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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
商人と 交易都市と 準司書契約
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Page93 「洗ってもらう」

ティアとリッカにリリエーナとミーアに服を剥かれた3人とは違い、チャコは自分で脱いだ。

まだ少女のミーアでは身長が足りず脱がし辛いからではなく、ミーアにとってチャコは同僚という扱いだからだった。


ネーアとミーアはクレア付きの侍女である。

ただ身の回りの世話をするだけではなく、各クレア付きの人間に指示を出す立場でもある。

もっとも、指示を出せるのはネーアで、ミーアはその伝達要員として活動しながら成長中だが。


それに対して、カコとシュトはクレアの友人としてパーティを組んでいるが、王家からクレアを守るように言われている。

チャコの場合クレアとの付き合いが長いため、それがカコ達よりも強く、友人よりも護衛と捉えている者も多く、クレアのお願いをよく聞くことも重なって一部侍女のように扱われている時もある。


また、ミーアが城に上がった当初からチャコと付き合いがあり、時には2人でネーアと模擬戦を行う事も多々あったので、別部署の友人という関係が1番近いのかもしれない。

歳は少し離れているが……。


「チャコさん。リリエーナ様をお願いします」

「任せるニャ。ミーアはどうするニャ?」

「ティア様とリッカ様を洗います」


ミーアはチャコにそう言うとメイド服を素早く脱ぎ、隅に綺麗にたたんで洗うための石鹸と布を持ち、ティアとリッカの前に立つと浴槽へと通じる扉を開いた。

初めて入るお風呂だが、どこに何があるか把握するためなのと、危険なものがないか調べるために最初に入ろうとしている。


チェスター家のお風呂はメモリアの歴代司書が作った変わり種ではなく、浴場の中央に円形の浴槽があり、浄化の魔術で清められた水が温度調節の魔術で適温に保たれているいたって普通のお風呂だった。

浴槽の周りには洗い場として別口でお湯を組む場所があり、そこに至るまでの床はザラザラとした材質の石で作られている。


その他の床はツルツルとした石で作られているので、運動神経のない者が歩くと転ぶ可能性があると判断した。

その石は天井に付けられた装飾品の光を照らしてキラキラと輝いているのだが、ミーアにとっては持て成す相手にとって危険かどうかでしか判断できていない。


「わぁ……キラキラしてますね」

「のじゃー。ここはザラザラしてくすぐったいのじゃー」

「ティア様、リッカ様。まずはこちらでお体を洗いましょう」


ミーアは成長が始まったばかりの小ぶりな胸を張り、ティアの手を取って洗い場へ向かう。

ティアとリッカの身体つきを見て、運動が苦手そうなティアは自分で案内したほうがいいと思ったせいだ。


その考えは正しく、リッカはツルツルしている床の上でも楽しそうに歩いているが、試しにティアが踏み出した瞬間バランスを崩した。

ミーアが手を引いていなければお腹から転けている可能性が高かった。


「それでは、失礼します」

「え?!あ、自分でやれますよ?」

「お任せください」

「えっと……」

「ティアちゃん。ミーアに任せるニャ。それがミーアの仕事ニャ」

「わかりました……。お願いします」


ミーアは自ら洗い場に連れてきたティアから洗い始める。

手桶に汲んだお湯を手のひらに乗せた髪に揉むようにかけ、それを中程から毛先と、中程から毛根へと行う。

ティアには上を向いてもらっているので、必要以上に顔にかかることはないが、それでも多少流れてしまうので、額から目を覆うように吸水率の高い布で覆っている。


一通り揉み濡らすと、手のひらに石鹸のかけらを落としてから泡立て、それでティアの髪を洗う。

濡らす時点で揉まれて気持ちよかったが、洗う時は濡らす時よりも優しい手つきだったため、毛の間をかき分ける指が気持ちいいようで、ティアの口から吐息が漏れる。

さらに頭皮を洗う際はマッサージも行われたため、更に恍惚とした吐息が漏れた。


「の、のじゃ……」

「ふふっ。リッカ様も後で洗わせていただきます」


ティアの様子を見て一歩下がったリッカだったが、笑顔のミーアに見られると動けなくなった。

なぜか今のミーアに対して嫌だとは言えなくなっているのだ。


「髪の次は体です。痒い場所があれば遠慮せずに仰ってください」

「は、はい」


髪についた泡を洗い流すと、手桶で濡らした布で石鹸を溶かして泡立てる。

その布でティアの首から背中を洗い、手を持ち上げて脇から指先へ。

前に回って鎖骨から平らな胸を通って子供らしいポッコリとしたお腹を洗う。

当然ヘソの中を洗うのも忘れない。


正面から後ろに手を回してお尻を洗うと、そのまま股を洗って足先へ。

流石に足の裏を洗う時はくすぐったくなるはずだと覚悟したティアだったが、ミーアの力加減は絶妙で気持ちよかった。

最後に別の小さな布で顔を洗ってもらうと、手桶に汲んだお湯で優しく泡を落とされる。


「ティア様。洗い終わりましたので浴槽へどうぞ」

「はい。ありがとうございます」


ティアは最近こそ自分で洗っているが、ほんの少し前までは祖母のクリスティーナに洗ってもらっていた。

技術こそミーナの方が上だが、誰かに洗って貰うことでとても暖かい気持ちになると同時に、クリスティーナの事を思い出して決意を新たにした。


「続いてはリッカ様です」

「のじゃ……」

「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」


おずおずとミーアの元へと移動したリッカだったが、いざ洗われてみると目を細めるぐらいに気持ちよく、あっという間に綺麗になった。

クロステルまで来る間にも異空間でお風呂に入っていたのだが、その時は体に着いた泡で遊んだり、石鹸を食べてバブルブレスごっこをするぐらいに元気だった。

その姿を見ていたティア達は、ミーアの技術の高さに尊敬の念を抱いていた。


「終わりました。浴槽へどうぞ」

「ありがとうなのじゃー」


ペカーっとした笑顔でお礼を言ったリッカは、ミーアに手を引かれて浴槽へと入りティアの元へと向かう。

ティアは大人用の深い場所では足がつかないため、段になっている外周部分に座っているので、リッカだけでも問題なく向かえた。


「ミーア。リリエーナちゃんもミーアに洗ってほしいみたいだニャ」

「私は問題ありませんが、よろしいのでしょうか?」

「はい。お願いします」


ミーアは浴場の淵に待機していたチェスター家の侍女に問いかけた。

本来であればこの侍女が洗うべきなのだが、リリエーナはティア達の洗われる姿を見て自分もやってほしいと思ったのである。

侍女も、普段わがままを言わないリリエーナの小さなお願いを否定する事なく受け入れた。

ティアと一緒にいる事で子供らしさが前面に現れているので、それがとても嬉しいようだ。


「それでは、失礼します」

「はい。お願いします」


ミーアはリリエーナをティア同様に洗う。

随時チャコに指示を出して洗うやすく、かつリリエーナの負担にならないような体勢を取らせながら見事に洗っていく。

その手際に控えていた侍女も感心するほどだった。


「終わりました」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、ティアちゃんの横で浸かっているといいニャ」

「はい。お願いします。ティアちゃん、手を握ってもらってもいいですか?」

「はい!大丈夫です!」


チャコに抱かれていたリリエーナは、ティアの横にゆっくりと降ろされる。

段になっているおかげでリリエーナでも問題なく浸かれるのだが、やはり少し怖いらしくティアに手を握ってもらいバランスを取っている。

侍女もリリエーナの近くに移動し、万が一のことがあればすぐに助けることができる位置にいる。


「チャコさんは自分で洗ってくださいね」

「残念ニャ。久しぶりにミーアに洗って欲しかったけど、ここは我慢するニャ」


ミーアはチャコを洗うことなく自分を洗い始めた。

チャコも同じように洗い、それぞれ泡を洗い流すと浴槽へと入る。

そして、ミーアはティア達に湯船の中でマッサージを行い始めた。

そのせいで子供らしからぬ極楽そうな声を出してしまうほどだった。


今年最後の更新です。


更新できない日が続き申し訳ありません。

来年も無理しない程度に更新しますので、これからもよろしくお願いします。

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