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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
盗賊と 不思議な野営と お友達
80/106

Page80「玄関ホール突破」

厨房を出たクレア達は一先ず玄関ホールを目指す。

地下牢の入り口は一度2階に上がり、端にある部屋を経由しないと行けない作りになっているせいだ。


この館は地下牢を作ることを前提に建てられていて、いざという時に見つからないように色々な仕掛けが施されていた。

精霊は仕掛けを無視して壁を通っているので、クレア達が地下牢へ行くためには仕掛けを攻略する必要がある。

その前に進行上の盗賊を倒さなければならないが、場合によっては仕掛けより簡単に攻略できる。


「前方に2人ニャ」

「チャコよろしく〜」

「任せるニャ!」


玄関ホールに向かう途中にも扉はあったが、その全てに対してチャコが気配を探って誰もいないことを確認していたので、後ろを気にする必要はない。

なのでチャコが1人飛び出し、クレア達に背中を向けて廊下を歩いていた盗賊2人に襲いかかっても問題はなかった。

仮に後ろから盗賊が来てもシュトが何とかしてくれるという信頼もある。


「ふっ!」

「ぐっ?!」

「がっ?!」


一息で接近したチャコは、相手の背中に拳を打ち込み呼吸を止めて昏倒させた。

そして、後から来たカコが魔法で土の手枷と足枷を付ける。


「この2人はどうするん?その辺の部屋に放り込む?それやったら口も塞ぐけど」

「面倒だから殺してもいいと思う。意識を取り戻した後騒がれると厄介だし」

「せやねんけどな〜。理由があるかもしれへんから、兵士の数を減らすのは良くないと思うんや」


チャコは兵士が盗賊行為をしている理由が気になっていた。

何かしらの事情があり、その事情さえどうにかしすれば良いのではないかと考えている。

たとえ事情があったとしても盗賊行為は犯罪なので裁きを下す必要はある。


それが死刑から強制労働に変わる程度だとしても、国の兵士として育てられた以上、命を奪うよりもその命を使わせる方がいいと考えている。

兵士を育てるだけでもお金がかかる。

ここにいる盗賊が全員兵士であれば、それだけ税金が無駄になるのだ。


「うーん。それじゃあカコの言う通り空き部屋に入れようか」

「わかった。じゃあ、口も塞ぐな〜」

「それだったら異空間に牢屋を用意するけど?」

「え?!」

「わっ?!」


カコが魔法を使おうとした瞬間、2人の前にペンシィが現れて、異空間に牢屋を作ると言ってきた。

今の時点で異空間に牢屋はない。

草原や湖、お風呂にお屋敷、遠くに山があるぐらいだ。

だけど、ティアの魔力で色々なものが作り出せる異空間であれば、様々な牢屋を作ることができる。


「それを決めるのはティアちゃんだと思うんだけど、どうする?」

「私ですか?」

「うん。ティアちゃんの異空間だからね。盗賊を入れたくなければそこの空き部屋に縛って入れるから」

「私はどちらでも問題ないですよ。安全な方でお願いします」


クレア達は異空間に盗賊を入れることを躊躇っていたが、ティアは特にそういったことは考えていなかった。

クレア達にとっては『ティアの』異空間だったが、ティアにとっては『ペンシィ』が勝手に住みやすくしてくれる便利な空間という認識になっているせいだ。


自分で作った異空間であればティアも難色を示したはずだが、今の異空間の殆どはペンシィが作っている。

ティアが作ったのはせいぜい木の家ぐらいだ。

そのためペンシィが牢屋を作るといっても、そういうのも作れるんだという認識で収まった。


「安全な方だと異空間だけど、本当にいいの?」

「はい。大丈夫です」


盗賊が目を覚ましても異空間の牢屋であれば、どれだけ騒いでも問題はない。

仮に魔法を使われてもこちら側に影響はない。

部屋に入れておいて他の盗賊に見つかる可能性も考えると、異空間に入れておいたほうがいいのは明白だ。


「それでは、ペンシィさん。お願いします」

「オッケー!…………できたよ!盗賊を異空間に入れてくれれば、牢屋の方に入るようにしておくから、この後もジャンジャン入れてくれていいよ!それじゃあ頑張ってね!」


そう言うとペンシィは異空間に戻っていった。

ペンシィは既に牢屋を作る準備だけはしていたので、許可が出た瞬間に作っていた。

形状も選べるようにしていたのだが、誰も言及しなかったので無難に地下牢を作っている。


「それでは、入れますね」

「うん。よろしく」


ティアはチャコが倒した盗賊2人を異空間に入れた。

入れられた物はペンシィが管理しているので、盗賊だとわかった瞬間に牢屋の位置へと移すされている。

仮に盗賊、チャコ、盗賊の順で連続収納しても、ペンシィがふざけない限りはきっちりと分けられる。


「それじゃあ先へ進むニャ」

「了解や〜」


クレア達が話している間周囲の警戒はチャコとシュト、レインとゴルディアが行なっていた。

特に人が近づいてくることはなかったが、侵入した上で一箇所に留まるのは危険なので、足早に移動した。


「この扉の先に3人いるニャ。2階はちょっとハッキリしないからクレアに任せるニャ」

「わかった」


玄関ホールへと続く扉まで問題なく来ることができた。

途中で遭遇した盗賊は既に異空間の中に入れられた2名だけだったが、玄関ホールには3人の盗賊がいる。

また、玄関ホールから2階へと続く階段があるのだが、そこと2階の気配はチャコでは探れなかった。

それは、屋敷の壁が分厚いことが原因で、いざという時に戦闘が起きても耐えられるように作られているためである。

なので、2階の索敵はクレアの精霊に頼んだ。


数秒後戻って来たクレアの精霊によると、階段とホール付近の2階に盗賊がいないことがわかった。

そうなると、敵はエントランスにいる3人になるのだが、扉を隔てているため、開けるとバレる可能性が高い。

勢いよく突き破ると、その音で他の盗賊にバレる可能性もある。

よって、クレア達がとったのは魔術による支援のもと相手を無力化する方法だった。


「サイレントフィールド」


カコはシュトに無音になる魔術を使用した。

この魔術はかけられた本人とその周囲の音を消す効果がある。

これを使った状態で高速で接近し、相手が声を出しても周囲に聞こえない状態で倒すことになった。


この魔術は潜入で活躍できる魔術だが、互いに言葉でやり取りができなくなるので集団で移動するのには向いていない。

また、魔力を阻害するのではなく音を消すだけなので、相手の魔法や魔術を封じることはできない。

また、急に周囲の音が消えるので、この魔術を知っている者に気づかれる可能性もある。

もちろん、魔力の動きを感知できるのであればもっと簡単に見つけられてしまう。


「…………」


チャコは無音フィールドの中で扉を開け、クレア達に向かって口をパクパクさせた。

本人は声を出しているつもりなのだが、チャコを中心に無音になっているので、その声が届くことはない。

ちなみに「それじゃあ行ってくるニャ!」と言っただけなので、聞こえなくても問題はなかった。


「ふわぁ〜。やることがないのじゃー」


音もなく扉が閉まり、チャコの戻りを待つクレア達。

リッカが欠伸をするほど待機する側はやることがなかった。

こうしている間にも屋敷に近づいてくる者がいるのだが、クレア達はそこまで急いでいない。

というよりも、今の時点で結構急いでいるのだ。


冒険者学校では冒険の仕方や、クエストの受け方、盗賊討伐や魔獣とこ戦い方については教えてくれたが、拠点への潜入方法は教えてもらっていない。

そもそも、冒険者にそういった仕事がくることはないからだ。


なので、クレア達は相手に見つからないようにする事注力しすぎている。

この人数であれば2人を囮として先行させて、その間に地下牢へ行くという方法もある。

チャコとシュトが囮になれば単騎で逃げることも可能なのだ。


「…………」


クレア達が扉前で待機していると、また音もなく扉が開いてチャコが顔を出して口をパクパクした。

どうやら無事に制圧できたようだ。


クレア達は玄関ホールに移動して、カコが手足を土の枷で縛り、ティアが異空間に入れた。

その後はチャコが先頭になって2階の仕掛けのある部屋に向けて移動した。

途中の部屋に2人の盗賊がいたのだが、サイレントフィールドの効果が続いていたので、チャコがササッと倒して出てきた。


倒した盗賊を異空間に入れた後、地下牢へと続く仕掛けのある部屋に入った。

後は仕掛けを解いて地下牢へ行き、人質を救出するだけである。


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