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戦う司書さんと勇者と魔王  作者: 星砂糖
雪山と 精霊竜と ぬいぐるみ
30/106

Page30「もこちゃんを使った戦闘方法」

ペンシィからぬいぐるみを使った戦い方を教わる前に、どのような動きができるのか確かめるティア。

飛び跳ねさせたり、走らせたり、綿が詰まっている蹄を振らせたりしていた。

そのどれもがティアの運動能力を超える結果になった。


「私よりもこちゃんの方が動けますね。これが『マリオネット』の力なのですか?」

「そうだよ!イメージ通りに動かせるのが『マリオネット』の特徴だよ!もちろん腕だけ飛ばすとかは……基本的に無理だね!」

「基本的にですか?」

「うん。腕に糸を付けて操れば操れるよ。ただ、二本の糸に別々の動きを伝えないとダメだから難しいと思うよ」

「なるほど…まずはもこちゃんをしっかり動かせるようにならないとダメですね」

「そうそう。まずは一つでやって、慣れたら増やしていけばいいよ!」

「そうですね!」

「じゃあ戦い方の説明するね!といっても、もこちゃんはティアちゃんの魔力で満たされてるよね?その魔力を使って結界を出して殴ったり、魔法なら【魔力破壊】、物質なら【物質破壊】で壊すんだよ!」

「結界はもこちゃんの腕に纏わせるんですよね?」

「そうだね!今までは板状だったけど、腕の周囲に纏わせてから固める感じだね」

「なるほど…魔力を腕に纏わせるのですね。【魔力破壊】は私の部屋でペンシィさんの出した水球を切ったやつですよね?」

「そうだよ!スパスパ切ってたやつだけどもこちゃんは剣を持ってないから、相手の魔力の流れを殴って乱すんだよ!」


【複製】で出した剣をもこちゃんに持たせて、更に魔力を纏わせれば剣による【魔力破壊】も可能だが、今はまだ教えるつもりはないようだ。


「殴るんですか…。あと、【物質破壊】はまだやったことないですよね?」

「うん!これから練習だね!やり方はやる時に説明するけど、今のティアちゃんならすぐできると思うよ!」


ティアの部屋で壊す物がなかったため見送った祝福だった。

外で戦う練習をした時に一度だけでもやっておけば良かったと少し後悔したペンシィだったが、そんな気配は出さない。


「がんばります!ですが、まずは結界やります!」

「そうだね!少しでも慣れてる結界からやるほうがいいね。じゃあもこちゃんでそこの岩を叩いたあとに、結界を纏わせてもう一度叩いてみようか!」

「わかりました!」


もこちゃんを動かし、だいぶ前に落ちたであろう岩の前に立たせる。

そして、振りかぶらせて岩を叩く。

もこちゃんの中身は綿なので、端から見るとぽふっと音がしそうなほど軽い攻撃に見えた。

しかし、ティアより動けるぬいぐるみの攻撃なので、岩ではなく人を叩いた場合は普通に痛い。

ただ、岩を叩いたので2人は気づいていなかった。


「まぁぬいぐるみだしね…じゃあ次は蹄に魔力を纏わせて、結界にして叩いてね!」

「はい」


額から魔力を出し、マリ球を介してもこちゃんに送る。

もこちゃんの右の蹄を覆うように出して、結界にする。

板状の結界を作るときと異なるのは、固めた魔力の形だけだったので一度で成功した。

そして、そのまま岩を叩く。

ゴンッという鈍い音がして、ヒビが入っていた。


「これが結界で叩くということですか…先程とは明らかに違いますね…」

「あとは結界の形を尖らせたりして、剣みたいに切ることもできるけど、それは今度練習しようね!」

「形を変えると結界で切れるのですか…どんどん結界がわからなくなりますね…」

「あはは…。まぁ元々は防御だけに使ってたんだけど、魔獣に襲われた時に攻撃にも使えることに気づいてね。それからはこんな使い方もするようになったんだよ」


最初に結界を作り出した人は、防御にしか使っていなかったが、ある時、魔獣に不意打ちされた。

急いでいたため魔力の流れを整えず結界を作り出したら、ところどころ尖っていて、その部分で魔獣が傷ついた。

そこから攻撃への転用が始まり、防御一辺倒だった後衛から、見えない結界による間合い無視の前衛に変わったのである。


「なるほど…元々はイメージ通りの結界だったのですね。次は【魔力破壊】でしょうか?」

「そうだね!これはティアちゃんの家でやった時の復習って感じだね!」


そう言って火の玉を出すペンシィ。

すかさず【看破】で見たティアは、魔力が燃えて火になっていることを確認して、この魔力の流れを乱せばいいと理解した。

もこちゃんを移動させたが、火の玉の位置が高く手が届かない。

足に魔力を纏わせて跳んだもこちゃんの蹴りで、火の玉を搔き消した。


「うん。問題なくできてるね!これで拳でも【魔力破壊】できることがわかったね!」

「そういえば叩いて壊せるかわからないのでしたね。忘れていました」

「ティアちゃんが忘れてたのは仕方ないよ。できたから良しってことで!最後の【物質破壊】をやってみよう!」

「わかりました。お願いします!」

「と言っても簡単なんだけどね!もこちゃんを通して、破壊したいものに魔力を流すだけ!早くたくさん流すのがコツだけど、今のティアちゃんだと難しいと思うんだよね」

「魔力を流す速度が遅いからですよね?」

「そうそう。一気に流さないとすぐ壊せないからね!じゃあさっきの岩に壊れるまで魔力を流してみてくれる?」

「わかりました」


ヒビを入れた岩に左の蹄を付けて魔力を流す。

【看破】で魔力の流れを見ると、徐々に溜まっていくのがわかる。

もこちゃんと同様に魔力で満たされてからも魔力を流し続ける。

すると、岩の表面から魔力が溢れ始める。

少し眩しく感じ始めた頃、ヒビの入る音とともに魔力が溢れ出し、二つに割れた。


「これでいいのでしょうか?」


ティアともこちゃんが首をかしげながらペンシィに向き直る。


「【物質破壊】としては合ってるよ!でも、速度が足りてないんだよね。だから、ティアちゃんは一度にたくさんの魔力を流す方法でやるべきだと思うんだよね!」

「一度にたくさん…遅くてもいいのですか?」

「遅くても、一度に限界以上の魔力を流されれば壊れるから問題ないよ!面倒なところは祝福が補助してくれるし、そもそもそのための祝福だしね!」

「わかりました。もう一度やってみます」


二つに割れた片方にもこちゃんが触れた状態で一度に大量の魔力を流す。

大量すぎたのか、岩に魔力が流れた瞬間弾け飛んだ。


「えぇ…どれだけ流したの?」

「えっと…岩が割れた時に必要だった量と同じぐらいです」

「二つに割れた片方に割れる前の量を入れたの?!そりゃこうなるよ!」


許容量をはるかに超える魔力を瞬時に流し込まれたため、ゆっくりと溢れ出しながら壊れるのではなく、勢いよく溢れたため破裂したのである。


「ダメだったのでしょうか?」

「ダメじゃないよ。ダメじゃないけど、威力がありすぎるよね…。まぁ流す量とかは慣れだから、これも練習だね!」

「ダメじゃないのですね。頑張って練習します。ところで、お祖母様は地面に魔力を流して陥没させたのですよね?どうやったのでしょうか?」

「あれは、破壊する範囲にだけ魔力を流したんだよ。ティアちゃんは岩を破壊するために全体に流したよね?それを一部分だけにやると、魔力が溜まったところだけ壊れるんだよ」

「なるほど…やってみますね」


飛び散っていない方の岩にもこちゃんを触れさせ、今度はゆっくりと一部分にだけ魔力を流す。

しばらくすると、触れているところだけにヒビが入り、陥没した。


「これは…今の私のやり方では難しいですね。一度にたくさんの魔力を流す方法だと、一部に集めることができそうにないです」

「なるほど…じゃあ戦闘では使わない方向で!」

「はい」


もちろん魔力操作に慣れれば可能だが、今のティアは覚えることが多すぎる。

ペンシィはその方法を教えることなく使わせないことにした。


「じゃあもこちゃんの操作を練習しながら先に進もう!」

「はい!」


もこちゃんを進ませ、その後ろを追うようにティアが歩き出す。

ペンシィは時折周囲の警戒をするため、飛び回る。

そんな風に二人と一つのぬいぐるみは雪山を進む。

相変わらずティアが転びながら。

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