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第1章 時空契約と干渉 第13話 空想的平和主義

この度、この作品でMF文庫大賞に応募することを決意しました。一巻分にまとめるにはもう少し話をコンパクトにして、いい感じのところで終わらせないといけないので、ペースを上げて投稿します。

皆さん、応援よろしくお願いします!!

あの状況で無理やり起こすわけにもいかなかったので、裕希は彼女らが起きるまで30分ほど待っていた。それまで電車を止まらせておいたというので、とても迷惑がかかっていたに違いない。

王城は駅に隣接しているため、エレベーターを上がってすぐだった。ちなみにこのエレベーターも魔法を使って動かしているらしい。もう魔法さえあれば掃除も洗濯も全部やってくれるんじゃないか、まであるな。つまり二人暮らしをすれば片方は今まで家事をしていたのだから仕事が減るのか⁉︎いやそうすると共働きにされるのか?なにそれやだ。魔法なんて嫌だ。


「先に言っておくが、魔法で家事なんてできたもんじゃないぞ?」


「おい、俺の魔法に対する夢をぶち壊すんじゃねえ。あと、先に言ってねえし、俺が先に言っちゃったし。」


「あの、王室についたんだけど……?」


気がつくと、エレベーターの現在地を示す針は王室というところを指していた。おそらく王様が仕事をしている場所だろう。


「っていうか、王様って仕事すんのか?」


「そなた、王をなめすぎじゃぞ……。この国では移民は王の定めた基準に基づき、王が直接認めたものしか海外からの移住は出来ないようになっている。それは憲法第18条、国民の権利と義務の第5に記載されている。」


「憲法覚えてるとかさすがすぎだろ。俺なんてこれっぽっちもおぼえてねえぞ。」


「せめて平和主義ぐらい覚えとこうよ‼︎」


平和主義、それはとても空想的な言葉であると思う。かつてマルクスが、資本家の善意によって決まる社会主義など実現し得ないと言ったように、いくら軍事的な武器を禁じようと、いくら殺人、傷害を罰しようと、喧嘩は起き、争いは発展し、排除は始まるのである。

本当に人々を平和にしたいのであれば、他人と触れ合う機会をなくしてしまえばいい。そうすれば間違いなく争いは起きなくなる。

でもそんなのは無理だ。

裕希は別に争いは起きてもいいし、戦争は起きてもいいと思っている。とても人間的とは言い難いが、逆にそれは自然界性を強めていると思う。

だって他の動物は強いものだけ生き残り、弱いものだけ淘汰されているじゃないか。

ただ人間はやたらと感情を豊富に待ち合わせているから無駄な闘争が多いだけで、本来はもっと争うべきなのである。


「私は平和主義、好きだけどね。だって、戦争ってとっても悲しいもん。」


「まあ、実際は絶対そっちの方が正しいんだろうな。ただ、俺たちは戦争を経験してねえから、その辛さがわからないだけなんだよ。」


「この世界は、平和、なの?」


王室の扉の前で、里音改め、リオンはフェリスにそんな質問を問うた。フェリスは答えるのをためらったのか。じっとして、少し肩を震わせていた。

その反応で、世界がとても平和とは言えない状況であると、把握してしまった。


「平和じゃ…ないよ。でも平和にしていくんだよ、私たちで。」


フェリスが振り向いて、力強くそういう事に、裕希とリオンは驚きを覚えた。口調がいつもと変わったこともそうだが、試練に対して背を向けず、前に進もう、投げちゃいけないと立ち向かおうとするその覚悟に、だ。


「だよな。そのために来たんだからな。」


「そう言えばそうだったね。」


「忘れてたのかよ。遊びに来たんじゃねえぞ…?」


「分かってるって。」


リオンは満面の笑みを浮かべて答えた。

そうだ。みんなそれぞれ固い覚悟でここまで来たんだ。裕希もそうでありたいと、そうならなくてはと、思ってしまった。


「ところで、直接って言ってたけど、そんな一人一人王様だけで審査してたら日が暮れるんじゃねえの?」


「王は移民から郵送で送られてくる書類に判子を押して、審査をする。いちいちここまで来なきゃいけないわけではない。」


「なんだ、てっきりみんな面接みたいなやらなきゃいけないのかと思った。」


「書類に判子を押すのも結構大変なんじゃからな?闇雲にポンポン押してくわけにもいかないし、1日に2000人、その内の7%が不信任として審査を取り消されるんじゃからな。そう簡単にはいかんよ。」


「1日2000人て。365日で730000増える事になるじゃねえか。」


「計算速いね……。」


そう、裕希には一つだけ得意分野がある。それは、暗算だ。ただココアみたいに数学全般が得意なのであればいいが、とにかく暗算だけ、それ以外は見るに耐えないレベル。全く、なんであの高校入学できたんだろ。じぶんでもふしぎにおもぜ。


「少しだけ待ってて。お母様に話してくる。」


「了解。」


そう言うと、ヨーロッパ文化にしては珍しい、開き戸型の戸を開けて中へ入って行った。

中では少し話し声が聞こえるが、なんて言っているのかまでは判断できない。


「フェリスってさ、色々ワケありなのかな。」


「だろうな。不思議な表情とか雰囲気っていうのかな、そんなのばっかな気がする。事情は、きっと浅くないだろうな。」


「私、あだ名を付けられるのは嫌じゃないんだよ?だけど、あれは、なんか違うんだよ。」


「?」


あれ、というのが一体なんなのかは分からない。親父にもよく『あれ』じゃ分からんと言われるが、直接的に言いたくないから言ってんだろうがとツッコミを入れたくなる。後はなんで言えばいいのか分からない時にあれって言ったりするね。ほんと語彙力ないなあヤバイヤバイ。


「いや、わかんないけどさ………」


「なんだよ、はっきり言えよ。」


「ーーーーフェリスは、きっと……」


と言いかけると、戸が割と大きな音で開いた。驚いてそちらの方を向くと、中からはフェリスの顔が見えた。


「2人とも、入って来て。」


フェリスは少し機嫌が悪いように、裕希たちを中へ招いた。

どうやら聞かれていたらしい。



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