第1章 時空契約と干渉 第16話 我こそは大悪魔(って聞いてるのっ!?)
サターニャさん、可愛いですねw
体から何か大きなものが一気に抜け落ちたような、そんな感覚に襲われた。魔法ってこんなに体のエネルギー使うのかよっ!
裕希はあれを撃った後、とてつもない目眩とともに意識を失った。フェリスによれば、魔法をためすぎてしまったらしい。
裕希が起きた時にはもうリオンの魔法登録は終わっていた。どうやら『回復属性』という非常に希少な属性を持っていたらしく、フェリスも大喜びの様子だ。
「どんぐらい珍しいんだ?その回復属性ってのは。」
「まぁ言うてさほど珍しい訳でもない。クラスに一人か多くて二人ぐらいなものじゃ。昔はもっと何十年に一度の逸材みたいに言われるほど珍しかったらしいが、今はそうでもなくなってしまったらしい。」
「『回復属性』っていうぐらいだし、医師みたいなもんなのかな。まあそうそういない的な。」
「なに、私そんなすごいのになっちゃったの…?」
まあパズドラでもパーティ内に回復力高いやついないと安定しないし、裕希達としてはだいぶ大きな役割にはなるだろう。
一つ気になったことがある。
「そういや、フェリスの属性を聞いたことってあったっけ?」
「私?私は……死属性…じゃ。」
「なんだその物騒な属性は。」
フェリスは、少しだけためらいながら言った。相手を死なせることができる魔法でも撃てるのだろうか。それはバランス崩壊レベルに強い気がするんだが…。
「はっきり言っていいなら、全然使えない属性と言える。魔法の毒、みたいな物を相手の体に流させる感じじゃ。そなたらだったら、まともに受ければ間違いなく死ぬじゃろうが、大悪魔とか、大型の動物みたいに魔子因子の魔力が高い生き物はくらってもなんら問題はないレベルに効かない。おまけに何回も撃ったら魔子欠で倒れる程燃費は悪い。要するに、今回の戦いでは全く活躍できない属性じゃ。」
「お…おう。くらったら俺ら死ぬのか…。」
裕希の魔法もためれば尋常じゃない威力が出る爆発を起こせるから、くらった相手は大抵は死ぬとは思うが…。
なんて、またしても魔法の恐ろしさに、気づき、呆れていると、裕希は洞窟の少し奥に、立て札と隙間のような入り口があることに気づいた。
その立て札に書いてある文字を読んでみる。
「ーー剣……なに…?」
「ああ、そこが煌勾が置かれている場所じゃ。そのなんたら剣って書いてあるのはおそらく魔剣のことじゃと思うよ。」
「魔剣?なにそれ。」
「誰も取ることが出来ない、不思議な剣じゃ。壮大な高魔力術式が仕組まれていて、威力は絶大ならしいが、今まで誰も抜くことが出来なくて、ずっとそこに起きっぱなしになってる。伝説によると『魔剣グラファ』っていう霊と契約した者のみつかえるそうじゃが、まあそっちはいい。煌勾だけとって今日は引き上げよう。」
「ふーん、なんかよくわかんないけどわかった。」
つまり、この見逃したら絶対気づかないような隙間が我々の目的地だったということか。こんなところにそんな大事なもんしまっておくなんて、管理人はなに考えてるんだろう。
裕希はそのままそこの隙間の中へ身を小さくして、ゆっくり入った。その小さな隙間とは裏腹に、中の空間は広々としていた。
例えるなら学校の体育館ぐらいの3次元空間だ。
だが、上の方にはぐちゃぐちゃにしまったコードのように絡まった鎖が敷き詰められていているので、落ち着けるようなものとはほど遠い。
そこは上の天井がなく、いわばドームのようになっているため、昼間の今は太陽の光が多少降り注いでいて明るい。
「なんだこのとてつもない鎖は。なんか縛っててもしてんのか?」
「うむ。ここには未だによく分かっていない者の棺が鎖で縛られてて、私たちも危険だから手出ししていないんじゃが、多分それを結びつけてるんじゃろうな。今日はそれを解いて下に置いておくということまでしよう。」
フェリスに言われて、上の方に目を凝らすと、確かに棺桶のようなものが鎖に付けられている。
「ほんとだ、なんかあるね。」
「あれ動かしたら祟られでもしそうなんだけど本当に良いの?」
「元々はこんなにぐちゃぐちゃにはなってなかったんじゃけど、度重なる災害とか戦争とかで、衝撃を受けたんじゃろうな、だから私達が直しておくんじゃ。」
「そういうことなら良いか…。」
言われて安心すると、今度、裕希は先に言われた『魔剣』の在り処を探し始めた。
意外と広いので、しばらく歩き回ったが、ようやく、何か目新しい物を見つけた。
「これ、剣だ…。じゃあこれかな……。」
と思い、裕希はその剣を思い切り引き抜いた。
すると、それはスパッと気持ちよく抜けてそのまま余力に従って後ろに倒れた。
「イッてえ……。なんか抜けたし。ってことはこれじゃねえな。じゃあ何処にあるんだ?とりあえずなかなか使えそうだから持っていくか。」
裕希はその剣をパク……こっそりもらっていき、フェリスのところへ向かった。
「なぁフェリス、これなんだ?」
「ん、なん………………ッ!!?」
フェリスは大仰に驚き、大きく後ろへ下がった。
おい、この反応ってまさか………、
「そなた、魔剣グラファの霊と契約したのか!?」
「んなよく分からんもんと契約なんてしねえよ!クーリングオフできなかったらどうすんだ、キュウベエみたいに。」
「万が一、キュウベエと契約しちゃったら消費者生活センターに相談しときなね?」
「おう。で、ほんとにこれが魔剣なのか?」
「台座から引き抜けたんじゃろう?ならばそなたは、…………本当に………」
「?」
裕希はフェリスの謎の反応に首を傾げつつ、間違いないと証明された魔剣をまじまじと見た。
ヤバい、ヤバいもん手に入れちゃったよ……。
この剣がどれだけの力を持っているのかは、正直全然分からないが、フェリスがあれだけ言うのだから、相当強いのだろう。
それを自覚した途端、裕希は急に、何か大きな責任のようなものを感じ取った。
「まあ、それ、さえあれば剛剣は必要ないじゃろうが……、いや本当に誰かのイタズラとかじゃないよね?」
「俺に聞かれても知らんし、お前動揺しすぎな。」
取りあえずその威力を試そうと裕希は空に向かってその剣を”軽く”振った。
大事なことだからもう一度言うね、『軽く』振りました。
すると、
ーーーーーーキンッ!!
風を切り裂くような閃光が空に向かって迸った。それは、更に一本の鎖を切ることとなってしまう。
あっ、と言ったもうその時には手遅れだった。
スルスルと鎖は重力に従って抜け落ちて、やがて棺と鎖をつなぐ穴を抜けた。
それが、それだけがきっかけだったのかはわからない。
彼らにはもうこの時点で救いは無かったのだ。
何も知らず、何も覚えていないからこそ、もうどうしようもなかったのだ。
棺は抑えられるものを失い、そのままらっかしていく。
『糸』、だろうか、その棺は落ちて直後、そんな細長いものが二本、棺という壁を突き破って出てきた。
フェリスやリオンは裕希を責める余裕もなく、戦慄していた。そこから感じられるオーラはそれほどのものだった。
「………あのさ、また地震でも起きたのかと思ったら、あんた達何してるわけ?」
少し長い白く、綺麗な髪を風に揺らせて、少し怒ったような声でソレは言った。
人と呼ぶべきではないような、オーラを纏ったソレに、震えた声でフェリスは口を開いた、
「お前、………大悪魔、ルート…」
動転して、うまく喋れずにも口を開いた彼女はそんな"絶望"を口にした。




