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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
旅立ちと 封印都市と 勇者と魔王
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Page 7 「異空間倉庫」

祝福を終えたティア達は、通った道を戻り、石細工がある部屋の魔方陣から精霊樹へと戻った。


「さて、今日のティアの仕事についてだけど、司書エリアに新しい本も入ってないし、整理してもらう棚もない。正式に司書になったから一般開放部への立ち入りを許可して、図書館に回ってもらってもいいんだけど、しばらくは練習期間に当てようと思う」

「練習ですか?」

「本の使い方、祝福で得た力の使い方をペンシィに教わって、使いこなす練習さ。そうだねぇ、期間は1週間だ。今日やることは一通り基礎を実践すること、実践が終わったら私に連絡することの二つだ」

「基礎の実践と…終わったらお祖母様に連絡すること…。はい、わかりました」


ティアは呟きながら指折り確認した。


「じゃあ私は仕事に戻るから、ペンシィ後は任せたよ」

「はーい。お仕事頑張って〜」

「ペンシィ!あなたも頑張るのですよ!」

「レイズもね!」


クリスとレイズは精霊樹を後にした。

残されたティアとペンシィはこれからについて話す。


「う〜ん。戦い方は後回しにするとして、先にメモリアの本だけでできることからかな」

「メモリアの本だけということは、他のものを使った戦い以外もあるのですか?」

「あるよー。楽しみにしててね。じゃあティアちゃんの部屋でやるから移動しよー」

「お部屋でお勉強ですね」

「そうだねー、あ!ちょっと待っててねー」


ペンシィは精霊樹の頂点に集まっている、ひときわ大きな精霊の集まりに近づいて何かを話す。

ティアの周りは僅かな時間で精霊に囲まれ、一杯になっていた。

ペンシィが戻ってくるとティアの周りにいた精霊が樹に戻った。


「行こっか」


ペンシィとティアは精霊樹を後にし、部屋へ戻りながら話す。


「先ほど精霊さん達と何を話していたのですか?」

「んー?ティアちゃんの司書就任のお祝いに属性の祝福したいって言ってたから、後でお願いって言ってきたの」

「属性の祝福ですか?」

「そう。属性の祝福は各属性を使用する時に強化されるのと、祝福された属性の攻撃に耐性ができるんだ」

「凄いですね。なぜすぐに祝福していただかなかったのですか?」

「やること多いから後回しにしたの。別に今すぐ必要なものでもないし。だから、まずは一人前の司書になること!属性の祝福は冒険者になる時で大丈夫!」

「わかりました。早く一人前の司書になれるようがんばります!」

「その意気でがんばろー!」


そのまま他愛のない話をしながら部屋に戻った2人。

ティアは部屋に戻ると靴を脱ぎ、ピンクのスリッパに履き替える。

ベットに腰掛けて本を膝の上に置き、ペンシィから貰った黒うさぎのぬいぐるみを抱きかかえる。

ペンシィはティアの前で浮び、腕を組んで誇らしげな顔で教え始める。


「よーし!覚えることはたくさんあるけど、最初は司書と精霊の関係から!」

「私とペンシィさんの関係ですね」

「うん!簡潔に言うと、司書が魔力を渡して精霊が結果を返す関係だよ。ティアちゃん1人だと戦えないし、本の力も使えないんだ。逆にアタシだけだと本の力は使えるんだけど、アタシが居た空間から出られないから、こっちに影響しないの」

「ペンシィさんはあの空間から出られないのですか?」

「そうなんだよ〜。こっちに居るだけでティアちゃんの魔力を使ってるんだけど、消費より回復が上回っているから、ただ居るだけならティアちゃんに負荷はかからないよ」

「なるほど。ペンシィさんの事はわかりましたが、魔力を渡して結果を返すということがよくわからないのですが…」


苦笑いのティアは黒うさぎをぎゅっと抱きしめる。


「そうだよね〜。じゃあ本でできることを紹介して、実践していこう!最初は倉庫!」

「倉庫ですか?物を置くための?」

「そうだよ!倉庫は、メモリア様に魔力を渡して作ってもらう異空間で、種類は二つ!時間が進む倉庫と進まない倉庫があるの!」

「時間が進む倉庫と進まない倉庫ですか?」

「時間が進む倉庫には生き物を入れることができるけど、入れる場合その生き物の同意が必要なの。住民の避難や、食べ物の熟成、冒険者組合や商業組合の大量取引に使われるよ!」

「時間が流れるので、生き物が入っても大丈夫なのですね」


ティアの認識に満足したのか、左手を腰に当て右手でビシッとティアを指差すペンシィ。


「そのとーり!時間が進まない倉庫は、貴重品や劣化させたくない物の取引に使うんだけど、時間が進まないって特殊性から出し入れと拡張する時の魔力消費が大きいからあんまり使われてないね〜」

「拡張ですか?」

「拡張はね、作ってもらった倉庫を、メモリア様に魔力を渡して広げてもらうんだよ」

「なるほど、時間が進む倉庫は作成、拡張、物の出し入れに使う魔力は少なく、生き物も入れられる。時間が進む倉庫は便利だけど作成、拡張、物の出し入れに使う魔力が多く、生き物は入れられないと…」

「そうでーす!ちなみにティアちゃんは倉庫の容量とかは気にしなくていいよ。倉庫がいっぱいになってきたら、アタシが勝手に魔力を貰ってメモリア様に渡すから!もちろんティアちゃんに影響が出ない範囲でやるからね!」

「わかりました。拡張はペンシィさんにお任せします」

「後は、倉庫の共有化だね。ティアちゃんと契約して、準司書になった人と倉庫を共有できるんだ〜。準司書ができたら作ればいいから今は考えなくていいよ〜」

「なるほど、お祖母様は共有倉庫を使用して組合同士で物のやり取りを行っているのですね」

「そうだよ〜。最後に司書共有倉庫についてだね。これは司書同士で物品のやり取りや、素材とかを置いてるところで、準司書は使えないようになってるの。勝手に使っていい物を入れる倉庫なんだ」

「勝手に使っていいのですか?」

「いいんだよ〜。自分で使う分は自分の倉庫に、余っている物を共有倉庫に入れるって考えだよ」

「なるほど。わかりました」

「では早速ティアちゃんの倉庫を作るので魔力を貰います!」


白い透明なぼやっとした塊が2つティアからペンシィに向かって飛ぶ。

ペンシィは塊を掴み、ティアの膝の上にある本に叩きつけた。


「白い物が私の中から出てきましたが、あれが魔力ですか?」

「そうだよ〜。ただの魔力の塊」

「ペンシィさんに魔力を渡した時は見えませんでしたが、今見えたのはなぜでしょうか?」

「槍の祝福に【看破】っていう力が付いてくるんだけど、それのおかげで魔力の流れと物質の弱い部分が見えるようになるんだよ」

「杖ではなく槍の力なのですか?」

「杖は魔法って認識は合ってるけど、魔法使い達は魔力を見ないで感じるんだ。ティアちゃんはまだ慣れてないから何も感じないけどね」

「はい。何も感じませんでした。慣れると感じるのですか?」

「祝福で得た武器を使ってるとだんだん慣れて、効率的に動けるようになるんだ。それには段階が10段階あって、1が初心者、3が初級者、5が中級者、7が上級者、9が熟練者、10が超越者って感じなの。ちなみにティアちゃんは全部1だよ」

「祝福を頂いたばかりなので全て1なのは当然ですね」

「うんうん。精進あるのみだよ!というわけで2種類の倉庫ができました!使い分けるために名前をつけた方がいいんだけどどうする?」

「倉庫に名前ですか?例えばどういう名前をつけるのですか?」

「みんな好き勝手につけてるからね〜。入れる物で名前をつけるといいよ。貴重品を入れる方を[金庫]とか[貴重品倉庫]とかかな」

「では時間が進まない方を[貴重品入れ]、進む方を[荷物入れ]でお願いします」

「はーい……できたよー。じゃあ早速出し入れしてみよう!まずは小物からね!」


そう言うと机の上にあった櫛を手に取り、ティアに渡す。


「入れ方について説明しまーす。本を開いて、持っているものを押し付けます。押し付けながら入れたい倉庫の名前を意識してください!」


ティアは言われた通り本を開き、櫛を押し付けながら入れる倉庫の名前を思い浮かべる。

すると本が一瞬輝き、櫛が消えた。


「櫛が消えました…これで倉庫に入ったのですか?」

「そうだよー。じゃあ次は取り出してみよう!本を開いて櫛を入れた倉庫の名前を意識してー」


ティアが櫛を入れた倉庫の名前を思い浮かべると、開いたページの上部に【荷物入れ】という文字が浮き出て、その下に【ティアの櫛】が浮き出てきた。


「出てきた文字をなぞると、勝手に魔力を吸い取って出てこようとするの。頭の中に出そうとしている物のイメージが現れるから、どこに出すかを意識すれば出てくるよ」


【ティアの櫛】を人差し指でなぞると、文字が輝く。

ティアの頭の中に、櫛が思い浮かぶ。

櫛が本の上にあることをイメージすると、小さな光がはじけて現れた。


「出てきました。なるほど、これが倉庫ですか…。出すときに文字をなぞらないとダメなので、時間がない時に間違えそうですね」

「慣れてくれば、どこに入れたか把握しているものは本を開くだけで出せるようになるんだけど、まだまだ先だよ。具体的に言うと中級者だね」

「中級者になるまでどれくらいかかるのでしょうか?」

「う〜ん。本は使用頻度が高いから2、3年かなー」

「先は長いですね」

「気づいたら慣れてるから気長にやればいいよ!じゃあ次は大きい物だよ!大きい物は本の上に乗らないから、開いた本を入れたい物にくっつけるの!後は同じく入れたい倉庫の名前を意識してね!」


ティアは、腰掛けた状態で振り返り、ベットの上にある毛布に開いた本を当てて倉庫の名前を思い浮かべた。


するとベットが消えて、空中に投げ出される。


「へぷっ」


ティアは顔から落ちた。


「え?なんで?」

「うぅ…毛布を入れようとしたのにベットごと消えました…」


手をついて体を起こすティア。


「あー。倉庫どうなってる?」


ティアは床に落ちた本を開いて確認する。


「うぅ…えっと…【ティアのベット一式 ぬいぐるみ付き】になっています…」

「あはは…ティアちゃんが入れようとした毛布は、ティアちゃんの中でベットの一部っていう認識になってたんだと思うよ。だから一緒に入ったんだよ。明確に毛布だけを入れるって考えないとダメだったね」

「うー。言われてみると毛布だけ入れようとは思ってませんでした…」


立ち上がり、少し移動してベットの文字をなぞり、倉庫に入れる前と同じ場所にベットを出して腰掛けるティア。


「まぁ…あれよ!最初に失敗してよかったということで!」

「はい…そう思うことにします…」


しょんぼりとしたティアを慰めるペンシィは、このことに触れないことにした。



「最後に倉庫の注意点だよ。お店で売ってるものや、ティアちゃんが自分の物、あるいは仲間の物って認識していない物は倉庫に入りません!これは倉庫に入れる時メモリア様にチェックされてるからだよ」

「物を盗んだりするのには使えないというわけですね。もちろん盗みませんが」

「ティアちゃんを疑ってるわけじゃないよ。どちらかというと準司書対策かな。で次ー」


ペンシィはクローゼットまで移動し、開けて中身を見せながらティアに説明する。


「中に何か入っている物を倉庫に入れる時の注意点だよ。中身の入った袋や箱を倉庫に入れて、その中身だけを取り出すことはできません!だからこのクローゼットを倉庫に入れても服だけ出すのは無理だよ」

「なるほど。ちなみに、時間が進む倉庫にクローゼットを入れて中で着替えることは可能ですよね?」

「それはできるよ。そういう使い方をしてる人もいるし」

「わかりました。倉庫については以上ですか?」

「以上なんだけど、次にやることのために、この部屋の物全部倉庫に入れてくれる?」

「全部ですね、わかりました」


返事をした後、部屋の物を全て倉庫に入れる。


「これは…模様替えに便利な能力ですね…」


入れ終わったティアが一言呟いた。


まだまだ戦いません。

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