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第1章 時空契約と干渉 第15話 初めての魔法


「いや〜、これから俺らも魔法が使えるようになると思うと、不思議な感じだな。」


「だよねー。リアルであるなんて微塵も思ってなかったもんね。」


魔法などフェアリーテールだ、という言葉がある。要は絶対にありえない、非科学的だという一種の理論みたいなものだ。

だが実際にはあった。科学もクソもあるかって話だ。

裕希達も含む人類はこんな世界が本当に存在したなど、誰も信じなかっただろう。それこそ物語の中の話に過ぎないと、それが一般的な考え方まであると言えた。

だから、『魔法』があるんだと気づいた時、裕希は科学者とは可能性を狭める、ただ目の前のことしか信じることができないどうしようもない人たちなのだなと実感した。

例えばの話を挙げよう。

あなたが古代の時間に移動したとしよう。

そこには電気もガスもまるで通っていなく、火をつけるのがやっとなくらいの知能を持った人類が暮らしていた。

彼らはその時電気やガスの存在を確実な信じてくれるだろうか。

答えは概ね否だ。

なぜならその人たちも同じく「そんなものお伽話に過ぎない」と信じ込んでいるからである。


「つまり、フェリスみたいに発想の転換ができて、なんでも最後まで「ある」と信じれる人が真の天才になれるっちゅう事だな。」


「魔法に関しては古代、あるいはもっと古い人類からも使われていたものじゃからな、魔石がもしこの地球に降って来なければ私たちも到底気づかなかったと思う。」


「まぁ……確かに。」


魔法を登録すると言われて、王城から飛行機に揺れて約3時間半、ようやく裕希達は国の進入禁止区域に指定されている「魔窟」へたどり着いた。

魔法登録はここに保存されてある、大昔に宇宙から衝突して残ったと言われる「大魔石」に触れる事でできるらしい。各地に、これを少し削っておいた「小魔石」はあるが、前にも述べたように、小さい子供などはまだ登録ができていない人も多々いるだけあって、三ヶ月ほど待たないと登録できない。

王族であるフェリスの許可を得た2人はここで登録もでき、しかもここにある『剛剣』と『煌勾』、(簡単に言えばすごい剣と盾)も同時に手にできるという事で、急いでここに向かったというのが今までの経路になる。


「この先じゃ。」


「中は結構暗いな………。」


魔窟は洞窟のようになっているので、灯などを照らしていない今はかなり暗い状態になっている。

ていうか、灯ぐらい持ってこいよ…。リオンが怖がるじゃねえか。いや、別に俺は怖がってねえよ?ほんとだよ……?

そうこう考えているうちに、フェリスは扉らしき物を開いて、その先へ入って行った。裕希達も慌ててその足音に連れて中へ足を踏み入れていく。

その時、ここにはあかりは不必要なのだと気づいた。



「あ、明るい……。」


「なにこれ……めちゃくちゃ綺麗じゃん。」


「じゃろ?私も大自然の中でここまで綺麗なものはなかなか見ないと思うよ。」



石だった。もっと分かりやすく言うならば、宝石、と言った方が適切だろうか。その石はツヤのある幻想的な輝きを放っていた。

ただその輝きが想像以上に美しく、思わず言葉を見失う。間違いなく、この世の美の頂点を行くものに違いないと、確信するレベルだ。


「一説によると、この輝きは墜落当初から全く変わらないとのことじゃ。もともと魔子には発光成分が小量含まれていて、それがこの輝き自体に影響している、というのは分かっていたから、この石に直接干渉することは禁じていたんじゃ。」


「いや、だったら俺らもやらない方がいいんじゃ………」


「この石から直接、魔法登録因子を取り込まなければ大丈夫じゃ。つまり……」


そう言うと、フェリスはとんでもないことをしだした。


カン!カン!カン!!


「 おいおいおい!そんな、この石ぶっ壊していいのかよ!流石に俺でもしねえぞ!」


「各地にある魔法登録の施設にもこんな感じで回収した魔石が置いてある。こうすれば魔石の大きさ自体は減るが、中の魔子の割合は減らないから輝きを失うことはないと言うことじゃ。」


「やってる事が割とめちゃくちゃな気がするぞ……。んなことしてたら、いつかなくなる気がするんだが。」


「魔子はいくらでもこの石さえあれば取り込む事ができる。今ここ以外にある魔石だけでも時間さえ待つ事が出来れば、これ以上削る必要はない。」


「明らかに職権乱用じゃねえか……。」


フェリスは裕希の言葉を気にせず、石を手の平サイズにヤスリのようなもので削っている。

所詮は魔石も消耗品なのだろうか。

使ったら物がなくなるのは当たり前だ。でなければ質量保存の法則に反している。

つまりは、絶対に魔石はいつかなくなる、そう言う確信ができる、それは大きな根拠なのだ。


「そうやって、楽しようって削ってしまおうっていう怠惰なこと続けたら、いつか魔法が使えなくなるかもしれないぞ?」


「ーーーーーーー。」


それでもフェリスは顔色一つ変えずに作業を続けている。裕希はそれに少し苛立ちを覚えた。


「お前のやってることは正しくない気がするって言ってんだけど…?」


「そなたは、そなたらの世界には核兵器っていうのがあったな?」


「……あ?」


思わず機嫌が悪い時の聞き方をしてしまった。裕希の短気なところは昔からあまり変わらないようだ。


「私が言いたいのは、魔法なんて所詮は核兵器とおんなじってことじゃ。」


「…なんでだ?」


「まえに説明したテロ、あれらは全部『魔法』を悪用して行ったものじゃ。魔法がそうやって悲しみをこれからも生み続けるんだったら、そんなものは必要無いっ!」


「ーーーーーーー。」


「弱いものを苦しめて、虐殺して、それが弱肉強食なんだっていうんだったらそれまでだけれど、それは誰1人としてのためにもならないことだ。死んでしまったら人は終わってしまうし、その人を知っていた人は悲しむ。おまけにその代償として、殺しを行なった人は一生恨まれ続けなきゃならない。そんなことに意味はないはずだ。君たち人類の核兵器のように、魔法だって、悲しみしか生まないんだ。」


「そう、なのか………。」


「対抗するにはこれしかないから仕方なく使っているだけなんだ。少し癪ではあるけど…。」


「ーーーーーーーああ、確かに……その通り、なのかもな。」


裕希達が思っていた魔法は美しく、幻想的で、人を幸せにする、できるものだと思っていた。

でも実際はどこまでも残酷で、恐いものなのだと、フェリスは言う。

聞いてみればそれは間違いでないのだと思った。

結局は回り回って、平和とは逆の方向へ向かっていくのだ。

裕希はこれが避けられない人間という、特殊な感情を持たされた生物の定めなのだと悟ってしまった。




裕希たち3人の特徴はいろいろあげられる気がするが、その中の一つに、切り替えの早さがある。

要は空気を読む事ができない3人だからこそ、一瞬で楽しい雰囲気から重い雰囲気に変える事ができるという事だ。

だがそれは逆にその重い雰囲気もすぐに切り捨てる事ができるということにもなる。


「これを持つだけで魔法が使えるなんて、ハリーくんには悪いな。」


「まああそこまで難しくないけど、でも属性によって撃てる魔法が限られるからなぁ……。一概にどっちがいいとは言えない、私には。」


「多分お兄ちゃんはそんな真面目な回答望んでなかったと思う……。」


裕希は魔法というものの闇を知ってしまいつつ、今魔石を持ち出している。

結論から言えば、魔法がなければやつらには勝てない。

だからこれは仕方のないことなのだと受け入れるのは難しいが、世界の平和を守るためなら仕方ないと(少し、本当に魔法が使ってみたいという気持ちもなくなくなくはない。)気持ちを切り替えているのだ。


「じゃあ、目を瞑って。」


「おう。」


裕希は魔石を両手の手のひらに乗せると言われた通りに静かに目を閉じた。

その瞬間、体を巡る血の感触が変わった気がした。瞼を閉じればもちろん周りの景色は途絶えるが、黒いはずの目の感覚の中に、緑色の光が差し込んでいる。

自分の中に得体の知れないものが入ってくる感覚が裕希を襲った。


「…………もう大丈夫じゃ。」


「っ……がはっ……!」


思わず変なうめき声を出しながら魔石を放ってしまった。魔石はカチンという音を鳴らしながら地面に落ちたが、その表面に傷は一切つかない。


「お兄ちゃん、大丈夫……?」


「結構、キツい……な。お前も覚悟しとけよ………。」


「大げさだよお兄ちゃん。私ならもっと楽勝にいけるはずよ!」


「そのまえに、裕希が何属性か調べよう。」


フェリスは裕希の手を引いて立ち上がらせると、魔石の少し奥にある池のようなところまで連れた。

彼女はそのさらに奥の方を指差し、


「あの奥の石の下の水、あたりをめがけて魔法を撃ってもらう。手をかざして打ちたいところに打つような想像をして、魔力を高めるのがコツじゃ。勢いよく手を振れば魔法自体は放たれるはず。」


「了解した。」


生まれて初めて魔法を打つ瞬間だ。誰ものロマンである魔法を今ここで、達成するのだ。


「………………………」


あたりは静まりかえった。水の落ちる音さえ聞こえない気がする。

先程とは違う血流の感覚だ。いや、これは血管を通っていないのか、全く新しい感覚を味わっている気がする。

目を開くと、そこには黄色い輝きを放った球がその場にとどまって光り続けていた。思わず驚いて半歩下がってしまった。

その途端、それはものすごい勢いで池の方へ飛んでいき、大爆発を起こした。


「…………っ!?」


「ふむ………おそらく爆発属性じゃな…。」


「これが魔法………!?」


裕希は自分のやったことがうまく理解できず、口をだらしなく開けたまま慄いていた。



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