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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
旅立ちと 封印都市と 勇者と魔王
8/106

Page 8「司書のお仕事」

物が無くなった部屋で、ペンシィがティアに対してビシッと指差す。


「次は【検索】と【記録】と【複製】の3つ一気にやるよ!」

「わかりました」

「ティアちゃんはクリスが冒険者や街の人に頼まれて本で調べ物してるのは知ってるんだよね?」

「はい。隣で見ていました」

「あれ?でも、ティアちゃんは司書エリア以外に行けるの?さっきそんな話ししてたよね?」

「お祖母様と一緒の場合に限り外に出ることは可能です。その場合もお祖母様から離れてはいけないと厳しく言われています」

「ふ〜ん。誘拐されそうだからかな?まぁクリスが居れば問題ないか〜」

「誘拐ですか?私を?それにお祖母様が居れば大丈夫なのですか?」

「陸路でメモリアに来る場合[マーブル]の首都経由だから犯罪を犯した人は入ってこれないけど、海路と空路は直接メモリアに来るんだよ。メモリアで入国チェックしても漏れることはあるんだ。で、ティアちゃんは魔力量は多いし、メモリアの一族だし、狙われる可能性は十分あるよ」

「魔力量はわかるのですが、一族は関係があるのですか?」

「司書はメモリアの一族しかなれないからね。秘密を探りたいんじゃないかな」


ペンシィは目線を逸らしながら答える。

一族の女の子を誘拐すれば、子を成すことで無理矢理一族になれることを、まだ幼いティアには伝えたくなかった。


「誘拐の可能性があったのですね…」

「あくまでアタシの考えだけどね〜。外に出したいけど誘拐されたら困るから、一人前になるまでゆっくり教育していくつもりだったんだと思うよ。で、クリスが居ると大丈夫な理由なんだけど、クリスは本と羽根ペンが超越者、弓と包丁は中級者で、残りは熟練者だから生半可な生物じゃ倒すのは無理だね」

「お祖母様はそんなに強いのですか?」

「強いよー。[マーブル]が攻められない理由の1つに上がるくらいだよ」

「そうなのですか。これは是非ともお祖母様の武勇伝を聞かなければなりませんね」

「ティアちゃんも冒険者になったら武勇伝できるかもね〜」

「それは少し恥ずかしいです…」


自分の武勇伝ができた時のことを考え、恥ずかしくなりもじもじするティアと、ニヤニヤするペンシィ。


「だいぶ話がそれたけど、調べ物の話ね」

「はい」

「まず、依頼者には閲覧ランクがあります」

「閲覧ランクですか?」

「そう。依頼者の個人カードに記録されるんだ。個人カードはティアちゃんも持ってるでしょ?」

「はい。以前お祖母様から頂きました」


ティアは本から机を出し、引き出しから水色のホルダーを取り出した。

裏面にベルトに掛ける金具が付いていて、開くとカード入れと、硬貨入れに分かれている。

ティアはカード入れから自分のカードを取り出し、ホルダーを左腰に着ける。


【ティア・メモリア 6歳 職業:メモリアの司書 閲覧ランク:10】


と書かれていた。


「あの…職業がメモリアの見習い司書からメモリアの司書になってました。これはメモリア様の祝福の影響ですよね?あと、閲覧ランクという項目が増えてます…ランクが10なのですが…。最初は1からでは無いのですか?」

「見習いが取れたのは祝福の影響だよ!個人カードは生まれた時に作るんだけど、メモリアの機能で作られてるから自動更新されるんだ。で、ランクについてだけど、ティアちゃんは司書だから最初から最大値の10。ちなみに準司書は7から始まるよ」

「司書は10で、それが最大値ということは武器と同じく10段階なのですね?」

「そだよ〜。ランク自体は武器と同じく10段階あるけど、司書だけ10で、準司書含め一般の人は最大9までなの。これは司書だけの権限をつけるためだね。権限については追々。ちなみにランクには名称ついてないんだ、6以上がお得意様って感じかな」

「一般の方はどうやってランクを上げるのですか?」

「情報のやり取りで上げるんだよ。冒険者はモンスター、ダンジョン、後は技や魔法が多いね。商人は商品、技術、街道の情報とかかな。市民は料理のレシピや町の情報だったり、生活の知恵的なやつだね」

「職業によって内容が異なるのですね」

「大体なだけで決まってるわけではないよ。じゃあ早速やってみよう!まず最初は依頼者からカードを受け取って、本の表紙に当てて【検索】って言うんだよ。今回はティアちゃんのカードを本の表紙に当ててみて」

「はい」


ティアは自分のカードを表紙に当て「検索」と呟いた。

すると、本が薄っすらとした白い光に包まれて浮き上がり始めた。

ティアの目の前まで浮き上がるとパラパラとページが進み、本の半ばで止まった。

開いたページには何も書かれていなかった。


「本が開いたら調べたい情報を検索するためのキーワードを教えてもらって、それを頭の中で繰り返すんだよ。今回は頭の中で検索したいことを思い浮かべるだけでいいよ。できるだけ多くの条件で検索しないと結果が膨大になるから注意してね」

「検索したいことですか…考えてみます」


本を見つめて固まるティア。

しばらくすると本に文字が表示された。


【フェルト商会 冬を先取る新作ぬいぐるみ① スノーラビット 0】

【フェルト商会 冬を先取る新作ぬいぐるみ② スノードラゴン 0】

【フェルト商会 冬を先取る新作ぬいぐるみ③ アイスマン 0】

【フェルト商会 冬を先取る新作ぬいぐるみ④ アイスキノコ 0】

【フェルト商会 冬を先取る新作ぬいぐるみ⑤ スノーモンキー 0】


「ぬいぐるみを検索したのね…フェルト商会ってのはぬいぐるみ屋なの?」

「フェルト商会は服屋さんでマーブルに本店があります。ここ数年ぬいぐるみにも力を入れていますね。ウサギシリーズはフェルト商会の商品ですよ」

「そうなんだ…ティアちゃんの好きなお店って思っとくよ。気を取り直して!検索して出た情報ごとに料金が決まってるから、その料金を本に入れたら見れるようになるの。見えるようになったら内容を教えるんだけど、ティアちゃんは司書だから無料です!なので見たい情報に触れれば見れるよ」

「わかりました!」


文字を触り読み始めるティア。

一通り目を通したところでペンシィに問いかける。


「例えばの話ですが、相手の知りたいことを私のカードで調べて、無料で教えた場合どうなるのですか?」

「普通に話せるけど、バレたらクリスに怒られるし、アタシもメモリア様に怒られるから全力で止めるよ!」

「わ、わかりました…お祖母様に怒られるのは怖いのでやりません!」


怒られることを想像してふるえる2人。

ひとしきり震えたあと話題を変える。


「じゃ、じゃあ次は【記録】ね」

「は、はい」

「これは簡単だよ。相手のカードを受け取って表紙に当てながら【記録】って言って、開いた本に記録したい内容を書くか、相手が持ってる物を本に触れさせるの」

「書くのはわかるのですが触れさせるというのはどういうことでしょうか?」

「触れたものをメモリア様が解析して記録してくれるんだよ。商品とか、文書とかに使うよ」

「これも実際にやるのですか?」

「う〜ん…記録できるものがないし、【記録】の仕事も相手から言われなければ個人的なメモとか書いとけばいいよ。後はアタシが勝手に飛び回って記録しまくるから!」

「そうなのですか。ペンシィさんにお任せすればいいのですね」

「まぁね!それもアタシの仕事ですし!」


「じゃあ最後に【複製】ね!」

「はい!」

「やけに元気だね?」

「はい!ぬいぐるみ作り放題ですよね?」

「残念!作り放題ではありません!」

「え!?」


ドサッという音をたてて本が落ちる。

続けてティアが崩れ落ちて項垂れる。


「いやいやいや…どんだけぬいぐるみ欲しいのよ…」

「もふもふは至高です…」

「誰よそんなこと教えるのは…姉か、姉のどっちかか!」

「お母様です…ほとんどのぬいぐるみはお母様からのプレゼントです…」

「母親がねぇ…。まぁいっか。とりあえず【複製】の説明ね!種類は2つ!魔力で一時的に複製する方法と、素材を使用して完全に複製する方法があるの!」

「つまり!完全に複製する方法であればぬいぐるみが作れるのですね!」


勢いよく立ち上がるティア。


「素材があればね!」


また崩れ落ちるティア。


「ちなみに司書共有倉庫の素材を使いすぎるとクリスに怒られるからね」

「はい…」

「今できないことを気にしてても仕方ないし、素材が手に入ったら作ればいいじゃん!というわけで説明を続けるね!」

「うぅ…わかりました…」


本を拾いながら立ち上がるティア。

その目は涙で揺れていた。

涙目のティアを見ないように説明を続けるペンシィ。


「魔力で複製した場合使用した魔力に応じた時間で消えるんだよ。素材もいらないからすぐ作れるんだけど、作れるのは形だけで、特殊な魔法がかかってたりするものは魔法の再現ができないの。ただ、ティアちゃんの魔力があれば再現できるかもしれないけどね…。この複製方法の使い道は、物を見せての説明と、ティアちゃんが戦う時だね」

「戦う時ですか?」

「うん。本を出しながら戦って、必要な時に必要な武器を複製して戦うの。武器が壊れてもすぐ複製すればいいし、そもそも一定時間で消える武器だから極端な使い方ができるよ」

「極端な使い方ですか?例えばどのような使い方でしょうか?」

「う〜ん。チャクラムは投擲具の祝福だから物を投げるのに補正がかかるんだけど、例えばハンマーや包丁を大量に投げるとか?」

「それは…普通ではない戦い方ですね…」

「物量攻めだけど有効だと思うよ!で、素材を消費して複製する方法だけど、素材を使ってるから時間経過で消えないんだ。ただ、素材がなければ作れないから注意ね。こっちのは物自体を魔力で作らない分特殊な魔法を再現しやすいんだけど、強力であればあるほど魔力が必要になるから使ってる司書は少ないよ。使い道はお偉いさんへのプレゼントとか、仲間の装備を作ったりとかだね」

「なるほど…」


ティアはペンシィと話しながらもチラチラと本を見る。

そこには倉庫に入っているペンシィから貰ったぬいぐるみの情報が表示されていた。


「ティアちゃんに渡したぬいぐるみは素材を使う方だから消えないよ!安心して!」

「それはよかったです!」


安堵の笑顔のティアと苦笑いのペンシィ。

ペンシィはこのやりとりを今後も続けることを思うとため息が出た。


次回も戦いません

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