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第1章 時空契約と干渉  第9話 秋を望む

あけましておめでとうございますって言うのが夜には言えず、いつも1月一日の朝になってしまうどうも俺です。今年も何とぞよろしくお願いします。(よろしくしてもらえるほどユーザーいないけどな(泣))

 眩しい朝だった。裕希の部屋は東側に置かれているので、朝になり、晴れているときは、眩しく、おかげで毎日の寝起きはしっかりセロトニンも分泌され、快適な生活を送ることができているのだ。

 出かける日にここまで晴れている時、裕希はなぜか心の奥で切ない気持が浮かび上がる。なぜかはわからないのだが、少なくともあまりいい気分じゃない。

 だから裕希は今日という日に、不安を覚えた。

 フェリスに声を掛けられてから1日が経った。その内容というものは普通ならば無視してしまうレベルのどうでもいいことで、到底信用するような類のものではなかったはずだ。

 でももし本当ならば、と裕希は考えてしまう。本当にフェリスが助けを求めていて、本当に時空とやらを渉ることができて、本当に自分自身に何かしらの素質があるのだとしたら、と思ってしまうのだ。それは、きわめて特殊なことだと思う。

 

 「まあ、もしただのおふざけなんだとしても、別に何かが減るわけじゃねえし、いっか。」


 今日裕希は例の公園でまたフェリスと会うことになっている。もちろん行くつもりだ。彼女を助けたいというのは本当だし、放っておけないのも事実だ。

 ただし、それはこの世界を捨ててまでして、彼女の世界に肩入れするという、ある意味裏切り行為に他ならないのだ。そんなことをしてまで行く必要があるのかと、言われるにきまっていると思う。

 裏切るとか肩入れとかそんな問題の前に、そもそも裕希には最愛の妹である里音を手放すということはしたくない。というか不可能だ。彼女のおかげで今生きている意味を感じながら彼女と暮らせているのだから。裕希には彼女がいてくれること、それがこの世界で生きる意味だと、確信している。

 しかし、もしそうなんだとしたら、里音さえいてくれれば、この世界で生きようと、フェリスの世界で生きようと、変わらないのではないか。生活環境が多少変わるにせよ、大きな問題はないはずだと考える。

 つまり、結論は、なるべくならフェリスを助けたいと思うが、異時空に行くのであれば、条件として里音も一緒に連れて行けること、それが無理なのであればフェリスの世界には行かず彼女にはやむを得ずあきらめてもらう、といったところだ。


 「完璧だと思わねえか、里音?」


 「うん、シスコン兼ロリコンらしい考え方だと思うよ。」


 「らしくて悪かったが、俺はロリコンじゃねえ!」


 「シスコンというところは否定しないんだ……。」


 朝食を適当に里音が作り、今はそれを二人で食べているところだ。母の秋は仕事に出かけたため今はうちにいない。最近は土曜日にも働く人が結構いるらしい。そんなに働きたく、ないです。

 

 「この後、お前は家で待機しといてくれ。」


 「なんで?私も行ったほうが早く説明がつくじゃない?」


 「もしお前をつれていけないという決断にフェリスがなったら、ここにまだいることになる。その場合、フェリスはこの世界に情報をばらしただけになる。情報を知っている人はなるべく少ないほうがいい。」


 「―――そうだね。」


 つれていいという風になったとしても、すぐに行くということはおそらくないだろう。里音には家で待機してもらったほうが裕希としては安心できる。


 「そろそろ時間だよ、お兄ちゃん。」


「ああ、そうだな。」

 

 時計は10:00を示している。あんまり早く行き過ぎてもいない可能性もある、このくらいの時間がちょうどいいだろう。


 「じゃあ、行ってくる。」


 「行ってらっしゃい、死なないでね。」


 「さすがにまだ大丈夫だと思うけどな…。」


 軽口を交わしあい裕希は家を出た。

 家から公園まではさほど遠くない。というかめっちゃ近い。例えるなら東京駅JR乗り場から京葉線乗り場までぐらいだ。めっちゃ遠いな……。それにしてもなんであんなに京葉線まで遠いの?あれはアレか。東京ディズニーランドと言いつつ、東京に場所を置いてくれなかった恨みなのか。いいんだけどさ、それディズニーランドユーザーにめっちゃ迷惑なんだよね。

 とそんなどうでもいいことを考えていたらいつの間にかついているぐらいの距離なのだ。結局すごく近かったんかい……。

 そこには、


 「やっと来たか……。ここまで待ちくたびれたのは初めてかもしれんぞ。」


 「お前がもうちょっと遅く来るかと思って、少し遅めに家を出たんだよ。感謝しろよな。」


 「遅いとか早いとかの前に、一回もこの場所から離れてないんじゃが……。」


 「ホームレスか!」


 どうやら10:00まで待つ必要はなかったらしい。彼女はそういうが、服が特に汚いという風もなく、一日そのまま着がえっぱなしのようには見えない。


 「さすがアイドル…。トイレに行かないだけでなく、風呂にまで行かないとは……。」


 「どうでもいいことを考えている余裕は与えたつもりはないんじゃが?」


 「うん、分かってるけどなんでそんな偉そうなの?なんで俺はお前に時間を与えられなくちゃいけないの?一応俺より年下だろ?」


 「ふん、聞いて驚くんじゃない。なんと私はもう14歳じゃ。」


 「めっちゃ見た目通りの年齢で草生えるわww」


 「なんじゃと~!?―――ってそんなことはどうでもよくて!」


 よくしゃべるロリだと裕希は思いながら、フェリスはごほんと咳払いをした。やばいすごくかわいい。


 「ここに来たということは、結論がついたということじゃな?」


 「ああ。」


 「―――そうか。」


 フェリスは視線で先を促す。




 「「ただし条件がある。」か?」




 ん?


「ハモらせるの好きなの?」


「……まあね。」


 呆れてもはや自分が何を言ったのか忘れちまったじゃねえか。なに、フェリスちゃん、エスパー!?

 背が裕希のほうが高いのでフェリスが上目づかいで裕希をみる形になっている。


 「さっきからそんな先を促すような顔するけど、どうせ解ってるんじゃないんすか?」


 「さっきのはそなたがそういう顔をしていたからわかっただけじゃ。それ以上のことは分からん。」


 条件があるって言いそうな顔ってどんな顔だよ……。


 「そうかい。条件ってのは妹を連れていいかって話だ。」


 「は?」


 「え?」


 「え?」


 

 理不尽な反応だ。今この子は?って言いましたよ。女の子がいきなりは?とか言っちゃいけないと思います。結構心に来るものがあります。


 「いや、すまない。そなたに、妹がいたのが、驚きで…。」


 「そんなとぎれとぎれになるほどの驚きか?アレか調査と違ったとか。」


 「いやそういうこではないんじゃ。普通に驚いただけじゃ。」


 まあもしそんな調査されてたんだったら、怖くてついて行くのやめてましたけどね。


 「今画像見せるから待ってろ。」


 「うむ。」


 そういうと、裕希はスマホを取り出し、里音オンリーが写っている写真を探した。アニメの聖地で撮った写真がたくさんある中に、淡島マリンパークで撮った写真里音の写真を見つけた。まあ、ある意味聖地で撮った写真といっても間違いではない。アクアリウムで恋になりたいです、はい。


 「あったあった、これだ。」


 「――――――。」



 フェリスはその写真を見ると、

 時間が止まったかのように動かなくなり、

 降り積もる雪のように静かになって、

 そしてなぜか




 尋常ではない言葉では表しきれない「憤怒」を放っているようだった。




 「……どうした?そんなに固まって。見覚えがあるのか?」


 「―――――――」


 「もしもーし?」


 「――え?、ああごめん。すまない。私の知り合いにそっくりで驚いただけじゃ。」


 「ニ回違う言葉で謝るぐらい動揺してんじゃねえか。」


 「ち、ちなみに名前はなんていうんじゃ?」


 「里音だ。伊波里音。俺の最愛の妹。」


 「―――――――――。」


 フェリスはその名前を口下で何回かつぶやいて裕希のほうを振り向いた。


 「よし、覚えた。」


 「そうか。で?」


 「で?とは?」


 「いや、連れて行っていいのかっていう話がだな……」


 「ああもちろん大丈夫じゃよ?」


 「やっぱそうだよな~。ごめん、だとしたら……え?」


 聞き間違えたかもしれないなぁ。もう一回聴いてみよう


 「いまなんだって?」


 「もちろん連れて行っても大丈夫じゃと言ったんじゃ。」


 「さいですか……。こんなにあっさりおっけーもらっちゃっていいのか?」


 「兄妹ならいい。最愛なんじゃろ?」


 「ああ。一番愛してると言っても過言ではない。」


 「それは残念じゃ。でも、いい。……最愛の兄妹は、なくしたくないものね。」


 それはなにか感慨めいたものを考えている顔だった。それ以上のことは聞くべきでもなく、考えるべきじゃないと訴えるような顔だ。


 「――、一日あげる。その間にやり残したことを全部やるんじゃ。多分この世界に戻ってくることはない。」


 「っていってもな。特に何かすることもねえし。」


 「家族との別れになるんじゃぞ?それをわかってやり残したことがないと言っているならいいんじゃが、せめて両親に未練はないのか?」


 「―――――。」


 「この16年という期間、寄り添い続けて養ってくれた、そなたがどんな失敗をしても味方としてくれた、もしそなたの親がそんな両親であるなら、そなたも最後にやることがあるはずじゃろ?」


 言われてみて裕希は考えてみた。

 秋、36歳。二十歳の時に父である望と結婚し、裕希を産んだ。くじけそうになった時も、また、くじけてしまった時も、優しく裕希の甘えを拒んで最終的には立ち直らさせてくれた最高の母親だ。

 望、39歳。出張が多い音楽プレイヤーの設計会社に22歳で入社。とても賢く、いつも裕希は苦手な数学と理科科目全般と英語を教えてもらっている。彼が教えてくれた問題はほとんど理解できた。理屈を教えてくれるのだ。それは、ある意味、裕希にとっては新たな概念ですらあったと今は思う。よく海外に連れていってもらい、困った時にはまず一番最初に頼れるかっこいい最高の父だ。


 「……もう、泣いてしまうなんて情けないよ。」


 「――――――!?」


 裕希は我に返ると、涙を流していたことに気付いた。


 「おわっ!なんで泣いてんだよ、俺。かっこわれえ!!」


 「そうじゃな。――でも考えれば泣けるぐらいの関係で安心した。」


 「―――もう1日くれ。そしたら準備もして里音とここに来るから。」


 「うむ。頼んだ。」


 裕希はそういうと、家には父も母もいないのにもかかわらず、気づかずに全力疾走で自宅へ帰宅した。


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