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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
山村と 爆裂王女と 冒険者
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Page 58「ティアは食料保存庫」

Page35の時間の概念を1日24時間、1時間60分、1分60秒に修正しました。

1年間の日数は400日なのは変わらずです。

組合長のリーフが去った部屋で、ティアを膝の上に乗せたままのクレア達は今後のことを話し合っていた。


「いつ出発できるかな?」

「学校からの依頼は終わってるから、こっちはいつでもいいんだけどニャ」

「せやな〜。遠征依頼は物を届けて終わりからもう済んでるし〜」

「……やることない……」

「う〜ん。私達はティアちゃんが一緒だから、今日、明日にでも組合長の許可出るんじゃないかな」

「なら、保存食だけでも買うニャ?装備は整ってるし、必要なのは食料だけニャ」

「保存食やったら1日、2日の差なんて誤差やしええんとちゃう?」

「……いいと思う……」

「じゃあ私が行ってくるよ」

「私も行くニャ」

「ほな、ウチはお留守番〜」

「……留守番……」


いつ出発するかの話から、保存食を買いにいくことになった。

クレアとチャコが買いに行き、カコとシュトは留守番をすることなった。

リッカが寝ているので、全員外出するわけにはいかなかった。


「ティアちゃんはどうする?」

「えっと…私も行きます」


クレアの膝の上で話を聞いていたティアは、少し考えて行くことに決めた。

買った商品を異空間に収納するためだった。


「じゃあ早速行こう!」

「お昼ご飯までに終わらせるニャ!」

「行ってらっしゃ〜い」

「……気をつけて……」

「はい!行ってきます」


クレアに手を引かれて部屋を出るティア。

チラリと見えたリッカは熟睡していた。


「あの…遠征依頼とリーフさんの許可って何ですか?」

「ん?えっとね。遠征依頼は冒険者が受ける護衛依頼や配達依頼に似せた依頼を、冒険者学校から生徒へ受けさせる授業だね」

「近場だと教官役の冒険者を護衛しながら移動するニャ。遠い場所だと手紙や荷物を運ぶ依頼になるニャ。私達は遠出組だからリーフさんに冒険者学校からの手紙を渡して依頼達成だニャ!」

「なるほど。実際の依頼に似た依頼をすることで経験を積むのですね」

「そういうこと」


初級冒険者でも配達依頼で近場の村へ荷物を運び、中位冒険者になれば護衛依頼を受け、商人や貴族を護衛することもある。

冒険者学校の生徒にも同様の依頼を受けさせ経験を積ませたいが、失敗した時のリスクが高い。

そのため、学校が用意した人員を護衛させたり、物を運ばせたりする。

護衛依頼であれば護衛対象の冒険者が生徒よりも強いため、最悪の場合、護衛対象が護衛役の生徒を守りながら進む場合もある。

配達依頼であれば、生徒が運ぶ物と同じものを正規の冒険者にも運ばせ、同じ目的地に向かって進ませることで、後方から守れるようにしている。

ちなみにクレア達は後続の冒険者を振り切ってフェゴについた。

チャコが尾行されていることに気づいたためである。

これによる被害は後続の冒険者の評価ぐらいである。


「組合長の許可についてだけど、冒険者は滞在する街や村の組合に滞在申請や移動申請をするんだ。冒険者を指名した依頼もあったりするからね。それで、冒険者学校の生徒も同じく申請をするんだけど、私達はあくまで教えてもらってる側だから組合長の指示で小さな依頼を受けたり、帰還指示が出るの」

「今はメモリアを襲った攻撃の件でゴタゴタしてたから、村の雑事を数件こなしただけニャ。組合長が忙しくて私達に受けさせる依頼もないからゆったりしてたらクレアがティアちゃんを持って来たニャ」

「あはは…。それで、ここを離れる場合は組合長の許可がいるの。ティアちゃんの護衛をすることは決まってるから、後はそれを学校側からの依頼として受けるか、別の依頼で王都へ向かわせるかってところなんだけど、まだ決まってないみたい」

「出発しますと伝えて出て行くだけではダメなのですね」

「そうなんだよ」

「正直めんどくさいニャ」


冒険者の移動を管理しているのは戦力の集中を防ぐためにも使われている。

村を盗賊や魔物が襲うことを想定し、領主や国の軍とは別の戦力として、各村に配置されるよう指名依頼をコントロールしているのだ。

依頼主が冒険者を指名するのではなく、誰でも受けられる依頼に対して組合から冒険者を指名する準指名依頼になる。

ランクが達成した依頼のポイントで決まる冒険者にとっても、指名依頼より達成ポイントは下がるが、普通に受けるよりもポイントがもらえるため、断られることは殆ど無い。

殆どなのは、冒険者側にも予定があるため受けられない場合があるからで、断ったからと言ってペナルティがあるわけではない。


冒険者学校の生徒の移動を管理しているのは、あくまで冒険者候補を預かっている側としては当然の対応である。

本来であれば村の雑事から、周辺の獣を狩ったり、その地方特有の物を見学したりする。

しかし、その特有のものであるメモリアは無くなり、魔王の攻撃によって警戒態勢になっている村から出ることができなくなっていた。

そんな時にティアが受け渡されたのである。

クレア達からするといい暇潰し兼、帰還許可に繋がる一因になった。

もちろんリーフからすると竜の依頼という頭の痛い案件になるが。


「着いたニャ!」


クレア達が向かったのは冒険者組合の裏手にあるの雑貨屋だった。

組合で解体された物は各組合の準司書の異空間に収納されたり、依頼主の元に届けられる。

雑貨屋もその1つで、皮や肉に牙など様々な素材の依頼を出している。


「ここでご飯を買うんですか?」

「ご飯というか保存食だね。黒パン、干し肉、ドライフルーツ、乾燥野菜の粉末とかね」

「野菜の粉はお湯に溶かしてスープにするニャ。もちろん塩で味は整えるニャ」

「普通の野菜は買わないのですか?」

「腐るからニャ…。まぁ数日は普通の野菜を使うニャ。でも、王都までは結構かかるから途中からは干し肉ばっかりニャ…」


王都からフェゴまでの移動で干し肉ばかり食べた記憶が思い起こされたのか、遠い目をしたチャコが答える。

最初は具沢山の野菜スープを食べ、肉を焼き、柔らかいパンを食べれるが、進むにつれて固くてパサパサしたパン、具のない塩味のスープ、ドライフルーツが続く。

途中の村で食材を買おうとしても、冒険者全員に売れるほどもないため、保存食しか買えない。

新鮮なものを食べたければ酒場や宿屋に行くしかない。

移動の途中で兎や猪などの食べやすい動物を狩れれば儲けものだが、そのために時間を費やしすぎるのもよくない。

結果として干し肉を齧りながらの移動になった。


「大変ですね…」


そんな経験をティアに説明するチャコ。

クレアはその経験すら楽しんでいたので、まだ苦にはなっていない。

むしろ堅苦しいマナーを守りながら食べる料理の方が苦であった。


「大変って、ティアちゃんも同じ経験をすることになるニャ!」

「えっと、異空間には時間を停止する空間もありますよ?食料ならそちらに収納しておけばいいと思いますが」

「「………」」


ティアの発言で固まるクレアとチャコ。

クレア達はティアの母親であるマリアリーゼ・メモリアとは懇意にしていた。

なので、異空間に城を建てた司書の話等を知ってはいたが、時間の進まない異空間の話は知らなかった。


「時間停止はロストマジックニャ…」

「迷宮の宝箱からごく稀に時間停止機能付きのマジックバッグが出てくるぐらいなのに…」

「もしかしてお母様からも聞いていないのですか?」


ティアの問いかけにブンブンと頷く2人。

特にチャコは目が輝いていた。

干し肉生活をしなくて済むので、当然の反応ともいえる。

逆にクレアはちょっとしょんぼりしていた。


「じゃあ新鮮な野菜とお肉をいっぱい買うニャ!ティアちゃんよろしくニャ!」

「わ、わかりました!」


チャコは雑貨屋で食器と調理器具を買う。

包丁だけは鍛冶屋で買った。

その後食料品店で新鮮な野菜とスノーラビットの肉とフルーツもたくさん買う。

最後には小麦粉や塩、砂糖、香辛料も購入した。


注文と支払いはチャコ、受け取りはクレア、ティアはクレアから小分けに受け取り、時間停止異空間の【貴重品入れ】に収納していく。

お姫様が荷物を持ち、更にはお姫様から手渡れているのだが、ティアは緊張していなかった。

今のクレアにはすっかり慣れていた。


「いやー。たくさん買ったニャ!」

「買い過ぎだと思うけど」

「王都までは30日以上かかるニャ!不測の事態に備えて多いくらいでいいのニャ!」

「それでも、6人で40日分はありそうだけど…。それに、途中の村にも寄るんだよ?」

「余っても時間停止しているなら別の移動でも使えるニャ!」

「それはそうだけど…。ティアちゃんの魔力は大丈夫?疲れてない?」

「はい!大丈夫です!」

「そっか。疲れたら遠慮しないで言ってね」

「はい!」


クレアと手を繋いだティアはニコニコしながら答える。

クレアが密かに干し肉とドライフルーツを購入していて、それをジッと見ていたティアにも分けることを約束していた。

ティアもまた冒険者の定番である保存食に憧れているのである。


1/1から書き始めた毎日投稿の「天使に就職した私の加護は過保護?!」に話数が追いつかれましたが、こちらは今のペースのままゆっくりと書き続けます。


また、他にも色々と書き溜め始めているので、そちらは、一定量にたまり次第投稿します。

どうやら私は自分を追い込んだ方が書くペースが上がるようですので、複数作品をスケジュール通りに投稿するという形で追い込もうと思います。


拙い文章ですが少しでも楽しんでいただけたらと思います。

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