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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
盗賊と 不思議な野営と お友達
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Page79「盗賊の屋敷 攻撃開始」

全員で屋敷を攻め落とすと決めたので、後は隊列を決めるだけとなった。

突入するため先頭と最後尾が1番危険になるが、魔法によって中央をいきなり攻撃される場合もある。


ティアの結界で全員を覆い、相手が手出しできないようにした状態で地下へ向かう手も考えたクレアだったが、地下への階段や狭い部屋に入る際に邪魔になってしまうので却下した。

今のティアでは一度作った結界の形を変えることはできないのだ。


なので、個別に結界を張ることも考えた。

そのパターンの場合、壁際で動けなくなる可能性が出てくる。

板状の結界を組み合わせて周囲を覆うという手もあったが、攻撃できる軌道が板の間だけに固定されるため、使えないと判断された。


「先頭はチャコその次がカコで、ティアちゃんとリッカちゃんを挟むように左右にレインさんとゴルディアさん。後ろは私とシュトが担当するのでどうかな?」

「いいんじゃないかニャ。基本的に私が倒せばいいニャ」

「ウチはチャコの撃ち漏らしやトドメを刺せばええんやね〜」


チャコが獣人の身体能力を活かして突っ込んで相手を倒し、戦意を失っていなければカコがトドメを刺す。

それは息の根を止めることになるが、カコは気にしていない。

敵は倒しておかないと後で取り返しがつかなくなることもあるということを知っているからだ。

他にも、遠距離攻撃をしてくる敵を倒す役目もある。


「うん。ティアちゃんは移動できる結界を張って真ん中で待機、左右はレインさんとゴルディアさんが守ってください」

「わかりました」

『わかった』

『うむ』

「リッカはー?」

「リッカちゃんは……ティアちゃんを守ってくれる?」

「わかったのじゃー!リッカに任せておくのじゃー!」


続いてクレアはティアとレインとゴルディアに指示を出した。

結界で守られているティアの左右にレインとゴルディアを配置するのは、前を通り過ぎた部屋からいきなり襲われた時のためだ。

いくら結界にまもらえているとはいえ敵が迫ってくる。

なので、守りだけでなく攻めもできるように配置したのだ。

万が一攻撃を受けたとしてもぬいぐるみの2人であれば時間で修復されるのも考慮されている。


ただ、クレアの呼んだ者の中に地下の名前はなかった。

フェゴで多少の戦闘能力を見たとはいえ、まだ実力がわかっていないリッカは、できれば参加させたくなかった。

場を見だあれないためである。

だが、うまい説得内容が思いつかなかったクレアは、リッカもレイン達と同じようにティアを守るように伝えた。


リッカは何も言われなかったことを気にしていただけなので、ティアと一緒に結界に入って破られた時は守ってくれとお願いすれば手間は省けたのだが、その気持ちを知らないクレアは提案することができなかった。

もちろん、ティアもリッカと出会って間もないので、そんなこと考えておるとは思っていなかった。


「シュトと私で後ろを守るけど、チャコは入るときに門番の2人をよろしくね」

「……わかった……」

「任せるニャ。背後から襲われたらたまった者じゃないニャ」

「とりあえずこれで行くとして、ペンシィさんには何も頼まなくてもいいかな?」

「大丈夫だよ!危なくなったら守ってあげるから!」


クレアが確認のためにティアに聞くと、ティアとクレアの間にペンシィが現れて問題ないと告げると、また異空間に戻っていった。

ペンシィは異空間の中から全員の様子を伺い、危険が迫れば手を出すつもりでいるが、それを伝えることはなかった。

伝えたら隙が生まれると判断したからである。


「それじゃあチャコ、カコよろしく」

「わかったニャ」

「いってくるわ〜」


クレアの指示でチャコとカコが正規の道へと進み、そこから館へと向かっていった。


「あれ?全員で行くんじゃないんですか?」

「うん。ただ、その前にちょっとね……」


チャコとカコについて行こうとしたティアとリッカをクレアが腕を引いて止めた。

レインとゴルディアは初めから動いていなかったので、止める必要はなかった。


「止まれっ!お前達は何者だ!」

「ウチらは冒険者学校の生徒なんやけど、道に迷ってもうてな〜。歩いてたらここに出たんや〜。できれば帰り道を教えてもらいたいねんけど……」

「帰るのに時間がかかるようなら泊めてもらえると助かるニャ!」


チャコとカコは冒険者学校の生徒であることを証明するために、市民カードを出しながら門番に近づいていった。

門番は誰何した時点で剣に手を当てていたが、近づ枯れた時点で抜いた。


「止まれといっているだろう!」

「えぇ〜。道に迷っただけやのに武器なんて抜かんでもええやん」

「そうニャ!そうニャ!……というわけでさっさと沈むニャ!」

「な?!」

「ぐぅ!」


剣を抜かれても接近を続けていたチャコは、一気に距離を詰めて話していない方の門番の意識を刈り取った。

そして、話していた方にも攻撃を仕掛けたが、こちらは防がれた。


「くそ!簡単にやられるかよ!」

「うーん。やっぱりニャ。何で兵士がこんなことをしてるニャ?」

「はぁ?!俺はただの山賊だ!兵士な訳がないだろう!」


チャコの攻撃を防いだ門番は、これ以上質問されたくなかったのかひたすらに攻めだした。

だが、チャコはそれを余裕を持って躱す。

簡単に避けることができるのは、獣人故の身体能力もさることながら、この剣さばきを知っているからである。


「くっ!当たらがはっ!」

「はいお疲れニャー」

「どうやった?」

「間違いなくマーブル王国軍の剣さばきニャ」

「まぁ、ウチらが現れたのに、捕まえようとせぇへんかったからなー。盗賊じゃないか余程慎重かのどちらかや」


チャコとカコが先に出たのは盗賊の様子から相手の情報を探るためだった。

目の前に若い女が現れたのにも関わらず、捕らえようとしない時点で盗賊らしくない。

何かの依頼を受けて動いていたとしても、帰り道を教えて追い払えばいいのだが、狼狽えて剣を抜くほどだった。


そして、その剣技はチャコが王都で嫌という程見せられたものだった。

クレアに付いて行くために、様々な訓練をさせられたのである。

その時に王国軍の兵士とも模擬戦を行なっているので、振り方を見ただけでわかったのだ。


「どうだった?」

「戦い方から判断するに王国軍ニャ」

「ウチらを前にしても捕まえる様子はなかったで、こんなに魅力的やのに失礼やわ〜」


門番2人を倒すとクレアが近づき、結果を確認してきた。

チャコの話を聞いても表情を変えないクレア。

カコの魅力的云々についても反応を示さなかった。


盗賊の正体が兵士だということは予想していたので、ただ確証を得るためにチャコをけしかけていた。

相手が訓練されているかどうかで練度は異なるためである。


ただ、兵士が相手だとわかってもやることは変わらないので、気を失った盗賊に扮した兵士2人を縄で縛り、敷地内の壁際に寝かせてから、屋敷の裏手に回る。

その時にカコが魔道具がないか調べたが、特に何も設置されていなかった。

裏手に回る際に、ペンシィが一瞬出てきてティアに何かを伝えると消えた。

ティアの様子が変わっていないことから、特に問題がないと判断してクレア達は先に急いだ。


裏手には厨房に続く食材搬入用の入り口があり、少し離れたところには食料を保管する倉庫があった。

チャコが気配を探って厨房と倉庫のどちらにも人がいないと判断したので順次入って行く。

チャコが気配を探っている間、ティアがキョロキョロしていたので、カコが冗談を言って笑わせようとするという1幕があったが、それ鍵がかかっていて窓を壊すしかない等の問題は起きなかった。


「綺麗に使われているニャ」

「せやな〜。さすがやな〜」


厨房に入ると、そこは綺麗に整理整頓されていた。

使っていないのではなく、使った上で綺麗にしているのである。

訓練中は共同生活を行う王国軍の兵士にとって、厨房を散らかすようなことはできなかった。

もちろん、侵入されるとは思っていなかったのもある。


「方向は私が言うから、早く地下室へ行きましょう!」

「了解ニャ!」


扉の側に立って、向こう側の気配を探っていたチャコが問題ないと腕を上げた。

クレアは精霊に確認しながら道案内を行うつもりのようだ。


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