世界でいつも暮らしていた裕希にとっては、この感覚は新鮮で、かつ恐怖でもあった。

だいたいあの部屋に入ったところ辺りからだんだん話が訳のわからない方向に進みすぎている。

魔剣がどうとか、大悪魔がどうとか、挙げ句の果てには、ルートに殺されかけてもいる。

そしていきなりこんなよくわからない世界に飛ばされて、今に至るのだが、自分でも正直着いていけてない。


「取り敢えず、どうするか………」


周りには何もないので歩くにしたって途方も無い。かと言って、何か解決策が他にあるわけでも無い。

一体何をすれば正解なんだ?

原因も目的もわからず、裕希はただ歩くことにした。

不思議なことに、空は雲ひとつない快晴なのに、太陽がなかった。だからあまり日差しで暑いなんて事はない。地面は少し草が生えている、基本砂からできた大地のようだ。歩くのはたいして困難ではない。

ひたすら歩く事20分経った。


「ーーーーー?」


遠くに何かがあった。小さいフェンスのようなものが不自然に立っている。平坦な道にポツンとあるそれはなかなか目立って見える。

裕希はそこを目指して歩いた。

そこは


「ここって………まさか、」


公園だ。それも、学校帰りに小学校が鬼ごっこやサッカーをして遊ぶような割と小さな公園で、ブランコや滑り台などもある。

そして何より、この公園は、


「家の近くのあの公園とレイアウトがおんなじだ…。」


そこはフェリスに次元や魔法学理論について

説明を受けたところと全く同じような形をしていた。というか、同じだった。

なぜこんなところにあの公園が、と不思議に思っていると




「やあ、君に直接会えるのを待っていたよ、伊波裕希。」




「うおおっ!!?」


後ろから突然声がしたので思わず驚いて、変な声を出してしまった。振り向くと、そこには女の子がいた。


「あまりされて嬉しい反応ではないが、君だからいいや。一応君としては私に会うのは初めてだよね?」


「あ、ああ。見たこともねえ顔だ。お前もここにいきなり飛ばされてきたのか?」


大昔の神話に出てきそうな、服装をしていた。タンクトップのようなシャツにリボンを結びつけて、下には少々ちぎれ気味の大きなスカートをはいていた。緑がかった白い髪を持っており、背は小さいが、可愛いというよりかは、美しく見えた。


「違うよ。私はここに住んでいるんだ。今はそういう認識でいい。」


「よく分かんねえな……。じゃあお前は何者なんだ?」


こんな何もない世界にずっと住んでいたら、絶対気が狂って、間違えて世界一周しちゃいそうだけどな。

ここに住んでいるこの子なら、裕希がなぜこんな世界に飛ばされたのか理由も知っているはずだ。


「私は、アテーナ。気軽にアテナと呼んでくれていい。」


「アテナって、あのギリシャ神話の?」


「ぎり……しゃ?そんなのは聞いたことないけど、私は神話に出てくるほどすごいことをしたわけではないからね。多分それではないと思うよ。」


「そう、なのか?」


「うん。まあなんでもいいや。取り敢えずここに入ってよ。」


裕希はアテナに言われるがままに公園の中に入って行った。

公園の中だけはそっくりそのまま移し替えたようだった。配置や構造、さらには雰囲気まで同じだと裕希は感じた。


「さっき、私が何者かと聞いたね?」


「おう。こんな何もねえ世界に一人で暮らしてるなんてどうにかしてるぜ。」


「そういう意味で何者かって聞いたのか……。気にならないの?私の正体。」


「いや、気になるけど。すごい気になる。」


「なんか一応聞いてやる感がすごいんだけど…………。」


アテナはジト目をこちらに向けてきた。見た目が幼児体型だから少し可愛げが残るが、長い時間を生きてきたような貫禄も感じられる彼女に、裕希はなぜか懐かしさを覚えた。

アテナはその後ため息をついて、


「私は学問的には『霊』というものに属する存だ。フェリスから聞いたことある?」


「幽霊なんて学問あってたまるか。迷信だろあんなの。フェリスもそういうものは全く信じないタイプだからな。まあ、あいつの話は難しすぎるからたくさんのお話の中にそんな話題が紛れ込んでいた可能性はあるが……」


「ちゃんと聞いてあげようよ……。要は魔法学理論の話だよ。君のいう通り、難しい話だけど…聞きたい?」


「お、おう。一応な。」


「分かった。」


アテナはあやふやな裕希の回答に苦笑しつつ、話し始めた。


「私はもともと5600億年前に生きていた戦士だった。」


「話の腰を折るようで悪いんだけれども、5600億年前って、つまりなん年前なんだ?」


「君たちの時空の話はよく知らないけど、ホモ・サピエンスどころか、まだアウストラロピテクスすらいないぐらいの時代じゃない?」


「何言ってんの、NASAは宇宙誕生は137億年前って言ってんだぞ。それよりか遥かに昔じゃねえか。」


ちなみに地球は46億年前に誕生し、約800万から500万年前ぐらいに類人猿から新人に進化したと言われている。これは裕希の謎知識からくるもので、本当のことかは定かではないぞ☆


「現に私たちはその時代に生まれてきて、君たちとの時空間軸差はそんなにないから、まあ、少なくとも5600億年前に地球は存在していたと思うよ。空白期とかがあると、進化が簡単に進まなくなるから、時空間軸差が少ししかなくても、人の知識量とか能力とかに大きく差が出ることはあるけどね。」


「色々知らない単語があるが、とりあえず聞き流しておこう。」


「ははは、まあそこはそんなに重要なところではないからね。フェリスは科学的根拠に基づいたことしか言おうとしないからね、………そこは、アリシアとは正反対だったよ。」


「ん……?あ、り……なに?」


「当時、国王だった人だよ。アリシアっていうんだ。まあ彼女とフェリスが何か関係があったわけではないんだ。ただ彼女とつるんでいた人が、君と似ていたから……」


「俺と似てる人なんているのか。相当ダメ人間なやつだったのか、そもそもやる気がなかったのか…………。」


「君は自分を下に見過ぎだよ。私が目をつけた男なんだ。自信を持った方がいい。」


またそれか、と裕希は思った。裕希の周りの人は寄ってたかって裕希を持ち上げようとしている。そこまでいうほどのことをした覚えはない。ないのに……

なぜか、今日はフェリスの時と違って、そう言われることが腑に落ちてしまった。


「ていうか、そんなことはどうでもいいんだ。私は当時、戦争で、それも大悪魔と戦った時に、戦死した。結果大悪魔は倒せたからいいんだけどね。」


「大悪魔って……そん時にもいたんだ。」


「うん、彼女の名前はメアリ=ライン=ロード。記録では一番初めの大悪魔だね。」


「そんな定義されるようなもんなのか、大悪魔って……。」


ここにくる前に、殺されかけたあいつもフェリスによれば大悪魔だという。そもそも大悪魔がどういったものなのかよく知らないのだが。


「一応ね。悪霊という類のもの。相手の体を相手の意思とは関係なく奪い取ることができ、かつそれを実行された者のことを、私たちは悪霊と呼んでいる。」


「それが大悪魔なのか?」


「大悪魔は中でも特別強いところにいる人で、何万年に一度、誕生するかしないかレベルにめっに出ないんだけど、何しろ強いし、寿命も長いから、滞在期間は相当長いのが厄介どころだね。」


「そんなやばいやつと戦おうとしていたのか俺は………。」


アテナもこんな小さい体で戦っていたのかと思うと、フェリスと似たような感覚を感じた。

フェリスもあの歳で物凄い偉業を成し遂げていた。アテナも歴史に残るぐらいすごいことをしてきたのだと思う。


「まあ私の話はどうでもいいんだけど、その時私はメアリだけ倒して、その後メアリの手下に命を落とされて、霊になった。それから何千億年という時間君が言う、『何も無い場所』に独りでいたんだよ?」


「それは………、大変、だったんだな。」


「うん、死にたくても死ねないし、私どうしたらいいのか分からなくってさ。でも、その5600億年って時を経て、君を見つけたんだ。」


「俺、…を?」


「そう。私の本能が、彼なら大悪魔を撲滅することができるって、察してくれたんだ。君の秘められた力、みたいなものなのかな、君ならフェリスの霊使いとして、私の力を預けられるってね。」


秘められた力、か。そんなものがあったらいいのになと思ったことはあるが、現実に、それは無いんだと教えられてきた裕希としてはその言葉は虚言にしか聞こえなかった。

愛されたり頼られたり、慣れてないのかもしれない。

だからこんな否定的な捉え方をしてしまうのか、とも思うが。

やっぱり納得に至らない。


「具体的にはどんな力なんだ?俺にはそういうよく分からん力みたいなんは感じられないんだけど。」


「それは、君自身が感じるものじゃない。私が君を、霊使いとしての器の大きさを認めたから、君は私と話ができているんだ。自信は、君がこれから見つけたり、身につけたりしていけばいいんだよ。」


「そういうもんなのか?」


「うん。君が、フェリスを助けたいなら、私を……信じてみてはくれないかな………?」


アテナはそう言うと裕希に手を伸ばしてきた。

何が起こるか分からない異時空の世界。平凡な生活を壊していく出来事には、もう慣れつつあるが、まだ"信じる"という段階には程遠いと思う。

だが、信じる信じないの問題とは別として。

助けたいものと、助けてくれるものを受け入れる事は、大切な事なんじゃないかと、裕希は深く心に刻みつけた。

裕希はゆっくり、当然だというような笑顔でアテナの手を引いた。


そろそろ一章終わらせますよ〜!!

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