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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
盗賊と 不思議な野営と お友達
66/106

Page66 「冒険者学校での出会い」

プロットの大幅見直しと、誕生日に書き出した別作品が予想以上に読まれていたため、そちらに注力していました。

申し訳ありません。


今週から再開します。

昼食を終えて片付けを行なった後の移動は、御者席に2人座って行うことになった。

クレアとチャコ、カコとシュトで組むことになり、今はクレアとチャコが操車し、クレアが雪を溶かしながら進み、チャコが首位の警戒に当たっている。


馬車内ではティアとリッカ、カコとシュトで座っていて他愛のないお喋りをしていた。


「クレアお姉ちゃんとチャコお姉ちゃんは昔からの知り合いなんですか」

「そうやねん。ウチとシュトは冒険者学校で知り合ってん」

「……チャコが、クレアを守るナイトみたいな感じだった……」

「そうなんですね」

「そうそう。チャコの威嚇に耐えれて初めて姫さんと話せるようになるんよ」

「……特化クラスでも半分以上が耐えられなかった……」

「すごい威嚇なんですね……」


クレアが冒険者学校に入る時に、チャコも一緒に入ってきた。

当初はクレアに近づく者を威嚇して守っていたのである。

クレアは第3と言えども王女なので、良からぬ輩から守るために全力で威嚇していたため、能力の高い特化クラスでも耐えれられず失神する者が続出したのである。

それを入学初日の入学式前に行ったため、特化クラスのみ翌日教室で入学式を執り行っている。


「カコお姉ちゃんとシュトお姉ちゃんは耐えられたのですか?」

「ウチとシュトは耐えれたで〜。2人とも結構ギリギリやったけどな〜」

「……足が震えるほどだった……」

「のじゃ〜?」


ティアの質問に目線をそらして答えるカコとシュト。

それを不思議そうに見ているリッカ。

リッカは本気で威嚇するチャコを見たことがないので、こういう反応しか出てこない。

ティアも同様である。


「まぁ今の姿を見ても想像できへんよね〜」


カコの視線の先には、御者席でじゃれ合っているクレアとチャコが居る。

今のチャコはそんな威嚇をしたことが想像できないほどのんびりとした雰囲気を出している。


「そうですね」

「そうなのじゃ〜」


カコに言われてクレア達を見たティアとリッカも納得した。


「カコお姉ちゃんとシュトお姉ちゃんは、その威嚇を耐えられたからクレアお姉ちゃん達とパーティを組んでるんですか?」

「う〜ん。それもあるんやけど、一番の原因はウチとシュトがもふもふしてるからやね」

「え?」

「ウチとシュトがもふもふしてるから」

「もふもふ……ですか?」

「そう。もふもふ」


そう言ったカコが尻尾を前に出してきたので、ティアがおずおずと握る。

表面を撫でる程度の力具合で、触れられたカコが身をよじる。


「ん……くすぐったいわ〜」

「あ、ごめんなさい」

「もうちょっと強くてもええで」

「わかりました」


ティアは少し力を込めて尻尾を握った。

その瞬間ティアの瞳がキラリと光った。


「もふもふです!」


椅子から立ち上がり、カコの尻尾を抱きしめたり、匂いを嗅ぎ出したティア。

いきなりの行動にカコは固まってしまった。


「もふもふです!ふわふわです!お日様の匂いがします!」


ぎゅっと尻尾を抱きしめ、顔を埋めたままティアが話すので、尻尾に息がかかった。

そのくすぐったさでようやく再起動したカコは、自分の尻尾を抱きしめるティアを見て何かを悟った。


「ティアちゃんも姫さんと同じなんやな……」


クレアがカコとシュトをパーティに誘った理由であるもふもふ。

それを堪能しているティアを見て、カコはクレアと同類だと判断した。


「これがもふもふなのじゃ〜?」

「……そう。尻尾はダメだけど、耳ならいい……」


対面では、シュトがリッカの横に移動して、自分の耳を触らせていた。

時折ピクピクと動いているので、シュトもくすぐったいようだ。


「もふもふがパーティの条件だったんですか?」


カコの尻尾を抱きしめながら横に座るティア。

初めてぬいぐるみをもらった時も同じような行動だったことをカコはおろかティアも知らない。

それを見た母親のマリアリーゼがぬいぐるみを買い与え始めた結果が、ティアの部屋にあるぬいぐるみ達である。


「うーん。もふもふとチャコの威嚇に耐えられることと、姫さんを身分で見ないことやな〜」

「それだと他の獣人の方や、亜人の方もいたのではないですか?」

「おったよ〜。でも、他の人達はすでにパーティを組んでたり、姫さんの身分に対してぐちぐち言ってくる人もおったしね〜。まぁそれは男ばっかりやったけど」

「……アレはない……オスとしての価値すらない……」


威嚇に耐えられた女の子の殆どは実力者同士でパーティを組んでから入学していたり、クレア達が教室に入るまでに実力を見極めてパーティを組んでいた。

カコは実力よりも面白そうな人を探し、シュトは一緒に居て嫌じゃない人を探していたため、いろんな誘いを断っていたため2人ともソロだった。


男の子の方も同様だったが、自分の力が特別だと思っているのが男に多く、相手の実力がわからないうちにパーティを組もうとしない者も多かった。

そういった者は教員から指定されたパーティを組むことになる。


中には貴族の3男坊などもいて、そういった実力以外に権力を持っていると更に生意気だったりする。

チャコが威嚇するきっかけになったのもこの3男坊である。


「シュトお姉ちゃんはどうしたんですか?」

「シュトは貴族の3男坊に話さないことを弄られててな〜。それを見た姫さんが止めに入ったんよ。そしたらその男が『王女ともあろうものがうんぬん……僕といた方がうんぬん……』って言い始めてな〜。その言い分にイラっとしたんやろな〜。チャコが切れて威嚇したんよ〜」

「そうなんですか」


チャコが切れたのは王女に対しての暴言と、シュトを悪く言ったことの2つが原因だった。

獣人や亜人は過去に差別されていて、それを嫌った者たちがマーブルを建国したのだが、その国の貴族が差別発言をしたことが許せなかったのだ。

それに、あわよくば王女といい関係を築こうとしている男の目線が気持ち悪かったのもある。


「ウチはそれを見てパーティに入ろうと決めてな〜」

「チャコお姉ちゃんが怒っただけですよね?」

「そうやで。でも、その威嚇でクラスの半分以上が気絶、残りもチャコに恐怖を覚えたんやで〜」

「カコお姉ちゃんもですか?」

「ウチもやね〜。ただ、それ以上にチャコと姫さんに興味が出たからウチからお願いしてん」


貴族とはいえ子供の戯言に対して本気で威嚇したチャコと、それによって判明したチャコの実力。

さらにクレアへの忠誠心など、様々なことが気になったカコは、クレアのパーティに入りたいと願い出た。

その方法はクレアが体現していたので、簡単だった。


「……カコが尻尾を触らせたら一発で許可がでた……」

「シュトも耳を触らせて許可もらったんやで〜」

「なぜ尻尾と耳なのですか?」

「チャコが威嚇してるのを止めたのはクレアで、止め方が尻尾を握ってもふることやったからな〜。しかも、その時のクレアがすごい笑顔やねん。やからウチも尻尾を出してん。もふもふには自信があったし」

「……私は尻尾が短いから耳を出した。……それがパーティに入る条件だと思ったけど……あとで説明されて違うことに気づいた……少し……恥ずかしかった……」

「今はもう慣れたものやけどな〜」


カコの言葉に頷くシュト。


「その後は一緒に授業を受けたり、コンビネーションの確認をしているうちにバランスがええことに気付いてな〜。下手な冒険者や魔獣には勝てるようになってん」

「バランスですか?」

「そうそう。近接と炎・爆裂魔法の姫さん、糸での行動阻害と警戒に長けたチャコ、魔法で攻撃と補助ができるウチ、遠距離だと弓で近距離だとブレードブーツの蹴り技を放つシュト。互いに得意な距離が異なるから、のびのびと戦えるねん」

「……多少練習は必要だった……」

「せやね。シュトの射線に入らないようにとか、魔法を誤射しないようにとか色々あったな〜」

「楽しそうですね」


それを語るカコとシュトは笑顔だった。


「楽しいで〜。なんだかんだで姫さんのおかげでいい思いもできたし、チャコを弄って楽しめるし〜」


そう言ったカコが御者席に座るチャコを見ると、馬車内の全員の視線が集まった。

クレアが操車しながらチャコの細長い尻尾をいじり廻し、チャコも仕草では嫌がりながらも止めようとしない。

チャコの耳がピクピクしているので、視線が集中していることには気付いているはずだが、止める気は無いようだ。


「みなさん仲がいいんですね」

「そうやで〜。ティアちゃんとリッカちゃんとも、これから仲ようなっていくんやで〜」

「はい。楽しみです」

「のじゃ!」


ティアの笑顔で馬車内の空気がさらに暖かくなった。


カコ達はチャコが耳をピクピクさせていたのが馬車内からの視線だけでは無いということに気付いていない。

チャコと話していないので気づけるはずもなかった。


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